竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

おとら@ 書籍発売中

文字の大きさ
16 / 64
おっさん、異世界転移する

おつさん、目標を立てる

しおりを挟む
その後も楽しく食事をして、最後にパンをスープにつけて食べ干す。

うむ……こういう食事も悪くないな。

「さて、クレアさんにミレーユさん、量は足りましたか?」

「うむ、少しずつ食べたからか満足感が高いな」

「ええ、そうですね。たくさん食べたのに、そんなに苦しくありませんし」

「ソラはどうだ?」

「お、お腹いっぱい!」

「よし、なら良い」

どうやら、全員の腹は満たされたようだ。
そして聞く限り、コース料理という概念はないのか?
先に野菜を食べるとか、順番に少しずつ食べると普段より少なくても満腹感があるとか。……なら、俺がやれば良いか。

「ところでだ……その敬語、やめにしないか? 仮にも、私はこれから教えてもらう身なのに……」

「へっ?」

「私も気になってました。ソーマさんは明らかに歳上ですので」

「というか、私が偉そうな言葉遣いをしてるのが申し訳ない……いや、私が敬語を使えという話なのだが……」

「い、いえ、これは俺の癖のようなものなので……」

子供ならともかく、ある程度の年齢の方には敬語を使うようにしてる。
基本的に厳ついし、客商売をやる上で敬語は必須だし。

「そうなのか? いや、高圧的より好感は持てるが……なら無理に変えなくていいか」

「まあ、それは言えてますね」

「ただ、私の言葉遣いが浮き彫りに……」

「気にしないで良いですよ。聞く限り、クレアさんも自然な感じがします。それに、偉ぶってるわけでも下に見てる感じでもないので」

経験と職業から、そういうことには敏感だからわかる。

「そ、そうか……ありがとう」

「いえいえ。というわけで、今のところはこれでお願いします。慣れてきたら、勝手に取れるとは思うので」

「ふふ、では楽しみにしてよう」

「……はわっ?」

静かだと思ったら、ソラが船を漕いでいて、今にも寝そうだ。

「あらあら、おねむさんですね」

「すみませんが、ソラを寝かせるためにテントを借りても良いですか?」

「ああ、もちろんだ。流石に、ソーマ殿あれだが……いや、信用してないとかじゃないぞ!?」

「いえいえ、当然ですよ。俺は適当に寝るんで平気ですから」

というか、この世界来てから疲れというものがない。
……まさか、寝なくても平気な体とか?





その後、ソラを寝かしつけてから……ようやく本題に入る。

ちなみにソラは、ミレーユさんに見てもらっている。

多分、楽しくない話も出るので聞かせるわけにはいかない。

「さて……では、明日以降の話をしよう」

「ええ、お願いします。まずは、俺の立場は田舎から出てきた男でいいとして……ソラというか、獣人の扱いってどうなのですか?」

「それだな……はっきり言って、扱いは良くない。彼らは身体能力こそ高いが、魔法を使えない。何より、人族が魔力がないものを縛り付ける首輪を開発してしまった」

「ああ、俺が破壊したやつですね」

「……はっ?」

あっ、そういえばその辺りの説明はしてなかった。
というより、ソラの前では話したくなかったし。

「す、すみません、ソラの前ではアレだったので」

「い、いや、当然だろう……しかし、アレを破壊か……流石は竜殺しといったところか。まあ、お主の強さについては街についてから説明しよう。実は、強さを測る水晶というものが存在してな。それを見れば、お主の強さもわかる」

「ああ、そういうことですか」

俺がドラゴン殺しかどうかは、街に着けばわかるとか言ってたな。

「とにかく、数百年前の首輪の開発によって、それまで対等だった関係は終わった。今は獣人族といえば、奴隷という扱いの場所が多い。幸い、我が国アシュタルトは比較的マシな部類だが」

