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脳科学から見るストレスとの付き合い方(前)
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「今回はお悩み相談とは違うんだよな」
ある日の放課後。雑談部で桔梗は悩み相談を持ちかけない。
「何度だって言うけど、ここは雑談部。面白おかしくお喋りする場所。悩み相談は受け付けてない」
雑談部の部室では華薔薇と桔梗が雑談に興じている。つまり真っ当に部活動に勤しんでいる。
「悩みじゃなくて愚痴なんだよ。ペンネームはないから、名前は一旦私の心の友はラベンダーさんとする。内容だが『毎日毎日イライラする、どうしてこんなにストレスが溜まるの』という愚痴なんだ。なんとかならないか?」
「ストレス発散したいなら、遊びにでも連れて行きなさい。リフレッシュしたら治まるでしょ」
「それがさ、一時的に機嫌はよくなるけど、少し経ったらまたストレスに悩まされるそうなんだよ。いい方法はないか?」
愚痴とは言うものの、華薔薇には普段と変わらない悩み相談だ。要はストレス対策を教えてほしい、という悩み相談だ。
「ストレスとは無縁そうよね、桔梗は」
「俺だって毎日ストレス感じまくりだ。舐めるな」
過剰なストレスは心身ともに疲弊するので好ましくない。ストレスで体調を崩す人もいるが、一見すると桔梗が大きなストレスを溜めているとは思えない。
華薔薇にはなんだかんだで桔梗は楽しく映っている。内心ではストレスを抱えている可能性は否定できないが、特に問題になりそうなストレスを抱えているとは思えない。
「桔梗のお気楽さを私の心の友はラベンダーも見習えば、少しはストレスといい付き合いができるでしょう」
「誰がお気楽だ。毎日毎日、とある女性から言葉責めという精神的苦痛に苛まれているんだ。俺の心はボロボロだよ」
「それは大変ね。桔梗をいじめているのは誰かしら、顔を見てみたいわ」
桔梗を心配する華薔薇は満面の笑みを浮かべている。心配しているというより、楽しんでいると表した方がしっくりくる。
「お前だぁ、華薔薇。毎日毎日、雑談という名のいじめを繰り返す悪魔め。俺がどれだけつらい思いをしていると思っているんだ。慰謝料を請求する」
心の奥底に溜まった不満をぶちまける。これまで堪え忍んだ分が一気に爆発したようだ。
「不愉快ね。そして的外れな意見よ。私は桔梗に一度も雑談部に来ることを強制していないわ。雑談部に参加のノルマもないから来る理由はない。辞めたければ、いつでも辞めれる親切設計。桔梗は自分の意思で雑談部に足を運んでいるの。それなのに、雑談をしていて精神的苦痛ですって、違うでしょ」
「違くないだろ」
中身のない反論は意味をなさない。ただ言葉に反応しただけ。
「桔梗は、私にわざわざいじめられに来るドMなのよ。いじめられて喜ぶド変態でしょ」
桔梗は悩み相談を解決する友達思いの学生。しかし見方を変えれば、いじめられるために雑談ネタを持ってくるド変態。
「俺は変態じゃないいいい。俺は至ってノーマルだぁぁぁ」
「否定しなくていいのよ。私は桔梗をいじめて楽しい、桔梗はいじめてもらって嬉しい。利害は一致しているでしょ」
これからもよろしくね、と華薔薇は笑顔で手を差しのべる。
「違うって、俺は相談を解決するために来てるの。いじめられたいなんて微塵も思ってない。最短の解決ルートだから、我慢してるだけ」
「建前はいいわよ、ここには部外者はいないのだから、本音で語りなさい」
「話を聞けえっ! 俺は変態じゃないぃぃぃっ!」
桔梗の魂の叫びが部室を越えて校舎全体に響き渡る。華薔薇もこれには思わず肩を竦めて耳を塞ぐ。
「はぁ……はぁ……はぁ、つ、疲れた」
