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1章
愚者の狂想曲 4 方針決定しました!
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「これからの方針を決定します!」
宿泊している宿屋の部屋で、天に指をさす。我が生涯に一片の悔い無し~!と、世紀末っぽく言ってみた。パチパチパチとマルガが笑顔で拍手している。フフフ、今の俺に死兆星は見えないぜ!
俺はテーブルの上に、地球から持って来た物達を並べ始める。そして、配線を済ませ、電源を入れる。画面が光り出し、見慣れた画面が映りだす。それを見たマルガは驚きの表情をする。
「ご…ご主人様…こ…これは何なんですか!?」
その表情と言ったら…マルガは驚いている顔も可愛いね!
「これはね…パソコンと、プリンターだ。俺が生まれた世界、この世界とは別に存在する異世界…地球って所の代物だ」
「パソコン?異世界?地球!?」
マルガは訳が解らなくなって、完全に目が泳いでしまっている。
俺はマルガに、全ての事を話した。地球の事、この世界に飛ばされた事、マルガと逢う前の事、そして種族の事も…。
俺はマルガに永遠の奴隷の誓をさせる時も何も言わなかった。何故ならば、言う必要はないと思ったのだ。何があろうとも、マルガを永遠に俺だけの物に、永遠に俺の奴隷にしたかった。
マルガはそれに答え俺に全てを捧げ永遠に奴隷になると誓った。
それが全てなのだ。他にどんな理由があろうとも関係ない。それに…
「マルガは話を聞いて、俺の奴隷になった事を後悔してる?」
俺がそう言うと、フルフルと首を横に振って
「いえ!私はご主人様にどのような理由や事情があろうとも、私はご主人様の奴隷です」
予想通り迷う事無くそう言って微笑むマルガ。何故かマルガならこう言ってくれると思っていた。
マルガを抱き寄せキスをして頭を優しく撫でると、赤くなって微笑み尻尾をブンブン横に振っている。
うん、マルガはやっぱり可愛い!
そんな事をしみじみ考えていると、マルガはパソコンを覗き込んで
「所で…ご主人様話しの続きなんですが…」
パソコンと俺を交互に見ながら、ウズウズしているマルガ。パソコンに興味津津らしい。
「ああ!ごめんね。これはね、色々なことの出来る魔法の箱って感じかな?」
俺はマルガに説明を始める。
アノ変なゲームの設定でこっちに持ってこれたものが何点かある。このパソコンとプリンターもその中の一つだ。
ただ、違う所は、こっちに持って来た物は全て魔法の掛かったマジックアイテムに変化しているのだ。
パソコンに関しては、理屈や理由は解らないが、地球と繋がっていて、普通にインターネットに接続ができる。パソコンに詳しく無いので分からない所が多いが、使えるので良しとしている。しかも、電池が減らない。つまり、電源がいらない。プリンターも同じだ。プリンターに入っている紙やインクが減らない。勝手に満タンに戻るのだ。
これによって、俺はこっちの世界にいながら、パソコンを通じてだが地球と接点を持っているのである。それと、マルガは気がついていないが、パソコンの画面の文字と音声は、こっちの言葉に変換されている。どんな神変換機能だよ…とりあえずツッコんでおこう。
こんな感じで、説明するとマルガは感嘆の声を上げてパソコンを見ている。
マルガに説明も終わったことなので作業に戻る事にした。
「それでご主人様は、パソコンで何をなさっているのですか?」
マルガは俺に寄りかかりながらパソコンを覗き込む。くう…可愛いやつめ!後でいっぱい…ゲフンゲフン…
「んとね、これはこの街に着いてからの収支を表につけているんだ。こうやって記録しておくと、忘れないし、きっと役に立つ時が来るんだ。今までの行商での取引や、ダンジョンでの収入なんかも記録してある。この街に着いてから結構使ったから、忘れない内に記録しておこうと思ってね」
そう言うとマルガは何か考えて
「この街でたくさん使ったっていうのは、わ…私にですよね?…お幾ら位使ったのですか?」
そう言えば、合計で幾らだったかな?表にも打ち込みたいし…えっと…
「たしか…あのむっさい男からマルガを買うのに金貨20枚、マルガの治療費が銀貨15枚、薬代7日間分で金貨7枚、宿屋に部屋をもう一つ借りたのと、迷惑料と、シーツや布団も買取になった分で銀貨27枚…」
思い出しながら、マルガに使ったお金を言っていくと、マルガは目を丸くして慌てだした。
「ご…ご主人様すいませんでした!わ…私一杯ご奉仕致しますので…」
そう言って、足元に平伏して、足の甲に何度もキスをする。俺はマルガの脇に手を入れて立たせる。
「マルガは気にしなくてもいいよ」
そう言ってマルガの額に軽くキスをする。
「し…しかし…」
マルガは金額の大きさから責任を感じてしまったのであろう。俯いて黙ってしまった。
ま~マルガは真面目だからな…。
庶民の平均日給は銀貨2枚。年収は金貨7枚程度。税金で約5割近く持っていかれるから、金貨3枚と銀貨50枚程度が使えるお金だ。家族3人なら贅沢しなければ暮らしていける。金貨50枚でそこそこの家が建つ。マルガには既に金貨38枚弱は使っている。普通奴隷にこれだけのお金を使いはしない。なので余計に気にしているのだろう。
「きゃ…」
マルガが可愛い声を上げる。
俺は椅子に座りながらマルガを抱きかかえ、お姫様抱っこの状態で膝の上に乗せた。
「いいんだよ。そのお陰でマルガが生き残れたんだから。…そんなに気になるんなら…」
そう言ってマルガの顎を掴む
「今夜も一杯…奉仕してくれればいいよ…」
「はい…ご主人様…」
顔を赤くして微笑んで居るマルガ。
マルガに口付けをして、舌をマルガの口の中に入れる。マルガの暖かくて柔らかい舌を堪能する。
マルガもギュッと抱きしめてきて、必死に俺に舌を絡めてくる。ムクムクと俺のモノが大きくなる。
これ以上すると止まらなくなるね!此処は夜まで我慢だ!何とか強引に欲望を押さえ込こむのだ!
マルガは俺の膝の上に座ってニコニコしている。ううう…我慢できるかな…
「と…とりあえず、これからの事を考えよう。俺の今の収入源は、行商とダンジョン等の探索で得た財宝やらの売却で得た収入と、冒険者ギルドでの仕事をこなして報酬を貰っているんだ。この3つが大きな収入源なんだ」
マルガは話を聞いてコクコクと頷いている。膝の上で座りながら頷く仕草可愛ゆす!
「今から決めたい事はマルガをどうするかなんだよね。行商は一緒に出来るけど、ダンジョンに入る時や、ギルドの仕事をしている時にどうするか。…俺としてはマルガと一緒に居たいし、一人置いて行くのも心配だけど…マルガはどうしたい?」
マルガは暫し考える。そして、ギュっと抱きついてきて
「私はいつもご主人様と一緒に居たいです!」
だめだ…可愛すぎる!今夜は寝かせないからねマルガ!
とりあえず、可愛いマルガの頬にキスをして話を進める。
「じゃ~マルガも一緒にダンジョンやギルドの仕事を一緒にしよう。よく考えたらその方がいいね。ダンジョンやギルドの仕事は危険なものもあるけど、俺と一緒に居れるし、マルガも戦闘スキルを身につければ保身もしやすくなるし…って事は、冒険者ギルドがあって、ラフィアスの回廊のある、港町パージロレンツォがいいな」
「港町パージロレンツォ…ですか?」
マルガは小首をかしげて聞いてくる
「うん。マルガは知らないかもだけど、港町パージロレンツォは初心者御用達のダンジョン、ラフィアスの回廊ってのがあってね。冒険者ギルドに訓練場もあって、初心者はそこで戦闘スキルを身につける事が出来るんだ。俺も初めはそこでレベルを上げたり、スキルを身につけたりしたんだ。それに港町パージロレンツォはこのフィンラルディア王国屈指の大都市だから、色んな物も売っていたりするし、マルガも見聞が広がると思うよ」
そう説明すると、目を輝かせて
「ご主人様!私楽しみです!」
ニコニコしながら言うマルガの頭を優しく撫でてやると、尻尾をパタパタして喜んでいる。
「行き先は決まったけど、マルガの装備も整えないといけないから、売れそうな物を仕入れて港町パージロレンツォに行きたいな…」
俺はアイテムバッグから、金の入った袋を取り出す。今の所持金は…金貨11枚、銀貨34枚と銅貨56枚。普通に生活するなら3年は暮らせるお金だけど、行商の維持費や、一級奴隷になったマルガの人頭税と装備代、商品の仕入代、それと生活費…。それらを考えると、決して安心して良い額ではない。
マルガに結構使ったことを改めて確認する。ま~後悔はしてないんだけどね!
季節は春先…フム…あの村にによってから行くのがいいかも…
「よし!港町パージロレンツォに向かう前に、港町パージロレンツォの北西にある、イケンジリの村に行く事にするよ」
「直接港町パージロレンツォに行かずに寄り道されるのですか?」
「うん。前に港町パージロレンツォに言った時に同行者から聞いたんだけど、イケンジリの村は小さな村だど、春先は質の良い美味しい山菜が多く取れるみたいなんだ。その山菜は港町パージロレンツォでも人気みたいでね。イケンジリの村は港町パージロレンツォから荷馬車で2日程。鮮度の高い山菜を仕入れて、港町パージロレンツォで売ろう。しかも春先は、熊と鹿が結構狩れるみたいだから、その辺も欲しいね。マルガもイケンジリの村で、美味しい山菜や、熊と鹿の肉も食べれるよ」
そう説明すると、お口から涎が出そうなニマニマ顔で
「ご主人様~。私楽しみです~」
ウットリしながら言うマルガ。…もうあれだね…食べてるね…妄想で食べちゃってるよね…一足先に…
イケンジリの村に着いたら、一杯食べさせてあげよう。
妄想に浸っているマルガをこっちの世界に呼び戻して準備をさせる。
「じゃ~出かけよう!」
俺とマルガは行商の準備をしに市場にと向かった。
俺とマルガは市場に向かっている。
マルガはガリアス奴隷商店の番頭のラングリーから貰ったメイド服を着ている。
もともとむっさい男に三級奴隷として働かされていた時に、針仕事ばかりやらされていたのが功を成したのか、裁縫はかなりの技術を習得していた。メイド服も自分でサイズ直しをするぐらいなのだ。
紺色を基調とし、白いフリルを可愛くも上品に編み込み、膝上5㎝の膝丈のフリルスカートからは、小さなリボンのついた白いニーソタイプのストッキングが、黒いガータベルトで止められている。その足元には花の飾りのついた紺色の革靴で引き締められている。そして首元に光る、一級奴隷の証の赤い宝石のついたチョーカー。マルガ…可愛すぎるよ!
