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孤児の仇討ち
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孤児仲間のローリンが殺されちまった。クソッタレっ、誰がこんなひでえ真似をしやがったんだっ。
ローリンの奴は……ああ、ローリンの奴は惨たらしい殺され方をした。
両目を抉り取られた上に首を絞められ……余りにも惨たらしすぎる。
ローリンの身体からは犯人と思しき奴の精液が残っていたが、捜査はされずじまいだった。
所詮は孤児ってことか。世の中そんなもんだよな。はは、お笑い草だ。
ミッキーは大泣きしていた。大粒の涙を零して。あいつは特にローリンと親しかったから。
俺も泣いた。ローリンは良い奴だったから。ローリンは俺に自分の食い扶持を半分分けてくれた。
乾いてざらついたパンと萎びた林檎──それでも俺には忘れられない味だった。
俺はローリンの仇を取らなきゃならない。そうしないと頭がイカレちまいそうだったからな。
ローリンに一体の罪があったってんだ?
たかが八歳のガキがなんでこんな酷い殺され方をしなくちゃいけないんだ?
そんな道理はどこにもないんだよっ!あるって言うなら俺に見せてみろっ!
……現場にはローリンの眼球は残されちゃいなかった。変態野郎はどうやらコレクターのようだな。
俺は孤児仲間に声をかけ、聞き込み調査を開始した。
目星をつけた奴の部屋。
狭い部屋だ。湿気が篭っているせいか、カビ臭い。
おまけに何だかベタベタと壁に新聞紙の切り抜きが貼り付けてある。
俺は新聞を見た。共通点はどれも殺人事件に関するものだ。
軋み上げる板、俺は忍び足で棚のほうへと近づいた。そして棚を開く。
俺は何とも言えない気分になった。胸糞悪い。
棚に置かれた瓶の中には、アルコール漬けの眼球がプカプカと浮かんでいた。
ああ、ローリン……お前の眼球は一体どれなんだ。
もしもどれかわかるのなら、お前の遺体に眼球を返してやれるのに……。
だが、これで犯人がどいつかわかった。ローリン、お前の仇を取ってやれそうだ。
俺は全てを元通りにし、自分の痕跡を消すと部屋を出た。
捕食者を罠に掛けたいなら、まずは新鮮な生き餌を用意することだ。
点在する薄い闇と濃い闇が裏通りを分かつ。
ひび割れた壁に背を預け、俺は男娼のフリをする。声を掛けてくるガキ好きの男達。
いや、正しくはガキのケツが好きな男達か。俺は男色家どもを追い払った。
お目当ての相手じゃないからな。
とにかく、奴はこの裏通りで男娼を買い漁っている。
今夜も獲物を探してここらの通りを流しているはずだ。
それから二時間後、奴が現れた。三十路のハゲ野郎──レドの奴が。
俺は奴の傍らに擦り寄ると百ジャッドでどう?と持ちかけた。
二つ返事でOKするレド、だけど、こいつには金を払うつもりはサラサラないだろうよ。
俺だって別にこいつの金なんか欲しくない。
俺が欲しいのはこの変態野郎の命と悲鳴だからな。せいぜい惨めに命乞いをして見せてくれ。
そうすりゃ、殺されたローリンだって少しは溜飲が下がるはずだ。
暗がりへとレドを連れ込む。袋小路のほうへと。
そして、奴はすぐさま俺の首を絞めあげにかかった。俺は走らせたナイフでレドの右手首を切り裂いてやった。
袋小路に轟くレドの悲鳴。
飛び出してきたミッキーとジェイクがレドの太股に何度もナイフを突き立てる。
「良くもローリンを殺しやがったなっ、このカマ掘り野郎がっっ」
ジェイクが叫んだ。叫びながらナイフで抉る。ジェイクはローリンの相方だ。二人はいつも一緒だった。
そうだとも。愛するふたりはいつも一緒だった。身を寄せ合って、二人は生きてきたんだから。
ジェイクの叫びが慟哭から嗚咽へと変わっていく。
そんなジェイクに俺もミッキーも涙をこぼした。俺達は泣き叫んだ。
泣き叫びながらレドをナイフで切り裂いていった。
「た、助けて……頼む……自首するから……」
半死半生になったレドの哀願──ミッキーがランプオイルを奴の体に振りかける。
「ふざけんじゃねえぞ、このクソったれ野郎……」
そして点火。頭から背中まで燃え上がるレド、慌てふためきながら地面に転がって火を消そうとする。
そこに追い打ちをかけるようにミッキーが再びオイルを撒いた。
火達磨になりながら喚くレド、それもいつしか小さくなっていく。
レドは死んだ。ローリンの仇は討った。そして俺達には、一抹の寂しさだけが残った。
俺は神が嫌いだ。こんな世の中にローリンを産み、そして無残に命を奪った神が嫌いだ。
とにかく何もかも忘れたかった。それから俺達は住処に戻るとニコルの酒を浴びるように飲んだ。
ローリンの奴は……ああ、ローリンの奴は惨たらしい殺され方をした。
両目を抉り取られた上に首を絞められ……余りにも惨たらしすぎる。
ローリンの身体からは犯人と思しき奴の精液が残っていたが、捜査はされずじまいだった。
所詮は孤児ってことか。世の中そんなもんだよな。はは、お笑い草だ。
ミッキーは大泣きしていた。大粒の涙を零して。あいつは特にローリンと親しかったから。
俺も泣いた。ローリンは良い奴だったから。ローリンは俺に自分の食い扶持を半分分けてくれた。
乾いてざらついたパンと萎びた林檎──それでも俺には忘れられない味だった。
俺はローリンの仇を取らなきゃならない。そうしないと頭がイカレちまいそうだったからな。
ローリンに一体の罪があったってんだ?
