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勉強しても頭に入らない(前)
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「今回のお悩みはペンネーム、アカツメクサさんからです。『たくさん勉強しているのに、全然覚えられない』だ、そうです。学生のよくあるお悩みです」
ある日の放課後。雑談部では当たり前に桔梗が悩み相談を持ちかける。
「ここは雑談部よ。勉強がしたいなら、教師にでも泣きつきなさい。雑談する暇なんてないでしょ」
「いやぁ手厳しい。簡単に覚えられる方法があるなら俺も知りたい」
桔梗も学校の成績はよくない。魔法のような勉強方法があるなら知りたい。
「バカね、桔梗は適度にバカだから価値があるのよ。聡明な桔梗は私には価値がない。だから、このままバカでいなさい」
華薔薇にとって桔梗は適度にバカで適度に操りやすいから、価値を見出だしている。なのに賢さを身に付けたら、価値が半減する。
雑談要員として不適切になる。
しかし、華薔薇が桔梗に勉強するな、と強制はできない。
「そうかバカだからいいのか……ってバカにしてんじゃん。俺だって賢くなりたい」
「賢い桔梗ねぇ、うーーん、気持ち悪いわね」
メガネをクイっとあげて、間違いを指摘する桔梗は得体がしれない。
「ひどくね。絶対かっこいい、問題にスマートに答える俺だぜ、最高だろ」
自分のことは自分がよく理解していると一般では言うものの、実際には部外者の方が理解している。主観より客観の方が信憑性は高い。
「天地がひっくり返っても桔梗が賢くなることはないでしょう」
「俺だって勉強したら華薔薇を越える天才になるに決まってる」
「いつか来るといいわね、そんな日が」
夢を見るのも、妄想するのも自由だ。誰にも侵せない権利。
「もし、桔梗が私より賢くなったら、潔く頭を垂れて教えを請わせてもらおうかしら。とても楽しみよ」
自分よりバカに教えを乞うのは屈辱だが、自分より賢い相手に教えてもらえるのはまたとない幸福だ。たとえ同級生だろうと華薔薇は素直に頭を下げる。
年齢や性別は関係なく、指導者に敬意を払うのは当然だ。
「ふははっ、待ってろよ。いつか俺が華薔薇を導いてやるからな」
華薔薇より賢くなっていたら、華薔薇に頭を下げられてもどうも思わないだろう。賢者はちっぽけなプライドなど持ち合わせていない。
必要なら頭を下げるのは当たり前。些細な欲求を満たそうとしているようでは到底、華薔薇に届かない。本質を理解している人は些細なことにこだわらない。
「では、今回の相談は桔梗が解決してみなさい。私を越えるのに、私の手助けは不要よね」
「無理です、ごめんなさい。どうか華薔薇のお力をわたくしめにお貸しください」
決意虚しく、刹那で掌を返す桔梗。掌を返す速さを競う大会があれば、入賞確実だ。
「掌を返すのが早すぎる。少しは自分で考えなさいよ。最初から、無理だと決めつけるのは早計よ」
「もしかして、俺でもアカツメクサの相談に答えられるのか?」
「無理ね」
垂らされた一筋の希望は、掴む前にバッサリ切り捨てられた。
「やっぱりぃぃぃ。そうだよな、勉強できない奴が勉強教えられるわけないよな。期待した俺がバカでした」
最初から手をつけずに諦めるのはよくない。何を持っていて、何を持っていないのか、選別してからでも遅くない。
答えを持ち合わせていないから、結果として相談を断るのは構わない。しかし、相談内容を吟味せずに、即座に断るのは言語道断。ただの逃げだ。
「やってない人、結果を出してない人が何を教えるのよ。失敗する方法を得意満面教えられても迷惑よ」
失敗や間違いを知れば、自分が失敗や間違いを犯さなくなるので、一概に無意味と一蹴できない。
正しいことを続ける方がよっぽど大事だ。
失敗や間違いを回避しても、普通の結果か成功でしかない。正しいことを続けたら、結果は大成功間違いなし。
失敗や間違いは反面教師として引き合いに出すくらいでいい。反面教師が前に出る必要はない。
