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ネクロマンサーとスライムその3
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騒乱は更なる騒乱を呼び、群衆の狂気を加速させた。モルケス城の中庭に集められた少女達は自らの運命を嘆いた。
ある者は激しく髪を振り立て、ある者は天に向かって呪いの言葉を喚き散らしながら。
篝火の燃える祭壇の前に立ち、トーマスは集まった群衆を一瞥した。
「皆さんよく聞いてくださいっ、今、我々は危機に瀕し、窮地に追いやられていますっ、
何故ならばあの地獄の帝王セイジロウが現れたからですっ、この平和なモルケスにっ、
我々はこの状況を打破せねばならないのですっ、その為の犠牲はやむを得ませんっ」
集まった民衆は口々にそうだ、そうだとトーマスの言葉を肯定した。
それに気を良くしたトーマスは一同に対し、鷹揚に頷いてみせた。
やはり民衆に金で雇ったサクラを仕込んでおいたのは正解だったようだ。
大衆操作の基本は同調圧力と扇動にある。
最初に同調圧力を掛けて少数の反対派を黙らせてから、民衆を煽って誘導してやればいい。
トーマスはこの危機をくぐり抜けた先のことを考えていた。
野心である。あれほど怯えていたトーマスの中で野心が孕んできたのだ。
これにはトーマス自身も驚いていた。人間とは恐怖に怯えながらも金勘定が出来る生き物なのだと。
ここで悪しきネクロマンサーが立ち去れば、ますます信者は自分を崇め奉るだろう。
そして人は称えるのだ。これぞ神の奇跡だと。
生贄として柱に括りつけられた娘達を囲み、人々が踊り始める。
炎に照らされた民衆の横顔はどこか狂気を滲ませていた。
獣のように唸り声を上げ、生贄を中心にグルグルと回っては飛び跳ねる人々──不気味な笑みを浮かべ、奇声を発しながら踊り狂う者たち。
農夫が縛られた娘達を竹槍でつつき、楽しそうにケタケタと笑っている。
まるで捕らえた獲物をいたぶる獣のようだ。
今のモルケス城には理性だとか、人間の尊厳などという言葉はどこにも見当たらなかった。
「それでは今より火を放ち、この娘達を炎の精霊に捧げたいと思います」
トーマスの言葉に従い、人々は縛られた娘達の足元に薪を組み、油を撒いた。
一方、セイジロウとエリックはモルケス城の門を潜っていた。
大理石でできた白いアーチの門である。柱の部分には孔雀の彫刻が施されており、実に見事な出来栄えだった。
「今まで遠巻きでしか眺めたことがなかったが、こうして見ると人間の街と言うのは凄いもんなんだな、セイジロウ」
「ああ、色々あって興味深いだろう、エリック」
その時、けたたましい悲鳴がセイジロウの耳に飛び込んできた。嫌な予感がする。
セイジロウはすぐに悲鳴が飛んできた方角へと駆け出した。
その後をスライムであるエリックが必死で追いかける。
城の中庭へと出たふたりが見たものは、燃えさかる炎の渦に飲み込まれた少女達の姿だった。
一体誰がこんな酷い真似をしたのというのか──セイジロウは呪文を唱えると大雨を降らせ、火を消し止めた。
その時、民衆の誰かが叫んだ。「悪魔だっ、悪魔が来たっ」と。
セイジロウはその言葉をすぐに察すると大勢の人々に向かって言った。
「皆さん、とにかく落ち着いてくださいっ、まずは静まって慌てずに冷静になってくださいっ」
するとセイジロウの呼びかけに半ば暴徒と貸していた人々はすぐに押し黙った。
セイジロウはすぐに落ち着きを取り戻した人々にほっと胸を撫で下ろし、安堵した。
こういう時こそ冷静さが必要なのだ。
実際の所はこれらの群衆はセイジロウの言葉に冷静さを取り戻したのではなく、
その顔に恐れをなし、恐怖心にビクビクして押し黙って、呆然と立ち尽くしているだけだ。
「一体これはどういう事なのか、説明を聞かせてはいただけませんか?」
セイジロウにそう尋ねられても誰も答えられる者はいなかった。
まさか、セイジロウ自身を追い払うために娘達を生贄に捧げて神に祈っていたなどと、誰が言えるだろうか。
