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1章:異世界、始動
初めての依頼
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ギルドの奥で続いていた宴は、ようやく終わりを迎えつつあった。皿の山、空になったジョッキ、床に散ったパンくず。冒険者たちはそれぞれ帰ったり、テーブルに突っ伏したりと、夜の余韻に浸っている。
4人の席でも、ついに宴が一区切りついた。
「っはぁー!飲んだ飲んだ!!」
コウが腕を大きく回しながら立ち上がる。フラフラしているが、顔色はいつも通りだ。
一方で__
「早く帰りたい……」
ソウはほぼ眠った目で、椅子にもたれながらぼそり。梅酒1杯だけとは思えないほどの疲労感が全身から溢れていた。
そんなタイミングで、受付嬢がそっと近づいてきた。
「皆さま、お待たせいたしました。ギルドカードと住居証明書が出来ました。」
テーブルの端に並べられた4枚のカードは、薄い銀色が輝いている。
ミカンには鮮やかな赤
ユキヤには落ちついた青
コウには柔らかな黄色
ソウには大人っぽい緑
それぞれのカードの角にワンポイントとして彩られていた。
「おぉー!カッケェな!」
コウはカードを片手で掲げてニヤリ。光に反射する銀縁をしげしげと眺め、すっかり気に入った様子だ。
「ちゃんとアーチャーって書いてある……」
ソウはカードの文字を指でなぞるように確認する。指先にプラスチックに似た素材を感じる。
コウは勢いよく振り返り、飲食スペースの端でまだ座り込んでいる2人へ叫んだ。
「お前らー!ギルドカード出来たでー!!」
ユキヤは2人の方を見て叫ぶ。
「わかったー…!」
すぐにミカンの肩に目を向ける。
「おいミカン、出来たってよ。行くぞ」
「ん~……」
ミカンは酔いの余韻を抱えたまま、ユキヤの肩に身を預けている。
「……っはぁ……」
もう歩ける状態じゃないと判断したのか、ユキヤは観念したようにミカンをそっと背中に担ぎ上げた。
ミカンは背中でふにゃっと身体を預け、「むにゃ……」と寝言のような息を吐いた。
「あ~…なんで俺がこんな目に…」
ユキヤがぼそっと言うと、コウはケタケタ笑いながら肩を叩いた。
「ははっ!嬉しそうやんな?お姫様が甘えてくれて」
「コイツのどこがお姫様だよ…」
そう返しつつも、ユキヤの顔にはどこか嬉しそうな影があった。
ギルドカードと住居証明書の受け取りが終わったところで、受付嬢がふと思い出したように口を開いた。
「あ、それと…せっかく冒険者登録しましたので、簡単な依頼を受けてみるのはどうでしょうか?」
その提案に、ユキヤが眉を上げる。
「依頼…?」
「はい。皆様ならば簡単にこなせると思いますし、少額ではありますがゴールドも貰えますので……生活費の足しにもなりますよ」
やんわりとした口調だが、内容はとても現実的だった。
コウがぱっと笑みを弾けさせる。
「ええやん!受けとこうや!」
「そだね…」
ソウは眠そうな目のまま、なんとなく賛成する。
受付嬢は4人を手招きして、ギルド奥の掲示板へと案内した。
そこには大小さまざまな依頼書がびっしりと貼られており、冒険者たちが物色しながら紙を剥がしていく姿が見える。
「こちらが掲示板でございます。初心者向けの依頼は下の段にまとまっております。この紙を受付にお持ちいただければ受注できますので」
丁寧な説明にうなずきつつ、3人は下段の依頼書に目を走らせた。
ソウが横目でユキヤに問う。
「どれにする?」
「この荷物運びとか楽そうだけど……」
ユキヤが1枚を指差す。だがソウは即答で切り捨てた。