そんな可愛く上品なメイド服を完璧に着こなしている美少女マルガ。
彼女は差別されやすい亜種でワーフォックスだが、それ以上に可愛さが上回っているのだろう、道行く男共がマルガを目で追っているのが解る。むうう…なるべくマルガを一人で歩かせ無いようにしよう…
そんなモヤモヤした心の俺を、知ってか知らずか、俺の腕を組んで嬉しそうに歩いているマルガ。
「ご主人様どうかなされましたか?」
無意識にマルガを見ていたのだろう。マルガは俺の視線に気が付いたのか、俺を不思議そうに見ている
「そのメイド服よく似合ってて可愛いなって見てただけだよ」
ちょっと慌てて言うと、パアアと嬉しそうな顔をして
「ありがとうございます!ご主人様!」
マルガは顔を赤らめて微笑んでいる。
今日のマルガはどことなく上機嫌だ。メイド服を着てお出かけしているからだけではないであろう。
マルガはこの間迄奴隷の最下層、三級奴隷だったのだ。
いつも、人々に苛まれ、虐待され、薄汚れた、最低の存在…
しかし、今は一級奴隷になって、人として生きる権利を保証され、誰の目も気にしなくて良くなったのだ。
体は清潔で、甘い匂いのする石鹸の薫りを漂わせ、可愛い女の子らしいメイド服に身を包み、誰の目を気にせずに俺と歩く事が出来る。
それを証拠に軽く鼻歌を歌いながら、マルガはワーフォックス独特の毛並みの良い金色の尻尾を、楽しげに揺らしている。
俺と視線が合うと、ニコっと極上の微笑で返してくれる。
マルガのその微笑みを見ていると、さっきまでの心のモヤモヤが無くなるので不思議だ。
「所でご主人様。市場では何を買われるのですか?」
ニコニコ微笑むマルガを抱きしめたくなる。しかし、野郎どもの視線が痛いので此処は我慢…ううう…
「えっとね、まずはマルガの私物かな?下着とか寝衣とか普段着とかね。マルガに必要な物を買う。特に、旅の服装は一式揃えよう。そのメイド服じゃ行商の旅は不向きだからね」
俺の言葉を聞いて、マルガは自分のメイド服を見ている
「このメイド服じゃ…だめなんですね…」
マルガはメイド服のスカートの裾を両手でつかみ、広げてみせる。
うは!何そのラブリーな仕草!…今夜はメイド服プレイ決定…ゲフンゲフン…
「うんメイド服で旅をする人もいるけど、そういう人達は何処かの貴族やらの侍女で、きちんと護衛がいて、馬車も屋根付きで、野宿するにしても、テントを張ったりとか装備が違うんだよね。俺達はそんな事できないから、きちんと装備を整えないとダメなんだ。だから、そのメイド服は町とかで滞在している時に着たらいいよ」
そう言うと、少し残念そうにしていたが、旅には必要な事だと言ったら、解りましたと頷くマルガ。
マルガとそんな感じで暫く歩いて行き、一件の衣料商に到着する。
此処の衣料商は品物はなかなかで、価格もリーズナブルだと評判の衣料商なのだ。
衣料商の店に入ると、一人の男が俺達に近寄ってきた。
「いらっしゃいませ…お!これはこれは葵様!お久しぶりでございます」
そう言って笑顔で頭を下げる一人の男。この男はこの衣料商の店主のモリス。
以前、この店の評判を聞いて、この店で結構な数の衣料を買ったのだ。
そこから付き合いだして、行商で良い布や糸が手に入ったらこのモリスと取引したりしている間柄だ。
「久しぶりですねモリスさん。元気そうで何よりです」
笑顔で挨拶を交わし、握手する俺とモリス。そんな、モリスは隣に立っているマルガを見てニヤニヤしている
「葵様も奴隷を持つようになられましたか…しかも一級奴隷…これでもう葵様は一角の立派な商人ですな」
嬉しそうに言うモリス。
「いえいえまだまだですよ。いつも勉強させてもらってます」
気恥ずかしそうにそう言うと、うんうんと頷くモリス
「相変わらず謙虚ですな葵様は。して、今日はどのような要件で?また良い布や糸が手に入りましたか?」
「いえ、今日はこのマルガの衣料を買いに来ました」
モリスに事情を説明する。モリスは頷く。
「じゃ~まずは普段着から持って来ましょうか。ちょうど良いものが入った所なので」
そう言って奥に向かうモリス。しばらくすると沢山の衣料をかかえて帰ってきた。
その中にマルガの着ているメイド服と同じものがあった
「これって…マルガの着てる奴と同じだよね?」」
「そうでございますね。そのメイド服も当店で作られたものですから」
「なるほど、じゃ~そのメイド服のセットは替えで貰うよ。マルガは普段着をとりあえず2着選んで」
俺がそう言うと、マルガは目を輝かせて
「い…いいんですか!?私が選んでも!?」
「いいよ。好きなの選んで」
そう微笑むと、マルガは嬉しそうに服を手にとって、色々吟味している。
かなり嬉しいみたいで、マルガの金色の尻尾は激しく振られている。
女の子の買い物は時間がかかる。マルガもそれに漏れ無く、沢山の服を自分に合わせたり、比べたりと悩んでいるが、実に楽しそうであった。そして、悩みぬいて一着目を選んだ
「ご主人様!これどうですか?」
そう言って俺に見せたのは、クリーム色のフリルの付いたブラウスに、薄い朱色の膝下のスカートであった。一見地味に見えるが、美少女のマルガのライトグリーンの髪と瞳に良く似合っていた。
「うんよく似合ってるよ」
そう言うと嬉しそうにパタパタ尻尾を振っているマルガ
「もう一着はご主人様が選んで下さい」
マルガはどうやら俺に一着選んで貰いたい様だったので、選ぶ事にした。
俺が選んだのは、可愛い花柄のアクセントのある、淡いピンクのワンピースだ。可愛い少女らしさを出してくれると思ったのだ。マルガは俺の選んだワンピースを見てニコニコしていた。
「では、そちらの2着に合う靴を用意しましょう」
そう言って用意してくれるモリス。可愛い茶色の女性用の革靴と、ワンピースに合う可愛いサンダルを用意してくれた。流石モリスは服飾のプロ。センスも良い。
「で、下着と寝衣なんだけど…」
俺はモリスに耳打ちすると、フフフと笑って
「葵様も…好きですな。解りました。では旅で使う服を用意しましょう」
モリスは、店の中にある服を用意してくれた。
「此方は女性用で、丈夫な布や革を使ってまして、問題ないかと。あと外套も暖かく、防水も良いものを使っております」
品物を見てみるとモリスの言う通りなかなかの品だった。モリスの進めてくれた物に決めた。
「ああそれから、櫛と手鏡もお願いするよ」
それを聞いたマルガは更に目を輝かせた。三級奴隷だったマルガには一生持つことはかなわないと思っていたのであろう。マルガは両手を胸に組んで目をキラキラさせていた。
可愛い…お金が入ったらまた何か買ってあげよう。…頑張れ俺!…やれば出来る子なんだ!…ううう…
一応全て選び終わったので、会計をしてもらう
「では…メイド服セットが銀貨20枚、マルガさんが選んだ服が銀貨10枚、葵様が選んだ服が銀貨12枚、靴とサンダルで銀貨5枚、外套が銀貨16枚、旅用の服のセットが2セットで銀貨40枚、あと、下着と寝衣、各3着ずつで銀貨12枚、櫛が銀貨2枚、手鏡が銀貨6枚…合計で金貨1枚と銀貨23枚ですね。…葵様と私の付き合いですから…靴下を三足と、カチューシャをおまけして…金貨1枚と銀貨13枚でどうでしょうか?」
むうう…流石に普通の庶民が着るものより、結構良い品物を選んでいるとはいえ、金貨1枚と銀貨13枚か…
銀貨10枚値引きと、靴下三足とカチューシャ付きなら妥当だな。
モリスの提示に納得して、ふとマルガを見ると、ワナワナして固まっていた。
…きっと、価格に驚いたんだろうな。普通の庶民がよく着ているものなら、この四分の一の価格にもならないだろう。今日買ったのは庶民が言う所の一張羅位の品だから。その分物が良いんだけど。
俺は固まっているマルガの肩を引き寄せ、ポンポンと頭を軽く叩く。
マルガは申し訳なさそうにしていたが、優しく頭を撫でると、目を潤ませて微笑んでいた。
モリスに代金を払う。
「じゃ~服は宿屋の方に届けておいてくれる?」
「解りました。そうさせて貰います。本日も有難うございました」
俺とモリスは笑顔で挨拶をして店を出た。
「ご…ご主人様!ありがとうございました!」
そう言って、足元で平伏して、足の甲に何度もキスをするマルガ。
慌ててマルガの脇に両手を入れて立たせる。美少女のマルガに今ソレをされたら…ほら…野郎の視線が痛い…ううう…でも…ちょっと…快感!…ゲフンゲフン…
「いいんだよ。必要なものだしね。それにどの服もマルガに似合ってたよ」
マルガの頭を撫でながら言うと、マルガは目を潤ませて嬉しそうに微笑む。
こんなに喜んでくれるならこっちも嬉しいかも?…むうう…美少女にやられそう…すでにやられてる?
とりあえず次の目的を果たす事にした。
「ご主人様。次は何処に行かれるんですか?」
マルガは更に上機嫌だ。先ほどおまけして貰った、フリルのついたカチューシャを、頭につけてあげたのだ。メイド服によく似合っていて可愛い。
マルガの金色の尻尾は、ネコがいたら間違いなく飛びつかれるような、楽しげな動きで揺れている。
鼻歌の方も絶好調!フンフンフ~ン♪
そんなマルガを見てると、こっちまで幸せになる。大きな出費だったけど良かった良かった。
「今から行くのは、このラングースの街で懇意にしている、リスボン商会だ。次の目的地のイケンジリの村で売れそうな物を仕入れようと思ってね。移動が決まったら、必ず商品を仕入れるんだ。荷馬車には常に利益の上がる物を載せとかないとね。今は荷馬車は空だから」
「なるほどです。で、どんなものを仕入れられるんですか?」
「う~ん。イケジリンの村は小さな村だけど、農耕と狩猟でそこそこ活気があるって聞いてるから、農具と、鏃…後は塩かな?」
「なるほど~。一杯売れるといいですねご主人様!」
ニコニコしながら言うマルガに癒される。可愛ゆす!マルガ!
