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第4章:最終決戦
第39話 逃亡者
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東京、港区某所の地下。
かつて佐藤任三郎がオメガ・リスクマネジメントを立ち上げる前に個人で活動していた頃の隠れ家は、冷たい湿気と埃の臭いに満ちていた。
「……ケホッ。酷い埃ね」
渡辺千尋が咳き込みながら、懐中電灯で室内を照らす。
10年以上放置されていたコンクリートの空間には、旧式のサーバーラックと、簡易ベッドが置かれているだけだ。
「贅沢は言えません。ここには独立した電源と、アナログな通信回線が生きています」
佐藤は埃を被ったデスクをハンカチで拭い、ノートPCを開いた。
横では、グレタ・ヴァイスが愛車のGクラス 6x6から運び出した武器弾薬を点検している。
「サトウ。……追っ手は?」
「今のところ撒けていますが、時間の問題でしょう。氷室レイの『パノプティコン』は、街中の監視カメラを掌握しています。Gクラスのような目立つ車で移動したのは、諸刃の剣でした」
佐藤はキーボードを叩き、都内の監視カメラ網への逆ハッキングを試みる。
だが、画面には無情な『Access Denied』の文字。
「……完全に締め出されていますね。私のID、バックドア、全てが塞がれている」
佐藤の手が止まる。
その時、部屋の隅に置かれたケージの中で、黒猫のダシが「フーーッ!」と毛を逆立てて威嚇音を上げた。
「……ダシ?」
小林弥生が駆け寄る。
直後。
ドォン!!
重厚な鉄の扉が、爆発音と共に内側へひしゃげた。
「敵襲ッ!!」
グレタが叫ぶと同時に、裂けた扉の隙間から、筒状の物体が投げ込まれる。
シュルルル……。
白煙が噴き出す。催涙ガスだ。
さらに、強烈な閃光と爆音が視界を奪う。スタングレネード。
「目は閉じて! 息を止めて!」
弥生が全員に指示を飛ばし、自分はダシのケージに濡れたタオルを被せる。
白煙の中、ガスマスクを装着した黒づくめの部隊が雪崩れ込んできた。
警察のSATではない。バズ・インキュベーションの私兵部隊だ。手にはサプレッサー付きのサブマシンガン。
「……排除する」
グレタが幽鬼のように煙の中から現れた。
彼女は息を止め、目を細めたまま、先頭の兵士の腕を掴み、関節を極めて銃を奪い取る。
バババッ!
奪った銃で、後続の兵士の足を正確に撃ち抜く。
「襟華! 右だ!」
「了解!」
田中襟華が、瓦礫の陰から飛び出し、兵士の顔面に消火器の噴射を浴びせる。
「目潰しアタック!」
怯んだ隙に、グレタが回し蹴りで意識を刈り取る。
激しい銃撃戦と肉弾戦。
その最中、佐藤はデスクにしがみつき、最後の「作業」を行っていた。
データの破壊ではない。
このセーフハウスに眠っていた、過去の「個人活動」時代の遺物――アナログな紙資料や、旧式のハードディスクを、強力な磁気発生装置に放り込んでいるのだ。
「社長! 早く!」
紘子が裏口のマンホールを開ける。
「……完了です。これで過去の痕跡は消えました」
佐藤はPCを閉じ、立ち上がった。
部屋はすでに制圧されつつあるが、敵の増援が続々と押し寄せている。
「撤収します! Gクラスは放棄! 徒歩で地下水道を抜けます!」
「マジかよ……あの車、高かったのに!」
グレタが悔しげに唸りながら、最後の一人を投げ飛ばす。
一行はマンホールへ飛び込み、暗い地下水道へと消えた。
地上に残されたGクラスは、主を失い、無言で敵兵を見下ろしていた。
一時間後。
都内某所の産業廃棄物処理場。
鼻をつく腐臭と、積み上げられたゴミの山。
「……オエッ。最悪」
襟華が鼻をつまむ。
そのゴミ山の陰に、一台の巨大なパッカー車が停まっていた。
