反逆の英雄譚~愛する幼馴染が処刑されそうだったので国を捨てることにした~

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四章

シンク視点

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 アタシの名前はシンク、姿形は違うけど3人の家族がいるの。
いつも遊んでくれるハクお兄ちゃん、アタシからママを盗るけどとっても強いクロウパパ、そして……大好きなカグヤママ!
なぜか知らないけど、ママからはとても惹かれる匂いがする。
 従わなきゃ!という気になるの……なんでだろ?
 まあ、いいや!  とりあえず、ママが好きってことなの!
   そして今日は、初めてのお散歩なの!

「ピー?(なんでみんな見てくるのー?)」

「グルル(オイラ達が珍しい魔物だからなのだ)」

「ピー(ほぇー、アタシ珍しいの)」

ハクお兄ちゃんは、いつも私の質問に答えてくれる。
それに側にいて守ってくれる頼りになるお兄ちゃんなの。
でも、アタシもいつかはみんなを守れるくらい強くなりたい。

「ふふ、私にも大分シンクの気持ちがわかってきたわね」

「お、そうなのか……まあ、俺にもなんとなくはわかるがな」

「ピー!(ママはアタシの!)」

パパがママに近づくので、その間に割って入る。
パパは好きだけど、これとそれは話が別なの。

「はいはい、カグヤが好きなのはわかってるよ。だが……負けん。俺の方がカグヤを愛している、そこだけは譲れない」

「ニャニャ!?にゃに言ってるの!?」

「ピー!(負けないの!)」

「ほう?やるか?」

「や、やめなさーい!」

「ピー(仕方ないの)」

「ふっ、シンクよ……命拾いしたな」

   アタシとパパはいつもこんな感じで、ママの取り合いしてるの。
 そのあとは冒険者ギルドというところに行った。
  
「ピー!(そして……いよいよ外の世界へ行くの!)」

外の世界は広く、色々な生き物がいた。
 森につくと、ハクお兄ちゃんがオーガっていう魔物を連れてきた。
 
「ピー!?(何アレ!?大きい!強そう!)」

「はいはい、シンクはダメよ」

 戦おうとしたら、ママに止められてしまった。
 仕方ないので、我慢するの。
   そしてパパがあっという間に三体のオーガを倒してしまう。

「ピー!(パパ強いね!)」

「グルルー!(そうなのだ!強いのだ!)」

「そうね!クロウは強くてかっこいいわ!」

 そしてお兄ちゃんは、さっきのより強そうなのに勝った。
 アタシも強くならなきゃなの!

「よーし!シンク、頑張るわよ!」

「ピー!(あいなの!)」

「ハク、お前はシンクを頼む。俺がカグヤを守る」

「グルルー!(任せるのだ!)」

 みんなで森の入り口付近を歩いていると……わっ~!?
   なんか緑色の生き物出てきちゃった!

「いたわね! ど、どうしよう!?」

「落ち着け、ただのゴブリンだ。カグヤ、落ち着いて矢を射るんだ」

「う、うん!」

「ピー?(アタシはー?)」

「シンクはカグヤが射ったあとに、火を放つんだ……いいな?」

「ピー!(あいさ!)」

「い、いくわ……えいっ!」

 ママの魔力の矢はゴブリンの腹に刺さる。
   それによって、ゴブリンが蹲るの。

「グゲ!?」

「ピー!(喰らえなの!)」

 アタシの火の玉が、ゴブリンに当たった。
  相手は頭が燃えて、転げ回ってるの。

「2人ともよくやった。カグヤ、トドメをさせるか? そうでなければ、これ以上戦うことは教えられない」

「そうよね……クロウ、私やるわ!」

 ママが弓を構えて、魔力の矢を射る!
   すると、ゴブリンが静かになっていく。
   少し待ってからパパがゴブリンに近づき……振り向く。
 
「仕留めたな」

「ピー!(やったの!)」

「やったわ!」

ママはアタシを抱きしめて、くるくると回る。

「合格だ、これなら戦えるだろう。次は、シンク1人でやってみろ」

「へ、平気かしら?」

「大丈夫だ、カグヤ。こいつは赤ん坊とはいえ、最強種のドラゴンだぞ?」

「ピー!(ママ!アタシできるの!」

「そうね……シンク、頑張るのよ?」

「ピー!(頑張るの!)」

 そのまま歩いてると……また、ゴブリンがいたの!

「さあ、シンク。好きに戦うといい」

「助言とかはないの?」

「必要ないだろう。おそらく戦っているうちに本能でわかる筈だ」

「で、でも……攻撃くらったら……」

「それこそ心配いらない。シンク、身体に魔力を纏うといい」

パパに期待されてる、ママに心配かけてる……やらなきゃ。

「ピー?(魔力ー、こうかな?)」

「身体が光ってる……?」

「やはり……これが龍鱗だ。魔力を纏うと発生する。俺がレッドドラゴンと戦う時に感じたものだ」

「ピー!(いける気がするの!)」

 アタシは駆け出して、ゴブリンに体当たりする!

「グガッ!?」

「ピー!(吹っ飛んだの!)」

「ギ、ギ、ギー!」

「ピー!?(わわっ!起き上がって来たの!)」

 そいつの攻撃がアタシに当たったの!

「シンク!?」

「カグヤ、平気だ。ほら、見てみろ」

「ピー?(アレー、痛くない?)」

「ほら、かすり傷さえないだろ?アレがドラゴンの龍鱗だ」

「す、凄いわね……」

「グガッ?」

「ピー!(よくわからないけど、喰らえー!)

 至近距離から魔力を込めた火を放つの!
 アタシの放ったのは……アレ?火の玉じゃない?

「グゲェ!?」

「ピー?(あれー、消えちゃったー?)」

「あっ、アレって……!」

「威力は低いがレーザーだな……流石はドラゴンか」

「ピー?(アタシ凄いー?)」

「うん!凄いわよ!」

「だあよくやった……なんだ?この気配は?」

「グルルー!(何かがこっちに来るのだ!)」

「ピー!?(なになに!?)」

「ど、どうしたの!?」

「ハク、2人を頼むぞ」

「グルルー!(ガッテン!)」

 そして森の奥から現れたのは……物凄いオーラを纏った生物。

 アタシはいつの間にか、震えが止まらなくなって……。

 ただ、パパとそいつが対峙するのを見ていることしか出来なかった。



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