「きっと大丈夫だよ。イケンジリの村には余り行商人が行かないみたいだからね」
そう言うと、マルガが訳を聞いてきた。
イケンジリの村は港町パージロレンツォから荷馬車で2日。小さな村なので、訪れる行商人も限られている。なので村の人は、外の物が欲しければ自分で行かなければならない。しかし、いくら治安が割りと良いフィンラルディア王国であろうと、盗賊や魔物が全く居ないと言う訳ではない。現に、この世界に来て半年の俺でも、盗賊に6回、魔物は4回遭遇している。全て撃退出来たのは、俺が冒険者で戦闘スキルをもっているからだ。
イケンジリの村は小さく人も少ない。戦闘スキルを持っている人も少ないであろう。
村の守備もあるので、戦闘スキルを持つ人は行商に出れない可能性が高い。
護衛も付けずに行商に出るなど無謀を通り越して、自殺行為である。
なので村に来てくれる行商人は、彼らにとって非常にありがたい存在である。
そこに、彼らの欲しそうなものを持っていけば、有利に取引できるとマルガに説明する。
「ご主人様は色々考えているんですね!私感心しました!」
マルガの目はキラキラ光っている。…まじで?…そんな事言われると調子に乗っちゃうよ俺!
…ちなみにこれは行商の初歩だからねマルガちゃん。一緒にお勉強しようね。色々と!
そんな事を考えながら、マルガと話していると、石造りの割と大きな建物が見えてくる。
入り口には鎧を着た兵士が4人護衛している。その入口には沢山の人が出入りしていた。
「こんにちわ。リスボン商会にようこそ。今日はお取引でしょうか?」
入り口の男が話しかけてきた。リスボン商会の受付だ。
「ええ。今日は仕入れに来ました。ギルゴマさんは居ますか?」
「ギルゴマのお客様でしたか。彼は今別件で接客中です。しばらくお待ち頂ければ彼も手が空くと思います。待合室で暫くお待ちください」
受付に案内されて、リスボン商会の待合室で待つ事となった。マルガと紅茶を飲みながら待っていると、扉がノックされた。
「どうもおまたせしました。葵さんお久しぶりですね」
軽やかに俺の前に立つ男。リスボン商会のギルゴマだ。彼には幾度もお世話になっている。特に行商を始めた頃には色々教わったのだ。当然商売なので、手厳しくはやられているが、今でも頭は上がらない。
「こんにちわギルゴマさん、お久しぶりですね。相変わらずお忙しそうで。商売は順調そうですね」
「いえいえ、まだまだですよ。もっと精進しないとね」
笑顔で挨拶を交わす俺とギルゴマ。当然、その目にはマルガが入っていた。
「一級奴隷ですか…葵さんも商人としても、冒険者としても一角になられたのでしょうねー」
俺を見る目が一瞬冷たく光る。そしてにこやかに笑うギルゴマ
「ま…まあまあかな?」
一瞬ギクッとなっている俺を見てフフフと笑うギルゴマ
「そうですか、そうですか。それは何よりです。ですが、過ぎた欲は身を打ち滅ぼすと言います。酒、麻薬、博打、そして女…私はそれで身を滅ぼした人を沢山見てきました。葵さんはどうなんでしょう?」
マルガを流し目で見て、俺の方を向き微笑むギルゴマ。ギクギクとなる俺
「い…いや~。俺は大丈夫ですよ。多分…」
ぎこちなく笑う俺を見て、ニヤっと笑うギルゴマ
「そうですか。私はてっきり、御寵愛されている、その可愛い一級奴隷さんに、かなりお金を使って散財してしまったのではと、心配してしまいましたよ」
そう言ってニコッと笑うギルゴマ。
貴方は見てたんですか!その通りなんですが…何か汗が出て来たよ…
「いや~。ほんの少し?ですよ?」
「そうですか、やはり散財してしまわれましたか。貴方という人は…」
そう言って軽いため息を吐くギルゴマ。あれ?俺はほんの少しって言ったのに…ううう…見ぬかれている…
俺の困惑する顔が楽しいのかクククと笑うギルゴマ。くうう…この人怖いよ…
そんな俺とギルゴマのやり取りを見ていたマルガが、俺の横に来てギュット腕を掴み
「ご主人様は悪く有りません!沢山お金を使ったのは私のせいです…ご主人様を責めないで下さい!」
ギルゴマに向かってそう言ったマルガは、ギルゴマをウウウと唸って見ている。尻尾が少し逆立っていた。
その様子を見たギルゴマは、今日一番の面白いものを見たと言った感じに笑い出した
「アハハハ。これは失礼しましたねお嬢さん。別に葵さんを責めている訳では有りませんので、許して下さいね」
ギルゴマは、綺麗にお辞儀をして、にこやかにマルガに謝罪する。
「い…いえ…私も少し言い過ぎました…すいません」
きっと謝られるということに慣れていないのであろうマルガは、ぎこちなく微笑む。
「なるほど‥良い奴隷を買われたみたいですね。見た目だけでは無いですか…。相変わらず、物を見る目と、良いものを選択するというのは鈍っていないようですね。少し安心しました」
そう言って優しく微笑むギルゴマ。…何とか怒りはおさまったかな?そう思ってニヘラと笑うと
「…少しだけですので…。気を緩めませんように葵さん…それに、何度も言いましたが、貴方はすぐに顔に出る癖があります。そんな顔に書いてますって言う様な事では、大きな商談はまだまだ出来ませんね」
ギクギクギク!なるべく出さないようにしてるけどこの人の前では出ちゃうんだよなー
…マルガちゃん…君は何自分の顔を触っているの?大丈夫!本当に顔に書いてある訳じゃないよ!
「そ…それはギルゴマさんの前だけですよ!俺だって他ではちゃんとしてますよ?それなりに行商だって重ねてますし!」
そうだそうだ!俺がんばってるもん!やれば出来る子って、死んだじっちゃが言ってたもん!
「一級奴隷を持てる位にと言いたいのですか?ま…いいでしょう。早く葵さんも大きな商談を、私に持ちかけてくれる様になって下さい。貴方を買っている私を悲しませないで下さいね」
そう言って微笑むギルゴマ。くうう…本当ギルゴマさんは苦手だ…ううう…
ギルゴマは俺の顔を見て楽しんでいるようであった。
「今日は仕入れに来られたと言ってましたね。では小さい取引を始めましょうか」
くううう…小さいって言われた!いつか大きな取引持って来て、驚かせてやる!ううう…泣きたい…
俺は港町パージロレンツォとイケンジリの村に行く理由と、今日仕入れに来た品物を伝える。
「なるほど…確かにマルガさんが冒険者として戦闘スキルを身につければ、選択肢はグッと広がりますね。それに、確かにイケンジリの村に行く頃合いは良い時ですね。しかし、先にイケンジリに私の知り合いの行商人が向かってますね」
ぐは!先を越されたか…確かに俺も行商人から聞いた話だからなー。諦めるか…
そんな俺を見てまたフフフと笑うギルゴマ
「また顔に出てますよ!ったく…何度言えば…。ま~彼は貴方と品物はかぶりません。知り合いは、イケンジリの村に、魚の塩漬けと干物を行商に行くと言ってました。元々港町パージロレンツォに帰る途中だったみたいです。港町パージロレンツォでは魚は売れませんからね。そしてこの街よりかイケンジリの村の方が高く売れますから。帰る途中に行商と言った所でしょう」
そう言って微笑むギルゴマ。そうか…それならこっちも商売出来るな…良かった。
しかし、次の瞬間、ギルゴマはちょっと不安そうな顔をして
「ただ…彼はイケンジリの村に行って、港町パージロレンツォで取引を終えたら、また此方に戻ってくると言っていたのですが…まだ戻ってきてないんですよね。もうとっくに戻ってきても良いはずなんですがね。そこが気がかりですね。他の行商人も彼を見かけてはいないみたいなので…」
そう言って暫く考えて、俺の方をちらりと見る
「俺はきっちりと準備をして行くことにするよ。俺も冒険者の端くれなんで、自身の装備は怠らないよ。取引を終わらせてまた此処に来るよ」
俺の目を見てうんうんと頷くギルゴマ
「…商人の約束は絶対ですからね?約束を守らないと怒りますからね。…では、取引と行きましょうか。農具、鏃、塩でしたね。予算は幾らですか?」
「う~ん。金貨5枚分って所かな?どれくらいいけそう?」
「そうですね…農具は鉄製で一つ銀貨10枚、鏃は一つ銅貨50枚、塩は小麻袋で銀貨3枚と言う所ですね」
う~ん。高いような気がする…俺を見てニコニコしているギルゴマ。…ムウ…
「ちょっと高いね全体的に。塩はともかく、鉄物は高いね。それは冬の相場だよ」
「…高いと言う理由は何ですか?」
ニヤッと笑うギルゴマ。…怖いよこの人…助けてママン…
「鉄物は冬場と夏場が高い。理由は冬は寒いからみんな薪を暖炉に使いたいから、鉄を溶かす分まで回りにくいし、鉄鉱石が取れる山は雪で覆われることが多い。なので生産力が落ちる。夏は薪の心配はないけど、暑さで鉄鉱石の生産力と、鉄を打つ職人の体力が持ちにくいので生産力が落ちる。奴隷を使っても、奴隷が死ぬから、奴隷代もかかるしね。しかし今は春先。これから暑くなるまでは、生産力を落とさずに生産できるしね。塩は夏場が天気が良くて暑いから、塩田での生産力は上がるけど、冬場に比べれば、今は日も長くなったし安くなるからね」
俺がそう説明するとうんうんと頷きニコッと笑う。また試されたのかな?…ううう…
「…なるほど。では、いくら位をお望みですか?」
「農具は一つ銀貨6枚、鏃は一つ銅貨20枚、塩は小麻袋で銀貨2枚って所かな?」
それを聞いたギルゴマの目が冷たく光る
「それは安すぎですね。此方としては、農具一つ銀貨7枚、鏃は一つ銅貨30枚、塩は銀貨2枚と銅貨50枚が限界ですね。取引の量から考えてこれが限界です」
フム…春先の相場の価格になってきたね。俺が何か他に交渉の手段がないか考えていると、珍しくギルゴマから条件を提案してきた
「葵さん…もし私の条件を飲んでくれるなら、葵さんの提示した価格でお売りしますがどうでしょうか?」
「どんな条件なんです?」
「…先程も言いましたが、一足先にイケンジリの村に向かった知り合いの行商人の事です。彼の近況を確認して頂きたいのです。彼は此方に来ると言ってまだ来てません。こんな事は今までありませんでしたからね。彼は昔から私たちの商会と懇意にしている行商人でして、小さな村にも行商に回ってもらえる数少ない行商人なのですよ。彼を心待ちにしている、小さな村の人は多いはず。なので、彼の近況が知りたくてね。葵さんがイケンジリの村に行けば、きっと近況が解ると思うのです。近況が解れば人伝いか、手紙で私に知らせてくれれば結構です。どうですか?」
なるほど、どうせイケンジリの村に行くのだから、その行商人の近況は解るだろう。行く人の少ない村だけに頼める人も少ないって訳か…
「解りました。イケンジリの村で彼の近況を聞いて、港町パージロレンツォに着いたらすぐに、此方に手紙を出しましょう。近況が解らなくても出すようにします。これでいいですか?」
「ええ、それで結構です。只の杞憂なら良いのですがね。では、葵さんの提示した価格で取引をしましょう。割り振りはどうしますか?」
