愚者の狂想曲☆

ポニョ

文字の大きさ
34 / 62
2章

愚者の狂想曲 31 取り戻した日常

しおりを挟む
ルチアの専任商人選定戦が終わり、ルチアの計らいで、その日は王宮に宿泊させて貰った。

客室に宿泊した俺達は、今までの疲れもあって、夕食が終わり、体を拭き終わった時点で、ベッドに雪崩れ込み、泥の様に眠ってしまった。

あの気丈なリーゼロッテでさえ、気が緩んだのか、すぐに寝てしまった位だ。



翌朝、そんな俺達は準備を整えて、来客用の食堂に顔を出すと、そこには既に旅をして来た仲間達が座ってた。皆が挨拶をしている中、俺はそれを感慨深く思いながら、食卓に就く。席につくと、俺達の食事を、侍女らしき女性が並べてくれる。それを見たマルガが、涎のでそうな顔で、右手にナイフ、左手にフォークをチャキーンと構え、尻尾をブンブン振っていた。



「とりあえず…皆食事を食べながらでいいから、自己紹介しようか。マルガやリーゼロッテ、マルコは最後でいいから、ヒュアキントスの一級奴隷だった3人から自己紹介してくれる?ネームプレートは俺に渡してね」

「「「はい!葵様!!」」」

綺麗にそう声を揃える、亜種の3人の美少女達。

この3人の亜種の美少女は、凄く主従関係を気にする。昨日、最初夕食を食べる時も、マルガやリーゼロッテの様に、一緒に食べようとはしなかった。あのヒュアキントスから、主従関係を徹底的に教えこまれているんだと思う。

なんとか俺と居る時は、マルガやリーゼロッテの様に、普通にしててくれて良いよって言って、やっと一緒に食事を取る事が出来た位だ。まあ…これが本来の奴隷の姿かも知れないけど、そんなのオラ息が詰まっちゃう!



「では私から自己紹介をさせて頂きます。葵様に皆様、私は純血のワーウルフで、名をステラと申します。歳は16歳で御座います。以後、よろしくお願い致します」

そう言って、綺麗にお辞儀をするステラ。



少し大人びた大人しめの美しい顔、少し銀色掛かった、肩に届くか届かない位の長さの、艶の良い黒髪、銀色掛かった大きな紫の瞳、華奢だが女の子らしく、胸もルチアより少し小さい位の、なかなかのスタイル。純血のワーウルフの特徴である、銀色の触り心地の良さそうな、フカフカな犬の様な耳が、頭の上についている。その小尻には、マルガと色違いの、銀色の毛並みの良い尻尾をフワフワさせている。時折、ピクピクと動かせる耳が、何となく可愛く見え、マルガやリーゼロッテには及ばないけど、かなりの美少女。何処かの何十人と居る、国民的な英語三文字に数字が付きそうな、アイドルクラスかな?



『ふんふんステラね。気性が荒いと言われるワーウルフなのに、凄く落ち着いてるね。上品というか…良識の持ち主だねきっと。他の亜種の美少女達の視線を見るに、このステラが3人のリーダーっぽいし…』

俺はステラを見ながら、ステラのネームプレートを開く。



『名前』 ステラ



『LV』 LV1



『種族』 ワーウルフ



『年齢』 16歳          



『性別』 女



『身体』 身長 154㎝ 体重 42㎏ B73/W53/H76



『戦闘職業』 無し



『取得スキル』 ☆



『住民登録』 無し



『その他1』 身分 一級奴隷  所有者 葵あおい 空そら 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放



『ふむふむ。取得スキルもっと…』

続いて取得スキルも開く。



『現取得スキル 合計2』 



『アクティブスキル 計1』 家事LV30 



『パッシブスキル 計1』 ワーウルフの加護(身体能力向上、高嗅覚、高聴力)



なるほど、ワーウルフの加護は、マルガと同じだけど、純血だから、能力も高そうだね。

戦闘の経験はなさそうだけど、秘書的な事は凄く出来そうだ。

レアスキルは無いし、魔法は使えないみたいだけど、家事LV30!高いな!

家事をきちんとスキルで覚えている人は、貴族や王族等の、侍女をする人に多い。

しきたり、作法、礼節…そう言ったものを基準に、生活の世話をする人のスキルだ。

マルガやリーゼロッテも、普通の生活をする分の家事は覚えているが、このスキルの家事とは別物。

きちんと教育を受けた人のみ習得できるスキル。

流石は、御曹司のヒュアキントスに仕えていただけの事は有るね。



「ステラは音や匂いに敏感なの?」

「はい、さようで御座います葵様。私は400m以内であれば、気配を感じる事が出来ます」

「凄いのです!私の倍も感知範囲があるなんて!流石は純血さんなのです!」

ステラの言葉に、瞳をキラキラサせているマルガを見て、若干恥ずかしそうに顔を赤くしているステラ



「ステラは座ってね。じゃ~次は…ミーア?お願い」

「はい、葵様。私の名はミーアです。ワーキャットハーフで、歳は13歳です。よろしくお願いします」

そう言って、可愛い頭をペコリと下げるミーア。



あどけなさの残る可愛い童顔の顔、肩に掛からないショートの紫色の綺麗な髪、可愛く大きな茶色の瞳、色の白い肌に、マルガと同い年とは思えない、少し発育の良い柔らかそうなプロポーション、ワーキャットハーフの特徴である、細く柔らかそうな紫色の毛並みの尻尾を、お尻でチョコチョコさせている。こちらもマルガやリーゼロッテには及ばないが、大人数の国民的アイドルなら、なんとか7?には、入れるだろう。それ位の可愛さを備えている。



『結構…モジモジしてるのが、なんか可愛いね!マルガと違って、大人しめの引っ込み思案さんなのかも。何か…保護欲が…掻き立てられる…』

そんな事を思いながら、ミーアのネームプレートを開く。



『名前』 ミーア



『LV』 LV1



『種族』 ワーキャットハーフ



『年齢』 13歳          



『性別』 女



『身体』 身長 144㎝ 体重 38㎏ B73/W50/H72



『戦闘職業』 無し



『取得スキル』 ☆



『住民登録』 無し



『その他1』 身分 一級奴隷  所有者 葵あおい 空そら 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放



『じゃあ…取得スキルもっと…』

俺はミーアの取得スキルも開く。



『現取得スキル 合計2』 



『アクティブスキル 計1』 家事LV28 



『パッシブスキル 計1』 ワーキャットの加護(身体能力向上、高嗅覚、高聴力)



マルガに似ているね。ワーキャットの加護も、ハーフだから同じ位だろうし。

耳もマルガと同じで、人間族と同じ所についている。そして少し尖っている。

マルガは過酷な幼少時代を過ごして来たので、同い歳の子に比べると発育は幼い感じだけど、ミーアは逆に発育が良いね。クラスの中に居た、発育が良くてエロく見える女の子っぽい。

発育が良いのに、引っ込み思案な所が…オラのロリを刺激しちゃうYO!

俺の視線に、モジモジしているミーアを座らせる。



「じゃ~最後は…シノン?自己紹介してね」

「あ!はい…葵様…」

ぎこちなく返事をしたシノンは、ステラの腕の裾を握りながら、



「私はシノンと言います。ワーラビットハーフで、歳は…15歳です。よ…よろしくお願いします」

少しぎこちなく頭を下げるシノンは、ずっとステラの腕の裾を握ったままだった。



肩より少し伸びた強く紫色掛かった黒髪、可愛さの残る整った綺麗な顔、日本人に近い肌色の柔らかそうな肌、髪の毛と同じ綺麗な紫の瞳、割と華奢な印象を受けるが、それを打ち消す豊満な胸、ハーフなので、マルガやミーアの様に、耳は人間族と同じ所に付いているが、柔らかそうなお尻には、モフモフっとした白い毛並みの良い、丸っこい可愛い尻尾がちょこんと付いている。



『オオウ…いたいけな少女に似合わない…その胸はなんですか!…でかい…きっと…僅かだけどリーゼロッテより大きい!大人しさにアンバランスな胸がまた…』

それの視線を感じてか、キュッとステラの腕の裾に力を入れているシノンは、丸っこい可愛い尻尾をピクピクさせている。

なんか…悪戯したくなる!オラのSっ気が刺激されちゃうよ!とりあえずネームプレートを…



『名前』 シノン



『LV』 LV1



『種族』 ワーラビットハーフ



『年齢』 15歳          



『性別』 女



『身体』 身長 156㎝ 体重 46㎏ B85/W56/H87



『戦闘職業』 無し



『取得スキル』 ☆



『住民登録』 無し



『その他1』 身分 一級奴隷  所有者 葵あおい 空そら 遺言状態 所有者死亡時奴隷解放



『ちょっと肉付きの良い、柔らかさがなんとも…ウサギちゃんらしい…オラ狼になっちゃいそう!』

そんなアホな事を思いながら、取得スキルも開く。



『現取得スキル 合計2』 



『アクティブスキル 計1』 家事LV27 



『パッシブスキル 計1』 ワーラビットの加護(身体能力向上、高嗅覚、高聴力)



