竜殺しの料理人~最強のおっさんは、少女と共にスローライフを送る~

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おっさん、異世界に慣れる

おっさん、憤る

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 ギルドに到着した俺は、まずは解体屋に預け……。

 その後、受付でアリスさんにワイバーンのことを説明する。

 すると、すぐにギルドマスターてあるハウゼン殿の部屋に通された。

「ソーマ殿、休みだったろうにすまんな」

「いえ、きちんと説明した方がいいですから」

「うむ、俺も気になる点があったのでな……もう一度、最初から説明をしてくれるか?」

「はい……といっても、わかることは少ないですけど」

 森の中を散策中に、突然ワイバーンに出会ったこと。
 単独行動で好戦的だったことなどを説明する。

「ふむ…」

「それ自体が、クレアさんは珍しいと言ってましたね」

「それもそうだが……変だな」

「えっ? 何が変なのですか?」

「ワイバーンはそれなりに知能が高い。おそらく、お主の強さもわかったはず。自らの縄張りに入ったら別だが、野良のワイバーンが襲うのは変な気がしてな……他に何か変わった点はなかったか?」

 ……変わった点……うん? そういえば……。

「結構、森の奥まで行ったのですが……魔物や魔獣に会わなかったですね。クレアさんも不思議に思ってましたけど」

「……もしや、ワイバーンに駆逐された? あそこを新たな縄張りにしようとした? そのためには邪魔者を排除……そのためにソーマ殿に戦いを挑んだ……気が立っていた……元いた場所を追い出された? 故に、あんなところにいた……」

「えっと……つまり追い出されたワイバーンが、あそこに逃げてきた。そして、新しい巣を作ろうとして……そこへ、俺がきたという感じですか?」

「あくまでも推測の域でしかないが……ふむ、詳しい調査が必要だな。ソーマ殿、感謝する。お主がいなければ、無用な被害が出るところだった」

「いえいえ、たまたまですから。無駄に被害が出る前で良かったです」

「……本当に、お主のような者ばかりだったら良かったのだが……」

 俺がその言葉に疑問を問いかけようとすると……勢いよく扉が開かれる!

 そこには、血相を変えたアリスさんがいた。

「マ、マスター! ソーマさん!」

「アリスさん?」

「むっ? ……何があった?」

「はいっ! とにかく、二人共表に来てください!」

 俺とハウゼンさんは頷き、急いで部屋を飛び出すのだった。
 そして、裏側から受付の方の向かうと……そこには、傷だらけのクレアさんがいた。
 あちこちから血が出て、服も破れたりしている。

「クレアさん!?」

「す、すまん、ソーマ殿……私がいながら」

「何があったのです?」

「……ソラが拐われてしまった」

「……誰にですか? 何処にいるかわかりますか?」

 その言葉を聞いた瞬間、全身の血が沸騰するような感覚に襲われるが……なんとか平静を装って言葉を絞り出す。

「ザザという男だ……おそらく、後ろにはブライがいる。あいつのコバンザメのような男だ。場所は迷宮の中だ……追いかけて行った宿に入り口にこれが貼ってあった」

 そこには、獣人の小娘は預かった。
 返して欲しくば、地下10階の迷宮のボス部屋まで来い。
   そこには安全地帯がある。
 今日中に来なければ、娘の命はない。

「……これは……」

「ふざけた話だ……ソーマ殿はまだワープができないというのに」

「そもそも、人攫いをしておいて……」

 すると、ハウゼン殿が俺の肩に手を置く。

「ソーマ殿には言いにくいが、それが獣人の扱いだ。無論、俺は好きではないが。そして、迷宮はある意味で無法地帯だ。そこに入った者、起きたことは責任が取れん」

「……わかりました。とにかく、今すぐに迷宮に行ってきます」

「いや、流石に問題だ。なので、こちらでも編成を組んで……」

「それでは遅いのです!! ……失礼しました、とにかく行ってきます」

 立ち上がろうとすると、クレアさんに洋服を掴まれる。

「ま、待ってくれ! せめて、私を連れて行ってくれ!」

「ですが、怪我を……あっ」

 よく見ると、傷が塞がってきていた。
 そういえば、回復魔法を使えるとか。

「ふふ、私が水魔法使いだと忘れてたか? 先程は治す暇もなくきたが、時間があればこの通りだ」

「しかし、これ以上ご迷惑を……」

 そもそも、俺が彼女に甘えすぎていた。
 そして、ソラに対する認識も甘かった。
 二人は、俺に散々気をつけてと言っていたのに。
 これは、俺の甘さが招いたことだ。

「何を言うか。これは私の責任でもある……何より、私なら地下10階までなら案内できる。それに、ソラが怪我をしていたなら癒すことができるぞ」

「それは……」

「さあ! いくぞ!」

「ははっ! あとは俺に任せとけ! ほら、行ってこい」

「……はいっ! では、失礼します!」

「ひぁ!?」

「急ぎますからね——それでは!」

 俺はクレアさんをお姫様抱っこして、ギルドを飛び出すのだった。
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