「えっと…農具が金貨1枚分、鏃が金貨2枚分、塩が金貨2枚分でお願いします。明日の昼過ぎにこの町を出発しますので、午前中に商品を取りに来ます」
「解りました。ではその様に準備しておきましょう。私は明日の午前中は忙しいので、他の者が対応します。…葵さん、貴方も先ほどの約束を守って下さいね?」
そう言ってギルゴマは少し真剣な目をする。ギルゴマの気持ちが心地よい
「ええ解ってますよ。ギルゴマさんとの約束は守りますよ。俺も十分に準備して行きますので」
そう言って笑うと、顔を緩ませるギルゴマ。俺達は挨拶を済ませ、商会を後にするのであった。
時刻は昼過ぎ、俺とマルガは小腹が空いて来たので、露天で蜂蜜を塗ったパンと果実ジュースを買い、広場で食べながら休憩していた。
「先程のギルゴマさんは、何か怖い人でしたね」
マルガは口に蜂蜜をつけながら、蜂蜜パンを美味しそうにかぶりついている。
口に付いている蜂蜜を舐めて上げたい…むうう…蜂蜜プレイか…それも中々…ゲフンゲフン…
「まあ、やり手の商人さんだからね。俺も彼には頭が上がらないよ。今も商売の事を良く教えてもらってるからね。でも、基本優しい人だよ」
そう言ってマルガの頬についている蜂蜜をペロっと舌で舐めとると、顔を赤くして、俺に顔を近づけるマルガ。その口はわずかに開いて居る。これはキスをおねだりする時に顔だ。
まって…マルガちゃん!此処はちょっと人が多いからキスは流石に…ちょっと調子に乗りすぎたかな…
「後で一杯マルガの舌を堪能させてもらうから、今は我慢してね」
そう言って頬に軽くキスをすると、赤くなった顔をコクコクと頷かせているマルガ。尻尾が嬉しそうに揺れている。むうう…可愛い…俺が我慢出来ないかも…何処かの路地裏で、マルガを後ろから犯して…ゲフンゲフン…そのプレイも次回にしよう…
何とか欲望を抑えこみ、先ほどのギルゴマとの話を思い出していた。
先にイケンジリの村に向かった行商人はまだ戻ってきていない。その行商人はギルゴマの話通りの人物なら、何かあった可能性が高い。準備は入念にしていった方がいいか…
色々と準備する事を考えてふと気になった事を思い出した。
俺は、美味しそうに蜂蜜パンと、果実ジュースを食べているマルガに
「ねえマルガ。マルガのネームプレート見せて」
マルガはハイと返事するとネームプレートを俺に差し出す。良く考えたら、まだ詳しくマルガのネームプレートの中身を見ていなかった。これからの準備にも関わってくるので、しっかりと把握しておく事にしたのだ。
「ネームプレートオープン」
そうするとネームプレートは開かれていく。通常は持ち主以外は開けないのだが、主人は自分の所有している奴隷の情報を見る事が出来る。奴隷側からは主人の情報を見る事は出来無いが。
俺はマルガのネームプレートじっくりと見ていく。…どれどれ…
『名前』 マルガ
『LV』 LV1
『種族』 ワーフォックスハーフ
『年齢』 13歳
『性別』 女
『身体』 身長 130㎝ 体重 30㎏ B67/W43/H63
『戦闘職業』 無し
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 無し
『その他1』 身分 一級奴隷 所有者 葵あおい 空そら 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放
フムフム…やっぱりレベルも1で、戦闘職業も無しか…取得スキルはどんな感じかな…俺は取得スキルの星印を選んで、項目を開く。
『現取得スキル 合計3』
『アクティブスキル 計1』 裁縫LV25、
『パッシブスキル 計1』 ワーフォックスの加護(身体能力向上、高嗅覚、高聴力)
『レアスキル 計1』 動物の心
取得スキルは合計3つか…裁縫のレベル高いな!流石はずっとやらされていた事だけはあるね。
ワーフォックスの加護…ワーフォックスの種族である能力を指しているっぽいね。身体能力向上、高嗅覚、高聴力か…
しかし驚いたな…まさかマルガがレアスキル持ちだったとは…
レアスキルと言うのは、別名ギフトとも呼ばれていて、生まれ持った才能、天からの授かりものと言われるスキルである。種類は様々だが、非常に強力で、有力な力を秘めたスキルが多いらしい。レアスキル持ちはその力の強さから、国やら貴族、その他から重要視され、引く手数多といった感じだ。
マルガの元の持ち主のあのむっさい男は、きっと俺と同じようにそんな物を持っていないと決めつけていたのであろう。知っていればもっと高く売った事だろう。ある意味金貨20枚で買えたのは幸運か?
俺は霊視で人の能力をネームプレート以上に見ることが出来るから、沢山見てきたけど、レアスキル持ちを見たのはマルガが初めてだ。それほどレアスキル持ちは少ないと言う事だ。
「マルガは、動物と話す事が出来るのかな?」
俺の問に、首をフルフルと横に振る。
「喋れないんですけど、意志を疎通してる感じでしょうか。その動物さんが何を考えているか解ります。こっちの思ってる事も伝える事が出来ます。でも、邪悪な思念を持っている魔物とか動物さんは意思の疎通をさせることは出来ません。昔、三級奴隷だった時は、ネズミさんと心を通わせて、和んでいました」
そう言って、軽く微笑むマルガ。
ネズミと心を通わすって!なんか捕まったお姫様っぽい事してたんだねマルガ。…可愛ゆす!
…しかし、今は戦闘職業には就いてないけど、フォックスの加護と動物の心は使い方によっては、戦闘でも役に立つかも知れないな。
そんな事をブツブツと言って考えていた俺に、マルガが顔を近づけてきた
「ど…どうしたのマルガ!?」
ちょっとびっくりしてマルガを見る。キスなら帰ってからいっぱいするよ?
しかし、マルガの顔はキスをして欲しい時の顔じゃなく、何かウズウズしている
「私…ご…ご主人様の…ネームプレートを見てみたいです…」
なるほど…好奇心ですね。解ります。
マルガの目線は俺の顔とネームプレートを行ったり来たりしている。尻尾も絶賛フリフリ中!
ワーフォックスの特徴なのか、マルガは好奇心旺盛だ。可愛いんだけど!
「解ったいいよ見せて上げる。ネームプレートオープン!」
そう言ってネームプレートを開くと、マルガは俺に体を密着させて、ネームプレートを覗き込む。
そんなに可愛い仕草すると、押し倒しちゃんだからね!…ゲフンゲフン…
そんなマルガと一緒に自分のネームプレートを見る。
『名前』 葵 空
『LV』 LV25
『種族』 ヴァンパイアハーフ
『年齢』 16歳
『性別』 男
『身体』 身長 168㎝ 体重 59㎏
『戦闘職業』 タッスルマークスマン(Tussle Marksman)
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 無し
『その他1』 冒険者ギルド登録済、 冒険者ランク ブロンズ、 所属チーム無し
『その他2』 商取引許可登録済、 商組合 無し、 商会 無し
『その他3』 取得財産、 一級奴隷 マルガ、 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放
俺のネームプレートを見てパアアと表情が明るくなるマルガ
「ご主人様は私と3歳違いなんですね!レベルも25ですし、登録も済ませて立派です!」
キラキラした目で俺を見るマルガ。
よせやい!照れるじゃ無いか!調子に乗っちゃうよ僕ちゃん!…ちなみに、レベル25やら、これ位の登録してる奴は、ゴロゴロいるからねマルガちゃん!…一緒に勉強しようね!手取り足取り…ムフフ…
マルガはネームプレートを見ながらまだソワソワしていた。どうやら、取得スキルも見たい様だ
あれですか?ご主人様の総てを知りたいんです!知ってるのは私だけなんです!的な、独占欲ですか?
くうう…可愛いやつめ…今夜は本当にいっぱい可愛がるの決定です!
ソワソワしているマルガをもっと見ていたかったが、可哀想なので素直に見せる
『現取得スキル 合計14』
『アクティブスキル 計7』 古武術LV24、 種族能力解放LV1、 雷操作(能力開放時のみ使用可能)、 眷属付与、 闇魔法LV1、 銃剣術LV24、 射撃技術LV24
『パッシブスキル 計4』 ヴァンパイアハーフの加護(限定不老不死、身体能力上昇、大強闇属性耐性、弱光属性)、 精密射撃、 火器の知識、 タッスルマークスマンの魂
『レアスキル 計3』 闘気術LV24、 霊視、 魅了
マルガは俺の取得スキルを見て驚いている。
「何から聞けば良いのか解らない位すごいです…スキルも知らない物ばかりですし、しかも…レアスキルを3つもお持ちなんて…私聞いた事有りません。…もし良かったら説明してくれませんか?」
マルガの尊敬の眼差しで俺を見る。
ムハッッハ!もっと見るが良い!お代官様は満足じゃ!ほれほれ、もっと近う寄れ…ア~レ~と帯びをグルグルと外して…ゲフンゲフン…
まあ、スキルに関しては良いものが有るのは解っている。だから今迄生きてこれたんだからね。
マルガがまたソワソワしているので説明する事にした
「まずアクティブスキルは、任意に発動させるタイプのスキルだね。使うと決めて初めて効力が発揮する。パッシブスキルは常時発動しているスキルだね。マルガだとワーフォックスの加護のお陰で、いつも身体能力やら、耳がよく聞こえたり、匂いがよく解ったりするだろ?そんな感じ。レベルの表示が有るのはレベルが上がると効力が強くなるタイプのスキルね。使うたびに上がって行くけど、使わないと全然上がら無いからね。パッシブスキルにある、タッスルマークスマンの魂は、俺が戦闘職業に付いている事で、パッシブスキルとして発動してるんだ。ナニナニの魂と言ったパッシブスキルを持っているのは戦闘職業に就いている者だけ。その効果は、その戦闘職業に関するスキルの効果が上昇するんだ。だから、戦闘職業に就いている人は強いって事だね。細かいスキルの内容は、港町パージロレンツォで見せてあげるよ」
そう説明するとウンウンと頷き
「楽しみにしてますご主人様!…私も強くなって、ご主人様を守りたいです!」
マルガは腕にキュっと抱きついて言う。ムハ!可愛いこと言ってくれるじゃないですか!本当に可愛いんだからマルガちゃんは!
俺はマルガを抱きしめて優しく頭を撫でる
「マルガは、俺が守るよ…。だから無茶な事はしないでね?」
その言葉を聞いたマルガの目が潤んでいる。マルガは俺の胸に顔を埋めて気持ち良さそうにしていた。
「さ!おやつも食べ終わった事だし、帰って明日の出発の準備でもしようか!」
「ハイ!ご主人様!」
マルガは元気よく笑顔でそう答えた。このままマルガと一緒に居れる事を幸せに感じていた。
宿泊している宿屋の部屋で、天に指をさす。我が生涯に一片の悔い無し~!と、世紀末っぽく言ってみた。パチパチパチとマルガが笑顔で拍手している。フフフ、今の俺に死兆星は見えないぜ!
