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1章
愚者の狂想曲 19 襲来! ピンク色の髪のお嬢様
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チッチッチッチー
沢山の小鳥の囀りが、忙しそうに聞こえてきた。
その声に、目を覚ました俺は、徐々に目が覚めて来て、瞳に光が入ってくる。羊皮紙を張った窓を見ると、今日も晴天の様だ。
「スウースウー」
何時もと同じ様に、とても気持ちの良さそうな寝息を立てて眠っている、愛しい美少女。
俺の事を最優先に考え、行動してくれる、愛おしい美少女…
昨日はマルガが可愛過ぎて、少しやり過ぎた様な感じがする。何時もなら眠たさは残っていないが、今日は少し眠たく感じる。
今日は職業訓練所に行って、戦闘職業を決めないといけないし、マルガにも起きて貰おう。
優しくマルガの額にキスをすると
「う…うんん」
眠気眼を擦りながら、瞳をぱちくりさせているマルガは、俺の顔を見つけて、満面の笑みで
「ご主人様…おはようございます…」
そう言って、可愛い唇を俺に捧げる。マルガの甘く柔らかくて、暖かい舌が、ニュルっと俺の口の中に忍び込んできた。マルガの舌を十分に堪能する。マルガも同じ様に俺の舌を堪能している。
そんなマルガを堪能している俺のモノは、当然大きく膨らんでいる。それを感じているマルガの手が、俺のモノを優しく掴む。
「ご主人様…今日も御奉仕しちゃいますね」
嬉しそうにニコっと微笑んだマルガは、パクっと可愛く俺のモノを咥え、舌で味わって行く。
そんな可愛いマルガの愛撫に、一気に快感が高まる。マルガの口の中に、精液を流し込む。マルガは残っている精液を全て吸出し、俺に口を開けて見せる。マルガの可愛い口の中には、波々と俺の精液が注がれている。
それに俺が頷くと、コクコクと美味しそうに飲み込み、口を開けて、全て飲みましたの確認を求めるマルガの顎を引き寄せ、キスをする。
「マルガ…今日も気持ち良かったよ」
「ありがとうございますご主人様」
そう言って嬉しそうに微笑みながら、尻尾をフワフワ振っていた。
朝食を済ませた俺達は、町中をブラブラ散策しながら、冒険者ギルドの隣にある、職業訓練所に向かっていた。マルガは俺に腕組みしながら、嬉しそうに金色の毛並みの良い尻尾をフワフワ揺らしている。
軽く鼻歌を歌いながら、視線が合うとニコっと可愛く微笑むマルガが可愛すぎる。
そんな俺とマルガを見ていたマルコは、軽く貯め息を吐く
「…ほんと、葵兄ちゃんとマルガ姉ちゃんって、仲良いよね~」
「なになに?羨ましいの?寂しいなら…マルコ専用の、女の三級奴隷でも、買って上げようか?」
「べ…べつに、い…いいよ!オイラは!」
俺がニヤっと嗤いながら言うと、マルコは僕ちゃんな部分を抑えながら、恥ずかしそうに言い返してくる。
ククク…ういやつめ…。
そんな俺とマルコを見ながら、フフフと可笑しそうに笑っているマルガ。
「所でマルコは、どんな戦闘職業に就くか、考えた?」
「うん…一応は。色々考えてね、すっごい悩んだんだけど…オイラはスカウトになろうと思う」
「スカウトか~。何故スカウトにしようと思ったの?」
「昨日葵兄ちゃんから話を聞いてね、戦闘だけじゃなく、色んな役に立つスキルを覚えられそうだしさ」
マルコは腕組みしながら色々考えて居る様だった。
「マルガ姉ちゃんは、どうするの?」
「うん…私はご主人様が薦めてくれた、戦闘と魔法が両方使える戦闘職業にしようと思ってるよ」
「そっか~。マルガ姉ちゃんは、魔力があるからな~」
昨日から若干拗ね気味のマルコに、苦笑いしている俺とマルガ。
そんな事を喋っていると、件の職業訓練所に到着した。
冒険者ギルドの横に建てられている職業訓練所は、冒険者ギルドに比べて、比較的新しい建物だ。
敷地の大きさも、冒険者ギルドの3倍位あり、本館以外に、大勢の人が訓練出来る訓練場が、幾つか備えられている。
初めて冒険者ギルドに登録した初心者は、この訓練場で経験を積んで、ある程度LVを上げてから、ラフィアスの回廊に探索をしに行くのが、通例になっている。
俺達は職業訓練所の中に入って行き、とある受付の前まで行く。
「葵兄ちゃん。此処の受付は何なの?」
「此処は戦闘職業のスカウトの受付だよ。ここで手続きすると、スカウトの基本スキルを身につける事が出来るんだ」
俺はそう説明すると、マルコに受付の前まで行かせる。
「え…えっと、スカウトになりたいのですが!」
若干緊張気味に言うマルコに、受付の女性がフフフと笑っている。
「はい解りました。では手続き費用の銀貨10枚を頂きます」
にこやかに言う受付の女性に、俺は銀貨10枚を支払う。それを確認した受付の女性は、
「確かに頂きました。では、彼処の男性の受付に話をして下さい」
そう言って受付の女性が指をさしていた男性の前に移動する。
「此処はスカウトになる為の魔法陣だ。スカウトになりたいなら、そこの魔法陣に入るが良い」
その男性の言葉に、若干緊張気味に頷くマルコは、ゆっくりと魔法陣の中に入って行く。
それを確認した男性は、何かの魔法の詠唱を始めた。すると、魔法陣が光出し、マルコを包み込む。
マルコはその光を見つめながら、魔法陣の中に立っていると、その光はマルコの中に吸い込まれ、消えていった。
「よし!終わりだ。これでお前は、今日からスカウトだ」
その男性の言葉を聞いて、魔法陣から出るマルコ。俺とマルガはマルコの傍まで行く
「どうマルコ。スカウトになった気分は?」
俺がマルコにそう聞くと、両手の握り拳を、胸の前で開いたり閉じたりしながら、
「解る…オイラに力が備わったのが解る!今迄感じなかった力を感じるよ!」
マルコは興奮気味にそう言うその顔は、とても嬉しそうだった。
「良かったねマルコ。じゃ~ネームプレートを開いて見せてみて」
俺の言葉に、マルコはネームプレートを開く。マルガも興味津々で、マルコのネームプレートを覗きこむ。
『名前』 マルコ
『LV』 LV1
『種族』 人間族
『年齢』 11歳
『性別』 男
『身体』 身長 145㎝ 体重 40㎏
『戦闘職業』 スカウト
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 イケンジリ
『その他1』 冒険者ギルド登録済、 冒険者ランク アイアン、 所属チーム無し
『その他2』 商取引許可登録済、 商組合 無し、 商会 無し
「きちんとスカウトになっているね」
「良かったねマルコちゃん。おめでとう!」
「ありがとうマルガ姉ちゃん!」
「取得スキルも開いてみてよマルコ」
俺の言葉に、取得スキルも開く。
『現取得スキル 合計7』
『アクティブスキル 計3』 投擲術LV25、 罠解除LV1、 鍵解除LV1、
『パッシブスキル 計4』 周辺警戒LV1、 斥候術LV1、 俊敏性上昇、 スカウトの魂
「おおお!新しいスキルが6つも増えてるよ葵兄ちゃん!」
「流石はスカウトだね。戦闘型の中でも、特殊なスキルを覚えられるんだね」
「マルコちゃん凄いです~」
マルガがニコっと微笑みながら言うと、マルコは照れくさそうにモジモジしていた。
スカウトは、罠の解除は勿論の事、周辺警戒や、斥候など、素早い動きを生かした、補助も心強い戦闘職業だ。ダンジョンの探索や、旅をしている時には、そのスキルの恩恵を凄く感じると思う。
パーティーには必ず1人は欲しい職業だし、軽業の得意なマルコには合っているのかも。
俺がそんな事を思っていると、マルガとマルコは、魔法陣を興味深げに見つめていた。
「しかし、この魔法陣は凄いね!一瞬でスカウトの力を、身に付ける事が出来るんだから」
そんな事を言うマルコを見ていた男性は、ハハハと笑いながら
「凄いだろうこの魔法陣は。この魔法陣はかなり特殊な魔法で構築されていてな、スカウトを極めた人の記憶を元に作られている。なので、一度に複数のスキルを身につける事が可能なのだ。この他のスキルを身につけたい時は、スキルを持っている人に教えを請うか、別のこの様な情報記憶魔法陣を利用すれば覚えられる。此れからも、スカウトとして、頑張るが良い」
「ハイ!ありがとうございます!」
男性に微笑みながらお礼を言うマルコ。男性もウムと頷いている。
「じゃ~次はマルガの番だね。移動しようか」
「ハイ!ご主人様!」
マルコがスカウトになったのを見て、自分も戦闘職業に就く事が出来るのが嬉しいのだろう。元気良く返事するマルガの顔は、期待感で満たされている。
俺達は、マルガに戦闘職業に就かせるべく、受付に向かう。暫く歩いて行くと、目的の受付に到着した
「ご主人様。此処は何の職業の受付なのですか?」
「此処はまだ職業の受付ではないんだ。此処はね、魔力を調べる受付なんだ」
「魔力を…調べる?」
マルガは可愛い頭を傾げると、マルコと顔を見合わせていた。
この世界の魔力を持つ人は、魔法を使う事が出来る。
魔法には、火、水、土、風、光、闇の6つの属性があり、属性により力関係が存在する。
火は水に強く、水は土に強く、土は風に強く、風は火に強い。闇は、火、水、土、風に強く、光に弱い。光は、闇に強く、火、水、土、風に弱い。
火、水、土、風は、一般的に精霊四属性と呼ばれ、人間族や亜種族が使う事が出来る。
光は神族と呼ばれる神の血を引いている種族が使い、神族の洗礼と祝福受け、神に信仰を捧げる、ごく一部の人間族や亜種族も、使う事が出来る。
闇は魔族、悪魔が使う魔法で、魔族や悪魔と契約した、人間族と亜種族も使う事が出来る。非常に非人道的な物が多くあり、人間族や亜種族が主に使う精霊四属性全てに強い事と、神や神族、人間族や亜種族の敵対者である、悪魔や魔族が使う事もあって、忌み嫌われており、法律で一般人の使用の禁止がされている。
もし、許可を得ず闇魔法を習得して使う事があれば、国や教会に捕らえられ、異端者として異端審問に掛けられ、罰せられる。
「此処では、マルガがどの属性の魔力があるか調べれるんだ。そして、素質のある属性の魔法を覚える事が出来るんだよ」
俺がマルガにそう説明していると、受付の女性がウンウンと頷きながら話しかけてくる
「そちらの方の言う通りです。魔力のある人間族や亜種族の方は、精霊四属性のどれかの属性の素質があるんです。一般的に、魔法を使える人の総称は、メイジと言われますが、その中でも、精霊四属性を戦闘で使う人は、細かく分類されているんですよ」
受付の女性はマルガに説明をしてくれる。
魔力を持つ人間族や亜種族は、素質によって、使える属性が違う。1つの属性しか使えない人もいれば、4つ全て使える人もいる。メイジの中でランク付けがされているのだ。
1つの属性を使えるメイジの事を、ウヌスウァテス。2つの属性を使えるメイジの事を、デュアルソーサラー。3つの属性を使えるメイジの事を、トレスウォーロック。そして4つ全て使える人の事を、クアッドウィザードと言う。
複数の属性を使えると、違う属性同士を混合させて、強力な魔法を使う事が出来る。
しかし、複数の属性を使える者は少なく、複数の属性を使える者は、貴重な存在として重宝がられている。
「では此方の水晶に触れて下さい。そうすればどの属性に素質があるのか、解りますので」
受付の女性に促されて、マルガは水晶に手をかざす。すると、水晶が光り輝き、水色と黄緑色の2色の光が、浮かび上がってきた。その綺麗な色に、マルガは見蕩れている様であった。
「どうやらお嬢さんは、精霊四属性のうち、水属性と風属性の2つに、素質がある様ですね。水と風のデュアルソーサラーと言う事になります」
「良かったねマルガ。2つの属性が使えるみたいで」
「ありがとうございますご主人様!」
マルガは嬉しそうに微笑んでいる。マルコもマルガに良かったね!と言って微笑んでいる。
「では、あちらの魔法陣に行って下さい。水と風の属性の、魔法を覚える事が出来ますので」
女性の受付が教えてくれた魔法陣に行き、マルコ同様に水と風の魔法を習得したマルガは、テテテと走って俺の元に戻ってきた。
「ご主人様!私、水と風の魔法を、使える様になりました!」
嬉しそうに言うマルガは、ご主人様!私賢いですか?褒めてくれますか?と、顔に出る様な雰囲気で、ブンブン尻尾を振っている。俺はマルガの頭を優しく撫でて、良かったねと言うと、ハイ!と、満面の笑みを浮かべている。
「じゃ~次は戦闘職業の受付に移動しよう」
ハイ!と右手を上げて元気に返事をするマルガ。俺達は、マルガの戦闘職業の受け付けまで移動する。
そして、受付のある場所まで来て、歩みを止めると、マルガはキョトンとした顔で
「ご主人様どうしたのですか?」
「いや…此処に受付があるんだけど、魔法戦士系は大きく分けて、3種類あるんだよ」
魔法戦士…つまり、戦士型と魔法型を両方習得して、使う事の出来る戦闘職業だ。
その種類は、大きく分けて3種類あるのだ。
1つ目は、普通の戦士の様に、重装備をして、剣や盾、鎧を着て戦う、魔法戦士型。
2つ目は、格闘術を身に着けて、爪やナックルで戦う、魔法闘士型。
3つ目は、スカウトやハンターと言った、軽業を使い、魔法も使う、魔法軽業型。
それぞれ特徴があるが、マルガにどれが合うか悩んでいたのだ。
俺の話を聞いてたマルガは、ハっと何かを思いついた様に、俺に向き直る。
「ご主人様は確か、格闘術系のスキルを身につけてましたよね?」
「うん…俺の生まれた家は、代々古武術を継承してきているからね」
「でしたら、ご主人様が私に格闘術を、教えてくれるって言うのはどうですか?私は力がありませんので、思い装備はキツイでしょうし、マルコちゃんみたいに、何かの道具を使って投擲するよりも、そのままの手や足を使って戦う方が、私に合っている感じがしますし…どうでしょうか?」
確かに…マルガの敏捷性を失わず、魔法を生かすとしたら、魔法闘士型が最善かも知れない。
格闘術は、俺が教えれば良いし、マルガもワーフォックスの特徴を活かしやすいかも知れない。
俺が思案していると、どうですかご主人様?だめですか?と、少し不安げに見つめているマルガ。
そんなマルガの頭を撫で撫でしながら
「…マルガの提案通りにしよう。良く考えたらその方が良いしね」
それを聞いたマルガは、パアアと表情を明るくする。
「じゃ~受付に行こうか」
「ハイ!ご主人様!」
元気に返事をするマルガに、ニマニマしながら、目的の受け付けまで来る。
「あ…あの!マジックウォーリアーになりたいのですが!」
マルコ同様、若干緊張気味に言うマルガを見て、ククっと笑う受付の男は
「解った。では手続き費用の銀貨10枚を頂こう」
俺は銀貨10枚を支払う。それを確認した受付の男性は、
「確かに頂た。では、彼処の男性の受付に話掛けてくれ」
そう言って受付の男性が指をさしていた受付の前に移動する。
「此処はマジックウォーリアーになる為の魔法陣だ。マジックウォーリアーになりたいなら、そこの魔法陣に入るが良い」
その男性の言葉に、若干緊張気味に頷くマルガは、ゆっくりと魔法陣の中に入って行く。