ふんふん。ステラやミーアと同じだね。家事LVも高い。

本当に、この3人は、家事LVが高い。余程、きちんと教えこまれているのであろう。



「ステラ、ミーア、シノンは、全く戦闘とかした事無いんだよね?」

「はい。私達は、取引のお手伝いが、主な仕事でしたので。戦闘や警護は、専門の傭兵を何時も雇っていました」

ステラの説明に頷く俺。そこに、朝食を食べ終わって、紅茶をマルガに入れて貰って飲んでいたエマが立ち上がった。



「じゃ~次はエマがあいさつする~」

ニコっと微笑むエマを、皆が微笑みながら見ている。



「エマは~お母さんの子供で~6歳で~ドワーフのヴァロフお爺ちゃんが、お爺ちゃんで~それから、それから~牛乳が好き!」

元気一杯に挨拶するエマに、皆が癒される。そのエマを優しく撫でながらレリアが席を立つ。



「エマの母で、レリアと言います。葵さんに買われました。よろしくお願いします」

そう言って、きちんと挨拶をするレリアを見て、皆が俺に視線を向ける。



オオウ…なんだろうこの視線…いやいや、いくら俺でもこの親子に、何かやましい事をする位、飢えてる訳じゃないよ?それにドワーフのヴァロフ爺さんと約束したし。皆解ってるよね?

少し疑問に思いながらも、軽く咳払いをして、俺は残りの3人に声を掛ける。



「じゃ~残りの3人、挨拶をしてくれる?」

「「「はい!葵さん!」」」

声を揃えて返事をする3人の少女は、ペコリと頭を下げて挨拶をしていく。



「私はルイーズです!マルタの村出身で15歳です!葵さんに買われてここに来ました!よろしくお願いします」

「私はアンリです!ルイーズと同じマルタの村出身で14歳です!ルイーズと同じく葵さんに買って頂いてここに居ます!よろしくお願いします!」

「私はジュネです!2人と同じマルタ村の出身で14歳です!私も葵さんに買って貰ってここに居ます!よろしくお願いします!」

そう言って、挨拶をする3人の少女達。



うん、凄く普通の見た目。普通よりちょい可愛い位の感じだ。クラスに居たら、そこそこ人気があるかも?と、言った所だろう。

見た目も普通なら、能力も普通。レアスキルも無く、魔法も使えない。性格が優しく、責任感の強い、思いやりのある女の子達だ。

そんな3人の挨拶が終わった時、誰かが来客用の食堂にやって来て、俺に声を掛けた。



「…何か、女の子が一気に増えたのは…気のせいじゃ無いわよね葵?貴方の色狂いに文句を言う訳じゃないけど、程々にしておきなさいよ?」

盛大な溜め息と共に聞こえるその声に振り返ると、そこには呆れた顔をしたルチアとマティアスが立っていた。

それを見た亜種族の3人の美少女達は、片膝をついて頭を下げる。3人の少女達やレリアにいたっては、平伏して頭を床につけていた。そんなレリア達を不思議そうに指を咥えて見ているエマを、必死に平伏させようとレリアが手を伸ばしている。



「皆、ここには俺達しか居ないから、ルチアやマティアスさんにそんな事しなくても大丈夫だよ」

「ですが葵様…この御方達は…フィンラルディア王国のルチア王女様に、アブソリュート白鳳親衛隊副団長のマティアス様。ご無礼があっては…」

「そうです葵さん。平民の私達がこのヴァレンティーノ宮殿に宿泊させて頂いているだけで恐れ多いのに、ルチア王女様や、騎士様が目の前に…」

俺の言葉を聞いても、ルチアとマティアスに頭を下げ続ける一同。



「大丈夫ですよ皆さん!ルチアさんは、とても優しい方ですから!」

「そうだよ皆!ルチア姉ちゃんは優しいよ!だから大丈夫だよ!」

「そうですね。ルチアさんは良い方ですわね。葵さんの言う通り、私達の他に誰も居ないなら、普通に接した方が、ルチアさんも寛げますよ。ねえルチアさん?」

マルガとマルコの頭を優しく撫でながら、リーゼロッテがルチアに微笑むと、フッと軽く笑うルチアは



「キツネちゃんやエルフちゃん、マルコの言う通りよ。他に誰も居ない時は、葵達と同じ様に接して頂戴。さ…もう、頭を上げて楽にして」

ルチアの言葉に戸惑いながらも、ルチアの言う通りにする一同。



「そうそう。ルチアに気なんて使ってたら疲れちゃうから、俺達だけしか居ない時は普通でいいよ」

「…葵…貴方だけは、私に平伏してくれてもいいんだけど?」

「残念ながら、俺にはそう言う趣味がないんだよね~。ごめんね~ルチア」

ニヤッと笑う俺を見て、気に食わなさそうにフンと鼻を鳴らすルチアは、エマを見つけて、ダダダと近寄り、ギュッとエマを抱きしめる。



「何この子!?可愛いじゃないのよ!名前はなんて言うの?」

「あう…名前はエマだよ?お姉ちゃんは誰なの?」

「私はルチアよ。よろしくねエマ!」

嬉しそうにエマに頬ずりするルチア。エマは嬉しそうにキャキャとはしゃいでいる。



「ルチアお姉ちゃんも、葵お兄ちゃんの奴隷なの?エマとお母さんは、葵お兄ちゃんに買われたんだ!」

「エマ!ルチア様に、なんて失礼な!すいませんルチア様!」

笑顔で楽しそうに爆弾を投下したエマに、頭を擦りつけてルチアに平伏しながら、謝罪を続けるレリアをそっと立たせるルチア。



「良いのよレリア。エマは何も解ってないんだから。それに、こんなに可愛いエマに、何かしたりしないから安心しなさい」

そう言って微笑むルチアを見て、ホッと胸を撫で下ろしているレリア。それを見ていた、エマがギュッとルチアに抱きついた。



「ルチアお姉ちゃん凄く綺麗~。まるで、どこかのお姫様みたい~。ねえねえ!エマとお友達になってくれる~?」

満面の笑みで言う、エマの言葉を聞いたルチアの顔が、デレッとなる。



「勿論よエマ!お友達になりましょう!」

「やった~!!ルチアお姉ちゃん大好き~!!」

キャキャとはしゃぎながらルチアに抱きつくエマを、デレデレとした顔で抱き返す嬉しそうなルチア。それを見ているマルガやマルコも、顔を見合わせて微笑んでいた。

そんなルチアが、エマを胸に抱きながら、俺に向き直り、



「でも…葵には、きちんとこれまでの事を、説明して貰うわよ?どういう経緯と理由で…この可愛いエマを買ったのかね。…きちんと説明しないと、貴方を奴隷にして、これからの人生、ずっと平伏しっぱなしにしちゃうわよ?」

「わ…解ってるって!全部話すから!!」

微笑んでいるが目の笑っていないルチアに、ゾクッとしたものを感じながら、これまでの事を説明する。

3人の村の少女達から自国金貨の情報を得て買った事、エマやレリアを買った事で、ドワーフのヴァロフ爺さんに自国金貨を作って貰えた事、全ての経緯と理由をルチアに説明する。

俺の話を、エマを膝の上に乗せて抱きながら、聞いていたルチアの顔が歪む。



「そう…やっぱり、そんな事になってたのね。あのヒュアキントスの事だもの、きっと何かしていると思っていたけど、そこまで用意周到にやっていたとはね…」

「まあ…俺達が王都ラーゼンシュルトに来るまでに、結構な時間があったからね」

俺の言葉に、ま~ねと小さい声で言うルチア。



「…まあ、なんにせよ、勝ちをもぎ取れたんだ。マルガやリーゼロッテも無事だったんだし、良かったよ」

俺の微笑む顔を見て、嬉しそうにフンと言うルチアは、膝の上に抱いているエマの頭を優しく撫でていた。



「とりあえず、ルチアの専任商人にはなれたけど、俺はこれからどうしたら良いのルチア?」

「葵殿には、来年の春までに、専任商人の特権である、無関税特権の権利が与えられる商品を、2品選定して貰いたい」

エマを抱いているルチアを優しく見守っていたマティアスが、俺にそう告げる。その言葉を聞いたリーゼロッテが軽く顎に手を添えながら、



「今は夏…来年の春…ですか。少し期間が空くのですね」

「それは仕方無い事なのよエルフちゃん。無関税特権を持つ専任商人が取り扱う商品は、他の取引に多大な影響を与えるものだから。前に話した年に2回行われる、無関税特権を持つ者達で行われる会議、特権者取引会議で話し合って取引量を決めてから、行われるものなの。そして、今年の2回目の特権者取引会議はもう既に終わっているわ。次の特権者取引会議は来年の春。それまでは無関税特権を行使出来ないのよ」