俺はテーブルの上に、地球から持って来た物達を並べ始める。そして、配線を済ませ、電源を入れる。画面が光り出し、見慣れた画面が映りだす。それを見たマルガは驚きの表情をする。
「ご…ご主人様…こ…これは何なんですか!?」
その表情と言ったら…マルガは驚いている顔も可愛いね!
「これはね…パソコンと、プリンターだ。俺が生まれた世界、この世界とは別に存在する異世界…地球って所の代物だ」
「パソコン?異世界?地球!?」
マルガは訳が解らなくなって、完全に目が泳いでしまっている。
俺はマルガに、全ての事を話した。地球の事、この世界に飛ばされた事、マルガと逢う前の事、そして種族の事も…。
俺はマルガに永遠の奴隷の誓をさせる時も何も言わなかった。何故ならば、言う必要はないと思ったのだ。何があろうとも、マルガを永遠に俺だけの物に、永遠に俺の奴隷にしたかった。
マルガはそれに答え俺に全てを捧げ永遠に奴隷になると誓った。
それが全てなのだ。他にどんな理由があろうとも関係ない。それに…
「マルガは話を聞いて、俺の奴隷になった事を後悔してる?」
俺がそう言うと、フルフルと首を横に振って
「いえ!私はご主人様にどのような理由や事情があろうとも、私はご主人様の奴隷です」
予想通り迷う事無くそう言って微笑むマルガ。何故かマルガならこう言ってくれると思っていた。
マルガを抱き寄せキスをして頭を優しく撫でると、赤くなって微笑み尻尾をブンブン横に振っている。
うん、マルガはやっぱり可愛い!
そんな事をしみじみ考えていると、マルガはパソコンを覗き込んで
「所で…ご主人様話しの続きなんですが…」
パソコンと俺を交互に見ながら、ウズウズしているマルガ。パソコンに興味津津らしい。
「ああ!ごめんね。これはね、色々なことの出来る魔法の箱って感じかな?」
俺はマルガに説明を始める。
アノ変なゲームの設定でこっちに持ってこれたものが何点かある。このパソコンとプリンターもその中の一つだ。
ただ、違う所は、こっちに持って来た物は全て魔法の掛かったマジックアイテムに変化しているのだ。
パソコンに関しては、理屈や理由は解らないが、地球と繋がっていて、普通にインターネットに接続ができる。パソコンに詳しく無いので分からない所が多いが、使えるので良しとしている。しかも、電池が減らない。つまり、電源がいらない。プリンターも同じだ。プリンターに入っている紙やインクが減らない。勝手に満タンに戻るのだ。
これによって、俺はこっちの世界にいながら、パソコンを通じてだが地球と接点を持っているのである。それと、マルガは気がついていないが、パソコンの画面の文字と音声は、こっちの言葉に変換されている。どんな神変換機能だよ…とりあえずツッコんでおこう。
こんな感じで、説明するとマルガは感嘆の声を上げてパソコンを見ている。
マルガに説明も終わったことなので作業に戻る事にした。
「それでご主人様は、パソコンで何をなさっているのですか?」
マルガは俺に寄りかかりながらパソコンを覗き込む。くう…可愛いやつめ!後でいっぱい…ゲフンゲフン…
「んとね、これはこの街に着いてからの収支を表につけているんだ。こうやって記録しておくと、忘れないし、きっと役に立つ時が来るんだ。今までの行商での取引や、ダンジョンでの収入なんかも記録してある。この街に着いてから結構使ったから、忘れない内に記録しておこうと思ってね」
そう言うとマルガは何か考えて
「この街でたくさん使ったっていうのは、わ…私にですよね?…お幾ら位使ったのですか?」
そう言えば、合計で幾らだったかな?表にも打ち込みたいし…えっと…
「たしか…あのむっさい男からマルガを買うのに金貨20枚、マルガの治療費が銀貨15枚、薬代7日間分で金貨7枚、宿屋に部屋をもう一つ借りたのと、迷惑料と、シーツや布団も買取になった分で銀貨27枚…」
思い出しながら、マルガに使ったお金を言っていくと、マルガは目を丸くして慌てだした。
「ご…ご主人様すいませんでした!わ…私一杯ご奉仕致しますので…」
そう言って、足元に平伏して、足の甲に何度もキスをする。俺はマルガの脇に手を入れて立たせる。
「マルガは気にしなくてもいいよ」
そう言ってマルガの額に軽くキスをする。
「し…しかし…」
マルガは金額の大きさから責任を感じてしまったのであろう。俯いて黙ってしまった。
ま~マルガは真面目だからな…。
庶民の平均日給は銀貨2枚。年収は金貨7枚程度。税金で約5割近く持っていかれるから、金貨3枚と銀貨50枚程度が使えるお金だ。家族3人なら贅沢しなければ暮らしていける。金貨50枚でそこそこの家が建つ。マルガには既に金貨38枚弱は使っている。普通奴隷にこれだけのお金を使いはしない。なので余計に気にしているのだろう。
「きゃ…」
マルガが可愛い声を上げる。
俺は椅子に座りながらマルガを抱きかかえ、お姫様抱っこの状態で膝の上に乗せた。
「いいんだよ。そのお陰でマルガが生き残れたんだから。…そんなに気になるんなら…」
そう言ってマルガの顎を掴む
「今夜も一杯…奉仕してくれればいいよ…」
「はい…ご主人様…」
顔を赤くして微笑んで居るマルガ。
マルガに口付けをして、舌をマルガの口の中に入れる。マルガの暖かくて柔らかい舌を堪能する。
マルガもギュッと抱きしめてきて、必死に俺に舌を絡めてくる。ムクムクと俺のモノが大きくなる。
これ以上すると止まらなくなるね!此処は夜まで我慢だ!何とか強引に欲望を押さえ込こむのだ!
マルガは俺の膝の上に座ってニコニコしている。ううう…我慢できるかな…
「と…とりあえず、これからの事を考えよう。俺の今の収入源は、行商とダンジョン等の探索で得た財宝やらの売却で得た収入と、冒険者ギルドでの仕事をこなして報酬を貰っているんだ。この3つが大きな収入源なんだ」
マルガは話を聞いてコクコクと頷いている。膝の上で座りながら頷く仕草可愛ゆす!
「今から決めたい事はマルガをどうするかなんだよね。行商は一緒に出来るけど、ダンジョンに入る時や、ギルドの仕事をしている時にどうするか。…俺としてはマルガと一緒に居たいし、一人置いて行くのも心配だけど…マルガはどうしたい?」
マルガは暫し考える。そして、ギュっと抱きついてきて
「私はいつもご主人様と一緒に居たいです!」
だめだ…可愛すぎる!今夜は寝かせないからねマルガ!
とりあえず、可愛いマルガの頬にキスをして話を進める。
「じゃ~マルガも一緒にダンジョンやギルドの仕事を一緒にしよう。よく考えたらその方がいいね。ダンジョンやギルドの仕事は危険なものもあるけど、俺と一緒に居れるし、マルガも戦闘スキルを身につければ保身もしやすくなるし…って事は、冒険者ギルドがあって、ラフィアスの回廊のある、港町パージロレンツォがいいな」
「港町パージロレンツォ…ですか?」
マルガは小首をかしげて聞いてくる
「うん。マルガは知らないかもだけど、港町パージロレンツォは初心者御用達のダンジョン、ラフィアスの回廊ってのがあってね。冒険者ギルドに訓練場もあって、初心者はそこで戦闘スキルを身につける事が出来るんだ。俺も初めはそこでレベルを上げたり、スキルを身につけたりしたんだ。それに港町パージロレンツォはこのフィンラルディア王国屈指の大都市だから、色んな物も売っていたりするし、マルガも見聞が広がると思うよ」
そう説明すると、目を輝かせて
「ご主人様!私楽しみです!」
ニコニコしながら言うマルガの頭を優しく撫でてやると、尻尾をパタパタして喜んでいる。
「行き先は決まったけど、マルガの装備も整えないといけないから、売れそうな物を仕入れて港町パージロレンツォに行きたいな…」
俺はアイテムバッグから、金の入った袋を取り出す。今の所持金は…金貨11枚、銀貨34枚と銅貨56枚。普通に生活するなら3年は暮らせるお金だけど、行商の維持費や、一級奴隷になったマルガの人頭税と装備代、商品の仕入代、それと生活費…。それらを考えると、決して安心して良い額ではない。
マルガに結構使ったことを改めて確認する。ま~後悔はしてないんだけどね!
季節は春先…フム…あの村にによってから行くのがいいかも…
「よし!港町パージロレンツォに向かう前に、港町パージロレンツォの北西にある、イケンジリの村に行く事にするよ」
「直接港町パージロレンツォに行かずに寄り道されるのですか?」
「うん。前に港町パージロレンツォに言った時に同行者から聞いたんだけど、イケンジリの村は小さな村だど、春先は質の良い美味しい山菜が多く取れるみたいなんだ。その山菜は港町パージロレンツォでも人気みたいでね。イケンジリの村は港町パージロレンツォから荷馬車で2日程。鮮度の高い山菜を仕入れて、港町パージロレンツォで売ろう。しかも春先は、熊と鹿が結構狩れるみたいだから、その辺も欲しいね。マルガもイケンジリの村で、美味しい山菜や、熊と鹿の肉も食べれるよ」
そう説明すると、お口から涎が出そうなニマニマ顔で
「ご主人様~。私楽しみです~」
ウットリしながら言うマルガ。…もうあれだね…食べてるね…妄想で食べちゃってるよね…一足先に…
イケンジリの村に着いたら、一杯食べさせてあげよう。
妄想に浸っているマルガをこっちの世界に呼び戻して準備をさせる。
「じゃ~出かけよう!」
俺とマルガは行商の準備をしに市場にと向かった。
俺とマルガは市場に向かっている。
マルガはガリアス奴隷商店の番頭のラングリーから貰ったメイド服を着ている。
もともとむっさい男に三級奴隷として働かされていた時に、針仕事ばかりやらされていたのが功を成したのか、裁縫はかなりの技術を習得していた。メイド服も自分でサイズ直しをするぐらいなのだ。
紺色を基調とし、白いフリルを可愛くも上品に編み込み、膝上5㎝の膝丈のフリルスカートからは、小さなリボンのついた白いニーソタイプのストッキングが、黒いガータベルトで止められている。その足元には花の飾りのついた紺色の革靴で引き締められている。そして首元に光る、一級奴隷の証の赤い宝石のついたチョーカー。マルガ…可愛すぎるよ!