それを確認した男性は、何かの魔法の詠唱を始めた。すると、魔法陣から光出し、マルガを包み込む。
マルガはその光を見つめながら、魔法陣の中に立っていると、その光はマルガの中に吸い込まれ、消えていった。
「よし!終わりだ。これでお前は、今日からマジックウォーリアーだ」
その男性の言葉を聞いて、魔法陣から出るマルガ。俺とマルコは、マルガの傍まで行く
「どう?マジックウォーリアーになった感想は?」
「…す…凄いです!私に今まで無かった力を感じます!これが…戦闘職業…マジックウォーリアー…」
そう言って、感嘆の表情を浮かべ、可愛い両手を、ニギニギしているマルガ。
そんなマルガに、おめでとう!と、マルコガ言うと、ありがとねマルコちゃん!と、ニコっと笑っている。
「じゃ~ネームプレートを開いて見せてくれる?」
「ハイ!ご主人様!」
マルガは元気に麦手を上げて返事をして、ネームプレートを開いて見せてくれる。
『名前』 マルガ
『LV』 LV1
『種族』 ワーフォックスハーフ
『年齢』 13歳
『性別』 女
『身体』 身長 130㎝ 体重 30㎏ B67/W43/H63
『戦闘職業』 マジックウォーリアー
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 無し
『その他1』 身分 一級奴隷 所有者 葵あおい 空そら 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放
『その他2』 冒険者ギルド登録済、 冒険者ランク アイアン、 所属チーム無し
『その他3』 商取引許可登録済、 商組合 無し、 商会 無し
「うんうん。きちんとマジックウォーリアーになれてるね。良かったねマルガ」
「ハイ!ありがとうございますご主人様!」
「ね~ね~。取得スキルも見せてよ~マルガ姉ちゃん!」
せがむマルコに、はいはい、と少しお姉さんぶっている、可愛いマルガは、取得スキルの項目を開く。
『現取得スキル 合計10』
『アクティブスキル 計4』 裁縫LV25、 格闘術LV 1、 水魔法LV1、 風魔法LV1、
『パッシブスキル 計5』 ワーフォックスの加護(身体能力向上、高嗅覚、高聴力) 力上昇、 俊敏性上昇、 魔力上昇、 マジックウォーリアーの魂
『レアスキル 計1』 動物の心
「すげ~。スキルいっぱいあるねマルガねえちゃん!」
「ありがとうマルコちゃん!」
ニコニコ笑い合っているマルガとマルコに癒されていると、お昼を告げる、昼刻の0の時の鐘が鳴っていた。
「とりあえず、昼食を食べて、昼からは訓練場の方で、ちょっと訓練してみようか」
「ハイ!ご主人様!」
「うん!葵兄ちゃん!楽しみだよ!」
俺達は楽しそうに、昼食を取る為に、行きつけの食堂に向かう。
そんな俺達の後ろ姿を見つめる人物が居た事を、この時はまだ知らなかった。
「…見つけた。昼から訓練場で、訓練ね~。…フフフ楽しみだわ!」
楽しそうに笑っている女性の横で、男性が少し眉をひそめていた。
昼食を食べ休憩もした俺達は、職業訓練所に戻ってきていた。
先程、戦闘職業の登録を行った本館の横の路地を通り、その奥にある訓練場に向かって歩いている。
訓練場に近づくにつれて、沢山の人々の声が聞こえてくる。その声は、この安全な町中の訓練場の中で無ければ、戦争か何かが始まったのかと勘違いしそうな、荒々しさを感じ取れる声であった。
そのまま、その声のする方に歩いて行くと、視界が開ける。それを見たマルガとマルコは、目を輝かせる。
「「わああ…」」
感嘆の声を上げるマルガとマルコ。
そこには、球場の様に広い訓練場に、何百人もの人々が、訓練している姿が目に入っていた。
それぞれが、訓練用の武器を手に取り、訓練に励んでいた。俺達もその中に入って行く。
俺とマルガとマルコが訓練場に入ると、訓練をしている男達が、マルガを眼で追っている。
ムウウ…此処は荒くれ者の多い訓練場だから、なるべくマルガを1人にしない様にしないと…
そんな俺の気持ちを全く知らないマルガは、マルコと実に楽しそうに、訓練している人達を見ている。
俺達は訓練場の隅の方に空いている場所を見つけ移動する。
「ご主人様!凄いですね!これだけの人が、この訓練場で訓練しているんですね!」
「ま~俺も初めて来た時は、マルガやマルコとと同じ様に思ったよ」
「皆ここで訓練して、ある程度までLVとスキルを上げたら、ラフィアスの回廊に行くんだね」
「だろうね。俺達もLVとスキルを上げたら、ラフィアスの回廊に入る予定だから、しっかりと訓練しようね」
そう言って微笑むと、ハイ!と元気良く返事をするマルガとマルコ
「じゃ~まずは…それぞれどの武器を、使って行くか決めよう」
「それって…得意武器を決めるって事?」
「そうだね。武器は同じ種類の物を使った方が、良いんだよ。スキルとして身につくし、スキルLVも上がって行くからね」
なるほど~と頷くマルガとマルコを微笑ましく思いながら、話を進める。
「とりあえず、マルコから行こうか。マルコは中距離の投擲スキルは結構高いから良いとして、投擲も出来て、近接戦闘も出来る武器を選んだ方が良いね」
「そうか…例えばどんな武器なの?葵兄ちゃん」
「そうだな~。細身で片手で振れる片手剣、若しくは短剣がいいね。両手持ちの武器だと、投擲する時に、隙が出来て危なそうだからね。それと左手は腕に付けるタイプの小型の盾、バックラーなら問題なく投擲も出来ると思うから良いかもね。片手剣も短剣も、剣術スキルで上手くなって行くから、好きなのを選べば良いと思うよ」
マルコは俺の言葉を聞いて、なるほどと頷き、片手剣にするか短剣にするか悩んでいる。
「じゃ~私はどんなのが良いですかご主人様!」
ハイハイハイ!と、右手を上げて、猛アピールをしてくるマルガ。余りの猛アピールに、思わずプっと笑ってしまうと、少し頬を膨らませて、拗ねマルガに変身してしまった。
「ゴメンゴメン。マルガには、格闘用の爪かナックル、格闘用のすね当てと肘当てがいいね。ナックルは打撃力が居るから、早さで切り裂くタイプの爪がいいかもだね」
マルガもなるほどと頷き、少し考えて居る様だった。
「どれにするか決まったら、彼処の受付に行けば、訓練用の武器を貸して貰えるからね」
マルガとマルコは暫く考えていたが、決まった様で、2人でテテテと受付に走って行った。
そして、受付から訓練用の武器を借りて帰って来た、マルガとマルコ。俺はそれを見てフンフンと頷く。
「マルコは…片手剣とバックラーか。マルガは爪に、すね当てと肘当てね」
マルガとマルコは嬉しそうに顔を見合わせて笑っている。そんな2人を微笑ましく思いながら
「よし!じゃ~今日は基礎を教えるからね!まずはマルコからね」
「うん!よろしく葵兄ちゃん!」
元気よく返事をするマルコに、まずは剣の振り方を教える。
「まず、上段構えから、振り下ろす練習ね。まずは剣に慣れないとダメだしね」
俺はマルコに上段構えから、剣を振り下ろすのを教えて行く。ぎこちなく構えるマルコに、丁寧に教えて行く。マルコも必死に頑張って覚えようとしている。もともと、頑張り屋だから、練習は真面目に取り組んでいる。
「じゃ~それを右手で100回、左手で100回、両手で100回やってみようか。そのが終わったら休憩をして、また同じ様にする。今日は素振りばっかりするからね」
「そうなの?あの人形みたいな奴で、練習しないの?」
「あの練習用の人形に斬りつける練習は、もう少し後だね。基礎をしっかり身に着けておかないと、変な癖がついたり、型ガ悪いと、先で伸び悩んだりするからね。基礎は大事なんだ」
俺の言葉になるほど~と頷き、素振りを始めるマルコ。
「じゃ~次はマルガね。マルガも今日は素振りだからね」
「ハイ!ご主人様!私頑張ります!」
両手につけている、練習用の格闘爪を、オーとあげて気合を入れているマルガ。そんな可愛いマルガにニマニマしながら
「じゃ~まずは、突きから練習しようか。マルガには俺の流派の古武術を教えるから、頑張ってね」
「ハイ!お願いします!ご主人様!」
マルガに突きを教えて行く。元々ワーフォックスの血を引いているだけあって、体を使うのに適していたのか、なかなか呑み込みの早いマルガに、若干驚きながら教えて行く。
「マルガも、右で100回突いたら、今度は左で100回ね。終わったら休憩して、また同じ事を繰り返してね」
ハイ!と元気良く右手を上げて返事をするマルガも、練習を始める。
「ほら!2人共!肩に力を入れたり、肩を上げてはダメ!力が逃げたり、肩を痛めたりするから、注意する様に。それから、腕だけで振ってはダメ。腰を使って、しなる様に!そうしないと、早さは出ないし、威力も上がらないからね」
ハイ!と素直に返事をするマルガとマルコは、一生懸命に練習をしている。
これだけ真面目に練習すれば、割と早くにモノになるかも知れないね。呑み込みも、俺と違って早そうだし…抜かれちゃったらどうしよう!
俺がそんな事を思いながら、暫くマルガとマルコの練習を見ていると、何者かが俺達に近づいて来た。
「ふ~ん。意外と、きっちり教えるじゃない。人は見かけによらないのね~」
若い女性の声が後ろから聞こえて来た。俺が後ろを振り返ると、少女と男性が立っていた。
その少女は、俺と同じ位の歳だと思う。腰まで伸びているピンク掛かった美しい金髪のロール髪に、少しキツメな印象の綺麗な瑠璃色の大きな瞳。マルガに引けをとらない白く柔らかそうな肌。綺麗だが、どこか可愛さも感じさせる、美しい顔立ちに、少し華奢な印象を受けるが、しっかりと女性を主張しているプロポーション。リーゼロッテより少し低い位…身長は160位であろう。
そこには、マルガやリーゼロッテに、勝るとも劣らない超美少女が、仁王立ちしていた。
俺はその超美少女に見蕩れていたのか、マルガがテテテと走って来て、俺の腕にギュっと抱きついた。
ムムムと俺を見ているマルガに、苦笑いしている俺を見て、フフっと笑うピンクの髪の美少女が
「心配しなくても、貴女のご主人様を取ったりしないわ可愛いキツネちゃん。キツネちゃんのご主人様は、私の趣味じゃないから~」
パリパリ…あれ…何かが聞こえる。ああ!俺のガラスのハートにヒビが入った音か~。わああああん!
これだけの美少女に、はっきり言われると、見た目がパッとしなと解っていても、かなりショックなんですけど!!
「えっと…貴女はどちら様ですか?お…俺達に何か用ですか?」
「用が有るから来たに決まってるでしょ!?用が無ければ、貴方みたいなパッとしない奴の所になんか、来るはず無いじゃない!」
バリバリバリ…あれ…何かの衝撃が…。ああ!俺のガラスのハートが、真っ二つに割れた衝撃か~。うわあああああん!!
この子、凄い豪速球投げてくるよ!俺じゃとても取りきれないよ!…誰か…たちけて…
俺が、ピンクの髪の美少女の言葉に項垂れていると、マルガはよしよしと頭を撫で撫でしてくれる。
ああ!可愛いマルガちゃん!オラこの子苦手だよ!たちけてマルガちゃん!
「貴女達は、なんなんですか!いきなり失礼です!私のご主人様をこれ以上侮辱するなら、私が許しません!!」
少し甲高い声で、ピンクの髪の美少女に言い放ったマルガの尻尾は、ボワボワに逆立っていた。
俺はマルガの後ろで、よしよしと頭を撫でられながら、マルガに抱かれている。
そんな俺とマルガを見て、盛大な溜め息を吐く、ピンクの髪の美少女
「…そんなパッとしない男のどこが良いのかしら…キツネちゃんは、かなりの美少女だと思うのに…キツネちゃんなら、もっと良い男が見つかりそうなのにねえ…」
「そんな事大きなお世話です!それに、貴女なんかに、ご主人様の良さは解りません!」
ああ!癒される!可愛い事を言ってくれるマルガちゃん大好きだよ!
キッと睨みつけるマルガを見て、呆れているピンクの髪の美少女
「まあいいわ~。人の趣味にとやかく言っても仕方無いしね~。それに、そんな事どうでもいいし」
どうでもいいのかYO!2つに割れた俺のガラスのハートはどうしてくれるんだよ!…ウウウ…泣きたい…
「とりあえず自己紹介してあげるわ!私はルチア。そして、後ろに居てるのが、私の共のマティアスよ」
「マティアスだ。よろしく頼む」
ピンク色の美少女の後ろから、一歩前に出る男。
身長は190を少し超えている。フード付きのローブを身に纏っているので余り見えないが、体つきはかなり良いと思う。訓練された体であると思われる。それを証拠に、立ち方に全く隙が無い。顔にはこの世界には珍しい、縁の太い大きな眼鏡をかけていて、フードをすっぽりと被っている事もあって目立たないが、切れ長のかなりの男前だと伺える偉丈夫だ。
「それで、そのルチアさんにマティアスさんは、私のご主人様に、一体何の用なのですか!」
マルガはウウウと唸りながらルチアに言うと、ニヤっと口元を上げ少し微笑むルチア
「…ここじゃ静かに話が出来無いから、場所を変えましょう。静かに話せる場所を用意してあるから」
そう言って、ルチアは俺達について来る様に言うと、さっさと歩き始めた。
俺達は困惑しながら顔を見合わせて、ルチアの後をついて行く。合同訓練場を出て、ルチア達の後をついて行くと、ドーム型の建物についた。その中に入っていくルチア達の後を追って、俺達もその建物の中に入って行く。建物の中に入ると、そこは直径40m位の、屋内型の小型の訓練場だった。
「此処は特別訓練場よ。この建物は、魔法で強化した材料で作られているから、少々の事じゃ破壊出来無い様になっているの。此処なら誰の目にも気にせずに、色んな事が出来るのよ」
ルチアがニヤっと笑ってそう言い終わると、入ってきた入り口の扉が閉まり、ガチャンと音がした。
マルコがテテテと走って扉まで行き、扉を開けようとするが、ガチャガチャと音を立てるだけで、扉は開かなかった
「この扉…開かないよ葵兄ちゃん!」
「そりゃそうでしょ、鍵を掛けたんだから、開くはず無いじゃない」
マルコを見ながら、楽しそうに言うルチア。俺とマルガは顔を見合わせて困惑していた。
「え…えっと…。俺達をこんな所に連れて来て、一体何の話をしようと言うのですか?」
俺達の困惑している顔を楽しそうに見ながらルチアは
「…聞いた話なんだけど、貴方…イケンジリの村で、モンランベール伯爵家、ラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊を全滅させた盗賊団を、一人で壊滅させたって言うのは…本当の事なのかしら?」
流し目で俺を見るルチア。
…あの話は、ここに居る俺とマルガとマルコ、イケンジリの村人、モンランベール伯爵家、バルテルミー侯爵家しか知らない話しだ。
それに、イケンジリの村が襲われた事を、もし知っている人が居たとしても、俺が盗賊団を壊滅したって事は、一部の人しか知らないはず。報復をされたら堪らないので、それぞれに俺がやったと言う事は口止めしてあるので、一般には広がっていない…。なのに何故こいつらは知っているんだ?