それも本人を目の前にして。
説明した瞬間、死神に魂を刈り取られるに決まっている──それが群集の共通認識だ。
「皆さん、生贄の儀式をしておられたようですが、それは何の為でしょうか。
そこで私はこう考えます。恐らくはこのモルケス城に悪魔が現れ、生贄を皆さんに要求したのだと」
中庭でひしめいている群衆はセイジロウの言葉が余り理解できなかった。
その原因の半分は、押し寄せる恐怖心と絶望感で思考力が麻痺していたのと、もう半分は先入観のせいである。
セイジロウの話を聞いていたエリックが、納得するようにその水色の身体をプルプル震わせながら言う。
「これはセイジロウの言う通りなんだろうな。だって、相手から要求されてもいないのに生贄を差し出すなんてそんなの馬鹿しかしない。
俺はよくスライムだって馬鹿にされたけど、そんな事するのはスライム以下の馬鹿だけだ」
エリックの言葉に群衆は顔を見合わせ始めた。
その中でトーマスは必死でセイジロウの言葉の真意を読み取ろうとしていた。
恐らくこれは何かの謎かけに違いないと。そしてトーマスはすぐに悟ったのである。
これはこの悪魔自身が生贄を要求しているに違いないと。その予想は全くの見当はずれだった。
脂汗を滲ませながらトーマスは無理やり笑みを作り、セイジロウの前に進み出た。
「せ、拙僧はトーマスともうす愚僧でございます。じ、実はこれは貴方様への歓迎の催し物でございまして、若い女子を揃えましたゆえ、
お好きな娘をお選びくださいませ。ああ、勿論足りなければすぐにでも新しい娘を用意いたします、閣下」
小太りの僧侶の言葉にセイジロウはどうするべきか悩んだ。
恐らくは客人に対して、このモルケス城では自国の娘を贈る風習でもあるのだろうと。
これは自分の常識とモルケスの人々との常識のズレの問題である。
だが、ここで断っては角が立つだろうし、彼らの気持ちを踏みにじることにもなりかねない。
「わかりました。では有り難く選ばせていただきましょう」
トーマス 僧侶 レベル8
体力10
物理攻撃力6
物理防御力6
魔法攻撃力13
魔法防御力11
精神力11
素早さ7
運9
このメタボリック体型の僧侶は少年の尻に狂っている。
また、強欲であり金貨の輝きには目がない。
おまけに口臭が酷く、ハゲである。
ある者は激しく髪を振り立て、ある者は天に向かって呪いの言葉を喚き散らしながら。
篝火の燃える祭壇の前に立ち、トーマスは集まった群衆を一瞥した。
「皆さんよく聞いてくださいっ、今、我々は危機に瀕し、窮地に追いやられていますっ、
何故ならばあの地獄の帝王セイジロウが現れたからですっ、この平和なモルケスにっ、
我々はこの状況を打破せねばならないのですっ、その為の犠牲はやむを得ませんっ」
集まった民衆は口々にそうだ、そうだとトーマスの言葉を肯定した。
それに気を良くしたトーマスは一同に対し、鷹揚に頷いてみせた。
やはり民衆に金で雇ったサクラを仕込んでおいたのは正解だったようだ。
大衆操作の基本は同調圧力と扇動にある。
最初に同調圧力を掛けて少数の反対派を黙らせてから、民衆を煽って誘導してやればいい。
トーマスはこの危機をくぐり抜けた先のことを考えていた。
野心である。あれほど怯えていたトーマスの中で野心が孕んできたのだ。
これにはトーマス自身も驚いていた。人間とは恐怖に怯えながらも金勘定が出来る生き物なのだと。
ここで悪しきネクロマンサーが立ち去れば、ますます信者は自分を崇め奉るだろう。
そして人は称えるのだ。これぞ神の奇跡だと。
生贄として柱に括りつけられた娘達を囲み、人々が踊り始める。
炎に照らされた民衆の横顔はどこか狂気を滲ませていた。
獣のように唸り声を上げ、生贄を中心にグルグルと回っては飛び跳ねる人々──不気味な笑みを浮かべ、奇声を発しながら踊り狂う者たち。
農夫が縛られた娘達を竹槍でつつき、楽しそうにケタケタと笑っている。
まるで捕らえた獲物をいたぶる獣のようだ。
今のモルケス城には理性だとか、人間の尊厳などという言葉はどこにも見当たらなかった。
「それでは今より火を放ち、この娘達を炎の精霊に捧げたいと思います」
