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二人の会長 前編

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そしてこの後、とにかくヤバいサングラスの男を調査する為に

さっそく動いた恵は急いで厨房に向かい、

忙しそうに料理をしているチーフの隣に立ちながら

「あっ、チーフ?さっき化粧室のトイレットペーパーを交換しに行ったら、
なんだか床がオシッコだらけの個室があったので、今から掃除をしてもいいですか?」

「えぇ?マジで?じゃあ今すぐ掃除を頼むよ星野さん」

「はい、わかりました~!」

て感じでメッチャ簡単に男性用のトイレに潜入する事が出来たので

*****

勿論このままの勢いで

男性用の御手洗いへと向かった恵は到着してすぐに

めっちゃ広い化粧室の中をぐるっと見回していたら

(あっ、丁度いい感じのロッカーがあるじゃん!
じゃあ早速この中で、ちょっと休憩をさせてもらおうかな?)

と模範的な事を考えながら

お清掃グッズが入った狭いロッカーの中に隠れて男の到着を待つ事にしたのだが

この後わずか3分も経たないうちに

…パタン…とドアの開く音がして

そして恵の思惑通りにトイレの中へと現れた男はこの直後

……カチャッ!

(はいはい、悪い奴は必ず個室に入るよね~)

と再び恵が想像した通り、大きな鞄を肩に掛けながら、

個室のトイレに入ってカチャッと鍵を掛けたので

次は必ず電話の音が聞こえる筈だと思った恵は集中しながら聞き耳を立てていると

またまたこの後、ブルブルブルッ!と小さなバイブの着信音が一回だけ鳴り響き、

そして男は電話の相手に向かって低い声でボソボソと


「……竜か?あぁ、今ベルサイユのトイレだ。
あぁ…涼宮会長は今この店にいるが、お前が予測した通り、
どうやら今夜はお忍びだから、護衛は一人も付いていないぜ?
あぁ…その件なら問題ない。俺は必ず頭を狙うから、防弾チョッキは関係ないさ……」

て感じのヤバい事をペラペラと喋った挙げ句の果てに


「じゃあ報酬の3億はスイスの銀行に振り込んでくれ。今から会長を始末したら、
俺は円行寺彰のルビーを持ってレバノンに飛ぶから、あとの事は竜に任せたぜ?
じゃあ例の段取りで彰のルビーを無事にさばいたら、またコチラから連絡をするよ竜」

と明らかに警察案件の会話を済ませた後すぐに

……ガチャン、ガチャン、カッシャーン!!

と鋭い金属音をトイレの中から響かせていたけれど……

このトンデモナイ音は100パーセントの確率で、


(なっ!あれはサブマシンガンのセーフティーロックを外す音じゃん!)

なんと、機関銃の安全装置をはずす音だったから!

*****

もうこうなった以上は一刻の猶予もない恵は男の犯行を確実に防ぐ為に、

(これは悠長に警察を呼んでいる時間はなさそうだから、
男がトイレから出てきた瞬間を狙って一撃で仕留める事にしようかな?
だって一発でアイツを倒さないと、トイレの中で銃撃戦が起きちゃうからね)

と最強モードの作戦を立てながら

マシンガン男がトイレの中から出てくるのを待っていたけれど

冷静に考えてみれば、この男は先程ハッキリと、

円行寺彰のルビーを外国で売りさばくと言ったから


(つまり今トイレの中にいる男は殺し屋って事だよね?
それでさっきのイケメンスカウト達の中に涼宮会長って人がいて……
そしてマシンガン男はその男性をヘッドショットで始末して
その後は『レバノン』に高飛びをする事がわかったけど、
でもさっきマシンガン男が言った、円行寺彰ってドコの誰?
私の知っている彰さんの事?しかも外国で売りさばく予定の、
彰のルビーって一体何?なんか凄く気になるんだけどー……)

とロッカーの中でモヤモヤと悩む恵は彰の事をメッチャ心配していたが

そんな事よりもとにかく今は、

目の前の敵を一撃で仕留める事だけに集中しなきゃいけないから

この瞬間に頭を切り替えた恵は軽く深呼吸をした後で、

最大限に注意を払って男の動向を探っていたら

次の瞬間、カチャッ!と個室の音がして、

そしてこの後あっと言う間にトイレのドアが一気にバタンと開いたから

もちろん猛ダッシュで狭いロッカーを飛び出した恵は、このままの勢いで いざ!


「お客さん大丈夫ですか?おやすみなさ~い」

「はぁ?なんだよテメェ!うがあぁぁああ!!」


こうして電光石火の速さでマシンガン男の顎に

強烈なアッパーカットを噛まして一撃必殺で落とした後すぐに

ガッシャーン、バキバキバキバキー!とカオスな音を立てながら

短機関銃と呼ばれるサブマシンガンもギッタギタに叩き壊していたけれど

そんな事よりもこの後わずか3秒で

えっ?…誰?…と人の気配を感じた直後に


「お前は一体…何者なんだ?」

と恵の背後から突然聞こえた諏訪部ボイスの持ち主は

(えっとこの声は確か…さっきのドラフトのお兄さん?)

なんと!先ほど恵を指名したイケメンスカウトの男性客だったから、

完全に気配を消していたイケメン男に背後を取られた恵はこの瞬間に

(へぇ、ナカナカやるじゃ~ん、善玉のお兄さん)

と微妙に感心していたが、心の中では少しだけ、

予想外の展開が起きた事に焦りを感じていた。
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