「…誰からその話を聞いたの?」
「誰だっていいでしょう!?私が貴方に質問しているのよ!早く答えなさいよね!」
イラっとした感じで俺を睨むルチア。
…こいつら何者なんだ?此処にはイケンジリの村人はマルコしか居ない。モンランベール伯爵家、バルテルミー侯爵家も、話がついているから、わざわざこの様に、聞いてくる事は無いだろう。
その時、俺はふと思い出した事があった。
そういえば…確か…盗賊団の頭のギルスには、他にまだ3人の仲間が居るって、メラニーさんは言っていたな。まさか…こいつらが、その言っていた残りの仲間なのか!?
俺の背中に、嫌な汗がどっと滲む。ギルスクラスの奴が…2人目の前にいるかもしれないと思ったからだ。
俺はマルガと、俺達の元に帰って来たマルコを、俺の後ろにやる。マルガとマルコは訳が解らずに、キョトンとした顔をしている。
「…それを聞いて、どうしようと言うんだ?…あんた達一体何者だ!」
俺はそう言い放って、いつでも戦闘態勢に入れる様に身構える。さっき迄のと違う、殺気立っている俺の雰囲気を感じたマルガとマルコは、顔を見合わせて戸惑っている。
「へえ…そんな顔も出来るのね…意外だわ」
殺気立っている俺を見て、きつい目をしながらも笑っているルチアは、ニヤっと口元を上げる。
「その様子を見てる限り、どうやら本当の様ね…。心配しないで。何も貴方達を殺そうなんて考えていないから。私達は、貴方の思っている様な者じゃないわ」
「じゃ、何が目的なんだ!」
「まあ…簡単に言うと、私は…貴方と手合わせをしてみたかったの。だから、此処に連れてきたのよ」
「は!?俺と手合わせ!?な…何の為に!?」
ルチアの思いもよらない言葉に、戸惑っている俺を見て、楽しそうな表情のルチアは
「興味があったのよ。あのモンランベール伯爵家、ラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊を全滅させた盗賊団を、一人で壊滅させたって言う人物が、どれほどの実力を持っているのかね。それとこの話は、バルテルミー侯爵家当主のルクレツィオ卿から聞いた話しよ。どう?これで納得したわよね?じゃ~手合わせを始めましょうか」
「ちょ…ちょっと待ってよ!確かに、俺達の敵じゃないのは解ったし、話もバルテルミー侯爵家のルクレツィオ様から聞いたってのも解ったけどさ、俺が、お前と手合わせをしないといけない理由は無いだろう?」
そんな俺の戸惑いの言葉を聞いて、盛大に貯め息を吐くルチアは、呆れながら
「貴方ほんと馬鹿なの!?まだ状況が解ってないの!?よくそんなので、行商なんてやってるわね。呆れてものが言えないわ~」
両手を軽く上げて、お手上げだわと、言った感じのルチア。
ガシャ~ン!…あれ…何か崩れ去る音が…ああ!俺のガラスのハートが、木っ端微塵になった音か~。うわああああん!
馬鹿って言う奴が、馬鹿なんだYO!馬鹿って言われたらそう言えって、死んだじっちゃが言ってたモン!…もうほんと…この子どうにかして下さい…
「貴方が、私の手合わせを受けないと、此処から出してあげないわよ?さっきも言ったけど、この特別訓練場は、魔法で強化した材料で作られているから、少々の事じゃ破壊出来ない様になっているわ。私が、鍵を開ける様に言わない限りは、貴方達は此処から出られないの。解った?」
ニヤっと微笑むルチアは、楽しそうに俺を見る。
「じゃ…俺がお前と手合わせをしたら、此処から出してくれるんだな?」
「そうね出してあげる。それに、もし、私に勝ったら、特別に凄いご褒美も用意してあるわ」
その特別な凄いご褒美と聞いて、命の危険も無くなった事を感じたマルコとマルガは、俺の両袖を引っ張りながら、
「葵兄ちゃん!凄いご褒美くれるんだって!どんなご褒美だろうね!」
「ご主人様!あんな態度の悪い女の子なんかやっつけちゃって下さい!…そして、物凄いご褒美を、頂いちゃいましょう!」
その特別な凄いご褒美が気になるマルガとマルコは、ねーねーとせがむ様に言ってくる。
そんな戸惑う俺を、クスクスと笑いながらルチアが
「どうやら、貴方の共は、了解してくれた様ね。で…貴方はどうするの?」
「…解ったよ!やればいいんでしょ!やれば!…凄いご褒美きっちり貰ってやるからな!」
「ええ!私に勝てれば、涙を流して喜ぶ様なご褒美を用意してあるから、安心しなさい~」
ルチアはニヤっと微笑みながら、アイテムバッグから、一本の槍を取り出した。
「この槍は、魔法で強化されたBクラスのマジックアイテムだけど、刃を研いでいない訓練用の槍よ。これで突かれても、怪我はしても、死ぬ事は無いわ。ま~怪我をしても、共のマティアスが、上級の治癒魔法を使う事が出来るから、たとえ瀕死になっても、全快出来るから安心して」
ルチアは取り出した槍を、楽しそうにクルクル回しながら言う。
「それはありがたいけど、俺の武器はどうしたらいいの?俺にも訓練用の武器を貸して欲しいんだけど…」
それを聞いたルチアは、フッと笑う
「…貴方の武器は、貴方の体の中にあるでしょう?召喚武器だったかしら?それを使いなさい~」
「で…でも!俺の武器の事を聞いているなら、その威力も聞いてるだろう?俺の武器は、訓練用じゃ無いよ?怪我だけじゃ済まないかもしれないよ!?」
「大丈夫よ。例え死にかけても、マティアスの治癒魔法が有れば、後遺症も残らないし、死ぬ事も無いわ。それに、そんな事、貴方が心配する事じゃないの」
ルチアはそう言うと、クルクルと槍を回して構える。
「それは、貴方が私に攻撃を当てれればって話だもの!貴方は私に攻撃を、当てる事が出来るかしら?」
ニヤっと笑うルチアに、ご主人様やっちゃって下さい!とか、葵兄ちゃんやっちゃえ!と、可愛い仲間が応援してくれている。
流石に、此処まで言われたら、やるっきゃないよね!俺のガラスのハートを砕いてくれたお仕置きをしてやる!
俺は両手に、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを召喚する。それを見たルチアは、目を細める。
「なるほど…確かに召喚武器ね…。短剣と拳銃がくっついた様な武器か…初めて見るわね。貴方そんな高価な武器、何処で手に入れたの?」
ルチアの問に、俺の秘密を知られる訳には行かないので、適当な理由を述べる。
「こ…これは…俺の家に代々伝わって来たのを、引き継いだだけだよ!」
「家?貴方の家は、そんな高価な武器を持っている様な、高貴な家なの?」
「い…色々あるんだよ!俺にも!」
「ま…いいわ!興味ないし~」
興味が無いなら聞くなYO!!!
ほんとこの子と話してると、俺のガラスのハートが、いくつ有っても足りないよ!
ま~かと言って、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを全力で使ったら、大きな風穴開けちゃって、回復云々より即死しちゃうから…威力を絶対に死なない、ゴム弾位まで威力を落とそう。
この召喚武器、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーは、精神や魔力を、魔法弾に変換して弾を発射する。精神や魔力が続く限り弾を出す事が可能で、魔法弾の威力も、俺の意志で自由に変えられる。戦車の装甲を貫く様な威力にも、暴徒鎮圧用の、殺傷力の無いゴム弾位に落とす事も可能なのだ。
「所で貴方…LVは幾つなの?」
「…俺のLVは25だよ」
「LV25!?…良くそんなLVで、盗賊団を殲滅出来たわね。ま~それを補う何かがあるんだろうけどさ。…ちなみに、私はLV15よ。そんなに変わらないわね」
「LV15!?…よくそれで、自信満々に、俺と手合わせしたいとか、言ったものだよ」
呆れている俺を見て、あからさまにムカっと言う顔をしているルチア。
その顔を見て、ちょっとだけ胸がスっとした事は、内緒にしておこう。言ったらきっと逆上しそうだし!
俺はゆっくりと、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを構え、銃口をルチアに向ける。
「…一瞬で終わっても、文句とか言わないでね」
「…言ってくれるじゃない…」
槍をクルリと回し、構えるルチア。その瞳は静かに俺を見据えている。
この子…綺麗な構えをしてるな…何気に隙の無い構えだし。LV15だけど、余程センスがあるのかもしれない。でもまあ…やられちゃって貰いましょう!そして、ご褒美を貰って、退散と行こう!
俺はルチアの右肩と、槍を持っている左手に標準を合わせる。
そして、静まり返っている特別訓練場に、乾いた破裂音が鳴り響く。
「ガオン!ガオン!」
けたたましい音を木霊させながら発射された魔法弾は、ルチア目掛けて高速で飛んで行く。
魔法弾を撃ち終わった俺は、勝利を確信して、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを下げようとしたその時、綺麗な音が聞こえて来た。
「キイン!キン!」
その美しい金属音は、ルチアが高速で向かって来た、魔法弾を撃ち落とした音であった。
俺は信じられなくてルチアに視線を戻すと、ルチアの体からは、淡黄色に光るオーラが発せられ、体を包み込んでいる。
「まさか…気戦術!?」
「…正解…よ!」
驚愕している俺を見て、ニヤっと笑ってそう言うと、気勢を高めるルチアは、一気に俺に間合いを詰めてきた。
「今度はこっちの番よ!でりゃああああ!」
槍を振り上げて、叩きつける様に振り下ろすルチア。
気戦術相手に、何のスキルも使わないなど無理だと判断した俺は、瞬時に闘気術を展開させる。俺の体は、薄紅色の輝くオーラで包まれてゆく。
「ゴガガガガ!!」
激しい音をさせて、地面に叩き付けられるルチアの槍。床も魔法強化されていなければ、今頃陥没していただろう。
何とか闘気術を発動させて、ルチアの槍を躱した俺であったが、ルチアは俺が槍を躱すのを予期していた様で、俺の跳躍と一緒に並走して跳躍している。
「遅いわよ!くらいなさい!でりゃあああああ!!!」
俺を間合いに捉えているルチアは、連続で突きを放って来た。俺の眼前に、5つに見える槍先が迫る。何とか4つを躱したが、残りの1つは左肩に入れられてしまった。刃先は無いといえど、気戦術で強化された突きを受けて、激しい痛みが肩に襲いかかる。
そんな俺に追撃しようとしたルチアに、俺は迎撃で右手に持っている銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを射撃する。3発放たれた魔法弾を、槍で躱し、間合いを取るルチア。
俺とルチアは離れて対峙していた。
「あらあらどうしたの?左肩なんか抑えちゃって。…一瞬で終わらせるんじゃなかったの?」
槍をクルクル回しながら、嬉しそうにニヤっと笑うルチア。マルガとマルコは、驚きの余り、口を開けたままであった。俺は左肩を抑えながら、
「…てか、LV15で気戦術なんて、使えるのかよ!…お前もっと上級者だろ!」
「私は本当にLV15よ。それなら、貴方だって、LV25で、気戦術に近いスキルを使えてるじゃない。…一緒だと思うけど?」
ニヤニヤ笑うルチアは、得意げな顔で俺に言う。
いやいやいや。俺が使えるのは、この世界に飛ばされた時に、貰った力だからだ。普通にこの世界に生活している奴で、LV15で気戦術を使える奴なんて、聞いた事が無い。いくら早くてもLV40だろ普通。
俺はルチアを霊視して見る事にした。そして、その内容を見て、驚愕する。
『LV15。此処に嘘はない。しかし…持っているスキルがおかしいだろ!?…槍術スキルLV25、気戦術LV25、火魔法LV20、風魔法LV20、土魔法LV20、水魔法LV20…LVとスキルの差が、何故こんなにあるんだ!?普通の鍛錬じゃないな此れは…しかしそれよりも…レアスキル…天賦の才能』
俺は心の中でそう呟く。
LVより、スキルが高いのは、実践でLVを上げるよりも、鍛錬ばかりして、スキルが上がってしまった結果だろう。マルコみたいに、実戦経験は無いけど、鍛錬ばかりして、スキルがLV25になってるとか、特異な例もある。きっと、この子もこのタイプだ。だがそれよりも、気になる事がある。
この子の持っているレアスキル…天賦の才能だ。
天賦の才能…その能力は読んで字の如く、どんな物事にも天賦の才能の力を発揮し、習得の早さ、応用力、到達点の高さ、全てにおいて、常人のソレを凌ぐ才能を見せるスキルである。
恐らくこの子がLV15なのに気戦術を習得して居るのは、このレアスキル、天賦の才能のお陰だろう。
簡単に言えば、この子は超天才。しかも、どんな物事にもその才能を発揮する超天才。
なるほど…この子はチートなんですね。解ります。はい。
俺が考えているのを楽しそうに見ているルチア。
「どうしたの?もう終わりなの?やっぱり、見た目通りパッとしないわね~。良いのは、キツネちゃんと、その召喚武器だけなのかしら?」
ガリガリガリ!…あれ…何か潰れる音が…ああ!俺のガラスのハートが、塵になった音か…うわあああん!
もうね、本当にお仕置きしてやる!俺のエロさを思い知れ!…もとい、怖さを思い知れ!
超回復で全快した左肩をぐるりと回す。うん。痛みも、後遺症も無いね。全く問題無し!