運転席から顔を出したのは、作業着姿の佐々木紘子の「知人」だ。
「紘子さん! 話は聞いてやすぜ!」
「ありがとう、源さん。……借りはいつか返すわ」
「乗ってください。……これなら検問もノーチェックです」
佐藤が荷台の投入口ではなく、作業員用のスペースを指差す。
全員が狭いキャビンと、荷台の隙間に乗り込む。
ダシのケージを抱えた弥生が、申し訳なさそうに身を縮める。
「……行き先は?」
グレタが尋ねる。
「西麻布です」
佐藤は即答した。
「は? 自殺志願か? あそこは敵の膝元だぞ」
「だからこそです。……それに、まだ回収していない『荷物』があります」
佐藤はスマホを取り出した。
回線は切っているが、プリペイド式の使い捨て端末だ。
「……吉田彩さん。聞こえますか?」
『……遅いわよ、佐藤』
電話の向こうから、凛とした、しかし微かに震える声が聞こえた。
『自宅の周り、マスコミと警察……それと、変な黒塗りの車でいっぱいよ。完全に包囲されてる』
「今から迎えに行きます。……5分後に、ベランダから飛び降りてください」
『はあ? ここ3階よ?』
「私が受け止めます。……信じてください」
プツリ。通話を切る。
パッカー車が走り出す。
腐臭漂う車内で、佐藤はネクタイを締め直した。
「……デートの時間に遅れるわけにはいきませんからね」
西麻布の高級マンション。
吉田彩の自宅前は、まさにカオスだった。
懲戒請求を受けた「悪徳弁護士」を撮ろうと群がるパパラッチ、そして無言の圧力をかける私兵部隊。
その喧騒を裂いて、一台のパッカー車が猛スピードで突っ込んできた。
「どけえぇぇッ! ブレーキが壊れたァァッ!!」
運転手の源さんが叫びながら、クラクションを鳴らし続ける。
マスコミたちが悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げる。
キキキッ!!
車はマンションの真下、植え込みに乗り上げて急停車した。
「今だ!」
佐藤が助手席から飛び出す。
見上げれば、3階のベランダに彩の姿があった。
彼女は手すりを乗り越え、躊躇なく宙を舞った。
「……ッ!」
佐藤は両手を広げ、彼女の体を受け止めた。
衝撃でよろめくが、踏ん張る。
ふわりと、高級な香水の香りがした。ゴミの臭いの中で、そこだけが別世界のように。
「……ナイスキャッチ」
彩が佐藤の胸の中で、少しだけ顔を赤らめて笑った。
「でも、もう少し優しく扱ってくれない? ブランドもののスーツなのよ」
「善処します。……ですが、今はゴミ収集車が我々の馬車です」
佐藤は彩の手を引き、パッカー車へと押し込んだ。
「出すぞ!」
車が再発進する。
私兵たちが発砲してくるが、分厚い鉄板で覆われたゴミ収集車には豆鉄砲だ。
彼らは悠々と包囲網を突破し、夜の闇へと消えていった。
深夜2時。
千葉県某所のオートキャンプ場。
季節外れのキャンプ場には、客の姿はない。
そこに停まっているのは、紘子が新たに調達した、年季の入ったキャンピングカーだ。
ゴミ収集車から乗り換えた彼らの、新しい「城」である。
車内は狭い。
佐藤、襟華、千尋、グレタ、弥生、彩、紘子。そして猫一匹。
全員が肩を寄せ合うようにして座っている。
「……お風呂、入りたい」
千尋が深いため息をつく。
「髪がゴミ臭い気がするわ」
「文句言わない。水は貴重なんだから」
弥生がウェットティッシュを配る。
佐藤は狭い簡易キッチンに立ち、備え付けのガスコンロで鍋を火にかけていた。
作っているのは、フランス料理でも懐石でもない。
ただの、白米だ。
炊き上がった熱々のご飯を、ボウルに移す。
手水をつけ、塩をまぶした掌で、リズミカルに握っていく。
キュッ、キュッ。
具はない。海苔もない。
純白の「塩むすび」。
