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全部あなたのせい
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「フェメニー伯爵家のドラと申します。こんばんは、ペルラ様」
従業員寮の前で私を呼び止めたのは、マルグリット様の侍女であるドラさんだった。
彼女は長い黒髪を後ろで束ね、さらに真っ黒な侍女服という姿で、このような薄闇の中では目を凝らさないと分からないくらい景色に溶け込んでいた。
「こ、こんばんは……あの、私のことをご存知なのですか?」
「もちろんでございます。マルグリットお嬢様と同じく、ペルラさんもレフィナード城の治癒師ではありませんか」
「はあ……」
ドラさんは私に向かってにっこりと微笑む。初対面とは思えぬほど親しげな彼女を前にして、正直私は困惑した。
同じ治癒師とはいっても、第一治癒室と第二治癒室に接点なんて全く無いのだ。第一治癒室の治癒師達は私達のことを見下しているし、こちらだって彼女達と仲良くしようだなんて思わない。
ドラさんはおろかマルグリット様でさえ話したことが無いというのに、なぜかあちら側から認知されていたことが私には意外だった。
その上、彼女は私が寮暮らしであることも知っていたらしい。こんな薄暗い中、待ち伏せのようなことをするなんて――
『くれぐれも気をつけて下さい。ペルラに何かあれば、俺は――』
先程の、アルビレオ様の言葉が頭をよぎる。
「あの……私に何か御用でしょうか」
「ええ。実は、折り入ってお願いがあってお待ちしていたのです」
やはり、ドラさんはここで私のことを待っていたらしい。じりじりとさりげなくにじり寄る彼女に、私は警戒せざるを得なかった。
「簡単に申し上げますと、本日はペルラさんの魔力を頂きに参りました」
「え?」
「あなたの恵まれた治癒能力は、マルグリットお嬢様にこそ相応しいものですので」
「な、何を仰っているのですか……?」
彼女の言っていることに、全く理解が追いつかない。ドラさんは穏やかに微笑みながら、私の魔力を寄越せとわけのわからないことを言っている。
「ルイス様を助けたのはペルラさんでしょう。隠しても無駄ですよ、マルグリットお嬢様の陰に隠れてコソコソと意気地の無い人」
「なぜ、そのことを……」
ドラさんは、私がルイス様を助けたことを知っていた。ということは、マルグリット様もそのことをご存知なのだろうか。
「どう考えてもペルラさん以外ありえないのです。でもあなたは、ご自分のしたことが聖女候補になるようなものだと分かっても、一向に名乗り出なかった。なら、その無駄な魔力はマルグリットお嬢様に使っていただきませんか」
「マルグリット様に使っていただく……? 私の魔力を?」
「ええ。マルグリットお嬢様は今代唯一の聖女として、あなたの魔力を役立てて下さることでしょう」
(なぜマルグリット様に私の魔力を……? 意味がわからないわ)
「そ、そんなことされなくても、マルグリット様だって治癒師でいらっしゃいますよね? ご自分の魔力をお使いになればよろしいのではありませんか。私の魔力を使うだなんて、そんなこと出来るわけが――」
「あなたにマルグリットお嬢様の何が分かるのです!?」
私が思い通りにならないからなのか、ドラさんは突然激昂した。
つい先程まで穏やかだった彼女の顔はくしゃりと歪み、声がわなわなと震えている。
「マルグリットお嬢様にあなたのような魔力があったなら、あのようなご苦労をされることは無く、責め立てられることも無かったでしょう」
「え……どういうことですか」
「マルグリットお嬢様には、魔力がほとんどございません。このままでは聖女になれるはずは無いのです」
「そんな……!」
マルグリット様は騎士団の控え室に引きこもり、ほとんど仕事をしないと……そのような様子をアルビレオ様からは聞いていた。
彼女が治癒するのは、簡単に治せる擦り傷や打ち身だけ。それも数回ほど治癒魔法を使ったら、後は騎士達を受け付けない。ルイス様がどんなにお願いしても、騎士達から不満をぶつけられても、その態度は変わらないとのことだった。
けれどドラさんの言うように、マルグリット様にはほとんど魔力がないのだとしたら――それは怠けていたわけでは無くて、本当にそうするしかなかったということなのだろうか。
私は絶句した。そんな状態で、聖女になろうだなんて無謀過ぎる。
「なぜそのような無茶をなさったのですか……」
「全部あなたのせいです。あなたが、ルイス様を助けたりしたから。助けた時に、名乗りもしなかったから……マルグリットお嬢様に聖女役を押し付けて、自分はのうのうと隠れていたから……!」
「で、でも! 真っ先に名乗りを上げたのはマルグリット様だったのではありませんか。恩人として、ルイス様と恋人になって――」
「うるさい!」
ドラさんは叫びながら、後ろに回していた手を私へ向けて突き出した。その手には、キラリと光る何かが握られていた。
白銀色に輝く小ぶりなナイフだ。その切っ先は、まっすぐ私に向けられる。
「きゃあ!!」
ナイフを突きつけられている私の背後から、耳を劈くような悲鳴が聞こえた。
騒ぎを聞きつけ様子を見に来た寮長が、ドラさんのナイフを目にして声を上げたようだった。寮長の悲鳴は辺りに響き、私たちの周りにはざわざわと人が集まってくる。
しかしドラさんは動じることなく、私にナイフを向け続けた。もう後には引けないとでも言うように。
「このナイフ、美しいでしょう? これを使えば、あなたの魔力を吸い取ることができるのですよ」
「や、やめて……」
「大丈夫です、ちょっと刺すだけですからきっと痛くありません」
(そ、そんなわけないでしょう……!!)