ルチアの説明に、成る程と頷く一同。



「と…なれば、当面は他の事で利益を上げないといけないと言う事になりますね葵さん?人も増えましたし…どうなされますか?」

リーゼロッテの言葉に、考えこむ俺。



リーゼロッテの言う通りだ。

すぐに大きな利益の上げれそうな、無関税特権を行使出来る商品の利益が望めない以上、当面の資金を稼ぐ必要がある。

今…手持ちのお金は…金貨11枚程度。3人の村の少女や、エマやレリアを買った事で、大きな出費をしてしまった。必要経費だったとしても、資金の回収もしたいのが本音だ。



そうなると、まず考えられるのは、人件費の削減。

エマやレリアは、ヴァロフ爺さんと約束したので、売る事は出来ない。

だとすると、売る事の出来る、3人の亜種の美少女達と、村の少女達の3人を、奴隷商に売る事が1番良いと思う。資金の回収も出来て、人件費の削減も出来るし一石二鳥だ。

亜種の3人の美少女達はそこそこの価格で売れるだろうし、3人の村の少女達も、あの塩や香辛料の原価と利益分にはならないだろうが、3人の亜種の美少女達を一緒に売れば、利益を出す事が出来るだろう。



そんな事を考えながら、亜種の3人の美少女達と、村の少女3人を見ると、キュッと少し握り拳に力を入れていた。恐らく、俺の考えている事を、うっすらと予測しているのであろう。

それを見ていたマルガがテテテと俺に小走りで近寄って来た。



「え…えっと、ご主人様!ステラさんやミーアさん、シノンさんはとても優秀ですし、ルイーズさんやアンリさん、ジュネさんも、とても優しい方達なのです!きっと、ご主人様の役に立ってくれると、思うのです!」

綺麗な透き通る様なライトグリーンの瞳を、揺らしながら俺に訴えかける必死なマルガ。



マルガはこの王都ラーゼンシュルトに帰って来るまでの間に、何度も俺に村の少女達の良さを必死にアピールしていた。

きっと俺に、村の少女達を奴隷商に売って欲しく無かったのだろう。3人の亜種の美少女達の事も、昨日からそわそわしながらアピールしていた。

マルガは奴隷商に売られると言う事がどういう事か、身にしみて解っている。過酷な生活をしてきているからだ。

この優しい少女達を、そんな環境に放り込みたくないのであろう。



ムウウ…マルガのこんな可愛く必死なおねだりを無下にはしたくは無いんだけど…

もし、全員売らないとしたら、生活費だけでも結構掛かる。

それ以上に、一級奴隷の人頭税を年末までに支払わないと、没収されてしまう。

一級奴隷の年間の人頭税は、1人金貨5枚。今俺の所有している一級奴隷はマルガやリーゼロッテを入れて5人。

人頭税だけで、何もしなくても金貨25枚もの大金が消し飛んでいく。2年人頭税を払ったら、家が買えちゃう位の額だ。



まあ…なんとか…行商しまくって、このままやって行く事は…ギリギリ可能なラインだけど…

そうなると、無関税特権の商品を仕入れる、又は、開発すると言う軍資金を、来年の春までに稼ぐ事は到底不可能になる。

折角の大金を稼げるチャンスを逃したくも無い。さて…どうしたものか…

そんな思案している俺を見て、リーゼロッテが少し言い難そうに、



「…葵さん、ステラさんやミーアさん、シノンさんを奴隷商に売る時には注意が必要かもしれません」

「注意?…注意と言うと?」

「はい…この3人は、今まであのヒュアキントスの一級奴隷でした。この3人はヒュアキントスの仕事を、色々手伝って来ていると思いますわ。ですから…外に知られたく無い情報も…この3人は知っているでしょう。そんな状況下の中で…この3人を売れば…」

少し伏目がちに俺にそう告げるリーゼロッテ。



…確かにリーゼロッテの言う通りだ。

今、この状況下で、3人の亜種の美少女達を売れば、間違いなく始末されるであろう。

この3人の安全が保証されているのは、あくまでも俺の手の内にいるからだ。

もし今、俺の周りに何か有れば、疑われるのはヒュアキントス達。そんな馬鹿な事はしない。

だけど、俺の手から離れてしまえば、俺と直接の関係が無くなったと瞬時に判断し、直接の情報源である3人の亜種の美少女達を奴隷商から買い取って、ドライに始末してしまう事だろう。

俺には関係が無いと言えばそれまでだけど…

マルガの可愛いおねだりを無下にはしたくないし、この3人も殺されてしまうのは…気が引ける部分もある。



そうなれば…手持ちの資金を増やして、行商の取引量を上げ、利益を増やす方法が1番になる。

3人の亜種の美少女を売らないとなれば、村の3人の少女達を売って、資金の回収をする。

3人の村の少女達には悪いが、奴隷にされても、3人の亜種の美少女の様に、いきなり始末される事は無い。

後は…売られた先の新しい主人に、どれ位気に入って貰えるかは、本人次第。

頑張って貰って…俺は資金の回収をするのが…1番かな?



「リーゼロッテはどう思ってるの?」

「…私は…葵さんの判断に、全ておまかせしますわ」

そう言って、ニコっと優しい微笑みを俺に向けるリーゼロッテ。その優しい微笑みを見て、俺は再度思案する。



オオウ…ここに来て…リーゼロッテもおねだりか…

リーゼロッテは頭の回転が極めて早い。普通なら俺に、全ての少女達を売る事を、きっと提案しているであろう。だがそれをしなかった…全ては俺に任せると言った。

リーゼロッテも一時は売られそうになった時がある。その気持を理解しているのであろう。



マルガはいつも解りやすい直接的なおねだりをするけど、リーゼロッテは自分から余り言わない傾向がある。それは俺を思っての事なのだ。

だから、こんな感じのおねだりを、いつもリーゼロッテはするのだ。

本当に俺が売る決断をしても、俺に対して悪い事は思わないだろうけど…

本当に…素直じゃないんだから…リーゼロッテも…



俺は盛大に溜め息を吐いて、3人の亜種の美少女達と、3人の村の少女達に向き直る。

俺の視線を感じ、少し震え瞳を激しく揺らしている、3人の亜種の美少女達と、3人の村の少女達。



「…俺は君達の誰も…奴隷商に売らない事にするよ」

その声を聞いた、3人の亜種の美少女達と、3人の村の少女達は、嬉しそうに瞳に少し涙を浮かべて安堵していた。同じくして、俺の言葉に、喜びながら抱きつく者が居た。



「ご主人様~!!大好きです~!!やっぱりご主人様は優しいのです!」

物凄い勢いで俺に飛びついたマルガを胸に抱きしめて、少し蹌踉めいてしまった俺。

マルガは満面の微笑みで俺を見ている。そんな愛おしいマルガの頭を優しく撫でると、金色の毛並みの良い尻尾を、ヘリコプターの様に回転させていた。

そんなに尻尾を回転させたら、本当に飛んでいっちゃうよマルガちゃん?

そして…ルナも同じ様に、尻尾を回さなくていいんだよ?マルガちゃんと一緒に飛びたいの?本当にマルガちゃんが大好きなんだねルナは!

そんな俺とマルガの傍にリーゼロッテが近寄って来て、



「…でも、葵さん。資金はどうなさるおつもりですか?」

「うん…資金は、名剣フラガラッハを売る事にするよ。アレを売れば、金貨150枚位にはなるしさ。資金の問題も、解決するでしょ?」

「本当に良いのですか?名剣フラガラッハは、滅多に手に入らないAランクのマジックアイテム。アレクラスのマジックアイテムは…この先に…手に入らないかもしれませんよ?」

「…いいよ。リーゼロッテも本当は…そうして欲しかったんじゃないの?」

俺のその言葉を聞いたリーゼロッテは、ギュッと俺の腕に抱きつき、金色の透き通る様な綺麗な瞳を、嬉しそうに輝かせて、俺の腕にコテっと顔を寄せ、凶悪に可愛い幸せそうな顔を俺に向ける。マルガもそれを嬉しそうに見ていた。



確かに、大っぴらに使えない、俺の本当の武器である、召喚武器、銃剣2丁拳銃のグリムリッパーの代わりに役に立ってくれている、名剣フラガラッハを手放すのは、痛手といえば痛手だけど…