たかが八歳のガキがなんでこんな酷い殺され方をしなくちゃいけないんだ?
そんな道理はどこにもないんだよっ!あるって言うなら俺に見せてみろっ!
……現場にはローリンの眼球は残されちゃいなかった。変態野郎はどうやらコレクターのようだな。
俺は孤児仲間に声をかけ、聞き込み調査を開始した。
目星をつけた奴の部屋。
狭い部屋だ。湿気が篭っているせいか、カビ臭い。
おまけに何だかベタベタと壁に新聞紙の切り抜きが貼り付けてある。
俺は新聞を見た。共通点はどれも殺人事件に関するものだ。
軋み上げる板、俺は忍び足で棚のほうへと近づいた。そして棚を開く。
俺は何とも言えない気分になった。胸糞悪い。
棚に置かれた瓶の中には、アルコール漬けの眼球がプカプカと浮かんでいた。
ああ、ローリン……お前の眼球は一体どれなんだ。
もしもどれかわかるのなら、お前の遺体に眼球を返してやれるのに……。
だが、これで犯人がどいつかわかった。ローリン、お前の仇を取ってやれそうだ。
俺は全てを元通りにし、自分の痕跡を消すと部屋を出た。
捕食者を罠に掛けたいなら、まずは新鮮な生き餌を用意することだ。
点在する薄い闇と濃い闇が裏通りを分かつ。
ひび割れた壁に背を預け、俺は男娼のフリをする。声を掛けてくるガキ好きの男達。
いや、正しくはガキのケツが好きな男達か。俺は男色家どもを追い払った。
お目当ての相手じゃないからな。
とにかく、奴はこの裏通りで男娼を買い漁っている。
今夜も獲物を探してここらの通りを流しているはずだ。
それから二時間後、奴が現れた。三十路のハゲ野郎──レドの奴が。
俺は奴の傍らに擦り寄ると百ジャッドでどう?と持ちかけた。
二つ返事でOKするレド、だけど、こいつには金を払うつもりはサラサラないだろうよ。
俺だって別にこいつの金なんか欲しくない。
俺が欲しいのはこの変態野郎の命と悲鳴だからな。せいぜい惨めに命乞いをして見せてくれ。
そうすりゃ、殺されたローリンだって少しは溜飲が下がるはずだ。
暗がりへとレドを連れ込む。袋小路のほうへと。
そして、奴はすぐさま俺の首を絞めあげにかかった。俺は走らせたナイフでレドの右手首を切り裂いてやった。
袋小路に轟くレドの悲鳴。
飛び出してきたミッキーとジェイクがレドの太股に何度もナイフを突き立てる。
「良くもローリンを殺しやがったなっ、このカマ掘り野郎がっっ」
ジェイクが叫んだ。叫びながらナイフで抉る。ジェイクはローリンの相方だ。二人はいつも一緒だった。
そうだとも。愛するふたりはいつも一緒だった。身を寄せ合って、二人は生きてきたんだから。
ジェイクの叫びが慟哭から嗚咽へと変わっていく。
そんなジェイクに俺もミッキーも涙をこぼした。俺達は泣き叫んだ。
泣き叫びながらレドをナイフで切り裂いていった。
「た、助けて……頼む……自首するから……」
半死半生になったレドの哀願──ミッキーがランプオイルを奴の体に振りかける。
「ふざけんじゃねえぞ、このクソったれ野郎……」
そして点火。頭から背中まで燃え上がるレド、慌てふためきながら地面に転がって火を消そうとする。
そこに追い打ちをかけるようにミッキーが再びオイルを撒いた。
火達磨になりながら喚くレド、それもいつしか小さくなっていく。
レドは死んだ。ローリンの仇は討った。そして俺達には、一抹の寂しさだけが残った。
俺は神が嫌いだ。こんな世の中にローリンを産み、そして無残に命を奪った神が嫌いだ。
とにかく何もかも忘れたかった。それから俺達は住処に戻るとニコルの酒を浴びるように飲んだ。
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