「ぐすんっ、俺だって勉強できるようになりたい」
「高校生になって、いじけて泣くなんてみっともない。仕方ないから、今日は勉強について雑談しましょうか」
勉強ができて人生で損することはない。バカか天才を選べるなら、誰だって天才を選ぶ。
バカでも猿でもわかるくらいに勉強の能力は高い方がいい。
「やっぱり生まれ持った才能がないと、勉強についていけないんだろ。誰もが、華薔薇みたいに勉強できるわげじゃないよな。羨ましいな」
「私は決して天才じゃない。今でこそ勉強ができるようになったけど、昔は勉強がとても苦手だった」
「え?」
桔梗から見た華薔薇はなんでもできる天才に映っている。しかし華薔薇が最初から卒なくクリアしていたことはない。ひとつひとつ練習と努力と工夫で乗り越えてきた。
華薔薇のステータスは全て人生をかけて習得した能力だ。生まれ持った才能はない。
「勉強はね、やっても無駄な非効率な勉強を辞めて、効率のいい勉強法を会得したらいいの。だから最初にすべきは、勉強の方法の勉強よ」
「勉強の、勉強? それは何を勉強するんだ」
勉強はがむしゃらにやれば必ず成果が出る、なんて幻想はない。机に齧りついても得られるのは疲労感と達成感だけ。勉強した内容が頭に残っていないのは多々ある。
なぜなら、勉強の方法が間違っているから。間違ったことを延々と続けても成果が出ないのは明白。
バスケットボールのシュート練習をサッカーのゴールに向かって行っても意味はない。バスケットボールが上手くなりたいなら体育館でバスケットボールのゴールに向かってシュートをしないといけない。
でも、勉強では間違っていることに気づいていないから、勉強をしても頭に内容が残らない。
「桔梗は初めてスポーツをする時に誰かに指導してもらったことはある?」
「そりゃもちろん、あるぞ。いきなりできるわけないだろ」
「そうよ、教えてもらってないことはできない。当然よね。それって勉強でも同じでしょ。私たちは子供の頃、正しい勉強の仕方を教えてもらってない。だから、勉強ができないのは当たり前」
勉強は正しいか間違っているかわからない状態で続けている。正しい人は勉強ができて、間違っている人は勉強ができない。
頭の出来の違いはそれだけ。
「つまり、正しい勉強の仕方さえ学べば、誰でも勉強はできるようになる」
「俺は間違っていたのか。俺も勉強できるようになるのか」
生徒はおろか教師でさえ正しい勉強の仕方を知らない。そのため勉強で苦労する生徒が後を絶たない。
「もちろん」
「よっしゃー、これで俺も天才の仲間入りじゃぁぁぁ」
テストの成績と天才は別物なので、勉強ができる秀才にはなれても、天才にはなれない。やる気に水を差す無粋な真似は華薔薇もしない。
ある程度勉強ができるようになると、自分が凡人だと気づく。その落ち込む姿を見る方が、よっぽど愉快だ。
落差は大きければ大きいほどに感情の揺れ幅も大きくなる。種を蒔いて育てて、収穫するのも格別だ。
「頑張るのはとてもいいことよ、ふふ」
種を蒔くのにお金がかからず、リスクもない。ならば、蒔けるだけ蒔いた方がいい。どれかが芽吹けば、儲けもの。仮に全部枯れても元手はかかっていないため、損失はないに等しい。
「今日から俺は勉強王だ」
「勉強王(自称)さんに問うわ。教科書にハイライトやアンダーラインを引くことはあるかしら?」
「ありまくりだぜ、大事な部分はちゃんとマーカーを使ってる。しかも色分けもしているぞ」
どうだ、とばがりのどや顔が鼻につく。勉強してますアピールだが、
「それ無駄よ」
全くの無駄だ。
「なにぃぃぃ」
「効果なしよ」
「うそぉぉぉ」
「舟盗人を徒歩で追う」
「……」
「灯明で尻を焙る」
「…………」
「籠で水汲む」
「…………うおおおお、華薔薇が難しい言葉でいじめてくるっ!」
舟盗人を徒歩で追う。盗んだ舟に乗って逃げる盗人を、陸から徒歩で追いかけるということから、無駄な骨折りをするということ。方法が適切でないこと。
灯明を尻で焙る。ろうそくのような弱い火で尻をあぶってみても少しも暖かくないということから、手段を誤ったり、方法が不適切なために効果が上がらないということ。
