竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、今度こそ絡まれる

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 俺が受付を去ると、クレアさんがやってくる。

「良い依頼は見つかりましたか?」

「ああ、それなりにな。そっちも、無事に受けられたか?」

「ええ。なにやら……ん?」

 その時、何やら視線を感じた。
 そちらを向くと、大柄な男がこっちを見ていた。

「……帰ってきてたのか。ソーマ殿、あまり見ない方がいい」

「……わかりました」

 しかし、その時……相手がこちらにやってくる。
 身長180超え、体重100ってところか。
 ボディービルダーのような大きな身体に、背中に斧を背負っている。
 短髪を借り上げた顔は厳つく、傲慢に染まった嫌な顔をしていた。

「おい、貴様」

「………」

「聞いてんのか?」

「……俺のことですかね? できれば、初対面で貴様と呼ぶ人とは話したくないのですが」

「なんだと?」

 その瞬間、男から殺気が溢れ出た。
 すると、クレアさんが間に入る。

「ま、待て! ソーマ殿落ち着け!  ブライ殿も喧嘩腰はやめてくれ!」

「あん? 女如きがうるせえよ。なんだ? 俺様に抱かれる気になったか?」

「な、なっ……」

 そう言ってクレアさんに手を伸ばそうとしたので、俺は奴の肩を掴んだ。

「邪魔すんな……ほう?」

「……用があるのは俺では? そしてなんて言った? 女性は、男の道具ではない」

 こいつ……相当強いな。
 力を入れてるのに、動きを止めきれない。

「やっぱり、強い奴だったか。ああ、そうだ……今すぐ俺と戦え」

「断る、貴方と戦う理由はない」

 クレアさんに言ったことは腹がたつが、クレアさん自身が俺にやめてくれと目で訴えている。
 ここで、俺の怒りをぶつけるのは筋違いというやつだ。

「はんっ、腰抜けか。しかも、甘ちゃんと見た。そんな奴は……ちっ、邪魔者が来やがった」

「ブライ! 何をしとるか!」

 こちらに向かって、ハウゼン殿が駆けつけてくる。

「うるせえよ、耄碌ジジイ」

「貴様、冒険者ギルドを追い出されたいのか?」

「できるもんならしてみろや。まあ、今回はジジイの顔を立ててやるよ」

 そう言い、俺をひと睨みした後……ギルドから去っていく。

「……ソーマ殿、クレア、すまない。うちの者が迷惑をかけた」

「いえ、俺は平気ですよ。ただ、クレアさんが……」

「私も平気だ。奴は、普段からあんなだしな」

「えっ? そうなんですか? その、何者か聞いても?」

「うむ、奴はA級冒険者の一人であるブライだ。この迷宮都市では、五本の指に入る実力者でもある。それゆえに、傲慢な態度が目立ってな……」

「なるほど。それで、みんなが黙っているんですね」

 俺の一番嫌いなタイプ……というより、なりたくないタイプだな。
 強ければ、何をしても良いと思ってる感じだ。

「まあ、今はタイミング悪く他の奴らが出払っているからな」

「あいつは戦闘狂でもあってな。多分、ソーマ殿の強さを感じとったのだろう。だから、ああやって喧嘩を売ってきたのだ」

 戦闘狂……果たしてそうだろうか?
 個人的には、そういう感じではない気がする。

「へぇ、そうですかね?」

「うん? どういう意味だ?」

「いえ、気にしないでください。まあ、犬に噛まれたと思って忘れることにします。今後、見かけたら近づかないことにします」

「……まあ、それが良い。あいつも迷宮に潜っていることが多いので、そんなにかち合うこともない……明日から迷宮か」

「いや、わしの方からきちんと注意をしておく。ソーマ殿、すまんが……」

「わかりました。なるべく避けるようにしますね」

「すまぬ」

「とりあえず、出ましょうか。かなり、目立ってしまっているので」

「ああ、そうだな」

 ハウゼン殿に見送られ、ギルドの外へ出る。

「ふぅ……何とか、喧嘩にならずに済んだか」

「すみません、ご迷惑をおかけして……」

「いや、あれはあいつが悪い。だが……その、嬉しかった」

「何かしましたっけ?」

「ふふ……わからないなら良いんだ」

 そうして、軽く微笑む。

 よくわからないが……まあ、これから気をつけるか。

 穏便に越したことはないし。
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