こんなに可愛いマルガとリーゼロッテの、切ないおねだりを無下には出来ないし…

それに…こんな愛おしいマルガとリーゼロッテの、幸せな顔が見れるなら…金貨以上の価値はあるね。

…ほんと、商人失格だね俺は…反省…



そこに、もう一人の頭の回転の早い美少女が、意外な声を上げる。



「ふ~ん。葵にそれだけ考えさせて、あの剣を売らせても良いと思わせる娘達なのね」

「そうなのですルチアさん!皆さん優しくて、真面目で…それから、それから…」

3人の亜種の美少女達と、3人の村の少女達の事を、ルチアに必死にアピールするマルガを見て、ププッと可笑しそうに笑うルチアは、



「葵、相談なんだけど、この村の3人の少女達を…私に売ってくれない?」

ルチアの言葉を聞いた俺は、少し固まってしまった。



「…ルチア。男を近寄らせなかったのは…そう言う事だったの?…まさか…ルチアが…同性愛…」

「違うわよ!!!色狂いの貴方と一緒にしないでくれる!?」

俺の言葉を遮り、必死になって、顔を赤くしてプリプリ怒っているルチア。

こんなに取り乱すルチアを初めて見た俺達は、必死に声を殺して笑っていた。それを見て、更に顔を赤くするルチアは、



「…ったく、貴方の頭の中を、いつかまともにしてあげたいわ!」

「まあまあ、落ち着こうよルチア。所で、俺からこの3人の村の少女達を買ってどうしたいの?」

まだ少し笑いを我慢している俺を見て、すこぶる気に食わなさそうなルチアは、フンと言うと



「この3人の少女達には、私の専属の侍女にしようと思うの」

「「「えええ!?私達3人を、ルチア様の専属の侍女でにすか!?」」」

ルチアの声を聞いた、ルイーズ、アンリ、ジュネが驚きの声を上げる。



そりゃ驚くのも無理は無い。

王族や大貴族の侍女になると、まず余程の事が無い限り、普通の平民がなれるものでは無いからだ。

王族や大貴族の侍女には、どこかの貴族や、地位や権力のある家の者、そう言った所の娘達じゃないと、なれないのが慣習だ。

なので、王族や大貴族の侍女クラスになると、普通の人よりよっぽど身分が高かったりするのである。

侍女自体が、なかなかなれない職業でもあるのに、普通の平民であるこの3人の村娘達が、いきなり大国フィンラルディア王国の、王女の専属侍女に選ばれたりすれば、声を出して驚くのも解る。



「どう言った事なのルチア?今もどこぞの貴族のご令嬢が、専属の侍女としてルチアに仕えて居るんじゃないの?」

「…ええ、確かに居るわ。でも…私はこの娘達がいいの。この3人は、葵やキツネちゃんが庇いたくなる位の娘達なんでしょ?だから…」

少し言葉を濁すルチア。



そうだった。ルチアは…この伏魔殿、ヴァレンティーノ宮殿内では、気を許せる人は…ほんの僅かしか居ないんだったな…それこそ、それが嫌で…港町パージロレンツォに逃げる位に…

確かに、このルイーズ、アンリ、ジュネなら信頼出来るだろう。

大切な村を…人を守る為に、その身を投げ出せる位、優しさと覚悟を決めれる娘達なのだから。

きっとルチアの事に親身になってくれる。それは安易に想像出来る。

しかも、ルイーズ、アンリ、ジュネなら…ルチアの重要な情報も、外に漏らす事は無いだろう。

例え…大金を積まれたとしても…信念を貫ける強さもある。

そう考えると、色んな思惑で、送り込まれたルチアの専属侍女より、遥かに信用出来るだろう。



「…成る程。俺はそれでいいよ。ルチアにこの娘達を買って貰えれば、名剣フラガラッハを売らなくても、なんとか出来そうだしさ。ルイーズ、アンリ、ジュネはどうしたい?このまま俺の所に居ても良いし、ルチアの専属侍女になるも良し。好きな方を選んでいいよ」

俺の言葉に、かなり戸惑っているルイーズ、アンリ、ジュネ。

暫くコソコソと話し合って、ルイーズが代表で俺の前に来る。



「私達3人は…ルチア王女様の専属侍女になりたいと思います!そうすれば…恩人である葵さんに、ご無理をお掛けすることにもなりませんし…」

覚悟の決まった瞳で俺を見るルイーズ、アンリ、ジュネ。



「だそうだよルチア。マルガもリーゼロッテも…それでいいよね?」

「ハイ!ルチアさんの傍なら、ルイーズさん、アンリさん、ジュネさんも安心ですし!」

「そうですね。確かにルチアさんの傍なら、多少の事があっても安全でしょうし。ですが…今の専属侍女さん達が…黙っているのですか?」

リーゼロッテの涼やかな微笑みに、ニヤッと微笑むルチアは



「心配しなくても大丈夫よエルフちゃん。専属侍女を自分で選ぶ位の権限は与えられているし、それに逆らったからと言って…そこまで目くじらを立てる奴は居ないわ。私に限ってはね」

そう言って含み笑いをするルチアを見て、同じ様に含み笑いをするリーゼロッテ。



確かに以前のルチアなら…気分で嫌!とか我儘を言って、すぐに専属侍女を解任していたんだろう。

それこそ無理強いをして、ルチアに嫌われてしまったら、元も子もない奴らは、今迄沢山の専属侍女を用意してきたんだろうな…それを利用すると言う事か…

ま…今のルチアなら、色々根回しも出来るだろうし、そっちはルチアに任せるか。何か有れば言ってくるだろうし。



「じゃ~話は決まったし、取引しようかルチア。幾らでこの娘達を買って…」

「金貨15枚でいいわよね葵?」

俺の言葉を遮って、価格を告げるルチア。



ムウウ…金貨15枚。俺の理想としていた金額を一発で出すか。

あの積んでいた塩と香辛料の仕入れ値は金貨10枚。俺は金貨14枚から15枚で売る事を考えていた。

恐らく以前、俺のした話を思い出して、一瞬でその利益を逆算したのだろう。

ルチアの条件に合うこの娘達を、もっと高く売りつける事も可能かもしれないけど…

俺もこの金は絶対に必要。ルチアに買われなければ、名剣フラガラッハを売らないとダメ。

クウウ…こいつは本当に俺の考えを読みやがって!ちくちょう!



「…解った。金貨15枚でいいよ」

「取引成立ね。マティアス!」

その言葉に、マティアスがアイテムバッグから、金貨15枚を取り出し、俺に渡す。俺は以前書いて貰った、ルイーズ、アンリ、ジュネの直筆入りの羊皮紙をマティアスに手渡す。

それをマティアスから受け取ったルチアはニコっと微笑むと、



「じゃ~取引完了ね葵」

「…ソウデスネー。オカイアゲ、アリガトヤシター」

「…何よ、その棒読みは…」

ジト目で言うルチアに呆れている俺を見て、マルガとマルコが笑っている。



「これで貴女達は、私の専属侍女よ。しっかりと教育を受けて貰うわ。初めはキツイけど…がんばれるかしら?」

「「「はい!私達はルチア様の為に頑張ります!!」」」

声を揃えて言うルイーズ、アンリ、ジュネに、嬉しそうに頷くルチア。



「貴女達には信頼も期待もしてるわ。頑張ってね。それから…住む場所は、このヴァレンティーノ宮殿の侍女専用の部屋があるから安心して。休暇もきちんと与えるから、故郷にも帰る事が出来るし、お給金はそこらの侍女より、かなり多いと思うから、家族にもお金を送る事も十分に出来ると思うわ」

ニコっと微笑むルチアの言葉を聞いて、パアアと表情を明るくするルイーズ、アンリ、ジュネ。

それをニコニコしながら見ているマルガにマルコ。



「じゃ~話も済んだ事だし、俺達も自分の家に帰るとするか~」

俺の声に皆が頷く。



「そうね、それがいいわ。また時間が出来たら、私も行くわ」

「…来る時は、何か手土産よろしくルチア~」

「そうね~貴女の色狂いが治る、薬草でも持って行くわ~」

ニヤっと笑う俺に、ニコっと微笑むルチア。

俺達は帰る準備をしようとして、部屋に移動しようとした時に、ルチアが何かを思い出した様だった。



「ああ!そう言えば、言うのを忘れていたわ。葵が今回した、合法な金の密輸だけど…アレもう出来ないから」

「ええ!?もう?どういう事!?」

「ま~まだ発令されるには、ほんの少しの調整が必要だけど、大方の取り決めは決まったの」

そう言いながらニコっと微笑むルチア



「それは…どの様な事なのですかルチアさん?」

「えっとねエルフちゃん。まずは…偽物の自国金貨は、全て金の装飾品として関税が掛る。ここまでは一緒なんだけど、自国金貨を鋳潰す時は、自国金貨を鋳潰す許可のある、国が管理する鍛冶屋のみになるわ。それ以外の所で鋳潰す事は出来ない。罰せられる。それに、それぞれの国で決まっている以上の、含有率の金銀銅は、その割合に応じて関税が掛る様にしたわ。これで全て解決。元々、数の少ない自国金貨だから、すぐに駆逐出来るわ。自国金貨なんて、普通の通貨としての価値は、殆ど無いしね。魔金貨は5ヶ国金貨同様、複製出来ないから、対象外だけどね」

