竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界転移する

おっさん、イノブタを解体する

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 さて、気絶が解ける前に処理しなくては。

 なおかつ、手早く済ませることを意識する。

 肉は、死んだ瞬間から鮮度が下がっていくし。

「まずは、木にぶら下げて……」

 丁度、大きな木の下を拠点している。
なので、クレアさん達が持っていた縄を使って、首を下にして吊るす。

「よいしょっと……うん、我ながら馬鹿力だな」

 軽く百キロを超えるであろうイノブタを、簡単に持ち上げることができる。

「まあ、別に悪い意味で身体に異常はないからいいか」

 次に持っていた包丁で、頚動脈を裂く。
 すると、血が勢いよく流れていく。
   こうすることによって血の流れはいいし、胴体が血で汚れることもない。

「そのつもりはなかったが、気絶させておいて良かったな」

 前の世界と一緒とは限らないが、興奮状態だと良好な血の放出ができない。
 前の世界でも、できるなら安静な状態で処理をしなさいと教わった。
 頭の中の記憶を頼りに、作業を進めていく。

「そしたら、水で体表を洗い流すと……」

 これにより血はもちろん、泥やゴミなどを洗い流す。

「次に内蔵を傷つけないように切れ目に沿って……」

 それにしても、経験があるとはいえ……気持ち悪くもないな。
 前にやったときは、結構きつかったのだが。

「それに、俺の包丁斬れすぎじゃないか?」

 手入れは欠かさなかったし、もともといいモノではあるが……さっきから、抵抗感なくサクサクと切れる。





 そして、順調に作業が進み……解体作業を終える。
   シートの上には、部位ごとに分かれた肉が置かれている。

「ふぅ、これでいいか」

 ほんとは冷やしたりして、臭みを取ったするが……まあ、時間がかかるから仕方ない。
 もう、辺りが暗くなってきたし。

「そういえば、三人は平気……来たか」

 森の方から人の気配がして、三人が戻ってくる。

「ソーマ殿、待たせしまったな」

「いえ、平気です。こちらこそ、ありがとうございました」

「ほら、ソラちゃん」

「あ、あぅ」

「ソラ、どうした?」

 なにやらミレーユさんの後ろに隠れてモジモジしている。

「ふふ、照れているのだろう。ほら、綺麗になった姿を見せてやると良い」

「ええ、そうですよ」

「は、はい」

 すると。ソラが前に出てきて……俺は思わず驚く。
 黒く薄汚れていた髪は白く綺麗な髪に、身体もやせ細っているが綺麗になった。
 綺麗になった顔は意外と整っており、お世辞抜きにして美少女と言っていいだろう。
 しかも、綺麗なお洋服まで着させてもらっている。

「ソラ、綺麗になったな。それにお洋服まで可愛くしてもらったな」

「う、うん! クレアさんがくれたの!」

見たところロングTシャツだが、ソラが着たらワンピースみたいな感じになっている。

「へぇ? クレアさん、ありがとうございます。ほんと、優しい方に出会えて良かったです」

「い、いや……」

 そう言い、クレアさんが頬をぽりぽりと掻く。
   どうやら、照れているらしい。
 
「ふふ、クレアは子供に甘いですからね。ソーマ殿、作業ありがとうございました。あとは、私達にも手伝わせてください」

「そうだ。私たちだって、テント張ったり火を起こしたりはできるんだぞ?」

「しかし……」

「というか、お主も汗をかいているだろう?」

 一人なら気にしないが、俺以外はみんな女性だ。
 流石に気を使わないとな。

「あぁー、そうですね。では、俺もささっと汗を流してきます」

「ああ、そうしてくれ。一人で……愚問だったな。ソーマ殿は龍殺しなのだから」

「はは……まあ、多分平気です」

 油断とか傲慢とかではなく、自然とその言葉が出た。
 多分、感覚的に……そこまでの危険を感じていないのだろう。

「お、お父さん! わたしも手伝います!」

「おっ? そうか? なら、頑張ってな」

「うん! だから……」

「うん? どうした?」

「な、なんでもない!」

 そう言い、そっぽを向く。

 そんな仕草も、普通の子供らしくて良いと思う。

 自然と顔が綻びつつ、俺はタオルを借りて森の中に入るのだった。
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