「……どうぞ」
佐藤が大皿に山盛りにしたおにぎりを、テーブルの真ん中に置いた。
「これだけ?」
襟華が不満そうに言うが、その手は正直に伸びている。
パクり。
「……あ、熱っ! ……でも、うま」
米の甘みと、塩気。
ただそれだけの味が、極限まで張り詰めた神経に染み渡っていく。
「……美味しいわね」
彩がおにぎりを齧りながら、窓の外の月を見上げた。
「私、弁護士資格も、家も、財産も失った。……まさか30過ぎて、車上生活者になるなんてね」
「私もよ」
千尋が笑う。
「ハイヒールもドレスも捨てたわ。……今の私は、ただの渡辺千尋」
「私も」
グレタが続く。
「M5もGクラスも失った。……だが、不思議と気分は悪くない」
全員が、おにぎりを頬張りながら笑い合った。
全てを失った。
社会的地位も、金も、住む場所も。
氷室レイによって「削除」された、存在しない人間たち。
だが、ここには「仲間」がいる。
そして、温かい飯がある。
「……失うものがなくなりましたね」
佐藤は最後の一つを手に取り、静かに言った。
「守るべき城も、体面も、もうありません。……これで心置きなく、暴れられます」
その瞳には、今まで見せたことのない、野火のような激しい闘志が宿っていた。
冷徹な「処刑人」ではない。
すべてを奪われた男の、剥き出しの復讐心。
「反撃開始です。……氷室レイの喉元に、我々という『バグ』を深く突き刺してやりましょう」
「賛成!」
襟華がジュースの缶を掲げた。
「乾杯! ……ざまぁみろ、世界!」
狭いキャンピングカーの中で、安っぽい缶が触れ合う音が響いた。
逃亡者たちの夜は、まだ始まったばかりだ。
かつて佐藤任三郎がオメガ・リスクマネジメントを立ち上げる前に個人で活動していた頃の隠れ家は、冷たい湿気と埃の臭いに満ちていた。
「……ケホッ。酷い埃ね」
渡辺千尋が咳き込みながら、懐中電灯で室内を照らす。
10年以上放置されていたコンクリートの空間には、旧式のサーバーラックと、簡易ベッドが置かれているだけだ。
「贅沢は言えません。ここには独立した電源と、アナログな通信回線が生きています」
佐藤は埃を被ったデスクをハンカチで拭い、ノートPCを開いた。
横では、グレタ・ヴァイスが愛車のGクラス 6x6から運び出した武器弾薬を点検している。
「サトウ。……追っ手は?」
「今のところ撒けていますが、時間の問題でしょう。氷室レイの『パノプティコン』は、街中の監視カメラを掌握しています。Gクラスのような目立つ車で移動したのは、諸刃の剣でした」
佐藤はキーボードを叩き、都内の監視カメラ網への逆ハッキングを試みる。
だが、画面には無情な『Access Denied』の文字。
「……完全に締め出されていますね。私のID、バックドア、全てが塞がれている」
佐藤の手が止まる。
その時、部屋の隅に置かれたケージの中で、黒猫のダシが「フーーッ!」と毛を逆立てて威嚇音を上げた。
「……ダシ?」
小林弥生が駆け寄る。
直後。
ドォン!!
重厚な鉄の扉が、爆発音と共に内側へひしゃげた。
「敵襲ッ!!」
グレタが叫ぶと同時に、裂けた扉の隙間から、筒状の物体が投げ込まれる。
シュルルル……。
白煙が噴き出す。催涙ガスだ。
さらに、強烈な閃光と爆音が視界を奪う。スタングレネード。
「目は閉じて! 息を止めて!」
弥生が全員に指示を飛ばし、自分はダシのケージに濡れたタオルを被せる。
白煙の中、ガスマスクを装着した黒づくめの部隊が雪崩れ込んできた。
警察のSATではない。バズ・インキュベーションの私兵部隊だ。手にはサプレッサー付きのサブマシンガン。
「……排除する」
グレタが幽鬼のように煙の中から現れた。
彼女は息を止め、目を細めたまま、先頭の兵士の腕を掴み、関節を極めて銃を奪い取る。
バババッ!