「ヤダよ。僕とミカン、力仕事できないでしょ」
「んぅ~…?わたしはちからもちだよ~……」
ユキヤの背でうつらうつらしているミカンが、寝言みたいに反応する。
「……お前は寝ろ」
ユキヤが小声で呟く。
「とりあえずそれじゃないのにしよ」
ソウがため息をつきながら別の依頼に目を向ける。
そのとき、コウが一枚を指で弾いた。
「この魔物倒すやつええんちゃう?強いやつは出んみたいやし。街の近くにおる雑魚だってよ」
ユキヤは依頼書をのぞきこみ、眉を寄せる。
「でもなぁ~……初めての依頼で魔物退治って……」
「まもの……たおすぞぉ……」
ミカンはまだ寝たまま拳を振り上げている。
「……まだ自分の能力の理解もできてねぇのに…」
そんなユキヤの心配を、コウは楽観的に笑い飛ばした。
「だからやるんやって。どんな攻撃できるか、どんな動きが得意か……試すにはちょうどええやろ」
「ん~……まぁ、たしかに……」
「それに特殊属性…?ってのがなんなのかも知りたいし」
ユキヤの声はしぶしぶだったが、どこか納得の色も含んでいた。
そして、4人の視線が自然とひとつの依頼書に集まる。
【近郊の森に出没する小型魔物の討伐】
・危険度:低
・報酬:ゴールド10枚
・推奨人数:2~4人
・担当:ギルド本部
「…うん、これにするか」
ユキヤの声に、コウとソウが頷く。
「明日やればええな。ミカンも寝たら復活するやろ」
「んへへ~わたしげんきー」
ミカンは寝てるのかどうかわからない状態で、今日討伐に向かうのは難しそうだ。
依頼書を受付に持って行くと、受付嬢が柔らかく微笑んだ。
「はい、では明日の午前中に出発なさってください。気をつけて行ってきてくださいね」
こうして議論の末、4人は初めての冒険者依頼「魔物退治」を受諾した。
「では…こちらは皆さまの住居までの地図と鍵でございます。ここから10分もせずにつきます。」
「ありがとうございます」
ソウが地図と鍵を受け取り、出口へ向かう。
ギルドを出る頃には、すっかり夜風が冷たい。石畳に足音を重ねながら、4人は住居へ向かって歩き出した。
4人の席でも、ついに宴が一区切りついた。
「っはぁー!飲んだ飲んだ!!」
コウが腕を大きく回しながら立ち上がる。フラフラしているが、顔色はいつも通りだ。
一方で__
「早く帰りたい……」
ソウはほぼ眠った目で、椅子にもたれながらぼそり。梅酒1杯だけとは思えないほどの疲労感が全身から溢れていた。
そんなタイミングで、受付嬢がそっと近づいてきた。
「皆さま、お待たせいたしました。ギルドカードと住居証明書が出来ました。」
テーブルの端に並べられた4枚のカードは、薄い銀色が輝いている。
ミカンには鮮やかな赤
ユキヤには落ちついた青
コウには柔らかな黄色
ソウには大人っぽい緑
それぞれのカードの角にワンポイントとして彩られていた。
「おぉー!カッケェな!」
コウはカードを片手で掲げてニヤリ。光に反射する銀縁をしげしげと眺め、すっかり気に入った様子だ。
「ちゃんとアーチャーって書いてある……」
ソウはカードの文字を指でなぞるように確認する。指先にプラスチックに似た素材を感じる。
コウは勢いよく振り返り、飲食スペースの端でまだ座り込んでいる2人へ叫んだ。
「お前らー!ギルドカード出来たでー!!」
ユキヤは2人の方を見て叫ぶ。
「わかったー…!」
すぐにミカンの肩に目を向ける。
「おいミカン、出来たってよ。行くぞ」
「ん~……」
ミカンは酔いの余韻を抱えたまま、ユキヤの肩に身を預けている。
「……っはぁ……」
もう歩ける状態じゃないと判断したのか、ユキヤは観念したようにミカンをそっと背中に担ぎ上げた。
