竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界生活を始める

おっさん、自分の強さを知る

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 ……ふむ、活気がありそうなところだな。

 最初に都市の中に入った印象はそんな感じだった。

 馬車も通れるほどに広い道。

 綺麗に密集した西洋風の建物。

 そこに出入りする人々の顔からも、活気があるのが察せられる。

「す、すごい……人がたくさんいます……! それに、すっごく綺麗です!」

「そうか?」

 それに関しては、少々疑問である。
 確かに人は少なくないが、日本の商店街や繁華街よりはマシである。
 少なくとも、避けながら歩く必要はなさそうだし。
 それに汚いとは思わないが、そこまでは綺麗だとも思わない。
 まあ……それは俺が、日本という綺麗な国で育ったからか。

「そうだな、二人には基準がないのでわからないか。一応言うと、ここの人口は多い方だ。ただ都市自体が広いので、そこまで密集するようなことはない。綺麗さでいうと、流石に王都や港町に比べると劣るが悪くはないと思う」

「なるほど……この都市の中は、どんな構造になっているのですか?」

「まずは、都市全体は大きな十字路によって、四つの区域に分かれている。北西には迷宮があり、周りには冒険者ギルドや宿屋、その他に武器屋や防具屋がある。北東には一般住民のや住処がある。南東には領主の館や商人達、いわゆる富裕層が住んでいる。南西は日曜製品や洋服屋、装飾品、食事処や生活用品が栄える商業地区となっている」

「ふむふむ……」

「わぁ……覚えられないや」

「まあ、おいおい説明していこう」

 そんな会話をしつつ、道を進んでいくと……。

「あっ……」

「うむ、獣人族だな」

 通りには、頭や耳から尻尾の生えた方々が歩いている。
 人間に近い顔の者、獣に近い顔の者など様々だ。
 あくまでもイメージだが、犬や猫のような感じに近い。
 首輪をつけてる者もいるし、そうでない者もいる。

「獣人は大まかに二つに分かれる。ネコ科かイヌ科の二つだ。あとは、それぞれの間にも種族がある。ネコ科の百獣族とか、イヌ科の狼族とか」

「なるほど。ということは、ソラはイヌ科の獣人族ってことか」

「ああ、そうだと思う。ただ、髪が白いのは見たことない。ただ、それが種族によるのか……まあ、どちらにしろ気をつけてくれ」

 ソラの髪の色は珍しいが、それが環境によるストレスかもしれないってことか。
 確かに、前の世界でも似たようなことはあったな。

「わかりました。ソラ、何かあればすぐに言えよ?」

「う、うん」

 ソラは恐いのか、俺の脚にしがみつきながら歩く。
 こればっかりは、徐々に慣れていくしかない。

「それで、まずは何処に行くのですか?」

「ああ、まずは冒険者ギルドに向かう。そこでお主の力を確かめつつ、登録をしてもらう。冒険者カードは、身分証明書にもなるのでな。それがあれば、以降は入場料を払う必要もない」

 冒険者……年甲斐もなく、少しワクワクしてる自分がいる。
 男である以上、一度はそういうものに憧れる。

「そういえば、迷宮があるとか。それって、どんなところですか?」

「その名の通り迷宮だな。見た目はただの小さい洞窟だが、中はとてつもない広さの地下迷路になっている。そして、入るたびに道が変わるようになっている。その代わり、5階降りるたびに中継地点がある」

「なるほど……一度そこまで行けば、次からは一階からやる必要がないってことですね」

「ああ、そういうことだ。そして、迷宮には財宝やレアな魔獣などもいる。なので、一攫千金を狙って冒険者達が挑んでいくわけだ」

 その後も歩き、とある建物の前でクレアさんが立ち止まる。

 看板には、冒険者ギルドと書いてある。

 見た目は大きく、一軒家二個分以上の幅はありそうだ。

「ここが冒険者ギルドだ。さあ、行くとしよう」

「ソラ、ほら」

 ずっとしがみついてるのもアレなので、手を差し出す。
  すると、恐る恐る手を握る。
 そのまま、俺はクレアさんと共に扉を開け……建物の中に入る。

「……ここが冒険者ギルドか」

「ひ、人がたくさんいます」

 中中は広いスペースがあり、椅子なしの丸いテーブルがいくつか置いてある。
 そして、そこでは人々が話し合っている。
 左を見れば階段があり、右側の壁には何やら紙が貼ってある。