「あはははは、桔梗面白いよ。本当に雑談部に来てくれてありがとう。心から感謝するよ」
華薔薇は嘘偽りなく桔梗に感謝する。桔梗も見たことのない満開の笑みだ。普段の凛とした姿も美しいが、幼い子供のように無邪気に笑う姿に見とれてしまう。
「……………………かわいい」
桔梗の呟きは残念なのか、喜ばしいのかわからないが、心を踊らせていた華薔薇には聞こえなかった。
「さて、桔梗が変態とわかったところで、私の心の友はラベンダーの雑談に戻りましょう」
横道に逸れるのも雑談の醍醐味。
「ちょい待てぃ。俺は変態じゃないから、誤解したまま進めんな」
「はぁ、実は私にとって桔梗が変態かどうかは興味ないの。私は桔梗で楽しんで、雑談できるなら構わないの。桔梗の性癖なんて微塵も興味ないの。そんなに言うなら、桔梗はノーマルなのね。はいはい」
「まあ、それならいいか」
別の問題が発生したが、誤解が解けたので渋々納得する桔梗。
華薔薇の目的は桔梗で楽しむことと雑談すること。桔梗の性癖が雑談に相応しいなら雑談にする。サドならサドで楽しみ、マゾならマゾで楽しむのが華薔薇だ。
華薔薇と桔梗では目的も価値観も違う。張り合いになるのは少ない。
「毎日イライラしている、つまり過剰にストレスを受けている状態ね。これは、とても体に悪いわ。桔梗も心当たりはあるかしら」
「それは、もちろん。ストレスが原因で自殺したりするニュースは見たことある。俺だってイライラしてる時は物に当たったりするし」
過剰なストレスに晒されていると正常な判断ができなくなる。冷静なら人や物に当たることはない。一見ストレス発散行為に見えるが、実際は脳機能が落ちて冷静な判断が下せていない。
「前頭前皮質には色々な部位があるけれど、現実的な判断を下す部位、意識した思考をする部位、パターンを学習する部位、と様々な部位に別れている」
過剰なストレスは脳の状態を一変させてしまう。前頭前皮質の機能が落ちる。最悪の場合は停止する。
停止した脳機能に期待はできない。
「現実的な判断を下せないなら、間違った選択を取ってしまう。意識した思考がてきないと、思考は停止状態になる。パターン学習を忘れれば、同じミスを繰り返してしまう」
適切に働いている脳と機能停止した脳で同じ働きができないのは明白。
「他にも感情の統制を司る部位にも影響を与えるから、過剰なストレスは感情の爆発を招く」
「それって最悪じゃん」
間違った判断を何も考えずに繰り返す。端的に言ってひとつもいいことがない。
「そうよ、最悪ね。過剰なストレスは脳機能にダメージを与える、デメリットだらけなのよ」
「やっぱストレスってないほうがいいだな」
生活する上でストレスを感じず過ごすのは不可能だ。多かれ少なかれストレスとは必ず対峙する。
「そうでもないわ。ストレスにもメリットはある」
必ずしもストレスは悪者ではない。適度なストレスは脳機能を高める性質もある。
「嘘だろ、ストレスの何がいいってんだよ。ストレスに万歳してる奴なんか見たことないぞ」
何かとストレスの多い現代社会ではストレス解消を謳ったグッズやイベントはあれど、自らストレスに晒されましょうという趣旨はない。
残念ながらストレス=悪、という図式は完成されている。
「桔梗もストレスのメリットは享受しているわよ。意識してなくても」
「いつ、どこで、地球が何回回ったときだよ」
まるで小学生のような反応に少し華薔薇は思案する。
さらっと流して次に進めて無視する。せっかくのボケをスルーされた悲しみの桔梗を見れる。
反対に真面目に計算したら、ちんぷんかんぷんな計算式にオーパーヒートする桔梗が見れる。
ふたつにひとつ。華薔薇はどちらが面白くなるか、刹那で弾き出す。
「宇宙が誕生したのがおよそ138億年前。そこから地球が誕生したのはおよそ46億年前。求めている地球の回転数を公転ではなく、自転とするなら年間の日数、365をかければいい。およそ1兆6790億回回ったときよ」
