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彰編 幻のCrimson Light

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そして今夜もルビーの事を思い出しながら

真っ赤に輝く夜のイルミネーションに包まれて

どんよりとした暗い気持ちに駆られた彰はおのれの心をリセットする為に、

車の窓を全て下ろして細いタバコに火をつけて、

*****

(やっぱり飲酒運転は絶対にダメだよな。なぜなら俺の両親は
飲酒運転のドライバーに衝突をされて命を落としたんだから……
しかしあれから6年の月日が流れていたのか。時が経つのは本当に早いね父さん……)

そんな事を思いながら……

(ねぇ父さん。やっぱり父さんは可愛い母さんにメロメロだったから、
だからいつも母さんにキスをしてハグをして、アイラブユーを毎日言って、
週末は必ず母さんと一緒にレストランで食事をして、そしてその後は……
二人で夜のドライブに出掛けて夜景を見ていたんだよね?でもね父さん、
今だから言うけど実は俺、あまりにも仲が良すぎる親の事が恥ずかしかったから……
だから反面教師って言うのかなぁ。きっと俺は一生独身なのかなって、
つい最近までは結構本気で思っていたけど、でもね父さん……)


どうやら俺も未来の妻にメロメロだから、

やっぱり血は争えないよね~、フフフッ…と心の中で飛鳥に向かって話しかけ、

とにかく仲良し夫婦だった両親の事を偲んでいるうちに、

段々と穏やかな気持ちを取り戻してきたので、

この勢いでもっと元気になる為に……

と言うよりも、このタイミングでサンシャインルビーよりも大切な物を思い出しながら

(しかし父さんのルビーが盗まれた『あの日の夜』は停電が起きたから、
店中の防犯カメラが一気に全部止まったせいで、この事件は迷宮入りしたけど
そもそもアレを盗んだ犯人は、カーネリアンホールの地下に2階がある事を知らないから、
だから地下2階のCDRは無事だったって事だよなぁ。本当に不幸中の幸いだったよマジで……)

て感じの意味深な独り言を心の中で呟いていたけれど

これはヤケクソでもなければ負け惜しみでもない彰の本心なので


(こんな事を言ったら父さんに怒られるかもしれないが
もしもルビーではなくてCrimson Lightを見知らぬ誰かに盗まれていたら、
シャノワールをデビューさせるどころか俺の精神が崩壊していた訳だから、
やっぱり盗まれた物がルビーで良かったよ……)

と密かに安堵の表情を浮かべて、

120億のルビーよりも大切な物を守れた喜びに満ち溢れながらタバコの火を消していたが、

元ミュージシャンの彰にとっては最高級のルビーよりも

2階の地下室で保管している未発表曲

Crimsonクリムゾン Lightライト』の方が遥かに価値が高いので……

父親には悪いが、この曲が無事だった事を心底喜んでいた。

なぜなら彰は幻の名曲であるCrimson Lightをシャノワールに託そうと思っていたからだ。

しかしどうして彰は父親の形見よりも大切な『Crimson Light』と言う曲を

まだプロデビューもしていないインディーズバンドのシャノワールに歌わせたいと思ったのか……

その理由はとても単純な事がきっかけなので、ここで少しシャノワールの説明をしておこう。

*****

シャノワールとは……

璃音の妻である玲の弟、一条蓮がリードボーカルをやっていて

そして横浜では結構有名な早瀬観光の副社長である早瀬翔が

ギター兼リーダーをやっている超人気のインディーズバンドなのだが、

先月の初め頃にカーネリアンホールで行われた彼らのライブを見た彰は……


◇◆◇◆◇◆◇


『じゃあこのままノンストップでーー!
まだまだ責めるぜMy Baby!お前の事だよ!ぼっちのRey!』

『俺の光は玲…今も昔もお前一人だけだから……
だから俺のAngelに…この曲を捧げます…Ray of Light……』


(なんだよこのステージは……!
こいつらはまだ高校生なのに
何故こんなにも切ない音を出す事が出来るんだ?)

とは言えない位に感動したので……


(あぁ、そうか…やっぱりそうだったのか……
つまり蓮も翔も、本気で玲の事が好きだったから……
だから今夜のお前達はこんなにも切なくて
ダイヤモンドの様にキラキラと輝いているんだね。マジで凄いよお前達。
きっと今の翔達以外に、俺の宝を託せるバンドはどこにも存在しないから
ここはひとつ思い切って、Crimson Lightをシャノワールに歌わせる為に、
とりあえず今から鋼牙に連絡をして、このライブの映像を見せてみようか……)

と思った彰は元バンドメンバーの涼宮鋼牙にシャノワールのVTRを見せてみたら、

一目ひとめで彼らを気に入った鋼牙は

みずからが経営をするフロント企業の芸能事務所でシャノワールの面倒を見たいと彰に言ってくれたので、

今夜の彰はこのまま店に到着したら、もちろんこの件についても色々と話し合う筈だったのに

まさかこの時もう既に、Clubベルサイユの店の中で素敵な奇跡が起きていて、

小さな実写版シンデレラが黒服姿でホールメンバーをやっていたとは夢にも思っていなかった。
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