そんな俺を見て、少し驚いているルチア。
「…確かに私の持っている槍には刃は無いけど、気戦術で強化された突きをまともに受けたら、骨折してても良いはずなのに、何とも無い訳!?…見た目より、随分と打たれ強いのね」
「ハハハ。以前、同じ様な事を言われた事があるよ」
俺は苦笑いしながら、身構える。それを見たルチアも、クルリと槍を回して身構える。
「ちょっと本気で行くから、失神しても恨むなよ?覚悟はいいか?」
「…あら、奇遇ね。私もちょうど同じ事を、言おうとしていた所なのよ。貴方こそ覚悟はいいかしら?」
暫く睨み合う俺とルチアだが、先に動いたのはルチアだった。何かを高速で詠唱し始める。
それを見た、お供のマティアスが叫ぶ
「ル…ルチア様!その魔法は危険です!下手すれば、相手が焼け死んでしまいますよ!」
「そうならない様にするのが、マティアスの役目でしょ!それに、もう止められないわ!」
そう言うルチアの掌に、赤と黄緑の光が輝く。
「貴方も焼け死な無い様に、上手く避けなさいよ!ファイアーストーーム!!!」
俺にそう叫んだルチアの掌から、猛烈な勢いで、炎が嵐の風に乗って吹き荒れながら迫ってくる。
火と風の上級混合魔法の、ファイアーストームだ。
「うっはあ!」
思わず声が出る。俺はその炎の嵐から逃げる様に、壁際に跳躍する。俺のすぐ鼻先を炎の嵐は通りすぎて行く。そんな俺が安堵した瞬間だった。その炎の嵐のすぐ後ろから、俺目掛けて跳躍していたルチアの槍が、俺目掛けて突き出され様としていた。
『やばい…この体制じゃ…避けれない!』
一瞬やられるのを覚悟した俺であったが、背中に迫っている訓練場の壁を見て、ニヤっと笑いがこみ上げる。
「これで終わりよ!くらいなさい!でりゃああ!!!」
ルチアの気戦術で強化された槍先が俺に迫る。俺は、訓練所の壁に、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーの銃口を向け、射撃する。
「ガガガガガオン!」
けたたましい発射音と共に、複数の魔法弾が発射される。
「何処に向かって撃ってるのかしら!私はこっちよ!」
「いや!此れでいいんだよ!」
俺は射撃と同時に、体をくねらせる。すると、壁に当って跳ね返った魔法弾が、ルチア目掛けて襲いかかる
「えええ!?壁に弾が跳ね返って来るの!?」
瞬時にそれを理解する、超天才のルチアは、一瞬で槍を扇風機の様に回転させ、跳弾した魔法弾を弾いていく。そして、俺の追撃を恐れ、一瞬距離を取る。俺はその隙を見逃さなかった。
「ちょっと痛いかも知れないけど、死なないから許せよな!」
俺は銃剣2丁拳銃のグリムリッパーの銃口をルチアに向ける。俺の体を包んでいる、闘気術の薄紅色のオーラが光り輝く。
「これで終わりだ!!!迦楼羅流銃剣術、奥義、百花繚乱!!!」
俺の追撃を恐れ、距離を取った隙の出来たルチアに、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーから射撃された、何百と言う流星嵐の様な魔法弾が、何百という花が咲き乱れる様に、襲いかかる。その光景を見たルチアの顔から血の気が引いて行き、蒼白になる。
「キャアア!!」
短く可愛らしい悲鳴を上げるルチア。その直後、
「ギャイリリリリリリイイイ」
何かに何百と言う魔法弾が衝突する音が、辺りに響き渡る。衝突の衝撃で煙が発生し、視界が途切れる。
全ての魔法弾の衝突が終わり、煙が晴れて視界が回復すると、そこには、ルチアの前に立ち塞がる様に立っているマティアスが、掌を前に突き出して立っていた。
俺は瞬時にマルガとマルコの方を向く。訓練場の反対側の壁際から、俺の事を心配そうに見ている。
確か…この男の人…マルガ達と、同じ所に立っていたはず。それなのに、今はルチアの前に立ち塞がって、俺の奥義を片手で防いだの!?
…全く見えなかった…いや、気配さえも感じなかった。何者なんだろ…この人…
俺がその様な事を考えマティアスを見ていると、当のマティアスは何事も無かったかの様に、地面にへたり込んでいるルチアの方に振り返る
「ルチア様…お怪我はありませんか?」
そう言って優しくルチアに手を差し伸べるマティアス。その手を取って立ち上がるルチア
「大丈夫よ!まったく…あれだけ手を出さない様に、前もって言って置いたのに…でも…ありがとうマティアス」
「いえ…ルチア様が無事で有れば、私はそれで良いのです」
気恥ずかしそうに言うルチアを、優しく見守る様に言うマティアス。
そんなルチアとマティアスを見ていた俺の元に、マルガとマルコが走り寄って来た。
「ねえねえ!結局どうなったの?彼処からじゃ、はっきり見えなくてさ!」
「そうです~。でも、マティアスさんが、間に入ったという事は解ったので、勝負はご主人様の勝ちですか?」
マルガとマルコは、ねーねーどうなったのか教えてー!と、せがむ様に、俺の手を取って聞いてくる。
「勝負は私の負けよ!…悔しいけど、貴方の実力を認めてあげるわ!」
ルチアがフンっと言いながらも、俺の勝利宣言をしてくれた。
「って事は…凄いご褒美を貰えるって事だね!やったね!葵兄ちゃん!」
「ご主人様!おめでとうございます!凄いご褒美楽しみですね!」
マルガとマルコは、軽く飛び上がって、ハイタッチをして喜んでくれている。そんな2人の頭を優しく撫でると、ニコっと満面の微笑みを返してくれる。俺もそれを見て、思わず微笑む。
そんな俺達を見て、フンと言いながら、ルチアが俺の前に来た
「勝負は貴方が勝ったのだから、約束通り、ご褒美を上げないとね!物凄いご褒美は…此れから、貴方達がこの町にいる間、私の訓練相手に、貴方を指名してあげるわ!どう!凄いご褒美でしょう?」
ルチアはいかにも当然!と、言わんばかりのドヤ顔で仁王立ちしていた。
「へええ!?なにそれ!?」
「それだけじゃないわよ?朝、昼、夕食付きよ!しかも、その食事は、私の行きつけの、貴族や商家が多く利用する、高貴な者しか入れないレストランテと呼ばれる食堂なのよ?感謝しなさいよね!」
困惑している俺に、更にドヤ顔で言うルチア。
「訓練は、朝刻の4の時から初めて、昼刻の5の時までみっちりやるからね。でもきちんと昼食や休憩も取ってあげるから、心配しないで。余り詰めすぎるのも、体に悪いみたいだし!」
アハハハと笑って仁王立ちしている、ルチアに
「いあいあいあ!それって、俺達が、お前の訓練相手にさせられるって事なのか!?それが、凄いご褒美なのか!?」
「そうよ?他に何があるっていうの?私と一緒に訓練出来るなんて、身に余る光栄でしょ?」
さも当然の様に言い切るルチア。
いいいいいややややややああああああ!!!!!!!
嫌すぎる!ムリムリムリムリ!!無理すぎる!!
コイツと、この町に居る60日間、ずっと一緒に訓練なんかしたら、俺のガラスのハートは、顕微鏡で見ないと発見出来ない位に、粉々にされちゃうよ!…やばい…悪寒がしてきた…
そんなクラクラしている俺の傍で、マルコが
「それが、ご褒美なの~?何か期待して損しちゃったな~」
つまらなさそうに言うマルコに、眉をピクっと動かすルチア
「何言ってるの?さっきも言ったけど、最高級のレストランテの料理を、毎日、朝昼夕と食べれるのよ?あのレストランテの味は、フィンラルディア王国で、5本の指に入る名店って言われているの。その味と言ったら、この私でも認めている位なんだから!しかも、おかわり自由で食べさせてあげるわよ?」
それを聞いた、約2名の耳がぴくりと動く。
「その辺の事を…もっと詳しく…」
マルコとマルガは、ルチアの話に聞き入っている。その顔は、涎が垂れそうな、幸せな顔をしていた。
「ま…オイラはいいかな?どうせ訓練する予定だったし~」
「わ…私も…マルコちゃんと一緒かな?みっちり訓練すれば、ご主人様の役にも立ちそうですし…」
何処か上の空と言った表情のマルガとマルコは、ニヘヘヘと、口を開けて惚けている。
もうあれだね…食べてるね…一足先に…豪華な料理を食べちゃってるね…美味しそうな顔しちゃって…
俺は懐柔されたマルガとマルコを見て、気が遠くなるのを感じていた。
「お…俺は、嫌だからな!お前とずっと訓練なんて!誰もがお前に靡くと思うなよ!」
何とかこの状況を打開しようと、精一杯の力で言ってみた!オラ頑張った!
それを聞いたマルガとマルコは、凄い料理が食べれなくなったのを理解し、シュンとなっている。
ウウウ…マルガとマルコにそんな顔されるのはツライけど、此処は俺のガラスのハートの存亡の危機なのだ!我慢してね!マルガにマルコ!
そんな俺の言葉を聞いた、ルチアの表情が険しくなる
「こ…この私の誘いを…断るって言うの…?」
「そうだね!誰もがお前の言う事を聞くと思ったら、大間違いなんだよ!」
そう言い放つと、かなりショックを受けたのか、二三歩後ずさりすると、少し瞳に涙を浮かべるルチア。
フン!俺のガラスのハートを砕いた罰だね!いい気味ですよ!は~スッキリした!
そんな事を思っていると、涙目のルチアは、コロンと地面に寝転んで、背中を向ける。
「もう嫌…みんな死んじゃえばいいのよ…」
そう言って、ふて寝しているルチアを見て、ダダダとマティアスがルチアに駆け寄る
「ルチア様!どうか思い直しを!とんでもない事になりますぞ!」
「…嫌よ!私の誘いを断ったんだもん…もう…扉…開けてあげない…」
少し聞き捨てのならない言葉が聞こえてきた。何か嫌な予感がする。
「ルチア様!何卒、御考え直しを!」
「嫌よ!!マティアスも私の共なら覚悟を決めなさい!…200年後に開けてあげる…生きていたらね」
それを聞いたマティアスは、何か覚悟を決めた様な表情をする。嫌な予感が増大する。
俺はマティアスの傍まで近寄る。
「マ…マティアスさん…どうしたのですか?」
「…貴方達には申し訳ないが…どうやら、あの扉は200年後にしか開かない様です…」
マティアスは苦悶の表情で俺に返答する。
「いやいや。200年後とか冗談ですよね?たかが扉を開けるだけなのに。マティアスさんが、外の護衛に開ける様に言えば、開きますよね?」
なんだろう…鼓動が早くなってきた…嫌な予感しかしない!
「…いいえ。私ではあの扉を開けてはくれません。ルチア様が命令されて初めて開かれるのです。例え、どの様な事があれど、あの扉を開ける様に命令出来るのは、ルチア様のみ!その、ルチア様が200年後と言われるのなら…200年後なのです…」
「ま…まさか…。ほ…本当…なの?」
俺の微かに呟く様な言葉に、静かに頷くマティアス。
いいいいいいやややややああああああああ!!!
俺の魂がそう叫んでいる。俺はマティアスに詰め寄るが、マティアスは、『もう無理です諦めて下さい』と、しか返答してくれない。『主人の命令は絶対なのです!』と、無駄で余計な忠誠心を遺憾なく発揮しているマティアス。だめだ!この人使えないYO!
そんな俺と、マティアスのやり取りを見ていたマルガとマルコが、事態が飲み込めたのか、俺に詰め寄ってきた。
「葵兄ちゃん!オイラ達、此処から出れないの!?200年間此処で居ないとダメなの!?200年此処に居たら、骨になっちゃうよ!」
マルコは必死に俺に訴えかける。確かに骨になるのは嫌だよね!どうしよう!
「ご主人様!私はご主人様と一緒なので問題は無いですが…200年間、蜂蜜パンを食べれなくなるのですか!?それは…寂しいです~」
瞳をウルウルさせているマルガ。いやいやマルガちゃん。生命の危機だからね?…ほんと、蜂蜜パンが大好きなんだね。
マルガとマルコが、ねーねーどうなるんですかご主人様!?と、言った感じで、縋り付いている。
ムウウ…仕方無い…此処は俺が…何とかしないと…
俺は、マルガとマルコを落ち着かせて、ルチアの傍まで近寄る。俺が近寄っているのに気が付いているはずなのに、背中を向けて、寝転がっているルチア。
「あの…ルチアさん?」
返事がない…只の屍の様だ!
いあいあ。屍ではない。不貞腐れて寝転がっている、美少女だから。
「あの…すっごく可愛くて、美しくて、清楚なルチアさん。少しこっちを向いて、話をしませんか?」
「…何よ?なんか用?」
めんどくせええええええええ!!
この子めんどくさいよママン!しかし…此処はぐっと我慢だ!皆の為に、俺が頑張らないと!