ルチアの説明になるほどと頷く一同。



「この取決めは、他の5大国にも伝えられるわ。同盟上、全ての国で同じ法令が制定されるでしょう。もう、自国金貨で利益を出す事は出来無いわよ?」

「…まあ~もっと前に知ってたなら兎も角、今はもう諦めてるよ。あんなに堂々と、女王陛下の前で金の密輸をしたんだ。それは承知してるよ」

俺の苦笑いを見て、フフッと軽く笑うルチア。



「でも…貴方も注意しなさい葵。数は少ないと思うけど、今迄ソレで利益を上げていた奴らの報復も考えられるから。まあ…頭の良い奴みたいだし、報復なんて利益の上がらない事に、力を使わない可能性の方が高いかもだけどね」

「…うん、注意するよルチア」

俺の返事を聞いてウンウンと頷くルチア。



「それから、3日後に、このヴァレンティーノ宮殿で晩餐会が開かれるの。当然、私の専任商人である葵達も出席して貰うから。人数は後で使いの者を向かわせるから伝えてね」

「晩餐会!?…それって…どれ位の規模なの?」

「ん~ま…ちょっとした物って感じかしら?人数が決まったら、晩餐会用の衣装を運ばせるわ。葵もこれから、色んな舞踏会や晩餐会、夜会に招かれる事もあると思うから、慣れておけば良いわ」

ルチアの言葉に戸惑っている俺をよそに、若干3名(1名増加)が、パアアと表情を明るくする。



「ご主人様!!!晩餐会って、凄く美味しい物が出るのですよね!?私…楽しみです~!!」

「だよねマルガ姉ちゃん!オイラも楽しみだよ!!」

「エマは?エマも行ってもいいの?エマも、ばちゃんかいに、い~き~た~い~。ねえねえ!いいでしょ~?」

3人がねえねえと言う様に、俺の傍に寄っている。その足元にはルナが擦り寄って居た。



「皆心配しなくても大丈夫よ。きちんと準備してあげるから」

ルチアの言葉に、ヤッターと言って、ルチアに抱きつく、マルガ、マルコ、エマの3人。

ルチアも嬉しそうに、優しく頭を撫でていた。



「まあ…平穏に過ごせれば良いのですけどね…」

「今度は大丈夫よエルフちゃん。それに…今回はエルフちゃんもしっかり葵を管理してくれそうだし」

再度ルチアとリーゼロッテは、お互いを見て含み笑いをしていた。



「と…とりあえず、人数が決まったら、使いの人に教えるよ。じゃ~俺達は家に帰るね」

「そう、また遊びに行くわね」

ニヤッと微笑むルチアに、軽く身震いしながら、俺達はヴァレンティーノ宮殿を後にするのであった。













帰る準備を整えた俺達は、挨拶をしてヴァレンティーノ宮殿を後にした。

そして、新しく我が家になった、フィンラルディア王国が、世界に誇る学び舎、伝統と由緒正しき学院、聖グリモワール学院の中にある、宿舎の前についていた。

そして、眼前に格調高く聳える宿舎を見て、エマとレリアが感嘆の声を上げる。



「こ…この大きい建物が…私とエマの新しい家になるのですか葵さん?」

「うん、そうだよ。ま~沢山部屋があるらしいけど、まだ全然見れて無いのだけどね」

「すごい~!!こんなに大きなお家に住めるなんて~!エマ嬉しい!!」

エマはキャキャとはしゃぎながら、マルガとマルコと楽しそうにしている。エマの頭の上にチョコンと乗っている白銀キツネの子供、ルナも何故か得意げだ。



「とりあえずは葵さん。宿舎の中に入る前に…アレを見てみましょうか」

リーゼロッテの言葉にソレを見ると、そこには大きな鋼鉄馬車が玄関前に止められていた。

俺達は鋼鉄馬車の前まで行くと、当然の様に、若干3名がテテテと走り寄って行く。

約束通り、ヒュアキントスが届けてくれたのであろう。



「ご主人様!鋼鉄馬車です!凄いのです!硬そうで、大きくて…凄い馬車なのです!」

「だよねマルガ姉ちゃん!この鋼鉄馬車なら、今までの荷馬車より、一杯商品も積めるよね!」

「すごい~!カチカチ馬車おおきい~~!!!」

嬉しそうにキャキャとはしゃいでいる、マルガにマルコ、エマを見て微笑む一同。

俺達も鋼鉄馬車に近寄る。



ムウウ…本当に凄そうな鋼鉄馬車だ。

大きさだけで言えば、俺の乗っている荷馬車の3倍はある。

俺が感動しながら鋼鉄馬車を見ていると、3人の亜種の美少女達が近寄って来た。



「葵様。もしよろしければ、私がこの鋼鉄馬車のご説明をしましょうか?」

ステラが軽くお辞儀をしながら俺にそう告げる。



「うん、お願いステラ」

「かしこまりました葵様。この鋼鉄馬車は、皆様の予想通り、普通の鋼鉄馬車ではありません。全て魔法で強化した素材でつくられていまして、この鋼鉄馬車自体が、Aランクのマジックアイテム並の強度を誇ります。ですから、少々の魔法の攻撃や、斧や剣、弓矢の攻撃などは、効きません。板バネも上質な魔法強化物を使って居まして、乗り心地は、王女様の乗る馬車にも引けを取りません」

その説明に、一同がオオ~と感嘆の声を上げる。まあ…エマは解ってないだろうけど、何故か驚いている。



「では中を見て下さい」

ステラの言葉に鋼鉄馬車の中を見る。

すると、荷台も3倍近くあるが、実際の荷台の大きさは2.5倍程で、残りは間仕切りがしてあって、そこには人が宿泊や、乗れる様に絨毯が敷かれ、長椅子の様な物も付いている。



「この部屋は、宿泊や人がゆったりと乗る為のスペースです。この鋼鉄馬車の内部には、水の魔法球と、火の魔法球が取り付けられています。なので、暑い時や寒い時は、魔法球を使って、温度を調節できますので、どこでも快適に進める事が出来ます。勿論、荷台にも魔法球の効果があるので、鮮度は保ちやすくなります」

ステラの説明に、再度オオ~と感嘆の声を上げる一同。…エマはまた解ってなよね?解ります。

そして…ルナちゃん。君も口を開けてク~と鳴いているけど、食べ物の話じゃないよ?