「ああ、そうだろ? ここは迷宮があるので冒険者が多いんだ。右の壁に貼ってるのが依頼書だ。あれを受付に持っていくことで依頼を受けることができる」

「なるほど」

 どうでもいいが、何やら視線が痛いな。
 さっきから、人々が俺のことをチラチラ見てくる。
 俺がクレアさんに聞こうとした時、奥からミレーユさんの姿が見えた。

「クレア! ソーマさん! こっちこっち!」

「わかった! ソーマ殿、悪いが私を信用してくれるか? とある人物にだけは、ソーマ殿のことを知らせないといけない」

「ええ、わかりました」

 クレアさんを信用もしているが、そもそも俺に選択肢はない。
 この世界のことは何もわからないし。
 俺はおとなしく、クレアさんの後をついていくのだった。




 ミレーユさんと合流すると、奥にある受付らしき場所を通り過ぎる。

 そして働いてる受付の方々から見られつつ、そのまま奥に行き……とある豪華な扉の前に到着する。

「ハウゼンさん、クレアと例の人を連れてきました」

「ああ、入ってくれ」

「失礼します」

「し、失礼しましゅ!」

 耐えろ……ここは突っ込んではいけない。
 苦笑するのを堪えつつ中に入ると、偉丈夫が立っていた。
 身長は180を超える俺と同じくらいで、ボディービルダーみたいな体格をしている。
 年齢は、おそらく五十前後。

「ふむ、そいつが例の男か……なるほど、ただ者ではない。ようこそ、冒険者ギルドへ。俺がギルドマスターのハウゼンだ」

「初めまして、ハウゼン殿。私の名前はソーマと申します。ほら、ソラも挨拶しなさい」

「ソ、ソラっていいます! よろしくお願いします!」

「うむ、元気で良い。さて、一応事情は聞かせて貰った。ただ、そのための確認をしたい。早速で悪いが、この水晶に触れてくれるか?」

 ……確かにテーブルの上には占いで使いそうな水晶がある。
 クレアさんは信用しているが、この人はわからない。
 何かの罠の可能性もあるか?

「ハウゼン殿、ソーマ殿が警戒してしまったではないか」

「ハハッ! すまんすまん!」  

「い、いえ」

「当然のことかと。まずは、私が見本を見せよう」

 クレアさんが水晶に触れると、空中に文字が浮かび上がる。

 ——————

 クレア-アラドール 

 種族  人族  

 年齢 二十二歳

 体力 D+  魔力 C+

 知力 C+ 筋力 D+ 

 速力 D+  技力 D+

 称号  姫騎士  

 ————

「これが強さを表す水晶だ。上から順に、S+,S,A+,A,B+,B,C+,C,D+,D,E+,Eの12段階になっている」

「なるほど」

 つまり、数字こそないがステータスのようなものか。

「普通の一般人がE~E+。街の一般兵士などがD。戦いを生業にできるのがD+。一人前と言われるのがC。一人前の壁を越えたのが、C+。ベテランと言われるのがB。一流と言われるのがB+~A。超一流と言われるのがA+。人外と言われるのがS。前人未到と言われるのS+といった感じだ。いわゆる英雄や勇者と呼ばれるクラスでも、AからA+がほとんどだ」

「ありがとうございます。この称号とは?」

「これは……何かを成し遂げたり、周りから言われるうちにつくものだ。私は……戦う女性が珍しいので、こう呼ばれている」

「さて、そういうわけだ。お主がこれに触れれば証明できるという話だ。そして、中身はワシの胸の内にだけにすると約束しよう」

「……わかりました」

 とりあえず、罠ではないようなので水晶に触れると……。

 ——————

 土方 相馬 

 種族  人族

 年齢 三十五歳

 体力  A+  魔力     C+

 筋力   A    速力   B+     

 技力   B+    精神力 B

 称号  竜殺し    迷い人

 —————

 ……あれ? 先程の説明を考えると……これってかなり強いんじゃないのか?
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