華薔薇は雑談が大きく横に逸れる選択をした。雑談部は横道に逸れるのも醍醐味だ。
「お、おう、めっちゃ地球回ってんな。目を回さないといいけど」
既に桔梗の頭では数字が大きすぎて、正確に把握できていない。
「でもね、昔の地球は自転が24時間ではなないのよ。地球が誕生した頃は、およそ5時間だそうよ。1年は1800日になるわ。地球の動きと今までの歴史を観測すると、1年が500日辺りが真ん中の落ち着いた数字になる。それで計算すると、およそ2兆3000億回になるわ」
「いや、もういいって、俺が悪かった。ごめんなさい」
桔梗の謝罪を無視して、華薔薇は地球の回転数を求め続ける。
「地球の誕生はおよそ46億年前だけど、もう少し正確にすると45億4000万年、誤差は±5000万年。地球の時点スピードが一定の値で遅くなっているとするなら、地球は誕生してから、3兆回を越える回転をしている」
「全然、意味がわからん」
桔梗は思考を放棄している。だが雑談部の雑談である以上、無視することはできない。
わからないなら、わからないなりに雑談をしないと雑談部の意味がない。意味がないなら、所属する意味もなくなる。雑談を疎かにする部員に価値はない。つまり退部を意味する。
「地球の誕生と自転車スピードが正確でないから、求められるのは範囲なのよ、実際。仮に地球が誕生が45億年前で自転周期が24時間変わらないのなら、閏年を考慮しておよそ1兆6436億回。自転周期が5時間で地球の誕生が最大の46億年前なら、およそ8兆回を少し越えることになるわ」
つまり地球の自転の回数は1兆6436億回から8兆592億回の間になる。
「……ほげぇー」
漫画なら頭から煙を出す桔梗がいただろう。焦点が合わず、虚空を見定めている。
「やれやれ、地球の回転に目を回したようね。不甲斐ない。これに懲りたら、バカな発言は控えなさい」
オーバーヒートした桔梗を見れて内心満足している華薔薇だった。たまになら盛大に横道にそれるのも一興である。
ある日の放課後。雑談部で桔梗は悩み相談を持ちかけない。
「何度だって言うけど、ここは雑談部。面白おかしくお喋りする場所。悩み相談は受け付けてない」
雑談部の部室では華薔薇と桔梗が雑談に興じている。つまり真っ当に部活動に勤しんでいる。
「悩みじゃなくて愚痴なんだよ。ペンネームはないから、名前は一旦私の心の友はラベンダーさんとする。内容だが『毎日毎日イライラする、どうしてこんなにストレスが溜まるの』という愚痴なんだ。なんとかならないか?」
「ストレス発散したいなら、遊びにでも連れて行きなさい。リフレッシュしたら治まるでしょ」
「それがさ、一時的に機嫌はよくなるけど、少し経ったらまたストレスに悩まされるそうなんだよ。いい方法はないか?」
愚痴とは言うものの、華薔薇には普段と変わらない悩み相談だ。要はストレス対策を教えてほしい、という悩み相談だ。
「ストレスとは無縁そうよね、桔梗は」
「俺だって毎日ストレス感じまくりだ。舐めるな」
過剰なストレスは心身ともに疲弊するので好ましくない。ストレスで体調を崩す人もいるが、一見すると桔梗が大きなストレスを溜めているとは思えない。
華薔薇にはなんだかんだで桔梗は楽しく映っている。内心ではストレスを抱えている可能性は否定できないが、特に問題になりそうなストレスを抱えているとは思えない。
「桔梗のお気楽さを私の心の友はラベンダーも見習えば、少しはストレスといい付き合いができるでしょう」
「誰がお気楽だ。毎日毎日、とある女性から言葉責めという精神的苦痛に苛まれているんだ。俺の心はボロボロだよ」
「それは大変ね。桔梗をいじめているのは誰かしら、顔を見てみたいわ」