そんな可愛く上品なメイド服を完璧に着こなしている美少女マルガ。
彼女は差別されやすい亜種でワーフォックスだが、それ以上に可愛さが上回っているのだろう、道行く男共がマルガを目で追っているのが解る。むうう…なるべくマルガを一人で歩かせ無いようにしよう…
そんなモヤモヤした心の俺を、知ってか知らずか、俺の腕を組んで嬉しそうに歩いているマルガ。
「ご主人様どうかなされましたか?」
無意識にマルガを見ていたのだろう。マルガは俺の視線に気が付いたのか、俺を不思議そうに見ている
「そのメイド服よく似合ってて可愛いなって見てただけだよ」
ちょっと慌てて言うと、パアアと嬉しそうな顔をして
「ありがとうございます!ご主人様!」
マルガは顔を赤らめて微笑んでいる。
今日のマルガはどことなく上機嫌だ。メイド服を着てお出かけしているからだけではないであろう。
マルガはこの間迄奴隷の最下層、三級奴隷だったのだ。
いつも、人々に苛まれ、虐待され、薄汚れた、最低の存在…
しかし、今は一級奴隷になって、人として生きる権利を保証され、誰の目も気にしなくて良くなったのだ。
体は清潔で、甘い匂いのする石鹸の薫りを漂わせ、可愛い女の子らしいメイド服に身を包み、誰の目を気にせずに俺と歩く事が出来る。
それを証拠に軽く鼻歌を歌いながら、マルガはワーフォックス独特の毛並みの良い金色の尻尾を、楽しげに揺らしている。
俺と視線が合うと、ニコっと極上の微笑で返してくれる。
マルガのその微笑みを見ていると、さっきまでの心のモヤモヤが無くなるので不思議だ。
「所でご主人様。市場では何を買われるのですか?」
ニコニコ微笑むマルガを抱きしめたくなる。しかし、野郎どもの視線が痛いので此処は我慢…ううう…
「えっとね、まずはマルガの私物かな?下着とか寝衣とか普段着とかね。マルガに必要な物を買う。特に、旅の服装は一式揃えよう。そのメイド服じゃ行商の旅は不向きだからね」
俺の言葉を聞いて、マルガは自分のメイド服を見ている
「このメイド服じゃ…だめなんですね…」
マルガはメイド服のスカートの裾を両手でつかみ、広げてみせる。
うは!何そのラブリーな仕草!…今夜はメイド服プレイ決定…ゲフンゲフン…
「うんメイド服で旅をする人もいるけど、そういう人達は何処かの貴族やらの侍女で、きちんと護衛がいて、馬車も屋根付きで、野宿するにしても、テントを張ったりとか装備が違うんだよね。俺達はそんな事できないから、きちんと装備を整えないとダメなんだ。だから、そのメイド服は町とかで滞在している時に着たらいいよ」
そう言うと、少し残念そうにしていたが、旅には必要な事だと言ったら、解りましたと頷くマルガ。
マルガとそんな感じで暫く歩いて行き、一件の衣料商に到着する。
此処の衣料商は品物はなかなかで、価格もリーズナブルだと評判の衣料商なのだ。
衣料商の店に入ると、一人の男が俺達に近寄ってきた。
「いらっしゃいませ…お!これはこれは葵様!お久しぶりでございます」
そう言って笑顔で頭を下げる一人の男。この男はこの衣料商の店主のモリス。
以前、この店の評判を聞いて、この店で結構な数の衣料を買ったのだ。
そこから付き合いだして、行商で良い布や糸が手に入ったらこのモリスと取引したりしている間柄だ。
「久しぶりですねモリスさん。元気そうで何よりです」
笑顔で挨拶を交わし、握手する俺とモリス。そんな、モリスは隣に立っているマルガを見てニヤニヤしている
「葵様も奴隷を持つようになられましたか…しかも一級奴隷…これでもう葵様は一角の立派な商人ですな」
嬉しそうに言うモリス。
「いえいえまだまだですよ。いつも勉強させてもらってます」
気恥ずかしそうにそう言うと、うんうんと頷くモリス
「相変わらず謙虚ですな葵様は。して、今日はどのような要件で?また良い布や糸が手に入りましたか?」
「いえ、今日はこのマルガの衣料を買いに来ました」
モリスに事情を説明する。モリスは頷く。
「じゃ~まずは普段着から持って来ましょうか。ちょうど良いものが入った所なので」
そう言って奥に向かうモリス。しばらくすると沢山の衣料をかかえて帰ってきた。
その中にマルガの着ているメイド服と同じものがあった
「これって…マルガの着てる奴と同じだよね?」」
「そうでございますね。そのメイド服も当店で作られたものですから」
「なるほど、じゃ~そのメイド服のセットは替えで貰うよ。マルガは普段着をとりあえず2着選んで」
俺がそう言うと、マルガは目を輝かせて
「い…いいんですか!?私が選んでも!?」
「いいよ。好きなの選んで」
そう微笑むと、マルガは嬉しそうに服を手にとって、色々吟味している。
かなり嬉しいみたいで、マルガの金色の尻尾は激しく振られている。
女の子の買い物は時間がかかる。マルガもそれに漏れ無く、沢山の服を自分に合わせたり、比べたりと悩んでいるが、実に楽しそうであった。そして、悩みぬいて一着目を選んだ
「ご主人様!これどうですか?」
そう言って俺に見せたのは、クリーム色のフリルの付いたブラウスに、薄い朱色の膝下のスカートであった。一見地味に見えるが、美少女のマルガのライトグリーンの髪と瞳に良く似合っていた。
「うんよく似合ってるよ」
そう言うと嬉しそうにパタパタ尻尾を振っているマルガ
「もう一着はご主人様が選んで下さい」
マルガはどうやら俺に一着選んで貰いたい様だったので、選ぶ事にした。
俺が選んだのは、可愛い花柄のアクセントのある、淡いピンクのワンピースだ。可愛い少女らしさを出してくれると思ったのだ。マルガは俺の選んだワンピースを見てニコニコしていた。
「では、そちらの2着に合う靴を用意しましょう」
そう言って用意してくれるモリス。可愛い茶色の女性用の革靴と、ワンピースに合う可愛いサンダルを用意してくれた。流石モリスは服飾のプロ。センスも良い。
「で、下着と寝衣なんだけど…」
俺はモリスに耳打ちすると、フフフと笑って
「葵様も…好きですな。解りました。では旅で使う服を用意しましょう」
モリスは、店の中にある服を用意してくれた。
「此方は女性用で、丈夫な布や革を使ってまして、問題ないかと。あと外套も暖かく、防水も良いものを使っております」
品物を見てみるとモリスの言う通りなかなかの品だった。モリスの進めてくれた物に決めた。
「ああそれから、櫛と手鏡もお願いするよ」
それを聞いたマルガは更に目を輝かせた。三級奴隷だったマルガには一生持つことはかなわないと思っていたのであろう。マルガは両手を胸に組んで目をキラキラさせていた。
可愛い…お金が入ったらまた何か買ってあげよう。…頑張れ俺!…やれば出来る子なんだ!…ううう…
一応全て選び終わったので、会計をしてもらう
「では…メイド服セットが銀貨20枚、マルガさんが選んだ服が銀貨10枚、葵様が選んだ服が銀貨12枚、靴とサンダルで銀貨5枚、外套が銀貨16枚、旅用の服のセットが2セットで銀貨40枚、あと、下着と寝衣、各3着ずつで銀貨12枚、櫛が銀貨2枚、手鏡が銀貨6枚…合計で金貨1枚と銀貨23枚ですね。…葵様と私の付き合いですから…靴下を三足と、カチューシャをおまけして…金貨1枚と銀貨13枚でどうでしょうか?」
むうう…流石に普通の庶民が着るものより、結構良い品物を選んでいるとはいえ、金貨1枚と銀貨13枚か…
銀貨10枚値引きと、靴下三足とカチューシャ付きなら妥当だな。
モリスの提示に納得して、ふとマルガを見ると、ワナワナして固まっていた。
…きっと、価格に驚いたんだろうな。普通の庶民がよく着ているものなら、この四分の一の価格にもならないだろう。今日買ったのは庶民が言う所の一張羅位の品だから。その分物が良いんだけど。
俺は固まっているマルガの肩を引き寄せ、ポンポンと頭を軽く叩く。
マルガは申し訳なさそうにしていたが、優しく頭を撫でると、目を潤ませて微笑んでいた。
モリスに代金を払う。
「じゃ~服は宿屋の方に届けておいてくれる?」
「解りました。そうさせて貰います。本日も有難うございました」
俺とモリスは笑顔で挨拶をして店を出た。
「ご…ご主人様!ありがとうございました!」
そう言って、足元で平伏して、足の甲に何度もキスをするマルガ。
慌ててマルガの脇に両手を入れて立たせる。美少女のマルガに今ソレをされたら…ほら…野郎の視線が痛い…ううう…でも…ちょっと…快感!…ゲフンゲフン…
「いいんだよ。必要なものだしね。それにどの服もマルガに似合ってたよ」
マルガの頭を撫でながら言うと、マルガは目を潤ませて嬉しそうに微笑む。
こんなに喜んでくれるならこっちも嬉しいかも?…むうう…美少女にやられそう…すでにやられてる?
とりあえず次の目的を果たす事にした。
「ご主人様。次は何処に行かれるんですか?」
マルガは更に上機嫌だ。先ほどおまけして貰った、フリルのついたカチューシャを、頭につけてあげたのだ。メイド服によく似合っていて可愛い。
マルガの金色の尻尾は、ネコがいたら間違いなく飛びつかれるような、楽しげな動きで揺れている。
鼻歌の方も絶好調!フンフンフ~ン♪
そんなマルガを見てると、こっちまで幸せになる。大きな出費だったけど良かった良かった。
「今から行くのは、このラングースの街で懇意にしている、リスボン商会だ。次の目的地のイケンジリの村で売れそうな物を仕入れようと思ってね。移動が決まったら、必ず商品を仕入れるんだ。荷馬車には常に利益の上がる物を載せとかないとね。今は荷馬車は空だから」
「なるほどです。で、どんなものを仕入れられるんですか?」
「う~ん。イケジリンの村は小さな村だけど、農耕と狩猟でそこそこ活気があるって聞いてるから、農具と、鏃…後は塩かな?」
「なるほど~。一杯売れるといいですねご主人様!」
ニコニコしながら言うマルガに癒される。可愛ゆす!マルガ!