もう、ドラさんは正気では無い。
本気で私を刺すつもりだ。
マルグリット様を思う気持ちは痛いほど伝わってくるから、ナイフを持つ覚悟も生半可なものでは無いだろう。
逃げなければならない。私は咄嗟に寮へ向かって走り出した。けれどドラさんも私を逃がすまいと、すぐさまあとを追いかけてくる。
あっという間に距離は詰められ、ギラギラとした眼が間近に迫る。そして掲げられたナイフが、私めがけて勢い良く振り下ろされて――
(ダメ、刺される……!)
「ペルラ!!」
刺されようとしたギリギリのところで、私は何者かにドンと突き飛ばされた。
地面に倒れ込んだ頭上で、ナイフが肉を割く鈍い音が聞こえる。
「え……っ」
一拍置いて、隣にぐらりと倒れ込む人影。
それはアルビレオ様だった。
ナイフを一突きされた彼の胸からは、どくどくと血が滲み出している。
地面に、血溜まりがじわじわと広がっていく。
「アルビレオ様………………?」
「おい! 男が刺されたぞ!」
「あの女を捕まえろ!!」
取り乱すドラさんを、集まった人々が取り押さえている。本懐を遂げていない彼女はまだ何かを叫んでいたけれど――私は血を流すアルビレオ様に、頭が真っ白になってしまった。
従業員寮の前で私を呼び止めたのは、マルグリット様の侍女であるドラさんだった。
彼女は長い黒髪を後ろで束ね、さらに真っ黒な侍女服という姿で、このような薄闇の中では目を凝らさないと分からないくらい景色に溶け込んでいた。
「こ、こんばんは……あの、私のことをご存知なのですか?」
「もちろんでございます。マルグリットお嬢様と同じく、ペルラさんもレフィナード城の治癒師ではありませんか」
「はあ……」
ドラさんは私に向かってにっこりと微笑む。初対面とは思えぬほど親しげな彼女を前にして、正直私は困惑した。
同じ治癒師とはいっても、第一治癒室と第二治癒室に接点なんて全く無いのだ。第一治癒室の治癒師達は私達のことを見下しているし、こちらだって彼女達と仲良くしようだなんて思わない。
ドラさんはおろかマルグリット様でさえ話したことが無いというのに、なぜかあちら側から認知されていたことが私には意外だった。
その上、彼女は私が寮暮らしであることも知っていたらしい。こんな薄暗い中、待ち伏せのようなことをするなんて――
『くれぐれも気をつけて下さい。ペルラに何かあれば、俺は――』
先程の、アルビレオ様の言葉が頭をよぎる。
「あの……私に何か御用でしょうか」
「ええ。実は、折り入ってお願いがあってお待ちしていたのです」
やはり、ドラさんはここで私のことを待っていたらしい。じりじりとさりげなくにじり寄る彼女に、私は警戒せざるを得なかった。
「簡単に申し上げますと、本日はペルラさんの魔力を頂きに参りました」
「え?」
「あなたの恵まれた治癒能力は、マルグリットお嬢様にこそ相応しいものですので」
「な、何を仰っているのですか……?」
彼女の言っていることに、全く理解が追いつかない。ドラさんは穏やかに微笑みながら、私の魔力を寄越せとわけのわからないことを言っている。
「ルイス様を助けたのはペルラさんでしょう。隠しても無駄ですよ、マルグリットお嬢様の陰に隠れてコソコソと意気地の無い人」
「なぜ、そのことを……」
ドラさんは、私がルイス様を助けたことを知っていた。ということは、マルグリット様もそのことをご存知なのだろうか。
「どう考えてもペルラさん以外ありえないのです。でもあなたは、ご自分のしたことが聖女候補になるようなものだと分かっても、一向に名乗り出なかった。なら、その無駄な魔力はマルグリットお嬢様に使っていただきませんか」
「マルグリット様に使っていただく……? 私の魔力を?」
「ええ。マルグリットお嬢様は今代唯一の聖女として、あなたの魔力を役立てて下さることでしょう」
(なぜマルグリット様に私の魔力を……? 意味がわからないわ)