「とりあえず、凄い馬車なのは解ったよステラ。ありがとうね」

俺が微笑みながら礼を言うと、何故か気恥ずかしそうに、頷くステラ。

その時、リーゼロッテが珍しく渋い顔をしているのが気になった。



「どうしたのリーゼロッテ。何か気になる事でもあるの?」

「ええ…葵さん。私…失態を犯してしまいましたわ」

そう言って、少し悔しそうにするリーゼロッテ。



「この鋼鉄馬車…とても素晴らしい物で、価値の高い物ですが…すぐには使えませんわ」

「え!?リーゼロッテどうして?」

「だって…このかなりの重量のある鋼鉄馬車を引けるモノが、私達には…居ませんわ」

「…あ…」

リーゼロッテの言葉に、皆が短い声を出して顔を見合わせる。



そうだ!この鋼鉄馬車…凄い良い物だけど、重量が重すぎて、馬のリーズやラルクルだけでは、とても引けない。

この鋼鉄馬車に人を乗せて、そこに更に商品を積んで引けるモノなど限られる。

ストーンカクラスの力の有る魔獣じゃないと、とても引けない。

馬を沢山繋げて引っ張るてもあるけど、馬用の水が沢山いるから、実用的ではない。



「…ストーンカって…一匹…幾ら位するのかな?」

「確か…金貨20枚はするかと…」

俺の言葉に、申し訳なさそうにミーアが俺に教えてくれる。

それを聞いたマルガにマルコが驚きながら、



「金貨20枚!!大変ですご主人様!お金が一杯いるのです!」

「ストーンカってそんなに高いの!?」

マルガとマルコは、口をぽかんと開けながら、只々鋼鉄馬車を眺めていた。



「条件にストーンカを付けなかった私の失態ですね」

「いやリーゼロッテのせいじゃないよ。俺も冷静じゃなかったしさ。…まあ、この鋼鉄馬車は使わずに、売ると言う方法もあるし、とりあえずは、馬車置き場に停めておこう」

俺の言葉に頷く一同は、俺達の荷馬車を馬車置き場に停め、馬のリーズとラルクルを鋼鉄馬車に繋ぐ。

そして、合図を出すと、ゆっくりと動き出す鋼鉄馬車。

丈夫で力のある品種の重種馬である、リーズとラルクルをもってしても、ゆっくり引くのがやっとと言う感じだ。



ムウウ…丈夫だけど、凄い重量だね、この鋼鉄馬車は。

それに条件で付けなかったとして、ストーンカをつけない事に、ヒュアキントスの少しの嫌がらせを感じるね。まあアイツは…今はそれどころじゃないかもしれないけどさ。

ストーンカ…金貨20枚…どこかから…お金降ってこないかな…ガク…



なんとか鋼鉄馬車を馬車置き場に停め、馬小屋にリーズとラルクルを繋ぎ、いよいよ格調高い宿舎の中に入る。



「わあああ!!!すごく大きいよ~!!」

嬉しそうにキャキャとはしゃいでいるエマ。その頭の上で何故か得意げなルナ。



「とりあえず、まずはこの宿舎を散策しようか。部屋数がどれくらい有るか、どんな部屋が有るか、皆で手分けして調べよう。じゃ~3階は俺とマルガ。2階はリーゼロッテとマルコ。1階はステラ、ミーア、シノンの3人ね。エマとレリアさんは、調べ終わるまで、適当に遊んでいて下さい。」

「すいません葵さん。お言葉に甘えさせて貰います」

「エマここで一杯お母さんと遊んでるから、みんないってらっしゃい~」

そう言って手を振るエマに皆が癒された所で、それぞれ分担して宿舎を調べていく。

俺と2人で3階に向かうマルガは、俺と腕組みをしながら、上機嫌で鼻歌を歌いながら、嬉しそうに尻尾をフワフワさせている。



「ご主人様~。本当にこの宿舎は大きのです~」

「本当だね~。部屋数もかなり有るよね」

俺とマルガはキョロキョロしながら3階を散策していく。

造りは古いが、綺麗に装飾された焼きレンガで作られた建物は、夏だというのに、少しひんやりしている。恐らく、壁が分厚いのであろう。外の気温をある程度和らげているのが解る。



俺とマルガは1室1室見て回る。きちんと、家具もつけられている。

ベッドにテーブルに椅子。クローゼットにソファーが1つ。暖炉もあり、小さな机まである。どうやら8帖位のこの部屋が、普通の部屋の造りらしい。

そして、廊下の一番奥の角部屋に入ると、そこは大きな部屋で、20帖位の大きさがあった。



「ここは広い部屋だね」

「そうですね~ご主人様~。…あ!この部屋は、魔法球が取り付けられています!」

マルガの指をさす所を見ると、そこには水の魔法球と、火の魔法球が取り付けられていた。



水の魔法球は、温度を下げる効果を出す事が出来る。火の魔法球は温度を上げる効果を出す事が出来る。部屋につけられているこれらは、言わば温度調節の為の物、つまり、エアコンの様な物だ。

消耗品で価格はかなり高いけど、このクラスの魔法球なら、毎日使っても、5年は効果を得られるだろう。



「よし!この部屋は俺達の部屋にしよう!気温も調節出来るから、過ごしやすいし、広いからね!」

「それは凄いです~!私嬉しいのです~!」

そう言って俺に抱きつくマルガの頭を優しく撫でると、嬉しそうに尻尾を振っているマルガ。

俺とマルガは3階を散策し終わって1階に戻ると、皆が戻って来ていた。



「皆どうだった?3階は…普通の部屋が15室に、普通の部屋が3つ分位ある部屋が一つ。合計16室だったよ」

「2階も同じでしたわ葵さん。大きな部屋には、魔法球が取り付けてありました」

「と言う事は、2階と3階で…個室が30部屋に、魔法球付きの大きな部屋が2つか。結構部屋は一杯あるね~。1階はどうだった?」

「はい。1階は…普通の部屋が3つ、会議室の様な部屋が4つ、応接室が1つ、調理場が1つに、倉庫が4つ、そして…大きな湯浴み場が3つですね。会議室や応接間には、それぞれ魔法球が取り付けられていました。当然湯浴み場にも、湯を沸かす火の魔法球が取り付けられています」

それを聞いた、若干3名が、飛び上がって喜ぶ



「広い湯浴み場で…ウフフ…楽しみなのです~」

「大きな湯浴み場なら泳げるよね!?なんか…どこかの貴族様みたいで嬉しいよ葵兄ちゃん!」

「エマも泳ぐ~!お母さんと一緒に泳ぐ~!!」

マルガにマルコ、エマの3人は嬉しそうにキャキャとはしゃぎ、やっぱりエマの頭の上で何故か得意げなルナ。それを見て微笑み合う俺とリーゼロッテ。レリアも嬉しそうなエマを見て、幸せそうだった。



「じゃ~部屋割りを決めようか。俺とマルガとリーゼロッテは同じ部屋でいいとして…あ…部屋は一杯開いてるから、皆勝手につかって貰おうか。俺の部屋は3階の一番奥の角部屋、大きな部屋にするから」

「じゃ~エマは~お母さんと一緒の部屋にする~!いい?葵お兄ちゃん!」

勿論!エマを1人で寝かせるのは気が引ける!レリアにしっかりと管理して貰わないと!



「うん、いいよ。マルコは空いてる部屋を適当に選んで。ステラ、ミーア、シノンもそれぞれ勝手に部屋を選んでね」

その俺の言葉を聞いた、ステラ、ミーア、シノンは顔を見合わせると、申し訳なさそうに俺に言う。



「あの…葵様。出来れば…私達は3人同じ部屋でお願いします」

「え!?何故?部屋を広く使えた方が良いんじゃないの?」

「いえ…私達3人は…小さな頃からずっと3人一緒でした。なので…一緒の部屋の方が…落ち着くのです」

ステラが気まずそうに言うので、俺は苦笑いしながら



「その辺はステラ、ミーア、シノンに任せるよ。部屋は一杯空いてるから、好きにして。それから…ステラにミーアにシノン。前も言ったけど、そんなに気を使わなくていいよ。俺達はもう仲間なんだ。今は俺の手から離れたら危険だろうけど、頃合いを見計らって、奴隷から解放してあげるよ。その頃には、俺も色々な品物を取引出来る様になるつもりだから、君達を売らなくても、十分に利益はだせそうだしさ。今暫く我慢してくれればいいよ。その間だけ、俺の仕事を手伝って貰えたらいいから。解った?」

そう言いながら、ステラとミーア、シノンの頭を優しく撫でると、3人は瞳を潤ませながら黙って頷いていた。

それに優しく微笑むと、ステラ、ミーア、シノンの3人は、初めて見せる優しい微笑みを俺に返してくれた。



「後は…湯浴み場3つを分けて…この学院の料理長に、俺達の食事を幾らで作って貰えるか交渉するだけかな?」

俺が考えながら言うと、ヨワヨワしく右手を上げて、引っ込み思案のミーアが俺に言う。



「あ…あの…葵様。もし、よろしければその交渉を、私達3人に任せて貰えませんか?」

ミーアは俺を真剣な瞳で見ていた。俺はミーアに近づき、



「じゃ~ミーア達にお願いするよ。交渉出来たら、俺達の部屋に報告に来てね」

そう言って微笑みながらミーアの頭を優しく撫でると、嬉しそうに瞳を輝かせるミーア。



「はい!葵様!ミーア達にお任せ下さい!」

何処か嬉しそうなミーアは、ワーキャット独特の、細く柔らかそうな紫色の毛並みの尻尾を、チョコチョコさせていた。

それに微笑むと、少し気恥ずかしそうに、顔を赤くしているミーアに少しドキッとしてしまった俺。



「じゃ…お願いして、皆適当に解散で…」

苦笑いをしている俺を、少し楽しそうに見ているミーア達を残して、俺は部屋に戻るのであった。











部屋に戻った俺達は、それぞれの荷物を部屋に運び、整理をしていた。

皆もそれぞれ決まった部屋に行き、同じ様に整理している事であろう。

今日は皆で話し合って、ゆっくりとする事にして、明日、皆が必要な物を買いに行く事になった。

ミーア達が料理長と交渉してくれた結果、生徒に出している食事と同じ物を、普通の食堂で食べる様な価格で、俺達も食べる事が出来る様に交渉してくれた。また挨拶に行った時にでも、良くしてくれた料理長に礼を言っておこう。

そんなゆっくりしていた俺達は、ミーア達が持ってきてくれた夕食を食べ、これからこの世界に来て初めての湯浴み場、つまり、お風呂に向かう為に準備を終えて、1階の俺達専用の湯浴み場の入り口に来ていた。



この湯浴み場は3つ有り、どうやら元々、男子生徒用、女子生徒用、そして、宿直の職員用の3つだったらしい。

そして、俺の権限(我儘)で、職員専用の湯浴み場は、俺達専用にして、他の湯浴み場は、そのまま男子用と女子用に分けたのだ。



やっぱりさ…好きな女の子と一緒に湯浴み場…お風呂なんだから…誰にも邪魔されたくは無いのです!