「きっと大丈夫だよ。イケンジリの村には余り行商人が行かないみたいだからね」
そう言うと、マルガが訳を聞いてきた。
イケンジリの村は港町パージロレンツォから荷馬車で2日。小さな村なので、訪れる行商人も限られている。なので村の人は、外の物が欲しければ自分で行かなければならない。しかし、いくら治安が割りと良いフィンラルディア王国であろうと、盗賊や魔物が全く居ないと言う訳ではない。現に、この世界に来て半年の俺でも、盗賊に6回、魔物は4回遭遇している。全て撃退出来たのは、俺が冒険者で戦闘スキルをもっているからだ。
イケンジリの村は小さく人も少ない。戦闘スキルを持っている人も少ないであろう。
村の守備もあるので、戦闘スキルを持つ人は行商に出れない可能性が高い。
護衛も付けずに行商に出るなど無謀を通り越して、自殺行為である。
なので村に来てくれる行商人は、彼らにとって非常にありがたい存在である。
そこに、彼らの欲しそうなものを持っていけば、有利に取引できるとマルガに説明する。
「ご主人様は色々考えているんですね!私感心しました!」
マルガの目はキラキラ光っている。…まじで?…そんな事言われると調子に乗っちゃうよ俺!
…ちなみにこれは行商の初歩だからねマルガちゃん。一緒にお勉強しようね。色々と!
そんな事を考えながら、マルガと話していると、石造りの割と大きな建物が見えてくる。
入り口には鎧を着た兵士が4人護衛している。その入口には沢山の人が出入りしていた。
「こんにちわ。リスボン商会にようこそ。今日はお取引でしょうか?」
入り口の男が話しかけてきた。リスボン商会の受付だ。
「ええ。今日は仕入れに来ました。ギルゴマさんは居ますか?」
「ギルゴマのお客様でしたか。彼は今別件で接客中です。しばらくお待ち頂ければ彼も手が空くと思います。待合室で暫くお待ちください」
受付に案内されて、リスボン商会の待合室で待つ事となった。マルガと紅茶を飲みながら待っていると、扉がノックされた。
「どうもおまたせしました。葵さんお久しぶりですね」
軽やかに俺の前に立つ男。リスボン商会のギルゴマだ。彼には幾度もお世話になっている。特に行商を始めた頃には色々教わったのだ。当然商売なので、手厳しくはやられているが、今でも頭は上がらない。
「こんにちわギルゴマさん、お久しぶりですね。相変わらずお忙しそうで。商売は順調そうですね」
「いえいえ、まだまだですよ。もっと精進しないとね」
笑顔で挨拶を交わす俺とギルゴマ。当然、その目にはマルガが入っていた。
「一級奴隷ですか…葵さんも商人としても、冒険者としても一角になられたのでしょうねー」
俺を見る目が一瞬冷たく光る。そしてにこやかに笑うギルゴマ
「ま…まあまあかな?」
一瞬ギクッとなっている俺を見てフフフと笑うギルゴマ
「そうですか、そうですか。それは何よりです。ですが、過ぎた欲は身を打ち滅ぼすと言います。酒、麻薬、博打、そして女…私はそれで身を滅ぼした人を沢山見てきました。葵さんはどうなんでしょう?」
マルガを流し目で見て、俺の方を向き微笑むギルゴマ。ギクギクとなる俺
「い…いや~。俺は大丈夫ですよ。多分…」
ぎこちなく笑う俺を見て、ニヤっと笑うギルゴマ
「そうですか。私はてっきり、御寵愛されている、その可愛い一級奴隷さんに、かなりお金を使って散財してしまったのではと、心配してしまいましたよ」
そう言ってニコッと笑うギルゴマ。
貴方は見てたんですか!その通りなんですが…何か汗が出て来たよ…
「いや~。ほんの少し?ですよ?」
「そうですか、やはり散財してしまわれましたか。貴方という人は…」
そう言って軽いため息を吐くギルゴマ。あれ?俺はほんの少しって言ったのに…ううう…見ぬかれている…
俺の困惑する顔が楽しいのかクククと笑うギルゴマ。くうう…この人怖いよ…
そんな俺とギルゴマのやり取りを見ていたマルガが、俺の横に来てギュット腕を掴み
「ご主人様は悪く有りません!沢山お金を使ったのは私のせいです…ご主人様を責めないで下さい!」
ギルゴマに向かってそう言ったマルガは、ギルゴマをウウウと唸って見ている。尻尾が少し逆立っていた。
その様子を見たギルゴマは、今日一番の面白いものを見たと言った感じに笑い出した
「アハハハ。これは失礼しましたねお嬢さん。別に葵さんを責めている訳では有りませんので、許して下さいね」
ギルゴマは、綺麗にお辞儀をして、にこやかにマルガに謝罪する。
「い…いえ…私も少し言い過ぎました…すいません」
きっと謝られるということに慣れていないのであろうマルガは、ぎこちなく微笑む。
「なるほど‥良い奴隷を買われたみたいですね。見た目だけでは無いですか…。相変わらず、物を見る目と、良いものを選択するというのは鈍っていないようですね。少し安心しました」
そう言って優しく微笑むギルゴマ。…何とか怒りはおさまったかな?そう思ってニヘラと笑うと
「…少しだけですので…。気を緩めませんように葵さん…それに、何度も言いましたが、貴方はすぐに顔に出る癖があります。そんな顔に書いてますって言う様な事では、大きな商談はまだまだ出来ませんね」
ギクギクギク!なるべく出さないようにしてるけどこの人の前では出ちゃうんだよなー
…マルガちゃん…君は何自分の顔を触っているの?大丈夫!本当に顔に書いてある訳じゃないよ!
「そ…それはギルゴマさんの前だけですよ!俺だって他ではちゃんとしてますよ?それなりに行商だって重ねてますし!」
そうだそうだ!俺がんばってるもん!やれば出来る子って、死んだじっちゃが言ってたもん!
「一級奴隷を持てる位にと言いたいのですか?ま…いいでしょう。早く葵さんも大きな商談を、私に持ちかけてくれる様になって下さい。貴方を買っている私を悲しませないで下さいね」
そう言って微笑むギルゴマ。くうう…本当ギルゴマさんは苦手だ…ううう…
ギルゴマは俺の顔を見て楽しんでいるようであった。
「今日は仕入れに来られたと言ってましたね。では小さい取引を始めましょうか」
くううう…小さいって言われた!いつか大きな取引持って来て、驚かせてやる!ううう…泣きたい…
俺は港町パージロレンツォとイケンジリの村に行く理由と、今日仕入れに来た品物を伝える。
「なるほど…確かにマルガさんが冒険者として戦闘スキルを身につければ、選択肢はグッと広がりますね。それに、確かにイケンジリの村に行く頃合いは良い時ですね。しかし、先にイケンジリに私の知り合いの行商人が向かってますね」
ぐは!先を越されたか…確かに俺も行商人から聞いた話だからなー。諦めるか…
そんな俺を見てまたフフフと笑うギルゴマ
「また顔に出てますよ!ったく…何度言えば…。ま~彼は貴方と品物はかぶりません。知り合いは、イケンジリの村に、魚の塩漬けと干物を行商に行くと言ってました。元々港町パージロレンツォに帰る途中だったみたいです。港町パージロレンツォでは魚は売れませんからね。そしてこの街よりかイケンジリの村の方が高く売れますから。帰る途中に行商と言った所でしょう」
そう言って微笑むギルゴマ。そうか…それならこっちも商売出来るな…良かった。
しかし、次の瞬間、ギルゴマはちょっと不安そうな顔をして
「ただ…彼はイケンジリの村に行って、港町パージロレンツォで取引を終えたら、また此方に戻ってくると言っていたのですが…まだ戻ってきてないんですよね。もうとっくに戻ってきても良いはずなんですがね。そこが気がかりですね。他の行商人も彼を見かけてはいないみたいなので…」
そう言って暫く考えて、俺の方をちらりと見る
「俺はきっちりと準備をして行くことにするよ。俺も冒険者の端くれなんで、自身の装備は怠らないよ。取引を終わらせてまた此処に来るよ」
俺の目を見てうんうんと頷くギルゴマ
「…商人の約束は絶対ですからね?約束を守らないと怒りますからね。…では、取引と行きましょうか。農具、鏃、塩でしたね。予算は幾らですか?」
「う~ん。金貨5枚分って所かな?どれくらいいけそう?」
「そうですね…農具は鉄製で一つ銀貨10枚、鏃は一つ銅貨50枚、塩は小麻袋で銀貨3枚と言う所ですね」
う~ん。高いような気がする…俺を見てニコニコしているギルゴマ。…ムウ…
「ちょっと高いね全体的に。塩はともかく、鉄物は高いね。それは冬の相場だよ」
「…高いと言う理由は何ですか?」
ニヤッと笑うギルゴマ。…怖いよこの人…助けてママン…
「鉄物は冬場と夏場が高い。理由は冬は寒いからみんな薪を暖炉に使いたいから、鉄を溶かす分まで回りにくいし、鉄鉱石が取れる山は雪で覆われることが多い。なので生産力が落ちる。夏は薪の心配はないけど、暑さで鉄鉱石の生産力と、鉄を打つ職人の体力が持ちにくいので生産力が落ちる。奴隷を使っても、奴隷が死ぬから、奴隷代もかかるしね。しかし今は春先。これから暑くなるまでは、生産力を落とさずに生産できるしね。塩は夏場が天気が良くて暑いから、塩田での生産力は上がるけど、冬場に比べれば、今は日も長くなったし安くなるからね」
俺がそう説明するとうんうんと頷きニコッと笑う。また試されたのかな?…ううう…
「…なるほど。では、いくら位をお望みですか?」
「農具は一つ銀貨6枚、鏃は一つ銅貨20枚、塩は小麻袋で銀貨2枚って所かな?」
それを聞いたギルゴマの目が冷たく光る
「それは安すぎですね。此方としては、農具一つ銀貨7枚、鏃は一つ銅貨30枚、塩は銀貨2枚と銅貨50枚が限界ですね。取引の量から考えてこれが限界です」
フム…春先の相場の価格になってきたね。俺が何か他に交渉の手段がないか考えていると、珍しくギルゴマから条件を提案してきた
「葵さん…もし私の条件を飲んでくれるなら、葵さんの提示した価格でお売りしますがどうでしょうか?」
「どんな条件なんです?」
「…先程も言いましたが、一足先にイケンジリの村に向かった知り合いの行商人の事です。彼の近況を確認して頂きたいのです。彼は此方に来ると言ってまだ来てません。こんな事は今までありませんでしたからね。彼は昔から私たちの商会と懇意にしている行商人でして、小さな村にも行商に回ってもらえる数少ない行商人なのですよ。彼を心待ちにしている、小さな村の人は多いはず。なので、彼の近況が知りたくてね。葵さんがイケンジリの村に行けば、きっと近況が解ると思うのです。近況が解れば人伝いか、手紙で私に知らせてくれれば結構です。どうですか?」
なるほど、どうせイケンジリの村に行くのだから、その行商人の近況は解るだろう。行く人の少ない村だけに頼める人も少ないって訳か…
「解りました。イケンジリの村で彼の近況を聞いて、港町パージロレンツォに着いたらすぐに、此方に手紙を出しましょう。近況が解らなくても出すようにします。これでいいですか?」
「ええ、それで結構です。只の杞憂なら良いのですがね。では、葵さんの提示した価格で取引をしましょう。割り振りはどうしますか?」