「と…兎に角、扉を開けてくれませんか?」
「嫌よ!」
プイッと再度背中を向けるルチア。
即答ですか!ムウウ…段々とコイツの事が解ってきた…
はあ…やっぱりあれしか無いよね…
「すっごく可愛くて、美しくて、清楚なルチアさん。もう少し、話をしませんか?」
「…何?まだ、なんか用?」
再度プイっと振り向くルチアの顔は、プクっと頬が膨れている。
お拗ねになられているんですね!解ります。
「いあ~。この町に居る間、ルチアさんと一緒に訓練したいな~って、思って…アハハ」
「…ほんと?」
「うんうん!すっごく可愛くて、美しくて、清楚なルチアさんと、一緒に訓練したいな~」
「ほんとにほんと?嘘ついたら、酷い事するわよ?」
此れ以上、酷い事ってなんだろう…?もう寒気しかしないよ。
「嘘じゃないよ!俺はルチアと訓練したい!一緒に訓練しようルチア!」
俺が思い切ってそう叫ぶと、それを聞いたルチアの表情がパアアと明るくなる。
「そうよね!当然よね!この美しく、可愛いく、清楚な、超美少女のルチア様と、一緒に訓練したくないやつなんか居ないわよね!解ればいいのよ!解れば!」
そう言って、ハハハハと、腰に手を当てて、ドヤ顔で高らかと笑うルチアを見て、俺は力が入らなくなって、膝から崩れ落ちた。
「じゃ~明日から、訓練を開始するからね!朝刻の3の時に、迎えに行くから。昼刻の5の時まで、みっちり私がしごいてあげる!喜びなさい!」
とても、嬉しそうな顔のルチアを見て、何だか涙が出て来た。
「ね、涙を流して喜ぶ様なご褒美だったでしょ?…嘘ついて、逃げ出したら、地の果て迄追い詰めるから」
とても怖い事を言い残して、マルガとマルコの手を引っ張って、入り口に向かうルチア。
ゴゴゴと、訓練所の扉の開かれる音がした。どうやら天の岩戸は開かれた様です。
それを見て、項垂れている俺を、優しく起こしてくれるマティアス。
ポンポンと優しく肩を叩いてくれる。
「…マティアスさんも、きっと苦労してるんでしょうね…」
「ええ…もう泣きたい位に…」
そんな会話を交わす、マティアスの視線は、はるか遠くを見つめていた。
こうして、俺達とルチアは、一緒に訓練する事になったのだった。
沢山の小鳥の囀りが、忙しそうに聞こえてきた。
その声に、目を覚ました俺は、徐々に目が覚めて来て、瞳に光が入ってくる。羊皮紙を張った窓を見ると、今日も晴天の様だ。
「スウースウー」
何時もと同じ様に、とても気持ちの良さそうな寝息を立てて眠っている、愛しい美少女。
俺の事を最優先に考え、行動してくれる、愛おしい美少女…
昨日はマルガが可愛過ぎて、少しやり過ぎた様な感じがする。何時もなら眠たさは残っていないが、今日は少し眠たく感じる。
今日は職業訓練所に行って、戦闘職業を決めないといけないし、マルガにも起きて貰おう。
優しくマルガの額にキスをすると
「う…うんん」
眠気眼を擦りながら、瞳をぱちくりさせているマルガは、俺の顔を見つけて、満面の笑みで
「ご主人様…おはようございます…」
そう言って、可愛い唇を俺に捧げる。マルガの甘く柔らかくて、暖かい舌が、ニュルっと俺の口の中に忍び込んできた。マルガの舌を十分に堪能する。マルガも同じ様に俺の舌を堪能している。
そんなマルガを堪能している俺のモノは、当然大きく膨らんでいる。それを感じているマルガの手が、俺のモノを優しく掴む。
「ご主人様…今日も御奉仕しちゃいますね」
嬉しそうにニコっと微笑んだマルガは、パクっと可愛く俺のモノを咥え、舌で味わって行く。
そんな可愛いマルガの愛撫に、一気に快感が高まる。マルガの口の中に、精液を流し込む。マルガは残っている精液を全て吸出し、俺に口を開けて見せる。マルガの可愛い口の中には、波々と俺の精液が注がれている。
それに俺が頷くと、コクコクと美味しそうに飲み込み、口を開けて、全て飲みましたの確認を求めるマルガの顎を引き寄せ、キスをする。
「マルガ…今日も気持ち良かったよ」
「ありがとうございますご主人様」
そう言って嬉しそうに微笑みながら、尻尾をフワフワ振っていた。
朝食を済ませた俺達は、町中をブラブラ散策しながら、冒険者ギルドの隣にある、職業訓練所に向かっていた。マルガは俺に腕組みしながら、嬉しそうに金色の毛並みの良い尻尾をフワフワ揺らしている。
軽く鼻歌を歌いながら、視線が合うとニコっと可愛く微笑むマルガが可愛すぎる。
そんな俺とマルガを見ていたマルコは、軽く貯め息を吐く
「…ほんと、葵兄ちゃんとマルガ姉ちゃんって、仲良いよね~」
「なになに?羨ましいの?寂しいなら…マルコ専用の、女の三級奴隷でも、買って上げようか?」
「べ…べつに、い…いいよ!オイラは!」
俺がニヤっと嗤いながら言うと、マルコは僕ちゃんな部分を抑えながら、恥ずかしそうに言い返してくる。
ククク…ういやつめ…。
そんな俺とマルコを見ながら、フフフと可笑しそうに笑っているマルガ。
「所でマルコは、どんな戦闘職業に就くか、考えた?」
「うん…一応は。色々考えてね、すっごい悩んだんだけど…オイラはスカウトになろうと思う」
「スカウトか~。何故スカウトにしようと思ったの?」
「昨日葵兄ちゃんから話を聞いてね、戦闘だけじゃなく、色んな役に立つスキルを覚えられそうだしさ」
マルコは腕組みしながら色々考えて居る様だった。
「マルガ姉ちゃんは、どうするの?」
「うん…私はご主人様が薦めてくれた、戦闘と魔法が両方使える戦闘職業にしようと思ってるよ」
「そっか~。マルガ姉ちゃんは、魔力があるからな~」
昨日から若干拗ね気味のマルコに、苦笑いしている俺とマルガ。
そんな事を喋っていると、件の職業訓練所に到着した。
冒険者ギルドの横に建てられている職業訓練所は、冒険者ギルドに比べて、比較的新しい建物だ。
敷地の大きさも、冒険者ギルドの3倍位あり、本館以外に、大勢の人が訓練出来る訓練場が、幾つか備えられている。
初めて冒険者ギルドに登録した初心者は、この訓練場で経験を積んで、ある程度LVを上げてから、ラフィアスの回廊に探索をしに行くのが、通例になっている。
俺達は職業訓練所の中に入って行き、とある受付の前まで行く。
「葵兄ちゃん。此処の受付は何なの?」
「此処は戦闘職業のスカウトの受付だよ。ここで手続きすると、スカウトの基本スキルを身につける事が出来るんだ」
俺はそう説明すると、マルコに受付の前まで行かせる。
「え…えっと、スカウトになりたいのですが!」
若干緊張気味に言うマルコに、受付の女性がフフフと笑っている。
「はい解りました。では手続き費用の銀貨10枚を頂きます」
にこやかに言う受付の女性に、俺は銀貨10枚を支払う。それを確認した受付の女性は、
「確かに頂きました。では、彼処の男性の受付に話をして下さい」
そう言って受付の女性が指をさしていた男性の前に移動する。
「此処はスカウトになる為の魔法陣だ。スカウトになりたいなら、そこの魔法陣に入るが良い」
その男性の言葉に、若干緊張気味に頷くマルコは、ゆっくりと魔法陣の中に入って行く。
それを確認した男性は、何かの魔法の詠唱を始めた。すると、魔法陣が光出し、マルコを包み込む。
マルコはその光を見つめながら、魔法陣の中に立っていると、その光はマルコの中に吸い込まれ、消えていった。
「よし!終わりだ。これでお前は、今日からスカウトだ」
その男性の言葉を聞いて、魔法陣から出るマルコ。俺とマルガはマルコの傍まで行く
「どうマルコ。スカウトになった気分は?」
俺がマルコにそう聞くと、両手の握り拳を、胸の前で開いたり閉じたりしながら、
「解る…オイラに力が備わったのが解る!今迄感じなかった力を感じるよ!」
マルコは興奮気味にそう言うその顔は、とても嬉しそうだった。
「良かったねマルコ。じゃ~ネームプレートを開いて見せてみて」
俺の言葉に、マルコはネームプレートを開く。マルガも興味津々で、マルコのネームプレートを覗きこむ。
『名前』 マルコ
『LV』 LV1
『種族』 人間族
『年齢』 11歳
『性別』 男
『身体』 身長 145㎝ 体重 40㎏
『戦闘職業』 スカウト
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 イケンジリ
『その他1』 冒険者ギルド登録済、 冒険者ランク アイアン、 所属チーム無し
『その他2』 商取引許可登録済、 商組合 無し、 商会 無し
「きちんとスカウトになっているね」
「良かったねマルコちゃん。おめでとう!」
「ありがとうマルガ姉ちゃん!」
「取得スキルも開いてみてよマルコ」
俺の言葉に、取得スキルも開く。
『現取得スキル 合計7』
『アクティブスキル 計3』 投擲術LV25、 罠解除LV1、 鍵解除LV1、
『パッシブスキル 計4』 周辺警戒LV1、 斥候術LV1、 俊敏性上昇、 スカウトの魂
「おおお!新しいスキルが6つも増えてるよ葵兄ちゃん!」
「流石はスカウトだね。戦闘型の中でも、特殊なスキルを覚えられるんだね」
「マルコちゃん凄いです~」
マルガがニコっと微笑みながら言うと、マルコは照れくさそうにモジモジしていた。
スカウトは、罠の解除は勿論の事、周辺警戒や、斥候など、素早い動きを生かした、補助も心強い戦闘職業だ。ダンジョンの探索や、旅をしている時には、そのスキルの恩恵を凄く感じると思う。
パーティーには必ず1人は欲しい職業だし、軽業の得意なマルコには合っているのかも。
俺がそんな事を思っていると、マルガとマルコは、魔法陣を興味深げに見つめていた。
「しかし、この魔法陣は凄いね!一瞬でスカウトの力を、身に付ける事が出来るんだから」
そんな事を言うマルコを見ていた男性は、ハハハと笑いながら
「凄いだろうこの魔法陣は。この魔法陣はかなり特殊な魔法で構築されていてな、スカウトを極めた人の記憶を元に作られている。なので、一度に複数のスキルを身につける事が可能なのだ。この他のスキルを身につけたい時は、スキルを持っている人に教えを請うか、別のこの様な情報記憶魔法陣を利用すれば覚えられる。此れからも、スカウトとして、頑張るが良い」
「ハイ!ありがとうございます!」
男性に微笑みながらお礼を言うマルコ。男性もウムと頷いている。
「じゃ~次はマルガの番だね。移動しようか」
「ハイ!ご主人様!」
マルコがスカウトになったのを見て、自分も戦闘職業に就く事が出来るのが嬉しいのだろう。元気良く返事するマルガの顔は、期待感で満たされている。
俺達は、マルガに戦闘職業に就かせるべく、受付に向かう。暫く歩いて行くと、目的の受付に到着した
「ご主人様。此処は何の職業の受付なのですか?」
「此処はまだ職業の受付ではないんだ。此処はね、魔力を調べる受付なんだ」
「魔力を…調べる?」
マルガは可愛い頭を傾げると、マルコと顔を見合わせていた。
この世界の魔力を持つ人は、魔法を使う事が出来る。
魔法には、火、水、土、風、光、闇の6つの属性があり、属性により力関係が存在する。
火は水に強く、水は土に強く、土は風に強く、風は火に強い。闇は、火、水、土、風に強く、光に弱い。光は、闇に強く、火、水、土、風に弱い。
火、水、土、風は、一般的に精霊四属性と呼ばれ、人間族や亜種族が使う事が出来る。
光は神族と呼ばれる神の血を引いている種族が使い、神族の洗礼と祝福受け、神に信仰を捧げる、ごく一部の人間族や亜種族も、使う事が出来る。
闇は魔族、悪魔が使う魔法で、魔族や悪魔と契約した、人間族と亜種族も使う事が出来る。非常に非人道的な物が多くあり、人間族や亜種族が主に使う精霊四属性全てに強い事と、神や神族、人間族や亜種族の敵対者である、悪魔や魔族が使う事もあって、忌み嫌われており、法律で一般人の使用の禁止がされている。
もし、許可を得ず闇魔法を習得して使う事があれば、国や教会に捕らえられ、異端者として異端審問に掛けられ、罰せられる。
「此処では、マルガがどの属性の魔力があるか調べれるんだ。そして、素質のある属性の魔法を覚える事が出来るんだよ」
俺がマルガにそう説明していると、受付の女性がウンウンと頷きながら話しかけてくる
「そちらの方の言う通りです。魔力のある人間族や亜種族の方は、精霊四属性のどれかの属性の素質があるんです。一般的に、魔法を使える人の総称は、メイジと言われますが、その中でも、精霊四属性を戦闘で使う人は、細かく分類されているんですよ」
受付の女性はマルガに説明をしてくれる。
魔力を持つ人間族や亜種族は、素質によって、使える属性が違う。1つの属性しか使えない人もいれば、4つ全て使える人もいる。メイジの中でランク付けがされているのだ。
1つの属性を使えるメイジの事を、ウヌスウァテス。2つの属性を使えるメイジの事を、デュアルソーサラー。3つの属性を使えるメイジの事を、トレスウォーロック。そして4つ全て使える人の事を、クアッドウィザードと言う。
複数の属性を使えると、違う属性同士を混合させて、強力な魔法を使う事が出来る。
しかし、複数の属性を使える者は少なく、複数の属性を使える者は、貴重な存在として重宝がられている。
「では此方の水晶に触れて下さい。そうすればどの属性に素質があるのか、解りますので」
受付の女性に促されて、マルガは水晶に手をかざす。すると、水晶が光り輝き、水色と黄緑色の2色の光が、浮かび上がってきた。その綺麗な色に、マルガは見蕩れている様であった。
「どうやらお嬢さんは、精霊四属性のうち、水属性と風属性の2つに、素質がある様ですね。水と風のデュアルソーサラーと言う事になります」
「良かったねマルガ。2つの属性が使えるみたいで」
「ありがとうございますご主人様!」
マルガは嬉しそうに微笑んでいる。マルコもマルガに良かったね!と言って微笑んでいる。
「では、あちらの魔法陣に行って下さい。水と風の属性の、魔法を覚える事が出来ますので」
女性の受付が教えてくれた魔法陣に行き、マルコ同様に水と風の魔法を習得したマルガは、テテテと走って俺の元に戻ってきた。
「ご主人様!私、水と風の魔法を、使える様になりました!」
嬉しそうに言うマルガは、ご主人様!私賢いですか?褒めてくれますか?と、顔に出る様な雰囲気で、ブンブン尻尾を振っている。俺はマルガの頭を優しく撫でて、良かったねと言うと、ハイ!と、満面の笑みを浮かべている。
「じゃ~次は戦闘職業の受付に移動しよう」
ハイ!と右手を上げて元気に返事をするマルガ。俺達は、マルガの戦闘職業の受け付けまで移動する。
そして、受付のある場所まで来て、歩みを止めると、マルガはキョトンとした顔で
「ご主人様どうしたのですか?」
「いや…此処に受付があるんだけど、魔法戦士系は大きく分けて、3種類あるんだよ」
魔法戦士…つまり、戦士型と魔法型を両方習得して、使う事の出来る戦闘職業だ。
その種類は、大きく分けて3種類あるのだ。
1つ目は、普通の戦士の様に、重装備をして、剣や盾、鎧を着て戦う、魔法戦士型。
2つ目は、格闘術を身に着けて、爪やナックルで戦う、魔法闘士型。
3つ目は、スカウトやハンターと言った、軽業を使い、魔法も使う、魔法軽業型。
それぞれ特徴があるが、マルガにどれが合うか悩んでいたのだ。
俺の話を聞いてたマルガは、ハっと何かを思いついた様に、俺に向き直る。
「ご主人様は確か、格闘術系のスキルを身につけてましたよね?」
「うん…俺の生まれた家は、代々古武術を継承してきているからね」
「でしたら、ご主人様が私に格闘術を、教えてくれるって言うのはどうですか?私は力がありませんので、思い装備はキツイでしょうし、マルコちゃんみたいに、何かの道具を使って投擲するよりも、そのままの手や足を使って戦う方が、私に合っている感じがしますし…どうでしょうか?」
確かに…マルガの敏捷性を失わず、魔法を生かすとしたら、魔法闘士型が最善かも知れない。
格闘術は、俺が教えれば良いし、マルガもワーフォックスの特徴を活かしやすいかも知れない。