奪った銃で、後続の兵士の足を正確に撃ち抜く。
「襟華! 右だ!」
「了解!」
田中襟華が、瓦礫の陰から飛び出し、兵士の顔面に消火器の噴射を浴びせる。
「目潰しアタック!」
怯んだ隙に、グレタが回し蹴りで意識を刈り取る。
激しい銃撃戦と肉弾戦。
その最中、佐藤はデスクにしがみつき、最後の「作業」を行っていた。
データの破壊ではない。
このセーフハウスに眠っていた、過去の「個人活動」時代の遺物――アナログな紙資料や、旧式のハードディスクを、強力な磁気発生装置に放り込んでいるのだ。
「社長! 早く!」
紘子が裏口のマンホールを開ける。
「……完了です。これで過去の痕跡は消えました」
佐藤はPCを閉じ、立ち上がった。
部屋はすでに制圧されつつあるが、敵の増援が続々と押し寄せている。
「撤収します! Gクラスは放棄! 徒歩で地下水道を抜けます!」
「マジかよ……あの車、高かったのに!」
グレタが悔しげに唸りながら、最後の一人を投げ飛ばす。
一行はマンホールへ飛び込み、暗い地下水道へと消えた。
地上に残されたGクラスは、主を失い、無言で敵兵を見下ろしていた。
一時間後。
都内某所の産業廃棄物処理場。
鼻をつく腐臭と、積み上げられたゴミの山。
「……オエッ。最悪」
襟華が鼻をつまむ。
そのゴミ山の陰に、一台の巨大なパッカー車が停まっていた。
運転席から顔を出したのは、作業着姿の佐々木紘子の「知人」だ。
「紘子さん! 話は聞いてやすぜ!」
「ありがとう、源さん。……借りはいつか返すわ」
「乗ってください。……これなら検問もノーチェックです」
佐藤が荷台の投入口ではなく、作業員用のスペースを指差す。
全員が狭いキャビンと、荷台の隙間に乗り込む。
ダシのケージを抱えた弥生が、申し訳なさそうに身を縮める。
「……行き先は?」
グレタが尋ねる。
「西麻布です」
佐藤は即答した。
「は? 自殺志願か? あそこは敵の膝元だぞ」
「だからこそです。……それに、まだ回収していない『荷物』があります」
佐藤はスマホを取り出した。
回線は切っているが、プリペイド式の使い捨て端末だ。
「……吉田彩さん。聞こえますか?」
『……遅いわよ、佐藤』
電話の向こうから、凛とした、しかし微かに震える声が聞こえた。
『自宅の周り、マスコミと警察……それと、変な黒塗りの車でいっぱいよ。完全に包囲されてる』
「今から迎えに行きます。……5分後に、ベランダから飛び降りてください」
『はあ? ここ3階よ?』
「私が受け止めます。……信じてください」
プツリ。通話を切る。
パッカー車が走り出す。
腐臭漂う車内で、佐藤はネクタイを締め直した。
「……デートの時間に遅れるわけにはいきませんからね」
西麻布の高級マンション。
吉田彩の自宅前は、まさにカオスだった。
懲戒請求を受けた「悪徳弁護士」を撮ろうと群がるパパラッチ、そして無言の圧力をかける私兵部隊。
その喧騒を裂いて、一台のパッカー車が猛スピードで突っ込んできた。
「どけえぇぇッ! ブレーキが壊れたァァッ!!」
運転手の源さんが叫びながら、クラクションを鳴らし続ける。
マスコミたちが悲鳴を上げて蜘蛛の子を散らすように逃げる。
キキキッ!!