「えっと…農具が金貨1枚分、鏃が金貨2枚分、塩が金貨2枚分でお願いします。明日の昼過ぎにこの町を出発しますので、午前中に商品を取りに来ます」
「解りました。ではその様に準備しておきましょう。私は明日の午前中は忙しいので、他の者が対応します。…葵さん、貴方も先ほどの約束を守って下さいね?」
そう言ってギルゴマは少し真剣な目をする。ギルゴマの気持ちが心地よい
「ええ解ってますよ。ギルゴマさんとの約束は守りますよ。俺も十分に準備して行きますので」
そう言って笑うと、顔を緩ませるギルゴマ。俺達は挨拶を済ませ、商会を後にするのであった。
時刻は昼過ぎ、俺とマルガは小腹が空いて来たので、露天で蜂蜜を塗ったパンと果実ジュースを買い、広場で食べながら休憩していた。
「先程のギルゴマさんは、何か怖い人でしたね」
マルガは口に蜂蜜をつけながら、蜂蜜パンを美味しそうにかぶりついている。
口に付いている蜂蜜を舐めて上げたい…むうう…蜂蜜プレイか…それも中々…ゲフンゲフン…
「まあ、やり手の商人さんだからね。俺も彼には頭が上がらないよ。今も商売の事を良く教えてもらってるからね。でも、基本優しい人だよ」
そう言ってマルガの頬についている蜂蜜をペロっと舌で舐めとると、顔を赤くして、俺に顔を近づけるマルガ。その口はわずかに開いて居る。これはキスをおねだりする時に顔だ。
まって…マルガちゃん!此処はちょっと人が多いからキスは流石に…ちょっと調子に乗りすぎたかな…
「後で一杯マルガの舌を堪能させてもらうから、今は我慢してね」
そう言って頬に軽くキスをすると、赤くなった顔をコクコクと頷かせているマルガ。尻尾が嬉しそうに揺れている。むうう…可愛い…俺が我慢出来ないかも…何処かの路地裏で、マルガを後ろから犯して…ゲフンゲフン…そのプレイも次回にしよう…
何とか欲望を抑えこみ、先ほどのギルゴマとの話を思い出していた。
先にイケンジリの村に向かった行商人はまだ戻ってきていない。その行商人はギルゴマの話通りの人物なら、何かあった可能性が高い。準備は入念にしていった方がいいか…
色々と準備する事を考えてふと気になった事を思い出した。
俺は、美味しそうに蜂蜜パンと、果実ジュースを食べているマルガに
「ねえマルガ。マルガのネームプレート見せて」
マルガはハイと返事するとネームプレートを俺に差し出す。良く考えたら、まだ詳しくマルガのネームプレートの中身を見ていなかった。これからの準備にも関わってくるので、しっかりと把握しておく事にしたのだ。
「ネームプレートオープン」
そうするとネームプレートは開かれていく。通常は持ち主以外は開けないのだが、主人は自分の所有している奴隷の情報を見る事が出来る。奴隷側からは主人の情報を見る事は出来無いが。
俺はマルガのネームプレートじっくりと見ていく。…どれどれ…
『名前』 マルガ
『LV』 LV1
『種族』 ワーフォックスハーフ
『年齢』 13歳
『性別』 女
『身体』 身長 130㎝ 体重 30㎏ B67/W43/H63
『戦闘職業』 無し
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 無し
『その他1』 身分 一級奴隷 所有者 葵あおい 空そら 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放
フムフム…やっぱりレベルも1で、戦闘職業も無しか…取得スキルはどんな感じかな…俺は取得スキルの星印を選んで、項目を開く。
『現取得スキル 合計3』
『アクティブスキル 計1』 裁縫LV25、
『パッシブスキル 計1』 ワーフォックスの加護(身体能力向上、高嗅覚、高聴力)
『レアスキル 計1』 動物の心
取得スキルは合計3つか…裁縫のレベル高いな!流石はずっとやらされていた事だけはあるね。
ワーフォックスの加護…ワーフォックスの種族である能力を指しているっぽいね。身体能力向上、高嗅覚、高聴力か…
しかし驚いたな…まさかマルガがレアスキル持ちだったとは…
レアスキルと言うのは、別名ギフトとも呼ばれていて、生まれ持った才能、天からの授かりものと言われるスキルである。種類は様々だが、非常に強力で、有力な力を秘めたスキルが多いらしい。レアスキル持ちはその力の強さから、国やら貴族、その他から重要視され、引く手数多といった感じだ。
マルガの元の持ち主のあのむっさい男は、きっと俺と同じようにそんな物を持っていないと決めつけていたのであろう。知っていればもっと高く売った事だろう。ある意味金貨20枚で買えたのは幸運か?
俺は霊視で人の能力をネームプレート以上に見ることが出来るから、沢山見てきたけど、レアスキル持ちを見たのはマルガが初めてだ。それほどレアスキル持ちは少ないと言う事だ。
「マルガは、動物と話す事が出来るのかな?」
俺の問に、首をフルフルと横に振る。
「喋れないんですけど、意志を疎通してる感じでしょうか。その動物さんが何を考えているか解ります。こっちの思ってる事も伝える事が出来ます。でも、邪悪な思念を持っている魔物とか動物さんは意思の疎通をさせることは出来ません。昔、三級奴隷だった時は、ネズミさんと心を通わせて、和んでいました」
そう言って、軽く微笑むマルガ。
ネズミと心を通わすって!なんか捕まったお姫様っぽい事してたんだねマルガ。…可愛ゆす!
…しかし、今は戦闘職業には就いてないけど、フォックスの加護と動物の心は使い方によっては、戦闘でも役に立つかも知れないな。
そんな事をブツブツと言って考えていた俺に、マルガが顔を近づけてきた
「ど…どうしたのマルガ!?」
ちょっとびっくりしてマルガを見る。キスなら帰ってからいっぱいするよ?
しかし、マルガの顔はキスをして欲しい時の顔じゃなく、何かウズウズしている
「私…ご…ご主人様の…ネームプレートを見てみたいです…」
なるほど…好奇心ですね。解ります。
マルガの目線は俺の顔とネームプレートを行ったり来たりしている。尻尾も絶賛フリフリ中!
ワーフォックスの特徴なのか、マルガは好奇心旺盛だ。可愛いんだけど!
「解ったいいよ見せて上げる。ネームプレートオープン!」
そう言ってネームプレートを開くと、マルガは俺に体を密着させて、ネームプレートを覗き込む。
そんなに可愛い仕草すると、押し倒しちゃんだからね!…ゲフンゲフン…
そんなマルガと一緒に自分のネームプレートを見る。
『名前』 葵 空
『LV』 LV25
『種族』 ヴァンパイアハーフ
『年齢』 16歳
『性別』 男
『身体』 身長 168㎝ 体重 59㎏
『戦闘職業』 タッスルマークスマン(Tussle Marksman)
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 無し
『その他1』 冒険者ギルド登録済、 冒険者ランク ブロンズ、 所属チーム無し
『その他2』 商取引許可登録済、 商組合 無し、 商会 無し
『その他3』 取得財産、 一級奴隷 マルガ、 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放
俺のネームプレートを見てパアアと表情が明るくなるマルガ
「ご主人様は私と3歳違いなんですね!レベルも25ですし、登録も済ませて立派です!」
キラキラした目で俺を見るマルガ。
よせやい!照れるじゃ無いか!調子に乗っちゃうよ僕ちゃん!…ちなみに、レベル25やら、これ位の登録してる奴は、ゴロゴロいるからねマルガちゃん!…一緒に勉強しようね!手取り足取り…ムフフ…
マルガはネームプレートを見ながらまだソワソワしていた。どうやら、取得スキルも見たい様だ
あれですか?ご主人様の総てを知りたいんです!知ってるのは私だけなんです!的な、独占欲ですか?
くうう…可愛いやつめ…今夜は本当にいっぱい可愛がるの決定です!
ソワソワしているマルガをもっと見ていたかったが、可哀想なので素直に見せる
『現取得スキル 合計14』
『アクティブスキル 計7』 古武術LV24、 種族能力解放LV1、 雷操作(能力開放時のみ使用可能)、 眷属付与、 闇魔法LV1、 銃剣術LV24、 射撃技術LV24
『パッシブスキル 計4』 ヴァンパイアハーフの加護(限定不老不死、身体能力上昇、大強闇属性耐性、弱光属性)、 精密射撃、 火器の知識、 タッスルマークスマンの魂
『レアスキル 計3』 闘気術LV24、 霊視、 魅了
マルガは俺の取得スキルを見て驚いている。
「何から聞けば良いのか解らない位すごいです…スキルも知らない物ばかりですし、しかも…レアスキルを3つもお持ちなんて…私聞いた事有りません。…もし良かったら説明してくれませんか?」
マルガの尊敬の眼差しで俺を見る。
ムハッッハ!もっと見るが良い!お代官様は満足じゃ!ほれほれ、もっと近う寄れ…ア~レ~と帯びをグルグルと外して…ゲフンゲフン…
まあ、スキルに関しては良いものが有るのは解っている。だから今迄生きてこれたんだからね。
マルガがまたソワソワしているので説明する事にした
「まずアクティブスキルは、任意に発動させるタイプのスキルだね。使うと決めて初めて効力が発揮する。パッシブスキルは常時発動しているスキルだね。マルガだとワーフォックスの加護のお陰で、いつも身体能力やら、耳がよく聞こえたり、匂いがよく解ったりするだろ?そんな感じ。レベルの表示が有るのはレベルが上がると効力が強くなるタイプのスキルね。使うたびに上がって行くけど、使わないと全然上がら無いからね。パッシブスキルにある、タッスルマークスマンの魂は、俺が戦闘職業に付いている事で、パッシブスキルとして発動してるんだ。ナニナニの魂と言ったパッシブスキルを持っているのは戦闘職業に就いている者だけ。その効果は、その戦闘職業に関するスキルの効果が上昇するんだ。だから、戦闘職業に就いている人は強いって事だね。細かいスキルの内容は、港町パージロレンツォで見せてあげるよ」
そう説明するとウンウンと頷き
「楽しみにしてますご主人様!…私も強くなって、ご主人様を守りたいです!」
マルガは腕にキュっと抱きついて言う。ムハ!可愛いこと言ってくれるじゃないですか!本当に可愛いんだからマルガちゃんは!
俺はマルガを抱きしめて優しく頭を撫でる
「マルガは、俺が守るよ…。だから無茶な事はしないでね?」
その言葉を聞いたマルガの目が潤んでいる。マルガは俺の胸に顔を埋めて気持ち良さそうにしていた。
「さ!おやつも食べ終わった事だし、帰って明日の出発の準備でもしようか!」
「ハイ!ご主人様!」
マルガは元気よく笑顔でそう答えた。このままマルガと一緒に居れる事を幸せに感じていた。
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