俺が思案していると、どうですかご主人様?だめですか?と、少し不安げに見つめているマルガ。
そんなマルガの頭を撫で撫でしながら
「…マルガの提案通りにしよう。良く考えたらその方が良いしね」
それを聞いたマルガは、パアアと表情を明るくする。
「じゃ~受付に行こうか」
「ハイ!ご主人様!」
元気に返事をするマルガに、ニマニマしながら、目的の受け付けまで来る。
「あ…あの!マジックウォーリアーになりたいのですが!」
マルコ同様、若干緊張気味に言うマルガを見て、ククっと笑う受付の男は
「解った。では手続き費用の銀貨10枚を頂こう」
俺は銀貨10枚を支払う。それを確認した受付の男性は、
「確かに頂た。では、彼処の男性の受付に話掛けてくれ」
そう言って受付の男性が指をさしていた受付の前に移動する。
「此処はマジックウォーリアーになる為の魔法陣だ。マジックウォーリアーになりたいなら、そこの魔法陣に入るが良い」
その男性の言葉に、若干緊張気味に頷くマルガは、ゆっくりと魔法陣の中に入って行く。
それを確認した男性は、何かの魔法の詠唱を始めた。すると、魔法陣から光出し、マルガを包み込む。
マルガはその光を見つめながら、魔法陣の中に立っていると、その光はマルガの中に吸い込まれ、消えていった。
「よし!終わりだ。これでお前は、今日からマジックウォーリアーだ」
その男性の言葉を聞いて、魔法陣から出るマルガ。俺とマルコは、マルガの傍まで行く
「どう?マジックウォーリアーになった感想は?」
「…す…凄いです!私に今まで無かった力を感じます!これが…戦闘職業…マジックウォーリアー…」
そう言って、感嘆の表情を浮かべ、可愛い両手を、ニギニギしているマルガ。
そんなマルガに、おめでとう!と、マルコガ言うと、ありがとねマルコちゃん!と、ニコっと笑っている。
「じゃ~ネームプレートを開いて見せてくれる?」
「ハイ!ご主人様!」
マルガは元気に麦手を上げて返事をして、ネームプレートを開いて見せてくれる。
『名前』 マルガ
『LV』 LV1
『種族』 ワーフォックスハーフ
『年齢』 13歳
『性別』 女
『身体』 身長 130㎝ 体重 30㎏ B67/W43/H63
『戦闘職業』 マジックウォーリアー
『取得スキル』 ☆
『住民登録』 無し
『その他1』 身分 一級奴隷 所有者 葵あおい 空そら 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放
『その他2』 冒険者ギルド登録済、 冒険者ランク アイアン、 所属チーム無し
『その他3』 商取引許可登録済、 商組合 無し、 商会 無し
「うんうん。きちんとマジックウォーリアーになれてるね。良かったねマルガ」
「ハイ!ありがとうございますご主人様!」
「ね~ね~。取得スキルも見せてよ~マルガ姉ちゃん!」
せがむマルコに、はいはい、と少しお姉さんぶっている、可愛いマルガは、取得スキルの項目を開く。
『現取得スキル 合計10』
『アクティブスキル 計4』 裁縫LV25、 格闘術LV 1、 水魔法LV1、 風魔法LV1、
『パッシブスキル 計5』 ワーフォックスの加護(身体能力向上、高嗅覚、高聴力) 力上昇、 俊敏性上昇、 魔力上昇、 マジックウォーリアーの魂
『レアスキル 計1』 動物の心
「すげ~。スキルいっぱいあるねマルガねえちゃん!」
「ありがとうマルコちゃん!」
ニコニコ笑い合っているマルガとマルコに癒されていると、お昼を告げる、昼刻の0の時の鐘が鳴っていた。
「とりあえず、昼食を食べて、昼からは訓練場の方で、ちょっと訓練してみようか」
「ハイ!ご主人様!」
「うん!葵兄ちゃん!楽しみだよ!」
俺達は楽しそうに、昼食を取る為に、行きつけの食堂に向かう。
そんな俺達の後ろ姿を見つめる人物が居た事を、この時はまだ知らなかった。
「…見つけた。昼から訓練場で、訓練ね~。…フフフ楽しみだわ!」
楽しそうに笑っている女性の横で、男性が少し眉をひそめていた。
昼食を食べ休憩もした俺達は、職業訓練所に戻ってきていた。
先程、戦闘職業の登録を行った本館の横の路地を通り、その奥にある訓練場に向かって歩いている。
訓練場に近づくにつれて、沢山の人々の声が聞こえてくる。その声は、この安全な町中の訓練場の中で無ければ、戦争か何かが始まったのかと勘違いしそうな、荒々しさを感じ取れる声であった。
そのまま、その声のする方に歩いて行くと、視界が開ける。それを見たマルガとマルコは、目を輝かせる。
「「わああ…」」
感嘆の声を上げるマルガとマルコ。
そこには、球場の様に広い訓練場に、何百人もの人々が、訓練している姿が目に入っていた。
それぞれが、訓練用の武器を手に取り、訓練に励んでいた。俺達もその中に入って行く。
俺とマルガとマルコが訓練場に入ると、訓練をしている男達が、マルガを眼で追っている。
ムウウ…此処は荒くれ者の多い訓練場だから、なるべくマルガを1人にしない様にしないと…
そんな俺の気持ちを全く知らないマルガは、マルコと実に楽しそうに、訓練している人達を見ている。
俺達は訓練場の隅の方に空いている場所を見つけ移動する。
「ご主人様!凄いですね!これだけの人が、この訓練場で訓練しているんですね!」
「ま~俺も初めて来た時は、マルガやマルコとと同じ様に思ったよ」
「皆ここで訓練して、ある程度までLVとスキルを上げたら、ラフィアスの回廊に行くんだね」
「だろうね。俺達もLVとスキルを上げたら、ラフィアスの回廊に入る予定だから、しっかりと訓練しようね」
そう言って微笑むと、ハイ!と元気良く返事をするマルガとマルコ
「じゃ~まずは…それぞれどの武器を、使って行くか決めよう」
「それって…得意武器を決めるって事?」
「そうだね。武器は同じ種類の物を使った方が、良いんだよ。スキルとして身につくし、スキルLVも上がって行くからね」
なるほど~と頷くマルガとマルコを微笑ましく思いながら、話を進める。
「とりあえず、マルコから行こうか。マルコは中距離の投擲スキルは結構高いから良いとして、投擲も出来て、近接戦闘も出来る武器を選んだ方が良いね」
「そうか…例えばどんな武器なの?葵兄ちゃん」
「そうだな~。細身で片手で振れる片手剣、若しくは短剣がいいね。両手持ちの武器だと、投擲する時に、隙が出来て危なそうだからね。それと左手は腕に付けるタイプの小型の盾、バックラーなら問題なく投擲も出来ると思うから良いかもね。片手剣も短剣も、剣術スキルで上手くなって行くから、好きなのを選べば良いと思うよ」
マルコは俺の言葉を聞いて、なるほどと頷き、片手剣にするか短剣にするか悩んでいる。
「じゃ~私はどんなのが良いですかご主人様!」
ハイハイハイ!と、右手を上げて、猛アピールをしてくるマルガ。余りの猛アピールに、思わずプっと笑ってしまうと、少し頬を膨らませて、拗ねマルガに変身してしまった。
「ゴメンゴメン。マルガには、格闘用の爪かナックル、格闘用のすね当てと肘当てがいいね。ナックルは打撃力が居るから、早さで切り裂くタイプの爪がいいかもだね」
マルガもなるほどと頷き、少し考えて居る様だった。
「どれにするか決まったら、彼処の受付に行けば、訓練用の武器を貸して貰えるからね」
マルガとマルコは暫く考えていたが、決まった様で、2人でテテテと受付に走って行った。
そして、受付から訓練用の武器を借りて帰って来た、マルガとマルコ。俺はそれを見てフンフンと頷く。
「マルコは…片手剣とバックラーか。マルガは爪に、すね当てと肘当てね」
マルガとマルコは嬉しそうに顔を見合わせて笑っている。そんな2人を微笑ましく思いながら
「よし!じゃ~今日は基礎を教えるからね!まずはマルコからね」
「うん!よろしく葵兄ちゃん!」
元気よく返事をするマルコに、まずは剣の振り方を教える。
「まず、上段構えから、振り下ろす練習ね。まずは剣に慣れないとダメだしね」
俺はマルコに上段構えから、剣を振り下ろすのを教えて行く。ぎこちなく構えるマルコに、丁寧に教えて行く。マルコも必死に頑張って覚えようとしている。もともと、頑張り屋だから、練習は真面目に取り組んでいる。
「じゃ~それを右手で100回、左手で100回、両手で100回やってみようか。そのが終わったら休憩をして、また同じ様にする。今日は素振りばっかりするからね」
「そうなの?あの人形みたいな奴で、練習しないの?」
「あの練習用の人形に斬りつける練習は、もう少し後だね。基礎をしっかり身に着けておかないと、変な癖がついたり、型ガ悪いと、先で伸び悩んだりするからね。基礎は大事なんだ」
俺の言葉になるほど~と頷き、素振りを始めるマルコ。
「じゃ~次はマルガね。マルガも今日は素振りだからね」
「ハイ!ご主人様!私頑張ります!」
両手につけている、練習用の格闘爪を、オーとあげて気合を入れているマルガ。そんな可愛いマルガにニマニマしながら
「じゃ~まずは、突きから練習しようか。マルガには俺の流派の古武術を教えるから、頑張ってね」
「ハイ!お願いします!ご主人様!」
マルガに突きを教えて行く。元々ワーフォックスの血を引いているだけあって、体を使うのに適していたのか、なかなか呑み込みの早いマルガに、若干驚きながら教えて行く。
「マルガも、右で100回突いたら、今度は左で100回ね。終わったら休憩して、また同じ事を繰り返してね」
ハイ!と元気良く右手を上げて返事をするマルガも、練習を始める。
「ほら!2人共!肩に力を入れたり、肩を上げてはダメ!力が逃げたり、肩を痛めたりするから、注意する様に。それから、腕だけで振ってはダメ。腰を使って、しなる様に!そうしないと、早さは出ないし、威力も上がらないからね」
ハイ!と素直に返事をするマルガとマルコは、一生懸命に練習をしている。
これだけ真面目に練習すれば、割と早くにモノになるかも知れないね。呑み込みも、俺と違って早そうだし…抜かれちゃったらどうしよう!
俺がそんな事を思いながら、暫くマルガとマルコの練習を見ていると、何者かが俺達に近づいて来た。
「ふ~ん。意外と、きっちり教えるじゃない。人は見かけによらないのね~」
若い女性の声が後ろから聞こえて来た。俺が後ろを振り返ると、少女と男性が立っていた。
その少女は、俺と同じ位の歳だと思う。腰まで伸びているピンク掛かった美しい金髪のロール髪に、少しキツメな印象の綺麗な瑠璃色の大きな瞳。マルガに引けをとらない白く柔らかそうな肌。綺麗だが、どこか可愛さも感じさせる、美しい顔立ちに、少し華奢な印象を受けるが、しっかりと女性を主張しているプロポーション。リーゼロッテより少し低い位…身長は160位であろう。
そこには、マルガやリーゼロッテに、勝るとも劣らない超美少女が、仁王立ちしていた。
俺はその超美少女に見蕩れていたのか、マルガがテテテと走って来て、俺の腕にギュっと抱きついた。
ムムムと俺を見ているマルガに、苦笑いしている俺を見て、フフっと笑うピンクの髪の美少女が
「心配しなくても、貴女のご主人様を取ったりしないわ可愛いキツネちゃん。キツネちゃんのご主人様は、私の趣味じゃないから~」
パリパリ…あれ…何かが聞こえる。ああ!俺のガラスのハートにヒビが入った音か~。わああああん!
これだけの美少女に、はっきり言われると、見た目がパッとしなと解っていても、かなりショックなんですけど!!
「えっと…貴女はどちら様ですか?お…俺達に何か用ですか?」
「用が有るから来たに決まってるでしょ!?用が無ければ、貴方みたいなパッとしない奴の所になんか、来るはず無いじゃない!」
バリバリバリ…あれ…何かの衝撃が…。ああ!俺のガラスのハートが、真っ二つに割れた衝撃か~。うわあああああん!!
この子、凄い豪速球投げてくるよ!俺じゃとても取りきれないよ!…誰か…たちけて…
俺が、ピンクの髪の美少女の言葉に項垂れていると、マルガはよしよしと頭を撫で撫でしてくれる。
ああ!可愛いマルガちゃん!オラこの子苦手だよ!たちけてマルガちゃん!
「貴女達は、なんなんですか!いきなり失礼です!私のご主人様をこれ以上侮辱するなら、私が許しません!!」
少し甲高い声で、ピンクの髪の美少女に言い放ったマルガの尻尾は、ボワボワに逆立っていた。
俺はマルガの後ろで、よしよしと頭を撫でられながら、マルガに抱かれている。
そんな俺とマルガを見て、盛大な溜め息を吐く、ピンクの髪の美少女
「…そんなパッとしない男のどこが良いのかしら…キツネちゃんは、かなりの美少女だと思うのに…キツネちゃんなら、もっと良い男が見つかりそうなのにねえ…」
「そんな事大きなお世話です!それに、貴女なんかに、ご主人様の良さは解りません!」
ああ!癒される!可愛い事を言ってくれるマルガちゃん大好きだよ!
キッと睨みつけるマルガを見て、呆れているピンクの髪の美少女
「まあいいわ~。人の趣味にとやかく言っても仕方無いしね~。それに、そんな事どうでもいいし」
どうでもいいのかYO!2つに割れた俺のガラスのハートはどうしてくれるんだよ!…ウウウ…泣きたい…
「とりあえず自己紹介してあげるわ!私はルチア。そして、後ろに居てるのが、私の共のマティアスよ」
「マティアスだ。よろしく頼む」
ピンク色の美少女の後ろから、一歩前に出る男。
身長は190を少し超えている。フード付きのローブを身に纏っているので余り見えないが、体つきはかなり良いと思う。訓練された体であると思われる。それを証拠に、立ち方に全く隙が無い。顔にはこの世界には珍しい、縁の太い大きな眼鏡をかけていて、フードをすっぽりと被っている事もあって目立たないが、切れ長のかなりの男前だと伺える偉丈夫だ。
「それで、そのルチアさんにマティアスさんは、私のご主人様に、一体何の用なのですか!」
マルガはウウウと唸りながらルチアに言うと、ニヤっと口元を上げ少し微笑むルチア
「…ここじゃ静かに話が出来無いから、場所を変えましょう。静かに話せる場所を用意してあるから」
そう言って、ルチアは俺達について来る様に言うと、さっさと歩き始めた。
俺達は困惑しながら顔を見合わせて、ルチアの後をついて行く。合同訓練場を出て、ルチア達の後をついて行くと、ドーム型の建物についた。その中に入っていくルチア達の後を追って、俺達もその建物の中に入って行く。建物の中に入ると、そこは直径40m位の、屋内型の小型の訓練場だった。
「此処は特別訓練場よ。この建物は、魔法で強化した材料で作られているから、少々の事じゃ破壊出来無い様になっているの。此処なら誰の目にも気にせずに、色んな事が出来るのよ」
ルチアがニヤっと笑ってそう言い終わると、入ってきた入り口の扉が閉まり、ガチャンと音がした。
マルコがテテテと走って扉まで行き、扉を開けようとするが、ガチャガチャと音を立てるだけで、扉は開かなかった
「この扉…開かないよ葵兄ちゃん!」
「そりゃそうでしょ、鍵を掛けたんだから、開くはず無いじゃない」
マルコを見ながら、楽しそうに言うルチア。俺とマルガは顔を見合わせて困惑していた。
「え…えっと…。俺達をこんな所に連れて来て、一体何の話をしようと言うのですか?」
俺達の困惑している顔を楽しそうに見ながらルチアは
「…聞いた話なんだけど、貴方…イケンジリの村で、モンランベール伯爵家、ラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊を全滅させた盗賊団を、一人で壊滅させたって言うのは…本当の事なのかしら?」
流し目で俺を見るルチア。
…あの話は、ここに居る俺とマルガとマルコ、イケンジリの村人、モンランベール伯爵家、バルテルミー侯爵家しか知らない話しだ。
それに、イケンジリの村が襲われた事を、もし知っている人が居たとしても、俺が盗賊団を壊滅したって事は、一部の人しか知らないはず。報復をされたら堪らないので、それぞれに俺がやったと言う事は口止めしてあるので、一般には広がっていない…。なのに何故こいつらは知っているんだ?
