人間の赤ん坊に憑依した悪魔の俺がデーモンサマナー学科に入れられるなんて皮肉でしかない

湯島

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朝鮮半島の呪術

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所々ひび割れてめくれたアスファルトの道路を歩く。無人だった。おまけに街灯は叩き壊されている。
物好きな奴はともかく、一般人なら絶対に立ち入りそうにない場所だ。

そのまま進んでいく内に目的の場所が視界に入ってきた。
そこは老朽化で打ち捨てられ、廃墟となったマンションだった。

打ちっぱなしのコンクリートには無数の枯れた蔦と落書きで覆われている。
マンションは七階建てで、一階辺りの部屋数が五つほど並んでいた。それなりの規模のマンションだな。

手入れがされずに雑草だらけになったマンションの敷地へと、俺達は足を踏み入れた。
マンションの入口には<マッドブラッズの縄張りにつき立ち入るべからず>とデカデカと書かれている。

ご丁重なこった。全くよ。その時、俺の目がエントランスホールに佇む人影を捉えた。
「よう、何か用か?」

人影が俺たちに声をかけてくる。俺は答えた。
「別に用ってほどの用事もないが」

のそりと人影が近づいてきた。
「それならさっさと帰るんだな。見たところ、どっかのチームの奴にも見えねえし、女子供が来る場所じゃねえ。
それに今夜は他のチームが攻めて来るかもしれねえって、みんなピリピリしてんだよ。
巻き込まれたくなけりゃ、来た道を戻りな」

エントランスホールから出てきた人影が、俺達にその姿を見せた。
それは身長二メートルを越すほどの巨躯を誇る筋骨隆々としたアフロヘアの大男だった(注四十)。

注四十「もしかしたら、キノコ達の王様かもしれねえな。そんな風格があるぜ」

男が掛けているサングラスはディバイナーか。
その男の魁偉な迫力にカズマと美紀が少々気圧される。何、ビビってんだよ。

「それともお前ら、俺達のチームに入りたいのか?見たところ、召喚プログラム持ちのようだし、
腕の良いデーモンサマナーやデビルハンターは大歓迎だが」

アフロが俺の手首に巻かれた召喚プログラムを見やる。
さて、どうするか。俺達はアウトサイダー相手に対人戦の経験を積みに来たわけだが。

で、その相手だが、正直言って誰でもいい。実戦経験が積めればな。
俺達はアフロに少し時間を貰うと三人で話し合うことにした。

「どうする、とりあえず入ってみるか?」
俺はカズマと美紀に尋ねた。
「アウトサイダーにか?うーん」

「あら、面白そうじゃないの。何事も経験よ、経験」

どうやら美紀のほうは乗り気なようだな。こういう時は男よりも女のほうが肝が据わるもんだ。
あるいは何も考えてねえってことかもしれねえけどな。

カズマが腕を組んで考え込んでいるぜ。こういう時はビシッと決めるもんだ。
美紀に良いところ見せろよ。

「わかった、じゃあ、入ってみるよ」
「よし、決まりだな。何、いざとなりゃ抜けりゃいいんだし、そんなに気負うこともねえさ」

そういうわけで俺達はマッドブラッズのメンバーになることになった。
まあ、仮だけどな。

メンバーの証として俺達はサングラスと指輪をつけることになった。
あとは身体のどこかにメンバーのタトゥーを彫る習わしのようだが、まあ、今はそんな時間もないからな。

俺はとりあえずレブを召喚した。スリザリングから晴れて蛟(ミズチ)に霊格が上がったな。
今のレブは頭に角が生えて、トカゲみたいな手足が四本ついてるぜ。

最初に逢った頃と比べれば、こいつも随分と立派になったもんさ。

「おい、レブ、今からアウトサイダーどもと戦うから、お前はカズマと美紀の護衛をしろ。
ああ、でも、二人がマジで危なくなった時だけ助けろよ」

「わかりました、我が主よ」

二十

「ヒャッホーッ、新鮮なコーマンだぁッ」
マッドブラッズと敵対するチームの連中が奇声を上げながら乗り込んできた。

そして美紀を一目見るなり、女に向かって突撃を仕掛ける。
「コーマンッ、コーマンッ、あのマッドブラッズの雌犬を奪い取れっ」

奴ら、相当飢えてるようだな。女日照りが続いてるのかもしれねえ。
凶暴そうな連中に狙われ、流石の美紀も緊張感に頬をヒクつかせている。

なんせとっ掴まれば、輪姦だろうしな。
スキンヘッドにトライバルタトゥーを彫った男達が次々に攻撃魔法を繰り出してくる。

どうやらこいつら、朝鮮半島の東学を齧ってやがるようだ(注四十一)。

注四十一「至気今至願為大降、侍天主造化定、永世不忘万事知と唱えながら<弓弓乙乙>と書かれた霊符を燃やして飲むのは、
崔済愚の東学の特徴だからな」
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