そんな事を考えながら、湯浴み場に入っていく、俺とマルガとリーゼロッテ。

湯浴み場も更衣室も全てレンガ造りの風格あるその造りに、顔を見合わせて微笑み合う俺とマルガ、リーゼロッテ。



小型の桶に石鹸、頭洗い液、それに体を洗う為に持ってきた布に、歯を洗う歯木と房楊枝、ミントやアイリスを粉末にして作っている歯磨き粉を持ってきて居た。

小型の桶に入ったそれらを置いて、更衣室で服を脱いでいく。

スルスルスルと、後ろで聞こえる、マルガとリーゼロッテの服を脱ぐ音に、少しドキドキしながら脱ぎ終わり振り返ると、そこには、一糸纏わぬ、女神の様な美少女2人が、その美しい女体を俺に晒していた。

少し恥ずかしそうに、モジモジしているマルガと、ニコっと微笑みながらも、顔を赤くしているリーゼロッテ。そんな2人が可愛くて、思わず俺も微笑んでしまう。



「じゃ~湯浴み場に入ろうか!」

「ハイ!ご主人様!」

嬉しそうに返事をしたマルガは、俺の右腕にしがみつく様に、体を密着させる。その反対にはリーゼロッテが俺の腕に抱きつく。

マルガとリーゼロッテの乙女の柔肌の感触を味わいながら、湯浴み場の扉を開けて、その中に入って行くと、マルガが喜びの声を上げる。



「わああああ…大きな湯浴み場なのです~」

マルガの感動の声に俺とリーゼロッテも頷く。

その湯浴み場は、広さは25帖位であろうか。大きな風呂に、体を洗うスペースも大きく作られており、火の魔法球で、程良く暖められたお湯が、かすかに湯気を湛えている。グリフォンを象った銅像の口からは、火の魔法球で暖められたお湯が流れ出ている。

綺麗に装飾された壁や床、天井を見ているだけで、何処かのお金持ちになったかの様に錯覚してしまう。

そんな光景を見て、マルガは我慢出来なかったのであろう。ウズウズしながら、金色の毛並みの良い尻尾を、ブンブン振っていた。



「マルガ湯の中に、入ろうか」

「ハイ!ご主人様!」

嬉しそうに返事をしたマルガは、テテテと走って、湯の中に飛び込んで行った。

ドボンと音をさせて飛び込んだマルガは、その気持ち良さに、口元がニマニマになっていた。



「ご主人様!ものすごく気持ち良いです!ご主人様も早くです~!」

余りに嬉しそうに誘うマルガに、俺とリーゼロッテは微笑み合いながらマルガの元に向かう。

そして、湯の中に入ると、その余りの気持ち良さに、俺まで口元が緩む。

ふとリーゼロッテを見ると、珍しくリーゼロッテも同じ様に、口元を緩ませて微笑んでいた。



もの凄く気持ち良い…

こうやって、湯船につかるなんて、地球に居てた時以来だよ。

この世界の水は貴重で、蛇口をひねれば、すぐに水が出るわけでもない。

すぐ傍にある、ロープノール大湖からの豊富な水を、町に引きこんで居るからこそ出来るのだろう。

そんな事を思いながら湯につかっていると、リーゼロッテが俺に体を寄せてくる。

リーゼロッテの豊満な胸や、その絹の様な乙女の柔肌を、俺に余すこと無く味あわせてくれるリーゼロッテ。俺がリーゼロッテの顔を見ると、ニコっと優しく微笑み、俺の唇に吸い付くリーゼロッテを抱きしめる。



リーゼロッテの柔らかく甘い舌が、俺の口の中に滑りこんできた。リーゼロッテの舌を味わいながら、リーゼロッテの豊満な胸を鷲掴みにすると、少し身を悶えさせながら、ピクっと体を反応させている。

そんな抱き合っている俺とリーゼロッテの傍に、バシャバシャと音をさせながら、何かが泳いできた。



「ムウウ…ご主人様にリーゼロッテさん…ずるいです~。私も…ご主人様と…キスしたいです…」

俺とリーゼロッテが抱き合っているのに気がついたマルガは、シュババと泳いできていたのだ。



「マルガが余りに気持ち良さそうに泳いでたからさ。マルガをのけ者にしてた訳じゃないよ?…おいで…マルガ」

「はい…ご主人様…」

嬉しそうに、透き通る様なライトグリーンの瞳をトロンとさせながら、俺の胸に抱きつくマルガの口に吸い付く。

マルガの顎を掴み、強引に舌をねじ込むと、俺の舌を美味しそうに味わいながら、必死に舌を絡めて味わっているマルガが愛おしい。

唾を一杯飲ませて上げると、コクコクと嬉しそうに喉を鳴らすマルガ。

その反対からは、リーゼロッテが俺の耳や頬、首筋を丁寧に、唇と舌で舐めていて、ゾクゾクとした快感が俺の体を走る。

当然、俺のモノは既に大きくなっていて、ピクピクと脈打っていた。そんな俺のモノを、嬉しそうに優しく握るマルガとリーゼロッテ。



「ご主人様…今日は…一杯して欲しいです…」

「私もですわ葵さん…葵さんの…モノで一杯…」

「…解ってるよ、マルガ、リーゼロッテ。今迄選定戦で可愛がって上げれなかった分、一杯可愛がってあげる。…今日は折角の湯浴み場だから…色々…仕込んであげるからね…」

俺のその言葉に、艶かしい瞳で俺を見るマルガとリーゼロッテを、湯から出して、床に柔らかい布を敷く。



「じゃ~俺はここに寝転がるから…マルガとリーゼロッテは…愛しあいながら…体に泡を一杯付けて…」

俺の言葉に、赤くなりながら頷くマルガとリーゼロッテ。

マルガとリーゼロッテは俺に言われた通りに、石鹸を泡立て行く。

そして、その泡で互いの体を洗い合う、マルガとリーゼロッテ。女神の様な美しい2人は、身を悶えさせながら、お互いの体を洗い合っていく。マルガは余りの気持ち良さに我慢出来なくなったのか、リーゼロッテの可憐な唇に吸い付く。それを優しく慈しむ様に、アワアワになっているマルガを抱きしめ、マルガと舌を絡めているリーゼロッテ。

お互いに胸を洗い合い、乳首を刺激しあって、その華奢な手がそれぞれの秘所に伸ばされる。

甘い吐息を上げながら、白い泡に包まれた2人の女神は、お互いのクリトリスを愛撫しあっていた。



「マルガさん…とても…お上手ですわ…」

「リ…リーゼロッテさんも…とても…気持ち良いです…」

2人の女神の、余りにも艶かしく、淫らなその姿に、俺も我慢ができなくなってきた。



「じゃ~マルガにリーゼロッテ。その体中についた泡で、体を使って俺を綺麗にして」

その言葉を聞いた2人の女神は、その艶めかしさを、より一層際立たせて俺にその女体を味合わせる。



「体をの全てを使って、オレを洗うんだ。勿論…3人でキスしながらね」

そう言って、マルガとリーゼロッテの顎を強引に掴み、オレの口元に持ってくると、オレの口に吸い付くマルガとリーゼロッテ。マルガとリーゼロッテの舌を味わいながら、2人に体で奉仕させる。



「そう…泡まみれの胸を使って…オレの腕を…秘所に擦り付けて洗うんだ」

俺の指示に、嬉しそうに頷くマルガとリーゼロッテ。

リーゼロッテトマルガの胸の感触が、俺の体を柔らかく包む。両足に挟まれた、両手を必死に両足で挟み込み、秘所を擦り付けるマルガとリーゼロッテは、クリトリスを刺激されて気持ち良いのか、膣から蜜の様に愛液を滴らせている。



そんな快楽に浸る、マルガとリーゼロッテは、空いている手を使って、俺のモノを泡まみれの柔らかい手で刺激していく。

マルガとリーゼロッテに体中で奉仕され、3人でキスし合いながらの愛撫に、久々の行為であった事も手伝って、我慢が出来なくなってきた。



「マルガ、リーゼロッテ。イキそうだ!その可愛い口で…受け止めるんだ!」

俺はマルガとリーゼロッテの頭を強引に下腹部に持って行くと、俺のモノに吸い付くマルガとリーゼロッテ。2人の口と舌で瞬く間に絶頂を迎えた俺は、マルガとリーゼロッテの女神の様に美しい顔に、俺の精をぶちまける。俺の体に激しい快楽の波が押し寄せ、マルガとリーゼロッテは、俺の精の香りを楽しむ様に、切なそうな顔で俺を見ていた。