「…誰からその話を聞いたの?」
「誰だっていいでしょう!?私が貴方に質問しているのよ!早く答えなさいよね!」
イラっとした感じで俺を睨むルチア。
…こいつら何者なんだ?此処にはイケンジリの村人はマルコしか居ない。モンランベール伯爵家、バルテルミー侯爵家も、話がついているから、わざわざこの様に、聞いてくる事は無いだろう。
その時、俺はふと思い出した事があった。
そういえば…確か…盗賊団の頭のギルスには、他にまだ3人の仲間が居るって、メラニーさんは言っていたな。まさか…こいつらが、その言っていた残りの仲間なのか!?
俺の背中に、嫌な汗がどっと滲む。ギルスクラスの奴が…2人目の前にいるかもしれないと思ったからだ。
俺はマルガと、俺達の元に帰って来たマルコを、俺の後ろにやる。マルガとマルコは訳が解らずに、キョトンとした顔をしている。
「…それを聞いて、どうしようと言うんだ?…あんた達一体何者だ!」
俺はそう言い放って、いつでも戦闘態勢に入れる様に身構える。さっき迄のと違う、殺気立っている俺の雰囲気を感じたマルガとマルコは、顔を見合わせて戸惑っている。
「へえ…そんな顔も出来るのね…意外だわ」
殺気立っている俺を見て、きつい目をしながらも笑っているルチアは、ニヤっと口元を上げる。
「その様子を見てる限り、どうやら本当の様ね…。心配しないで。何も貴方達を殺そうなんて考えていないから。私達は、貴方の思っている様な者じゃないわ」
「じゃ、何が目的なんだ!」
「まあ…簡単に言うと、私は…貴方と手合わせをしてみたかったの。だから、此処に連れてきたのよ」
「は!?俺と手合わせ!?な…何の為に!?」
ルチアの思いもよらない言葉に、戸惑っている俺を見て、楽しそうな表情のルチアは
「興味があったのよ。あのモンランベール伯爵家、ラウテッツァ紫彩騎士団、第5番隊を全滅させた盗賊団を、一人で壊滅させたって言う人物が、どれほどの実力を持っているのかね。それとこの話は、バルテルミー侯爵家当主のルクレツィオ卿から聞いた話しよ。どう?これで納得したわよね?じゃ~手合わせを始めましょうか」
「ちょ…ちょっと待ってよ!確かに、俺達の敵じゃないのは解ったし、話もバルテルミー侯爵家のルクレツィオ様から聞いたってのも解ったけどさ、俺が、お前と手合わせをしないといけない理由は無いだろう?」
そんな俺の戸惑いの言葉を聞いて、盛大に貯め息を吐くルチアは、呆れながら
「貴方ほんと馬鹿なの!?まだ状況が解ってないの!?よくそんなので、行商なんてやってるわね。呆れてものが言えないわ~」
両手を軽く上げて、お手上げだわと、言った感じのルチア。
ガシャ~ン!…あれ…何か崩れ去る音が…ああ!俺のガラスのハートが、木っ端微塵になった音か~。うわああああん!
馬鹿って言う奴が、馬鹿なんだYO!馬鹿って言われたらそう言えって、死んだじっちゃが言ってたモン!…もうほんと…この子どうにかして下さい…
「貴方が、私の手合わせを受けないと、此処から出してあげないわよ?さっきも言ったけど、この特別訓練場は、魔法で強化した材料で作られているから、少々の事じゃ破壊出来ない様になっているわ。私が、鍵を開ける様に言わない限りは、貴方達は此処から出られないの。解った?」
ニヤっと微笑むルチアは、楽しそうに俺を見る。
「じゃ…俺がお前と手合わせをしたら、此処から出してくれるんだな?」
「そうね出してあげる。それに、もし、私に勝ったら、特別に凄いご褒美も用意してあるわ」
その特別な凄いご褒美と聞いて、命の危険も無くなった事を感じたマルコとマルガは、俺の両袖を引っ張りながら、
「葵兄ちゃん!凄いご褒美くれるんだって!どんなご褒美だろうね!」
「ご主人様!あんな態度の悪い女の子なんかやっつけちゃって下さい!…そして、物凄いご褒美を、頂いちゃいましょう!」
その特別な凄いご褒美が気になるマルガとマルコは、ねーねーとせがむ様に言ってくる。
そんな戸惑う俺を、クスクスと笑いながらルチアが
「どうやら、貴方の共は、了解してくれた様ね。で…貴方はどうするの?」
「…解ったよ!やればいいんでしょ!やれば!…凄いご褒美きっちり貰ってやるからな!」
「ええ!私に勝てれば、涙を流して喜ぶ様なご褒美を用意してあるから、安心しなさい~」
ルチアはニヤっと微笑みながら、アイテムバッグから、一本の槍を取り出した。
「この槍は、魔法で強化されたBクラスのマジックアイテムだけど、刃を研いでいない訓練用の槍よ。これで突かれても、怪我はしても、死ぬ事は無いわ。ま~怪我をしても、共のマティアスが、上級の治癒魔法を使う事が出来るから、たとえ瀕死になっても、全快出来るから安心して」
ルチアは取り出した槍を、楽しそうにクルクル回しながら言う。
「それはありがたいけど、俺の武器はどうしたらいいの?俺にも訓練用の武器を貸して欲しいんだけど…」
それを聞いたルチアは、フッと笑う
「…貴方の武器は、貴方の体の中にあるでしょう?召喚武器だったかしら?それを使いなさい~」
「で…でも!俺の武器の事を聞いているなら、その威力も聞いてるだろう?俺の武器は、訓練用じゃ無いよ?怪我だけじゃ済まないかもしれないよ!?」
「大丈夫よ。例え死にかけても、マティアスの治癒魔法が有れば、後遺症も残らないし、死ぬ事も無いわ。それに、そんな事、貴方が心配する事じゃないの」
ルチアはそう言うと、クルクルと槍を回して構える。
「それは、貴方が私に攻撃を当てれればって話だもの!貴方は私に攻撃を、当てる事が出来るかしら?」
ニヤっと笑うルチアに、ご主人様やっちゃって下さい!とか、葵兄ちゃんやっちゃえ!と、可愛い仲間が応援してくれている。
流石に、此処まで言われたら、やるっきゃないよね!俺のガラスのハートを砕いてくれたお仕置きをしてやる!
俺は両手に、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを召喚する。それを見たルチアは、目を細める。
「なるほど…確かに召喚武器ね…。短剣と拳銃がくっついた様な武器か…初めて見るわね。貴方そんな高価な武器、何処で手に入れたの?」
ルチアの問に、俺の秘密を知られる訳には行かないので、適当な理由を述べる。
「こ…これは…俺の家に代々伝わって来たのを、引き継いだだけだよ!」
「家?貴方の家は、そんな高価な武器を持っている様な、高貴な家なの?」
「い…色々あるんだよ!俺にも!」
「ま…いいわ!興味ないし~」
興味が無いなら聞くなYO!!!
ほんとこの子と話してると、俺のガラスのハートが、いくつ有っても足りないよ!
ま~かと言って、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを全力で使ったら、大きな風穴開けちゃって、回復云々より即死しちゃうから…威力を絶対に死なない、ゴム弾位まで威力を落とそう。
この召喚武器、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーは、精神や魔力を、魔法弾に変換して弾を発射する。精神や魔力が続く限り弾を出す事が可能で、魔法弾の威力も、俺の意志で自由に変えられる。戦車の装甲を貫く様な威力にも、暴徒鎮圧用の、殺傷力の無いゴム弾位に落とす事も可能なのだ。
「所で貴方…LVは幾つなの?」
「…俺のLVは25だよ」
「LV25!?…良くそんなLVで、盗賊団を殲滅出来たわね。ま~それを補う何かがあるんだろうけどさ。…ちなみに、私はLV15よ。そんなに変わらないわね」
「LV15!?…よくそれで、自信満々に、俺と手合わせしたいとか、言ったものだよ」
呆れている俺を見て、あからさまにムカっと言う顔をしているルチア。
その顔を見て、ちょっとだけ胸がスっとした事は、内緒にしておこう。言ったらきっと逆上しそうだし!
俺はゆっくりと、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを構え、銃口をルチアに向ける。
「…一瞬で終わっても、文句とか言わないでね」
「…言ってくれるじゃない…」
槍をクルリと回し、構えるルチア。その瞳は静かに俺を見据えている。
この子…綺麗な構えをしてるな…何気に隙の無い構えだし。LV15だけど、余程センスがあるのかもしれない。でもまあ…やられちゃって貰いましょう!そして、ご褒美を貰って、退散と行こう!
俺はルチアの右肩と、槍を持っている左手に標準を合わせる。
そして、静まり返っている特別訓練場に、乾いた破裂音が鳴り響く。
「ガオン!ガオン!」
けたたましい音を木霊させながら発射された魔法弾は、ルチア目掛けて高速で飛んで行く。
魔法弾を撃ち終わった俺は、勝利を確信して、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを下げようとしたその時、綺麗な音が聞こえて来た。
「キイン!キン!」
その美しい金属音は、ルチアが高速で向かって来た、魔法弾を撃ち落とした音であった。
俺は信じられなくてルチアに視線を戻すと、ルチアの体からは、淡黄色に光るオーラが発せられ、体を包み込んでいる。
「まさか…気戦術!?」
「…正解…よ!」
驚愕している俺を見て、ニヤっと笑ってそう言うと、気勢を高めるルチアは、一気に俺に間合いを詰めてきた。
「今度はこっちの番よ!でりゃああああ!」
槍を振り上げて、叩きつける様に振り下ろすルチア。
気戦術相手に、何のスキルも使わないなど無理だと判断した俺は、瞬時に闘気術を展開させる。俺の体は、薄紅色の輝くオーラで包まれてゆく。
「ゴガガガガ!!」
激しい音をさせて、地面に叩き付けられるルチアの槍。床も魔法強化されていなければ、今頃陥没していただろう。
何とか闘気術を発動させて、ルチアの槍を躱した俺であったが、ルチアは俺が槍を躱すのを予期していた様で、俺の跳躍と一緒に並走して跳躍している。
「遅いわよ!くらいなさい!でりゃあああああ!!!」
俺を間合いに捉えているルチアは、連続で突きを放って来た。俺の眼前に、5つに見える槍先が迫る。何とか4つを躱したが、残りの1つは左肩に入れられてしまった。刃先は無いといえど、気戦術で強化された突きを受けて、激しい痛みが肩に襲いかかる。
そんな俺に追撃しようとしたルチアに、俺は迎撃で右手に持っている銃剣2丁拳銃のグリムリッパーを射撃する。3発放たれた魔法弾を、槍で躱し、間合いを取るルチア。
俺とルチアは離れて対峙していた。
「あらあらどうしたの?左肩なんか抑えちゃって。…一瞬で終わらせるんじゃなかったの?」
槍をクルクル回しながら、嬉しそうにニヤっと笑うルチア。マルガとマルコは、驚きの余り、口を開けたままであった。俺は左肩を抑えながら、
「…てか、LV15で気戦術なんて、使えるのかよ!…お前もっと上級者だろ!」
「私は本当にLV15よ。それなら、貴方だって、LV25で、気戦術に近いスキルを使えてるじゃない。…一緒だと思うけど?」
ニヤニヤ笑うルチアは、得意げな顔で俺に言う。
いやいやいや。俺が使えるのは、この世界に飛ばされた時に、貰った力だからだ。普通にこの世界に生活している奴で、LV15で気戦術を使える奴なんて、聞いた事が無い。いくら早くてもLV40だろ普通。
俺はルチアを霊視して見る事にした。そして、その内容を見て、驚愕する。
『LV15。此処に嘘はない。しかし…持っているスキルがおかしいだろ!?…槍術スキルLV25、気戦術LV25、火魔法LV20、風魔法LV20、土魔法LV20、水魔法LV20…LVとスキルの差が、何故こんなにあるんだ!?普通の鍛錬じゃないな此れは…しかしそれよりも…レアスキル…天賦の才能』
俺は心の中でそう呟く。
LVより、スキルが高いのは、実践でLVを上げるよりも、鍛錬ばかりして、スキルが上がってしまった結果だろう。マルコみたいに、実戦経験は無いけど、鍛錬ばかりして、スキルがLV25になってるとか、特異な例もある。きっと、この子もこのタイプだ。だがそれよりも、気になる事がある。
この子の持っているレアスキル…天賦の才能だ。
天賦の才能…その能力は読んで字の如く、どんな物事にも天賦の才能の力を発揮し、習得の早さ、応用力、到達点の高さ、全てにおいて、常人のソレを凌ぐ才能を見せるスキルである。
恐らくこの子がLV15なのに気戦術を習得して居るのは、このレアスキル、天賦の才能のお陰だろう。
簡単に言えば、この子は超天才。しかも、どんな物事にもその才能を発揮する超天才。
なるほど…この子はチートなんですね。解ります。はい。
俺が考えているのを楽しそうに見ているルチア。
「どうしたの?もう終わりなの?やっぱり、見た目通りパッとしないわね~。良いのは、キツネちゃんと、その召喚武器だけなのかしら?」
ガリガリガリ!…あれ…何か潰れる音が…ああ!俺のガラスのハートが、塵になった音か…うわあああん!
もうね、本当にお仕置きしてやる!俺のエロさを思い知れ!…もとい、怖さを思い知れ!
超回復で全快した左肩をぐるりと回す。うん。痛みも、後遺症も無いね。全く問題無し!