籠で水汲む。籠で水を汲もうとしても、水が流れて出てしまい、まったく溜められないということから、どんなに苦労しても効果がなく、良い結果が得られないということ。
どれも無駄に関することわざだ。
「失敬ね。いじめてないわよ、桔梗の無能を確認しただけよ」
いじめだろうが、無能の確認だろうが、どっちにしろ質が悪いことに変わりない。
「ハイライトやアンダーラインは勉強をやった気分にさせてくれるだけ。読み返すと、その部分だけは理解できるから、わかった気になる。実際には何も勉強できてない。ただの錯覚なのよ」
「がびーん、そんな、俺は、勉強できてない、勘違い野郎なのか」
「安心しなさい、勉強に関する間違いはまだまだあるから」
全然安心できない、とさらに気分が沈む桔梗だ。しかし間違いを正さないと前に進めない。
自称勉強王の踏ん張り所だ。
「勉強に関する誤解、ふたつめは語呂合わせ」
暗記の定番・語呂合わせ。
「何かを覚えるのには役立つけど、活用できる場所はテストだけ。丸暗記だと応用が効かないのよ」
今の時代、スマホに向かって喋れば、答えを教えてくれる。いちいち語呂合わせで思い出すより、早いし正確だ。
「そんなバカな、ふっくらブラジャー愛のあとは無意味だったのか。せっかく覚えたのに」
「ハロゲンね。それで、元素記号は覚えていて?」
「…………ふっくらだから、Hu?」
ハロゲンはF(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、I(ヨウ素)、At(アスタチン)、Ts(テネシン)だ。余談だがハロゲンは塩を作るものという意味だ。
「論外ね。語呂合わせを覚えるのに夢中で、ハロゲンのことは一切覚えてない。バカも極まってるわね」
語呂合わせはあくまで目的のための手段。なのに桔梗は手段が目的になっていた。これには反論のしようもない。
「ともかく語呂合わせはその場しのぎの技術。長い目で見たら意味なし」
周辺の知識も覚えないと、なぜそうなったのか、どうしてこれだったのか、という繋がりがわからない。
覚えていればなんとかなる時代は過去の話。
「勉強に関する誤解、みっつめは集中学習」
「しゅうちゅうがくしゅう?」
ある日の放課後。雑談部では当たり前に桔梗が悩み相談を持ちかける。
「ここは雑談部よ。勉強がしたいなら、教師にでも泣きつきなさい。雑談する暇なんてないでしょ」
「いやぁ手厳しい。簡単に覚えられる方法があるなら俺も知りたい」
桔梗も学校の成績はよくない。魔法のような勉強方法があるなら知りたい。
「バカね、桔梗は適度にバカだから価値があるのよ。聡明な桔梗は私には価値がない。だから、このままバカでいなさい」
華薔薇にとって桔梗は適度にバカで適度に操りやすいから、価値を見出だしている。なのに賢さを身に付けたら、価値が半減する。
雑談要員として不適切になる。
しかし、華薔薇が桔梗に勉強するな、と強制はできない。
「そうかバカだからいいのか……ってバカにしてんじゃん。俺だって賢くなりたい」
「賢い桔梗ねぇ、うーーん、気持ち悪いわね」
メガネをクイっとあげて、間違いを指摘する桔梗は得体がしれない。
「ひどくね。絶対かっこいい、問題にスマートに答える俺だぜ、最高だろ」
自分のことは自分がよく理解していると一般では言うものの、実際には部外者の方が理解している。主観より客観の方が信憑性は高い。
「天地がひっくり返っても桔梗が賢くなることはないでしょう」
「俺だって勉強したら華薔薇を越える天才になるに決まってる」
「いつか来るといいわね、そんな日が」
夢を見るのも、妄想するのも自由だ。誰にも侵せない権利。
「もし、桔梗が私より賢くなったら、潔く頭を垂れて教えを請わせてもらおうかしら。とても楽しみよ」
自分よりバカに教えを乞うのは屈辱だが、自分より賢い相手に教えてもらえるのはまたとない幸福だ。たとえ同級生だろうと華薔薇は素直に頭を下げる。
年齢や性別は関係なく、指導者に敬意を払うのは当然だ。