トーマスの言葉に従い、人々は縛られた娘達の足元に薪を組み、油を撒いた。
一方、セイジロウとエリックはモルケス城の門を潜っていた。
大理石でできた白いアーチの門である。柱の部分には孔雀の彫刻が施されており、実に見事な出来栄えだった。
「今まで遠巻きでしか眺めたことがなかったが、こうして見ると人間の街と言うのは凄いもんなんだな、セイジロウ」
「ああ、色々あって興味深いだろう、エリック」
その時、けたたましい悲鳴がセイジロウの耳に飛び込んできた。嫌な予感がする。
セイジロウはすぐに悲鳴が飛んできた方角へと駆け出した。
その後をスライムであるエリックが必死で追いかける。
城の中庭へと出たふたりが見たものは、燃えさかる炎の渦に飲み込まれた少女達の姿だった。
一体誰がこんな酷い真似をしたのというのか──セイジロウは呪文を唱えると大雨を降らせ、火を消し止めた。
その時、民衆の誰かが叫んだ。「悪魔だっ、悪魔が来たっ」と。
セイジロウはその言葉をすぐに察すると大勢の人々に向かって言った。
「皆さん、とにかく落ち着いてくださいっ、まずは静まって慌てずに冷静になってくださいっ」
するとセイジロウの呼びかけに半ば暴徒と貸していた人々はすぐに押し黙った。
セイジロウはすぐに落ち着きを取り戻した人々にほっと胸を撫で下ろし、安堵した。
こういう時こそ冷静さが必要なのだ。
実際の所はこれらの群衆はセイジロウの言葉に冷静さを取り戻したのではなく、
その顔に恐れをなし、恐怖心にビクビクして押し黙って、呆然と立ち尽くしているだけだ。
「一体これはどういう事なのか、説明を聞かせてはいただけませんか?」
セイジロウにそう尋ねられても誰も答えられる者はいなかった。
まさか、セイジロウ自身を追い払うために娘達を生贄に捧げて神に祈っていたなどと、誰が言えるだろうか。
それも本人を目の前にして。
説明した瞬間、死神に魂を刈り取られるに決まっている──それが群集の共通認識だ。
「皆さん、生贄の儀式をしておられたようですが、それは何の為でしょうか。
そこで私はこう考えます。恐らくはこのモルケス城に悪魔が現れ、生贄を皆さんに要求したのだと」
中庭でひしめいている群衆はセイジロウの言葉が余り理解できなかった。
その原因の半分は、押し寄せる恐怖心と絶望感で思考力が麻痺していたのと、もう半分は先入観のせいである。
セイジロウの話を聞いていたエリックが、納得するようにその水色の身体をプルプル震わせながら言う。
「これはセイジロウの言う通りなんだろうな。だって、相手から要求されてもいないのに生贄を差し出すなんてそんなの馬鹿しかしない。
俺はよくスライムだって馬鹿にされたけど、そんな事するのはスライム以下の馬鹿だけだ」
エリックの言葉に群衆は顔を見合わせ始めた。
その中でトーマスは必死でセイジロウの言葉の真意を読み取ろうとしていた。
恐らくこれは何かの謎かけに違いないと。そしてトーマスはすぐに悟ったのである。
これはこの悪魔自身が生贄を要求しているに違いないと。その予想は全くの見当はずれだった。
脂汗を滲ませながらトーマスは無理やり笑みを作り、セイジロウの前に進み出た。
「せ、拙僧はトーマスともうす愚僧でございます。じ、実はこれは貴方様への歓迎の催し物でございまして、若い女子を揃えましたゆえ、
お好きな娘をお選びくださいませ。ああ、勿論足りなければすぐにでも新しい娘を用意いたします、閣下」
小太りの僧侶の言葉にセイジロウはどうするべきか悩んだ。
恐らくは客人に対して、このモルケス城では自国の娘を贈る風習でもあるのだろうと。
これは自分の常識とモルケスの人々との常識のズレの問題である。
だが、ここで断っては角が立つだろうし、彼らの気持ちを踏みにじることにもなりかねない。
「わかりました。では有り難く選ばせていただきましょう」
トーマス 僧侶 レベル8
体力10
物理攻撃力6
物理防御力6
魔法攻撃力13
魔法防御力11
精神力11
素早さ7
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