車はマンションの真下、植え込みに乗り上げて急停車した。
「今だ!」
佐藤が助手席から飛び出す。
見上げれば、3階のベランダに彩の姿があった。
彼女は手すりを乗り越え、躊躇なく宙を舞った。
「……ッ!」
佐藤は両手を広げ、彼女の体を受け止めた。
衝撃でよろめくが、踏ん張る。
ふわりと、高級な香水の香りがした。ゴミの臭いの中で、そこだけが別世界のように。
「……ナイスキャッチ」
彩が佐藤の胸の中で、少しだけ顔を赤らめて笑った。
「でも、もう少し優しく扱ってくれない? ブランドもののスーツなのよ」
「善処します。……ですが、今はゴミ収集車が我々の馬車です」
佐藤は彩の手を引き、パッカー車へと押し込んだ。
「出すぞ!」
車が再発進する。
私兵たちが発砲してくるが、分厚い鉄板で覆われたゴミ収集車には豆鉄砲だ。
彼らは悠々と包囲網を突破し、夜の闇へと消えていった。
深夜2時。
千葉県某所のオートキャンプ場。
季節外れのキャンプ場には、客の姿はない。
そこに停まっているのは、紘子が新たに調達した、年季の入ったキャンピングカーだ。
ゴミ収集車から乗り換えた彼らの、新しい「城」である。
車内は狭い。
佐藤、襟華、千尋、グレタ、弥生、彩、紘子。そして猫一匹。
全員が肩を寄せ合うようにして座っている。
「……お風呂、入りたい」
千尋が深いため息をつく。
「髪がゴミ臭い気がするわ」
「文句言わない。水は貴重なんだから」
弥生がウェットティッシュを配る。
佐藤は狭い簡易キッチンに立ち、備え付けのガスコンロで鍋を火にかけていた。
作っているのは、フランス料理でも懐石でもない。
ただの、白米だ。
炊き上がった熱々のご飯を、ボウルに移す。
手水をつけ、塩をまぶした掌で、リズミカルに握っていく。
キュッ、キュッ。
具はない。海苔もない。
純白の「塩むすび」。
「……どうぞ」
佐藤が大皿に山盛りにしたおにぎりを、テーブルの真ん中に置いた。
「これだけ?」
襟華が不満そうに言うが、その手は正直に伸びている。
パクり。
「……あ、熱っ! ……でも、うま」
米の甘みと、塩気。
ただそれだけの味が、極限まで張り詰めた神経に染み渡っていく。
「……美味しいわね」
彩がおにぎりを齧りながら、窓の外の月を見上げた。
「私、弁護士資格も、家も、財産も失った。……まさか30過ぎて、車上生活者になるなんてね」
「私もよ」
千尋が笑う。
「ハイヒールもドレスも捨てたわ。……今の私は、ただの渡辺千尋」
「私も」
グレタが続く。
「M5もGクラスも失った。……だが、不思議と気分は悪くない」
全員が、おにぎりを頬張りながら笑い合った。
全てを失った。
社会的地位も、金も、住む場所も。
氷室レイによって「削除」された、存在しない人間たち。
だが、ここには「仲間」がいる。
そして、温かい飯がある。
「……失うものがなくなりましたね」
佐藤は最後の一つを手に取り、静かに言った。
「守るべき城も、体面も、もうありません。……これで心置きなく、暴れられます」
その瞳には、今まで見せたことのない、野火のような激しい闘志が宿っていた。
冷徹な「処刑人」ではない。
すべてを奪われた男の、剥き出しの復讐心。
「反撃開始です。……氷室レイの喉元に、我々という『バグ』を深く突き刺してやりましょう」
「賛成!」
襟華がジュースの缶を掲げた。
「乾杯! ……ざまぁみろ、世界!」
狭いキャンピングカーの中で、安っぽい缶が触れ合う音が響いた。
逃亡者たちの夜は、まだ始まったばかりだ。
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