「ふははっ、待ってろよ。いつか俺が華薔薇を導いてやるからな」
華薔薇より賢くなっていたら、華薔薇に頭を下げられてもどうも思わないだろう。賢者はちっぽけなプライドなど持ち合わせていない。
必要なら頭を下げるのは当たり前。些細な欲求を満たそうとしているようでは到底、華薔薇に届かない。本質を理解している人は些細なことにこだわらない。
「では、今回の相談は桔梗が解決してみなさい。私を越えるのに、私の手助けは不要よね」
「無理です、ごめんなさい。どうか華薔薇のお力をわたくしめにお貸しください」
決意虚しく、刹那で掌を返す桔梗。掌を返す速さを競う大会があれば、入賞確実だ。
「掌を返すのが早すぎる。少しは自分で考えなさいよ。最初から、無理だと決めつけるのは早計よ」
「もしかして、俺でもアカツメクサの相談に答えられるのか?」
「無理ね」
垂らされた一筋の希望は、掴む前にバッサリ切り捨てられた。
「やっぱりぃぃぃ。そうだよな、勉強できない奴が勉強教えられるわけないよな。期待した俺がバカでした」
最初から手をつけずに諦めるのはよくない。何を持っていて、何を持っていないのか、選別してからでも遅くない。
答えを持ち合わせていないから、結果として相談を断るのは構わない。しかし、相談内容を吟味せずに、即座に断るのは言語道断。ただの逃げだ。
「やってない人、結果を出してない人が何を教えるのよ。失敗する方法を得意満面教えられても迷惑よ」
失敗や間違いを知れば、自分が失敗や間違いを犯さなくなるので、一概に無意味と一蹴できない。
正しいことを続ける方がよっぽど大事だ。
失敗や間違いを回避しても、普通の結果か成功でしかない。正しいことを続けたら、結果は大成功間違いなし。
失敗や間違いは反面教師として引き合いに出すくらいでいい。反面教師が前に出る必要はない。
「ぐすんっ、俺だって勉強できるようになりたい」
「高校生になって、いじけて泣くなんてみっともない。仕方ないから、今日は勉強について雑談しましょうか」
勉強ができて人生で損することはない。バカか天才を選べるなら、誰だって天才を選ぶ。
バカでも猿でもわかるくらいに勉強の能力は高い方がいい。
「やっぱり生まれ持った才能がないと、勉強についていけないんだろ。誰もが、華薔薇みたいに勉強できるわげじゃないよな。羨ましいな」
「私は決して天才じゃない。今でこそ勉強ができるようになったけど、昔は勉強がとても苦手だった」
「え?」
桔梗から見た華薔薇はなんでもできる天才に映っている。しかし華薔薇が最初から卒なくクリアしていたことはない。ひとつひとつ練習と努力と工夫で乗り越えてきた。
華薔薇のステータスは全て人生をかけて習得した能力だ。生まれ持った才能はない。
「勉強はね、やっても無駄な非効率な勉強を辞めて、効率のいい勉強法を会得したらいいの。だから最初にすべきは、勉強の方法の勉強よ」
「勉強の、勉強? それは何を勉強するんだ」
勉強はがむしゃらにやれば必ず成果が出る、なんて幻想はない。机に齧りついても得られるのは疲労感と達成感だけ。勉強した内容が頭に残っていないのは多々ある。
なぜなら、勉強の方法が間違っているから。間違ったことを延々と続けても成果が出ないのは明白。
バスケットボールのシュート練習をサッカーのゴールに向かって行っても意味はない。バスケットボールが上手くなりたいなら体育館でバスケットボールのゴールに向かってシュートをしないといけない。
でも、勉強では間違っていることに気づいていないから、勉強をしても頭に内容が残らない。
「桔梗は初めてスポーツをする時に誰かに指導してもらったことはある?」
「そりゃもちろん、あるぞ。いきなりできるわけないだろ」
「そうよ、教えてもらってないことはできない。当然よね。それって勉強でも同じでしょ。私たちは子供の頃、正しい勉強の仕方を教えてもらってない。だから、勉強ができないのは当たり前」
勉強は正しいか間違っているかわからない状態で続けている。正しい人は勉強ができて、間違っている人は勉強ができない。
頭の出来の違いはそれだけ。