ミカンは背中でふにゃっと身体を預け、「むにゃ……」と寝言のような息を吐いた。
「あ~…なんで俺がこんな目に…」
ユキヤがぼそっと言うと、コウはケタケタ笑いながら肩を叩いた。
「ははっ!嬉しそうやんな?お姫様が甘えてくれて」
「コイツのどこがお姫様だよ…」
そう返しつつも、ユキヤの顔にはどこか嬉しそうな影があった。
ギルドカードと住居証明書の受け取りが終わったところで、受付嬢がふと思い出したように口を開いた。
「あ、それと…せっかく冒険者登録しましたので、簡単な依頼を受けてみるのはどうでしょうか?」
その提案に、ユキヤが眉を上げる。
「依頼…?」
「はい。皆様ならば簡単にこなせると思いますし、少額ではありますがゴールドも貰えますので……生活費の足しにもなりますよ」
やんわりとした口調だが、内容はとても現実的だった。
コウがぱっと笑みを弾けさせる。
「ええやん!受けとこうや!」
「そだね…」
ソウは眠そうな目のまま、なんとなく賛成する。
受付嬢は4人を手招きして、ギルド奥の掲示板へと案内した。
そこには大小さまざまな依頼書がびっしりと貼られており、冒険者たちが物色しながら紙を剥がしていく姿が見える。
「こちらが掲示板でございます。初心者向けの依頼は下の段にまとまっております。この紙を受付にお持ちいただければ受注できますので」
丁寧な説明にうなずきつつ、3人は下段の依頼書に目を走らせた。
ソウが横目でユキヤに問う。
「どれにする?」
「この荷物運びとか楽そうだけど……」
ユキヤが1枚を指差す。だがソウは即答で切り捨てた。
「ヤダよ。僕とミカン、力仕事できないでしょ」
「んぅ~…?わたしはちからもちだよ~……」
ユキヤの背でうつらうつらしているミカンが、寝言みたいに反応する。
「……お前は寝ろ」
ユキヤが小声で呟く。
「とりあえずそれじゃないのにしよ」
ソウがため息をつきながら別の依頼に目を向ける。
そのとき、コウが一枚を指で弾いた。
「この魔物倒すやつええんちゃう?強いやつは出んみたいやし。街の近くにおる雑魚だってよ」
ユキヤは依頼書をのぞきこみ、眉を寄せる。
「でもなぁ~……初めての依頼で魔物退治って……」
「まもの……たおすぞぉ……」
ミカンはまだ寝たまま拳を振り上げている。
「……まだ自分の能力の理解もできてねぇのに…」
そんなユキヤの心配を、コウは楽観的に笑い飛ばした。
「だからやるんやって。どんな攻撃できるか、どんな動きが得意か……試すにはちょうどええやろ」
「ん~……まぁ、たしかに……」
「それに特殊属性…?ってのがなんなのかも知りたいし」
ユキヤの声はしぶしぶだったが、どこか納得の色も含んでいた。
そして、4人の視線が自然とひとつの依頼書に集まる。
【近郊の森に出没する小型魔物の討伐】
・危険度:低
・報酬:ゴールド10枚
・推奨人数:2~4人
・担当:ギルド本部
「…うん、これにするか」
ユキヤの声に、コウとソウが頷く。
「明日やればええな。ミカンも寝たら復活するやろ」
「んへへ~わたしげんきー」
ミカンは寝てるのかどうかわからない状態で、今日討伐に向かうのは難しそうだ。
依頼書を受付に持って行くと、受付嬢が柔らかく微笑んだ。
「はい、では明日の午前中に出発なさってください。気をつけて行ってきてくださいね」
こうして議論の末、4人は初めての冒険者依頼「魔物退治」を受諾した。
「では…こちらは皆さまの住居までの地図と鍵でございます。ここから10分もせずにつきます。」
「ありがとうございます」
ソウが地図と鍵を受け取り、出口へ向かう。
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