「そ、そんなことされなくても、マルグリット様だって治癒師でいらっしゃいますよね? ご自分の魔力をお使いになればよろしいのではありませんか。私の魔力を使うだなんて、そんなこと出来るわけが――」
「あなたにマルグリットお嬢様の何が分かるのです!?」
私が思い通りにならないからなのか、ドラさんは突然激昂した。
つい先程まで穏やかだった彼女の顔はくしゃりと歪み、声がわなわなと震えている。
「マルグリットお嬢様にあなたのような魔力があったなら、あのようなご苦労をされることは無く、責め立てられることも無かったでしょう」
「え……どういうことですか」
「マルグリットお嬢様には、魔力がほとんどございません。このままでは聖女になれるはずは無いのです」
「そんな……!」
マルグリット様は騎士団の控え室に引きこもり、ほとんど仕事をしないと……そのような様子をアルビレオ様からは聞いていた。
彼女が治癒するのは、簡単に治せる擦り傷や打ち身だけ。それも数回ほど治癒魔法を使ったら、後は騎士達を受け付けない。ルイス様がどんなにお願いしても、騎士達から不満をぶつけられても、その態度は変わらないとのことだった。
けれどドラさんの言うように、マルグリット様にはほとんど魔力がないのだとしたら――それは怠けていたわけでは無くて、本当にそうするしかなかったということなのだろうか。
私は絶句した。そんな状態で、聖女になろうだなんて無謀過ぎる。
「なぜそのような無茶をなさったのですか……」
「全部あなたのせいです。あなたが、ルイス様を助けたりしたから。助けた時に、名乗りもしなかったから……マルグリットお嬢様に聖女役を押し付けて、自分はのうのうと隠れていたから……!」
「で、でも! 真っ先に名乗りを上げたのはマルグリット様だったのではありませんか。恩人として、ルイス様と恋人になって――」
「うるさい!」
ドラさんは叫びながら、後ろに回していた手を私へ向けて突き出した。その手には、キラリと光る何かが握られていた。
白銀色に輝く小ぶりなナイフだ。その切っ先は、まっすぐ私に向けられる。
「きゃあ!!」
ナイフを突きつけられている私の背後から、耳を劈くような悲鳴が聞こえた。
騒ぎを聞きつけ様子を見に来た寮長が、ドラさんのナイフを目にして声を上げたようだった。寮長の悲鳴は辺りに響き、私たちの周りにはざわざわと人が集まってくる。
しかしドラさんは動じることなく、私にナイフを向け続けた。もう後には引けないとでも言うように。
「このナイフ、美しいでしょう? これを使えば、あなたの魔力を吸い取ることができるのですよ」
「や、やめて……」
「大丈夫です、ちょっと刺すだけですからきっと痛くありません」
(そ、そんなわけないでしょう……!!)
もう、ドラさんは正気では無い。
本気で私を刺すつもりだ。
マルグリット様を思う気持ちは痛いほど伝わってくるから、ナイフを持つ覚悟も生半可なものでは無いだろう。
逃げなければならない。私は咄嗟に寮へ向かって走り出した。けれどドラさんも私を逃がすまいと、すぐさまあとを追いかけてくる。
あっという間に距離は詰められ、ギラギラとした眼が間近に迫る。そして掲げられたナイフが、私めがけて勢い良く振り下ろされて――
(ダメ、刺される……!)
「ペルラ!!」
刺されようとしたギリギリのところで、私は何者かにドンと突き飛ばされた。
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「え……っ」
一拍置いて、隣にぐらりと倒れ込む人影。
それはアルビレオ様だった。
ナイフを一突きされた彼の胸からは、どくどくと血が滲み出している。
地面に、血溜まりがじわじわと広がっていく。
「アルビレオ様………………?」
「おい! 男が刺されたぞ!」
「あの女を捕まえろ!!」
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