「なるほど……では、首輪のないソラを連れていると問題がありますか?」

「いや、そんなことはない。獣人と結ばれる人族もいるし、お主のように子供として育ててる者もいる。それに、首輪をつけられないほどの強者もいるしな。ただ、そういうものだとわかってくれたらいい」

「……わかりました。ちなみに、他の種族とかはいるのてすか?」

「ああ、エルフ族とドワーフ族、そして竜人族がいる。ただし、ドワーフ族以外は人前に姿を表すことは少ない。というより、我々人族を嫌っているのだろうな……」

「そういうことですか……」

納得はできないが、この世界はそういうことらしい。
いや前の世界でも、よその国ではあったことか。

「すまぬ」

「なぜ、クレアさんが謝るのですか?」

「い、いや、この国に住まう者としてな。奴隷などいうものはない方がいいに決まってる」

その手は強く握られ、悔しそうな表情を浮かべている。
そうか……本当に良い人に会えたみたいだ。
この世界では、最初に会った村人のような考え方が多いということを理解しておこう。

「街に行く前に出会えたのが貴女で良かった」

「な、何をいうか! ……それはこっちのセリフだ。そなたがいなければ、死んでいたところだ」

「そういえば、何故あそこにいたのですか? 言ってはなんですが、勝てない相手とは戦うべきじゃないかと」

俺もおじさんには、かなり叩き込まれた。
蛮勇と臆病を履き違えるなと。
相手の力量を測るのも、強さのうちだと。

「ああ、わかってるさ。ただ、アレは予定外だ。オークの依頼討伐に来たら、オーガがいるとは思わなんだ。おそらく、ドラゴンが出た影響だろう。普段現れないところに、オーガが現れたのだ」

「なるほど、そういうことでしたか……依頼?」

「むっ? ……ああ、そちらの世界にはないのか。さっきも言ったが、私は冒険者だ。この世界では冒険者という職業があり、魔物退治や雑用までこなす者のことだ」

まるで小説の世界のような話だな。
だが、そういう仕事がある世界でよかった。
多分、俺の予想が正しければ……。

「それは俺でもなれますか?」

「なに? まあ、十二歳を超えてれば誰でも慣れる職業だから問題ない。しかし、料理人になりたいのでは?」

「まずは衣食住を整えたいので。それに、店を出すならお金はあった方がいいですし」

「それくらいなら私が……いや、そこまでのお金はないか」

「大丈夫ですよ、料理自体は冒険者しながらでも出来ますから。幸い、俺は戦えそうですし」

「うむ、それもそうか。わかった、では冒険者登録くらいは、私が責任を持ってお手伝いさせてくれ」

「助かります」

……よし、これで道筋が見えてきた。

ソラのことを考えつつ、冒険者として稼いで、いずれ店を出す。

そんなことを考えていると、年甲斐もなくワクワクしてる自分に気づいたのだった。


しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一秒クッキング】追放された転生人は最強スキルより食にしか興味がないようです~元婚約者と子犬と獣人族母娘との旅~

御峰。
ファンタジー
転生を果たした主人公ノアは剣士家系の子爵家三男として生まれる。 十歳に開花するはずの才能だが、ノアは生まれてすぐに才能【アプリ】を開花していた。 剣士家系の家に嫌気がさしていた主人公は、剣士系のアプリではなく【一秒クッキング】をインストールし、好きな食べ物を食べ歩くと決意する。 十歳に才能なしと判断され婚約破棄されたが、元婚約者セレナも才能【暴食】を開花させて、実家から煙たがれるようになった。 紆余曲折から二人は再び出会い、休息日を一緒に過ごすようになる。 十二歳になり成人となったノアは晴れて(?)実家から追放され家を出ることになった。 自由の身となったノアと家出元婚約者セレナと可愛らしい子犬は世界を歩き回りながら、美味しいご飯を食べまくる旅を始める。 その旅はやがて色んな国の色んな事件に巻き込まれるのだが、この物語はまだ始まったばかりだ。 ※ファンタジーカップ用に書き下ろし作品となります。アルファポリス優先投稿となっております。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...