反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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二章

魔法の話と拠点探し

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 依頼を報告した後、俺達は遅い昼食をとる。

 ついでなので、魔方について確認をすることにした。

「そういえば、魔法はどんなのが使えるんだ?」

「えーっと……傷を癒すヒールにハイヒール、毒や麻痺などの状態異常を治すキュア、アンデットや死者を弔うターンアンデット……くらいかしら」

「なるほど……攻撃系がないわけだ」

 魔法を使うには特殊な才能が必要だ。
 誰もが持つ魔力を、様々な属性に変換できること。
 魔法には火、水、地、風、光、闇がある。
   その中で、カグヤは光属性の適性があるようだ。
 
「覚えたかったけど、覚える時間が限られていたから。そんな暇あったら、お稽古や貴族間の集まりに出なさいって……」

「そうか……では、そちらも考えておくか」

 「結局、クロウは使えないのよね?」

「ああ、残念ながら」
 
 俺には魔力だけは豊富にあったが、変換ができなかった。
 なまじ魔力が多い分、コントロールが難しいのもある。
 なので、力任せに魔力を放つという剣技を覚えた。
 あえて名をつけるなら、無属性魔法といったところか。

「でも、魔力の剣を飛ばせるから平気よ。あれは、元々はエリゼの技よね?  小さい頃に、何度か見たことあるもの」

「ああ、エリゼが使っていたのを見様見真似でな。あの人は実戦でしか教えてくれなかったし」 

 魔力を使った技はエリゼがよく使っていて、使い手はほとんどいないようだ。
 使うには豊富な魔力と、それに耐えられる肉体が必要だとか。
    そのために、俺は激しい鍛錬を積んできた。

「ふふ、いつもボロボロになってたわよね?」

「全くだ、何度死ぬかと思ったか」

「私、あれを見て回復魔法を覚えたいと思ったの。そしたら、光魔法の適性があって……」

 攻撃魔法を覚えなかった理由は俺のためでもあるらしい。
 相変わらず、優しい女の子だ。

「カグヤ……ありがとう。その気持ちが、俺はとても嬉しい」

「ほ、ほら! そろそろ行くわよ!」

「ククク……ああ、そうだな。では、次の店に行くとしよう」

 その後、耳まで真っ赤になったカグヤを連れて店を出る。
    食後がてらに歩きつつ、次は武器について話をする。

「それでね、クロウ。武器なんだけど、弓がいいかなって」

「そういえば、昔やっていたな。そして、俺はよく的にされてた……よく死ななかったものだ」

 アレは本当に危なかったから、思い出したくない。
 何回、身体のあちこちを掠めたことか……カグヤはお転婆だったからなぁ。

「そうだっけ?」

「やられた方は覚えてるんだよ!」

「アハハ! それもそうね!」

 まあ、楽しそうだからいいか。
 その後、ロレンソさんに教えてもらった場所へ行く。
 すると、中年の少し小太りした男性が対応してくれる。

「これはこれは、いらっしゃいませ。この都市で不動産業を営んでおります、ドルバと申します。本日は、どのようなご用件でしょうか?」

「突然すみません、実は家を探していまして……私はこういう者です」

 懐から冒険者カードを取り出す。
 これを見せれば、悪い扱いは受けないだろうと言われた。

「これは、失礼いたしました。その若さで鋼等級とは……都市を守ってくださり、ありがとうございます」

 そう言いながら、ドルバという方は頭を下げる。
    想像以上に冒険者は大事な役目らしい。

「いえ、まだ新人でして……ここにも来たばかりなのです」

「新人で鋼等級……いや、詳しくは聞きますまい。ただ、そちらの可愛らしいお嬢さんをみるに……騎士と令嬢の駆け落ちといったところですかな?」

「かっ、駆け落ち……!  エヘヘ……」
 
 カグヤは何やら両手を頬に当て、モジモジしている。
 とりあえず、俺が話を進めよう。

「ええ、そのようなものです。それで、ロレンソさんからここに行くと良いと言われまして……」

「なんと、ギルマスの右腕と言われるロレンソ殿から……!? それはそれは、こちらも手が抜けませんな。無論、抜いたことなどありませんが」

 どうやら、有名な方だったようだ。
 ゼトさんといい、出会う人に恵まれてるな。

「それで、二人で住む家を探しているのです。部屋はそれぞれにあって共有場所もあり、周りに建物が少なく人通りが少ない。更には、見通しがの良く庭があれば助かります。大きい生き物も、そのうち飼いたいので」

「二人の家……エヘヘ」

「ホホホ、仲むずまじく良いですね。だいたい、いつ頃からお住まいになりたいとお考えでしょうか?」

「早ければ早いほど、助かりますね」

「なるほどなるほど……では、こちらの席で詳しいお話を伺いましょう」

 その後、上の空のカグヤを放って話を進める。  
 予算やいつまで借りるのか、それとも買うのかなど。
 権利問題も含めて説明してもらい、話がすぐにまとまった。

「ひとまず、この条件で至急探させて頂きます。ご連絡は、ギルドでよろしいでしょうか?」

「ええ、それでお願いします」

「わかりました。では、また後日改めてお訪ねください」

「はい、本日はありがとうございました」

 話を終えたので、席を立とうするが……未だにカグヤは上の空だった。

「カグヤ?  おーい、カグヤー?」

「でも、でも、二人っきりってこと?  いや、でも……それって」

「やはり二人きりは嫌か?  すまんな、部屋は別々だから安心していい」

 俺が顔を覗き込んで言うと、今度は耳が赤くなってくる。
 そして、俺の肩を叩く。

「ち、違うわよ! クロウのバカ~!」

「……何故だ」

「ホホホ、仲が良くていいですな」

 そんなやりとりの後、店を出たら今後の予定を考える。
 まだ日が暮れていないので、動ける時間ではあった。

「カグヤ、体力は平気か?」

「大丈夫よ! 私、意外と体力はあるんだから!」

 そういい、両手の拳を握りしめて体の前に持ってくる。
 可愛いな……いや、今はそうじゃない。
 逃亡中も疲れたりはしていたが、倒れたり根をあげたりはしなかった。
 やはり、根性はあるのだろう。

「そうか……じゃあ、武器屋も行ってみるか。弓が良いとか言ってたしな」

「わかったわ!」
 
 そしてカグヤは、両手をブンブンと大きく振りながら前を歩く。
     後ろから見てても、ご機嫌なのが一目瞭然だった。

「……何やら、今日はずっとご機嫌だな?」

「ふぇ!? いや、えっと……楽しそうだなって。その、クロウと暮らすの……私、嫌じゃないからね?」
  
    そう言い、少し目を逸らしながら上目遣いをしていた。
 あまりの可愛さに、俺は膝をついてしまう。
 
「ぐはっ……!」

「え? え? ど、何処か痛いの!?」

「だ、大丈夫だ……恐ろしい」

「……変なクロウだわ」

 これで自覚がないのが一番怖い。
 二人暮らしになったら、俺の精神は保つだろうか。
 その後、気を取り直して歩いていると……こちらに向かって、誰かが走ってくる。
  その人物は、俺のよく知る男だった。

「まさか……あれはナイル!」

「それって昨日の!?」

「ああ、俺の恩人にして戦友だ」

 何故ここにいるかはわからないが、放っておくわけにはいかない。

 何故ならナイルは、黒ずくめの男達に追われていた。

   あいつがいなければ、今頃俺は生きてはいない。

 ならば、今がその恩を返すときだろう。
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