桔梗を心配する華薔薇は満面の笑みを浮かべている。心配しているというより、楽しんでいると表した方がしっくりくる。
「お前だぁ、華薔薇。毎日毎日、雑談という名のいじめを繰り返す悪魔め。俺がどれだけつらい思いをしていると思っているんだ。慰謝料を請求する」
心の奥底に溜まった不満をぶちまける。これまで堪え忍んだ分が一気に爆発したようだ。
「不愉快ね。そして的外れな意見よ。私は桔梗に一度も雑談部に来ることを強制していないわ。雑談部に参加のノルマもないから来る理由はない。辞めたければ、いつでも辞めれる親切設計。桔梗は自分の意思で雑談部に足を運んでいるの。それなのに、雑談をしていて精神的苦痛ですって、違うでしょ」
「違くないだろ」
中身のない反論は意味をなさない。ただ言葉に反応しただけ。
「桔梗は、私にわざわざいじめられに来るドMなのよ。いじめられて喜ぶド変態でしょ」
桔梗は悩み相談を解決する友達思いの学生。しかし見方を変えれば、いじめられるために雑談ネタを持ってくるド変態。
「俺は変態じゃないいいい。俺は至ってノーマルだぁぁぁ」
「否定しなくていいのよ。私は桔梗をいじめて楽しい、桔梗はいじめてもらって嬉しい。利害は一致しているでしょ」
これからもよろしくね、と華薔薇は笑顔で手を差しのべる。
「違うって、俺は相談を解決するために来てるの。いじめられたいなんて微塵も思ってない。最短の解決ルートだから、我慢してるだけ」
「建前はいいわよ、ここには部外者はいないのだから、本音で語りなさい」
「話を聞けえっ! 俺は変態じゃないぃぃぃっ!」
桔梗の魂の叫びが部室を越えて校舎全体に響き渡る。華薔薇もこれには思わず肩を竦めて耳を塞ぐ。
「はぁ……はぁ……はぁ、つ、疲れた」
「あはははは、桔梗面白いよ。本当に雑談部に来てくれてありがとう。心から感謝するよ」
華薔薇は嘘偽りなく桔梗に感謝する。桔梗も見たことのない満開の笑みだ。普段の凛とした姿も美しいが、幼い子供のように無邪気に笑う姿に見とれてしまう。
「……………………かわいい」
桔梗の呟きは残念なのか、喜ばしいのかわからないが、心を踊らせていた華薔薇には聞こえなかった。
「さて、桔梗が変態とわかったところで、私の心の友はラベンダーの雑談に戻りましょう」
横道に逸れるのも雑談の醍醐味。
「ちょい待てぃ。俺は変態じゃないから、誤解したまま進めんな」
「はぁ、実は私にとって桔梗が変態かどうかは興味ないの。私は桔梗で楽しんで、雑談できるなら構わないの。桔梗の性癖なんて微塵も興味ないの。そんなに言うなら、桔梗はノーマルなのね。はいはい」
「まあ、それならいいか」
別の問題が発生したが、誤解が解けたので渋々納得する桔梗。
華薔薇の目的は桔梗で楽しむことと雑談すること。桔梗の性癖が雑談に相応しいなら雑談にする。サドならサドで楽しみ、マゾならマゾで楽しむのが華薔薇だ。
華薔薇と桔梗では目的も価値観も違う。張り合いになるのは少ない。
「毎日イライラしている、つまり過剰にストレスを受けている状態ね。これは、とても体に悪いわ。桔梗も心当たりはあるかしら」
「それは、もちろん。ストレスが原因で自殺したりするニュースは見たことある。俺だってイライラしてる時は物に当たったりするし」
過剰なストレスに晒されていると正常な判断ができなくなる。冷静なら人や物に当たることはない。一見ストレス発散行為に見えるが、実際は脳機能が落ちて冷静な判断が下せていない。
「前頭前皮質には色々な部位があるけれど、現実的な判断を下す部位、意識した思考をする部位、パターンを学習する部位、と様々な部位に別れている」
過剰なストレスは脳の状態を一変させてしまう。前頭前皮質の機能が落ちる。最悪の場合は停止する。
停止した脳機能に期待はできない。
「現実的な判断を下せないなら、間違った選択を取ってしまう。意識した思考がてきないと、思考は停止状態になる。パターン学習を忘れれば、同じミスを繰り返してしまう」