「つまり、正しい勉強の仕方さえ学べば、誰でも勉強はできるようになる」
「俺は間違っていたのか。俺も勉強できるようになるのか」
生徒はおろか教師でさえ正しい勉強の仕方を知らない。そのため勉強で苦労する生徒が後を絶たない。
「もちろん」
「よっしゃー、これで俺も天才の仲間入りじゃぁぁぁ」
テストの成績と天才は別物なので、勉強ができる秀才にはなれても、天才にはなれない。やる気に水を差す無粋な真似は華薔薇もしない。
ある程度勉強ができるようになると、自分が凡人だと気づく。その落ち込む姿を見る方が、よっぽど愉快だ。
落差は大きければ大きいほどに感情の揺れ幅も大きくなる。種を蒔いて育てて、収穫するのも格別だ。
「頑張るのはとてもいいことよ、ふふ」
種を蒔くのにお金がかからず、リスクもない。ならば、蒔けるだけ蒔いた方がいい。どれかが芽吹けば、儲けもの。仮に全部枯れても元手はかかっていないため、損失はないに等しい。
「今日から俺は勉強王だ」
「勉強王(自称)さんに問うわ。教科書にハイライトやアンダーラインを引くことはあるかしら?」
「ありまくりだぜ、大事な部分はちゃんとマーカーを使ってる。しかも色分けもしているぞ」
どうだ、とばがりのどや顔が鼻につく。勉強してますアピールだが、
「それ無駄よ」
全くの無駄だ。
「なにぃぃぃ」
「効果なしよ」
「うそぉぉぉ」
「舟盗人を徒歩で追う」
「……」
「灯明で尻を焙る」
「…………」
「籠で水汲む」
「…………うおおおお、華薔薇が難しい言葉でいじめてくるっ!」
舟盗人を徒歩で追う。盗んだ舟に乗って逃げる盗人を、陸から徒歩で追いかけるということから、無駄な骨折りをするということ。方法が適切でないこと。
灯明を尻で焙る。ろうそくのような弱い火で尻をあぶってみても少しも暖かくないということから、手段を誤ったり、方法が不適切なために効果が上がらないということ。
籠で水汲む。籠で水を汲もうとしても、水が流れて出てしまい、まったく溜められないということから、どんなに苦労しても効果がなく、良い結果が得られないということ。
どれも無駄に関することわざだ。
「失敬ね。いじめてないわよ、桔梗の無能を確認しただけよ」
いじめだろうが、無能の確認だろうが、どっちにしろ質が悪いことに変わりない。
「ハイライトやアンダーラインは勉強をやった気分にさせてくれるだけ。読み返すと、その部分だけは理解できるから、わかった気になる。実際には何も勉強できてない。ただの錯覚なのよ」
「がびーん、そんな、俺は、勉強できてない、勘違い野郎なのか」
「安心しなさい、勉強に関する間違いはまだまだあるから」
全然安心できない、とさらに気分が沈む桔梗だ。しかし間違いを正さないと前に進めない。
自称勉強王の踏ん張り所だ。
「勉強に関する誤解、ふたつめは語呂合わせ」
暗記の定番・語呂合わせ。
「何かを覚えるのには役立つけど、活用できる場所はテストだけ。丸暗記だと応用が効かないのよ」
今の時代、スマホに向かって喋れば、答えを教えてくれる。いちいち語呂合わせで思い出すより、早いし正確だ。
「そんなバカな、ふっくらブラジャー愛のあとは無意味だったのか。せっかく覚えたのに」
「ハロゲンね。それで、元素記号は覚えていて?」
「…………ふっくらだから、Hu?」
ハロゲンはF(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、I(ヨウ素)、At(アスタチン)、Ts(テネシン)だ。余談だがハロゲンは塩を作るものという意味だ。
「論外ね。語呂合わせを覚えるのに夢中で、ハロゲンのことは一切覚えてない。バカも極まってるわね」
語呂合わせはあくまで目的のための手段。なのに桔梗は手段が目的になっていた。これには反論のしようもない。
「ともかく語呂合わせはその場しのぎの技術。長い目で見たら意味なし」
周辺の知識も覚えないと、なぜそうなったのか、どうしてこれだったのか、という繋がりがわからない。
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