「気持ち良かったよ…マルガにリーゼロッテ。さあ…顔に付いている俺の精を…舐め合って綺麗にして飲み込むんだ」

俺の許可にコクッと嬉しそうに頷くマルガとリーゼロッテは、お互いの顔に飛び散っている、俺の精を舌で舐めとっていく。



「…俺の精を…口移しで…渡し合って…十分に味わってから飲み込んでね」

俺の言葉にニコっと微笑むマルガとリーゼロッテは、綺麗に舐めとって、口の中にある俺の精を、口移しをしながら、何度も互いに味わっている。その艶かしい光景に、俺のモノはすぐに復活をはたす。

それを見たマルガとリーゼロッテは、口に含んでいた俺の精を、味わいながらコクコクと飲み込んで、再度石鹸で泡立てた泡を体中に塗り、俺の元に戻ってくる。

俺はその光景に、幸福感で満たされながら、下にリーゼロッテを仰向けに寝かせ、その上にマルガを俯けに、リーゼロッテと抱き合う様に、マルガをリーゼロッテの上に乗せる。

マルガとリーゼロッテは、我慢できなかったのか、俺に膣口を両手で広げ、おねだりをする。



「ご主人様…ご主人様の立派なモノで…マルガを…犯して下さい…」

「私も…葵さんの立派なモノで…全てを犯して…貰いたいですわ…」

2人の女神の、余りにも愛おしいおねだりに、俺の性欲は一気に高まる。



「解ったよ…マルガにリーゼロッテ。今日は…2人同時に侵してあげる…まずは…マルガからね!」

俺はそう言うと、マルガの腰を掴み、バックから一気に奥まで挿入する。



「うはあああんんんっつうんん」

マルガは大きく体を仰け反らせて、俺のモノによる快楽に身を染めていく。湯浴み場に、パンパンと乾いた心地良い音が響き渡る。



「マルガ気持ち良い?…もっと犯してあげる!」

「ハイ!ご主人様!もっとマルガを犯して下さい!」

「いいよ!一杯犯してあげる!リーゼロッテ、マルガを下から…気持よくさせてあげて」

「はい…葵さん…」

俺の言葉にゾクゾクと体を震わせるマルガに、俺はバックから激しく犯し、リーゼロッテが下から、マルガの胸や、クリトリスを刺激していく。



「す…凄いです!!私…気持ち良いです!!!」

甘い吐息混じりに叫ぶマルガはの膣は、俺のモノをキュッと締め付ける。



「じゃ~次はリーゼロッテだよ。一杯犯してあげる」

俺はマルガの可愛い膣から物を引き抜くと、マルガの愛液のついたままのモノを、一気にリーゼロッテに捩じ込んでいく。



「うはんんんんんあんん」

リーゼロッテも大きく体を仰け反らせ、俺のモノに犯される喜びを、体中で感じていた。



「リーゼロッテさん…ご主人様に犯されて…とても気持ち良さそうです…綺麗…」

「そうでしょマルガ…だからマルガも…リーゼロッテを可愛がって上げて…」

「はい…解りましたご主人様…」

艶かしい声で返事をするマルガは、リーゼロッテの胸を愛撫し始め、その小さな口で、リーゼロッテの舌に吸い付いている。

リーゼロッテも俺に犯され、マルガの愛撫が気持ち良いのか、身を悶えさせながら、どんどんその快楽に浸っていく。



「じゃ~交互に…犯してあげる…気持ち良いよ…」

俺の声に、ゾクゾクとした表情をさせるマルガとリーゼロッテ。

俺はリーゼロッテの膣からモノを引き抜くと、マルガに一気に挿入する。

その一気に貫かれ犯される快楽に、マルガの体は、激しく身悶える。そしてまた引き抜き、今度はリーゼロッテの膣に一気に挿入すると、リーゼロッテも同じ様に、俺に一気に貫かれる喜びに、打ち震えていた。

俺はマルガとリーゼロッテの膣を交互に犯す。マルガの膣を暫く味わっては、リーゼロッテの膣を味わう。マルガにすぐ挿入して、リーゼロッテにすぐに挿入する。

繰り返し交互に犯される、マルガとリーゼロッテは、膣口をパクパクさせながら、俺のモノを来るのを待っている様であった。

繰り返し焦らされるマルガとリーゼロッテは、もう我慢できなくなってきたのか、両手で秘所を広げて、俺のモノを求め始める。その可愛いおねだりに、俺の支配欲が増大する。



「…今日はどちらから…イカせて…俺の精を注ぎ込んで欲しい?」

「最初はマルガさんからで…お願いしますわ葵さん」

「リーゼロッテさん…ありがとうです…」

「そのかわり…マルガさんも…後で私を一杯愛してくださいね」

艶かしく微笑むリーゼロッテに、嬉しそうに微笑むマルガは、舌を絡ませながら、リーゼロッテの口に吸い付く。その光景に性欲が掻き立てられた俺は、激しくバックからマルガを犯し始める。



「ふんんんんんう」

リーゼロッテとキスをしているマルガは、声にならない甘い吐息を撒き散らせながら、俺のモノによる快楽に、身を任せている。マルガの腰を掴み、マルガの柔らかいお尻に激しく腰を振る俺は、マルガのクリトリスをキュッと掴む。

マルガは、ピクピクと小刻みに震え出す。リーゼロッテに胸も愛撫されている事もあって、瞬く間に絶頂を迎えるマルガ。



「ご主人様!イカせて貰います!!!…イキます!!イクっつ!!!!ご主人様大好き!!!」

そう叫んだマルガは、激しく体を硬直させて、絶頂を迎える。その刺激で、キュンキュンと締め付けるマルガの膣の奥の奥、子宮に直接精を注ぎ込む。俺の体に、激しい快楽が突き抜ける。

マルガは、リーゼロッテの上で、クテっとなって、恍惚の表情を浮かべていた。



「マルガさんの…絶頂の顔…可愛かったですわ…」

優しくマルガにキスをするリーゼロッテは、マルガを抱きしめる。

俺はそれを見て、再度復活したモノをヌロロとマルガの可愛い膣から引く抜くと、今度は一気にリーゼロッテの膣に捩じ込んで行く



「うはんんんん!!!!」

リーゼロッテも激しく身を悶えさせて、俺のモノによる快楽に身を染める。

俺はリーゼロッテを激しく犯しながら、マルガの耳元で囁く。



「今度はマルガが…リーゼロッテを可愛がってあげて…俺も一杯リーゼロッテを犯してあげるから…」

「はい…ご主人様…」

艶かしく返事をしたマルガは、激しく犯されているリーゼロッテに愛撫を始める。

リーゼロッテの豊満な胸に吸い付き、乳首を舌で転がすマルガは、リーゼロッテのクリトリスも同時に愛撫している。



「葵さん!マルガさん!私…気持ち良いです!」

「リーゼロッテさん本当に綺麗なのです…もっと一杯気持よくしてあげますね」

マルガは更に強くリーゼロッテに愛撫をしていく。そのいやらしい光景に我慢出来なくなった俺は、リーゼロッテを激しく犯しながら、マルガを抱きしめ、マルガの体を舌で味わいながら、リーゼロッテを犯していく。

余りにも激しく、強い快楽に身を任せていたリーゼロッテは、切なそうに身をピクピクさせてきた。



「葵さん!私…私も、イカせて頂きます!!!!…イク…イキます葵さん!大好きです!!!」

そう叫んだリーゼロッテは、大きく体を仰け反らせながら、絶頂を迎え、それと同時に絶頂を迎えた俺は、リーゼロッテの子宮にも、直接精を染みこませる。

激しく息をしているリーゼロッテに、優しくキスをするマルガ。



「リーゼロッテさんのイク顔も綺麗でしたのです…可愛いのです…」

「…嬉しいですわマルガさん…」

恍惚の表情を浮かべながら、嬉しそうに微笑むリーゼロッテ。

俺はマルガとリーゼロッテの顎を掴み、マルガとリーゼロッテの舌を味わい、3人でキスをする。



「今迄我慢してたから、今日は一杯マルガとリーゼロッテを可愛がってあげる」

「はい…ご主人様…一杯犯して下さい…」

「私も…もっと葵さんに…犯して欲しいですわ…」

2人の女神は、両手で自分の秘所を広げる。その女神の膣口から、俺が注ぎ込んだ精液が滴り、愛液と交じり合って、キラキラ光っていた。



「うん…一杯犯してあげる…大好きだよ…マルガ…リーゼロッテ」

俺の言葉に、これ以上無い微笑みで返してくれるマルガとリーゼロッテ。



俺達は、初めての湯浴み場で、幾度も体を求め合い、愛しあうのであった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...