適切に働いている脳と機能停止した脳で同じ働きができないのは明白。
「他にも感情の統制を司る部位にも影響を与えるから、過剰なストレスは感情の爆発を招く」
「それって最悪じゃん」
間違った判断を何も考えずに繰り返す。端的に言ってひとつもいいことがない。
「そうよ、最悪ね。過剰なストレスは脳機能にダメージを与える、デメリットだらけなのよ」
「やっぱストレスってないほうがいいだな」
生活する上でストレスを感じず過ごすのは不可能だ。多かれ少なかれストレスとは必ず対峙する。
「そうでもないわ。ストレスにもメリットはある」
必ずしもストレスは悪者ではない。適度なストレスは脳機能を高める性質もある。
「嘘だろ、ストレスの何がいいってんだよ。ストレスに万歳してる奴なんか見たことないぞ」
何かとストレスの多い現代社会ではストレス解消を謳ったグッズやイベントはあれど、自らストレスに晒されましょうという趣旨はない。
残念ながらストレス=悪、という図式は完成されている。
「桔梗もストレスのメリットは享受しているわよ。意識してなくても」
「いつ、どこで、地球が何回回ったときだよ」
まるで小学生のような反応に少し華薔薇は思案する。
さらっと流して次に進めて無視する。せっかくのボケをスルーされた悲しみの桔梗を見れる。
反対に真面目に計算したら、ちんぷんかんぷんな計算式にオーパーヒートする桔梗が見れる。
ふたつにひとつ。華薔薇はどちらが面白くなるか、刹那で弾き出す。
「宇宙が誕生したのがおよそ138億年前。そこから地球が誕生したのはおよそ46億年前。求めている地球の回転数を公転ではなく、自転とするなら年間の日数、365をかければいい。およそ1兆6790億回回ったときよ」
華薔薇は雑談が大きく横に逸れる選択をした。雑談部は横道に逸れるのも醍醐味だ。
「お、おう、めっちゃ地球回ってんな。目を回さないといいけど」
既に桔梗の頭では数字が大きすぎて、正確に把握できていない。
「でもね、昔の地球は自転が24時間ではなないのよ。地球が誕生した頃は、およそ5時間だそうよ。1年は1800日になるわ。地球の動きと今までの歴史を観測すると、1年が500日辺りが真ん中の落ち着いた数字になる。それで計算すると、およそ2兆3000億回になるわ」
「いや、もういいって、俺が悪かった。ごめんなさい」
桔梗の謝罪を無視して、華薔薇は地球の回転数を求め続ける。
「地球の誕生はおよそ46億年前だけど、もう少し正確にすると45億4000万年、誤差は±5000万年。地球の時点スピードが一定の値で遅くなっているとするなら、地球は誕生してから、3兆回を越える回転をしている」
「全然、意味がわからん」
桔梗は思考を放棄している。だが雑談部の雑談である以上、無視することはできない。
わからないなら、わからないなりに雑談をしないと雑談部の意味がない。意味がないなら、所属する意味もなくなる。雑談を疎かにする部員に価値はない。つまり退部を意味する。
「地球の誕生と自転車スピードが正確でないから、求められるのは範囲なのよ、実際。仮に地球が誕生が45億年前で自転周期が24時間変わらないのなら、閏年を考慮しておよそ1兆6436億回。自転周期が5時間で地球の誕生が最大の46億年前なら、およそ8兆回を少し越えることになるわ」
つまり地球の自転の回数は1兆6436億回から8兆592億回の間になる。
「……ほげぇー」
漫画なら頭から煙を出す桔梗がいただろう。焦点が合わず、虚空を見定めている。
「やれやれ、地球の回転に目を回したようね。不甲斐ない。これに懲りたら、バカな発言は控えなさい」
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