そんな俺を見て、少し驚いているルチア。
「…確かに私の持っている槍には刃は無いけど、気戦術で強化された突きをまともに受けたら、骨折してても良いはずなのに、何とも無い訳!?…見た目より、随分と打たれ強いのね」
「ハハハ。以前、同じ様な事を言われた事があるよ」
俺は苦笑いしながら、身構える。それを見たルチアも、クルリと槍を回して身構える。
「ちょっと本気で行くから、失神しても恨むなよ?覚悟はいいか?」
「…あら、奇遇ね。私もちょうど同じ事を、言おうとしていた所なのよ。貴方こそ覚悟はいいかしら?」
暫く睨み合う俺とルチアだが、先に動いたのはルチアだった。何かを高速で詠唱し始める。
それを見た、お供のマティアスが叫ぶ
「ル…ルチア様!その魔法は危険です!下手すれば、相手が焼け死んでしまいますよ!」
「そうならない様にするのが、マティアスの役目でしょ!それに、もう止められないわ!」
そう言うルチアの掌に、赤と黄緑の光が輝く。
「貴方も焼け死な無い様に、上手く避けなさいよ!ファイアーストーーム!!!」
俺にそう叫んだルチアの掌から、猛烈な勢いで、炎が嵐の風に乗って吹き荒れながら迫ってくる。
火と風の上級混合魔法の、ファイアーストームだ。
「うっはあ!」
思わず声が出る。俺はその炎の嵐から逃げる様に、壁際に跳躍する。俺のすぐ鼻先を炎の嵐は通りすぎて行く。そんな俺が安堵した瞬間だった。その炎の嵐のすぐ後ろから、俺目掛けて跳躍していたルチアの槍が、俺目掛けて突き出され様としていた。
『やばい…この体制じゃ…避けれない!』
一瞬やられるのを覚悟した俺であったが、背中に迫っている訓練場の壁を見て、ニヤっと笑いがこみ上げる。
「これで終わりよ!くらいなさい!でりゃああ!!!」
ルチアの気戦術で強化された槍先が俺に迫る。俺は、訓練所の壁に、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーの銃口を向け、射撃する。
「ガガガガガオン!」
けたたましい発射音と共に、複数の魔法弾が発射される。
「何処に向かって撃ってるのかしら!私はこっちよ!」
「いや!此れでいいんだよ!」
俺は射撃と同時に、体をくねらせる。すると、壁に当って跳ね返った魔法弾が、ルチア目掛けて襲いかかる
「えええ!?壁に弾が跳ね返って来るの!?」
瞬時にそれを理解する、超天才のルチアは、一瞬で槍を扇風機の様に回転させ、跳弾した魔法弾を弾いていく。そして、俺の追撃を恐れ、一瞬距離を取る。俺はその隙を見逃さなかった。
「ちょっと痛いかも知れないけど、死なないから許せよな!」
俺は銃剣2丁拳銃のグリムリッパーの銃口をルチアに向ける。俺の体を包んでいる、闘気術の薄紅色のオーラが光り輝く。
「これで終わりだ!!!迦楼羅流銃剣術、奥義、百花繚乱!!!」
俺の追撃を恐れ、距離を取った隙の出来たルチアに、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーから射撃された、何百と言う流星嵐の様な魔法弾が、何百という花が咲き乱れる様に、襲いかかる。その光景を見たルチアの顔から血の気が引いて行き、蒼白になる。
「キャアア!!」
短く可愛らしい悲鳴を上げるルチア。その直後、
「ギャイリリリリリリイイイ」
何かに何百と言う魔法弾が衝突する音が、辺りに響き渡る。衝突の衝撃で煙が発生し、視界が途切れる。
全ての魔法弾の衝突が終わり、煙が晴れて視界が回復すると、そこには、ルチアの前に立ち塞がる様に立っているマティアスが、掌を前に突き出して立っていた。
俺は瞬時にマルガとマルコの方を向く。訓練場の反対側の壁際から、俺の事を心配そうに見ている。
確か…この男の人…マルガ達と、同じ所に立っていたはず。それなのに、今はルチアの前に立ち塞がって、俺の奥義を片手で防いだの!?
…全く見えなかった…いや、気配さえも感じなかった。何者なんだろ…この人…
俺がその様な事を考えマティアスを見ていると、当のマティアスは何事も無かったかの様に、地面にへたり込んでいるルチアの方に振り返る
「ルチア様…お怪我はありませんか?」
そう言って優しくルチアに手を差し伸べるマティアス。その手を取って立ち上がるルチア
「大丈夫よ!まったく…あれだけ手を出さない様に、前もって言って置いたのに…でも…ありがとうマティアス」
「いえ…ルチア様が無事で有れば、私はそれで良いのです」
気恥ずかしそうに言うルチアを、優しく見守る様に言うマティアス。
そんなルチアとマティアスを見ていた俺の元に、マルガとマルコが走り寄って来た。
「ねえねえ!結局どうなったの?彼処からじゃ、はっきり見えなくてさ!」
「そうです~。でも、マティアスさんが、間に入ったという事は解ったので、勝負はご主人様の勝ちですか?」
マルガとマルコは、ねーねーどうなったのか教えてー!と、せがむ様に、俺の手を取って聞いてくる。
「勝負は私の負けよ!…悔しいけど、貴方の実力を認めてあげるわ!」
ルチアがフンっと言いながらも、俺の勝利宣言をしてくれた。
「って事は…凄いご褒美を貰えるって事だね!やったね!葵兄ちゃん!」
「ご主人様!おめでとうございます!凄いご褒美楽しみですね!」
マルガとマルコは、軽く飛び上がって、ハイタッチをして喜んでくれている。そんな2人の頭を優しく撫でると、ニコっと満面の微笑みを返してくれる。俺もそれを見て、思わず微笑む。
そんな俺達を見て、フンと言いながら、ルチアが俺の前に来た
「勝負は貴方が勝ったのだから、約束通り、ご褒美を上げないとね!物凄いご褒美は…此れから、貴方達がこの町にいる間、私の訓練相手に、貴方を指名してあげるわ!どう!凄いご褒美でしょう?」
ルチアはいかにも当然!と、言わんばかりのドヤ顔で仁王立ちしていた。
「へええ!?なにそれ!?」
「それだけじゃないわよ?朝、昼、夕食付きよ!しかも、その食事は、私の行きつけの、貴族や商家が多く利用する、高貴な者しか入れないレストランテと呼ばれる食堂なのよ?感謝しなさいよね!」
困惑している俺に、更にドヤ顔で言うルチア。
「訓練は、朝刻の4の時から初めて、昼刻の5の時までみっちりやるからね。でもきちんと昼食や休憩も取ってあげるから、心配しないで。余り詰めすぎるのも、体に悪いみたいだし!」
アハハハと笑って仁王立ちしている、ルチアに
「いあいあいあ!それって、俺達が、お前の訓練相手にさせられるって事なのか!?それが、凄いご褒美なのか!?」
「そうよ?他に何があるっていうの?私と一緒に訓練出来るなんて、身に余る光栄でしょ?」
さも当然の様に言い切るルチア。
いいいいいややややややああああああ!!!!!!!
嫌すぎる!ムリムリムリムリ!!無理すぎる!!
コイツと、この町に居る60日間、ずっと一緒に訓練なんかしたら、俺のガラスのハートは、顕微鏡で見ないと発見出来ない位に、粉々にされちゃうよ!…やばい…悪寒がしてきた…
そんなクラクラしている俺の傍で、マルコが
「それが、ご褒美なの~?何か期待して損しちゃったな~」
つまらなさそうに言うマルコに、眉をピクっと動かすルチア
「何言ってるの?さっきも言ったけど、最高級のレストランテの料理を、毎日、朝昼夕と食べれるのよ?あのレストランテの味は、フィンラルディア王国で、5本の指に入る名店って言われているの。その味と言ったら、この私でも認めている位なんだから!しかも、おかわり自由で食べさせてあげるわよ?」
それを聞いた、約2名の耳がぴくりと動く。
「その辺の事を…もっと詳しく…」
マルコとマルガは、ルチアの話に聞き入っている。その顔は、涎が垂れそうな、幸せな顔をしていた。
「ま…オイラはいいかな?どうせ訓練する予定だったし~」
「わ…私も…マルコちゃんと一緒かな?みっちり訓練すれば、ご主人様の役にも立ちそうですし…」
何処か上の空と言った表情のマルガとマルコは、ニヘヘヘと、口を開けて惚けている。
もうあれだね…食べてるね…一足先に…豪華な料理を食べちゃってるね…美味しそうな顔しちゃって…
俺は懐柔されたマルガとマルコを見て、気が遠くなるのを感じていた。
「お…俺は、嫌だからな!お前とずっと訓練なんて!誰もがお前に靡くと思うなよ!」
何とかこの状況を打開しようと、精一杯の力で言ってみた!オラ頑張った!
それを聞いたマルガとマルコは、凄い料理が食べれなくなったのを理解し、シュンとなっている。
ウウウ…マルガとマルコにそんな顔されるのはツライけど、此処は俺のガラスのハートの存亡の危機なのだ!我慢してね!マルガにマルコ!
そんな俺の言葉を聞いた、ルチアの表情が険しくなる
「こ…この私の誘いを…断るって言うの…?」
「そうだね!誰もがお前の言う事を聞くと思ったら、大間違いなんだよ!」
そう言い放つと、かなりショックを受けたのか、二三歩後ずさりすると、少し瞳に涙を浮かべるルチア。
フン!俺のガラスのハートを砕いた罰だね!いい気味ですよ!は~スッキリした!
そんな事を思っていると、涙目のルチアは、コロンと地面に寝転んで、背中を向ける。
「もう嫌…みんな死んじゃえばいいのよ…」
そう言って、ふて寝しているルチアを見て、ダダダとマティアスがルチアに駆け寄る
「ルチア様!どうか思い直しを!とんでもない事になりますぞ!」
「…嫌よ!私の誘いを断ったんだもん…もう…扉…開けてあげない…」
少し聞き捨てのならない言葉が聞こえてきた。何か嫌な予感がする。
「ルチア様!何卒、御考え直しを!」
「嫌よ!!マティアスも私の共なら覚悟を決めなさい!…200年後に開けてあげる…生きていたらね」
それを聞いたマティアスは、何か覚悟を決めた様な表情をする。嫌な予感が増大する。
俺はマティアスの傍まで近寄る。
「マ…マティアスさん…どうしたのですか?」
「…貴方達には申し訳ないが…どうやら、あの扉は200年後にしか開かない様です…」
マティアスは苦悶の表情で俺に返答する。
「いやいや。200年後とか冗談ですよね?たかが扉を開けるだけなのに。マティアスさんが、外の護衛に開ける様に言えば、開きますよね?」
なんだろう…鼓動が早くなってきた…嫌な予感しかしない!
「…いいえ。私ではあの扉を開けてはくれません。ルチア様が命令されて初めて開かれるのです。例え、どの様な事があれど、あの扉を開ける様に命令出来るのは、ルチア様のみ!その、ルチア様が200年後と言われるのなら…200年後なのです…」
「ま…まさか…。ほ…本当…なの?」
俺の微かに呟く様な言葉に、静かに頷くマティアス。
いいいいいいやややややああああああああ!!!
俺の魂がそう叫んでいる。俺はマティアスに詰め寄るが、マティアスは、『もう無理です諦めて下さい』と、しか返答してくれない。『主人の命令は絶対なのです!』と、無駄で余計な忠誠心を遺憾なく発揮しているマティアス。だめだ!この人使えないYO!
そんな俺と、マティアスのやり取りを見ていたマルガとマルコが、事態が飲み込めたのか、俺に詰め寄ってきた。
「葵兄ちゃん!オイラ達、此処から出れないの!?200年間此処で居ないとダメなの!?200年此処に居たら、骨になっちゃうよ!」
マルコは必死に俺に訴えかける。確かに骨になるのは嫌だよね!どうしよう!
「ご主人様!私はご主人様と一緒なので問題は無いですが…200年間、蜂蜜パンを食べれなくなるのですか!?それは…寂しいです~」
瞳をウルウルさせているマルガ。いやいやマルガちゃん。生命の危機だからね?…ほんと、蜂蜜パンが大好きなんだね。
マルガとマルコが、ねーねーどうなるんですかご主人様!?と、言った感じで、縋り付いている。
ムウウ…仕方無い…此処は俺が…何とかしないと…
俺は、マルガとマルコを落ち着かせて、ルチアの傍まで近寄る。俺が近寄っているのに気が付いているはずなのに、背中を向けて、寝転がっているルチア。
「あの…ルチアさん?」
返事がない…只の屍の様だ!
いあいあ。屍ではない。不貞腐れて寝転がっている、美少女だから。
「あの…すっごく可愛くて、美しくて、清楚なルチアさん。少しこっちを向いて、話をしませんか?」
「…何よ?なんか用?」
めんどくせええええええええ!!
この子めんどくさいよママン!しかし…此処はぐっと我慢だ!皆の為に、俺が頑張らないと!
「と…兎に角、扉を開けてくれませんか?」
「嫌よ!」
プイッと再度背中を向けるルチア。
即答ですか!ムウウ…段々とコイツの事が解ってきた…
はあ…やっぱりあれしか無いよね…
「すっごく可愛くて、美しくて、清楚なルチアさん。もう少し、話をしませんか?」
「…何?まだ、なんか用?」
再度プイっと振り向くルチアの顔は、プクっと頬が膨れている。
お拗ねになられているんですね!解ります。
「いあ~。この町に居る間、ルチアさんと一緒に訓練したいな~って、思って…アハハ」
「…ほんと?」
「うんうん!すっごく可愛くて、美しくて、清楚なルチアさんと、一緒に訓練したいな~」
「ほんとにほんと?嘘ついたら、酷い事するわよ?」
此れ以上、酷い事ってなんだろう…?もう寒気しかしないよ。
「嘘じゃないよ!俺はルチアと訓練したい!一緒に訓練しようルチア!」
俺が思い切ってそう叫ぶと、それを聞いたルチアの表情がパアアと明るくなる。
「そうよね!当然よね!この美しく、可愛いく、清楚な、超美少女のルチア様と、一緒に訓練したくないやつなんか居ないわよね!解ればいいのよ!解れば!」
そう言って、ハハハハと、腰に手を当てて、ドヤ顔で高らかと笑うルチアを見て、俺は力が入らなくなって、膝から崩れ落ちた。
「じゃ~明日から、訓練を開始するからね!朝刻の3の時に、迎えに行くから。昼刻の5の時まで、みっちり私がしごいてあげる!喜びなさい!」
とても、嬉しそうな顔のルチアを見て、何だか涙が出て来た。
「ね、涙を流して喜ぶ様なご褒美だったでしょ?…嘘ついて、逃げ出したら、地の果て迄追い詰めるから」
とても怖い事を言い残して、マルガとマルコの手を引っ張って、入り口に向かうルチア。
ゴゴゴと、訓練所の扉の開かれる音がした。どうやら天の岩戸は開かれた様です。
それを見て、項垂れている俺を、優しく起こしてくれるマティアス。
ポンポンと優しく肩を叩いてくれる。
「…マティアスさんも、きっと苦労してるんでしょうね…」
「ええ…もう泣きたい位に…」
そんな会話を交わす、マティアスの視線は、はるか遠くを見つめていた。
こうして、俺達とルチアは、一緒に訓練する事になったのだった。
0
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