うちの猫は液体です

秋葉夕雲

文字の大きさ
69 / 141
第二章

第8話 のんびりとした昼食

しおりを挟む
 買い物を終えて葵の自宅に帰った佳穂は元気に、五月は静かながら丁寧に帰宅を告げる。
「ただいまー」
「ただいま戻りました」
 とてとてと駆けてきたのはアポロ。ひょっこりとどこかから顔を出したのはさつまだった。
「おおー、やっぱり二人とも賢いねー」
 近づくとさつまはさっと身をひるがえしたが、アポロはおすわりの姿勢のままだった。軽く手を振ってから台所に向かう。当然ながら下ごしらえをしている葵が目に入る。
「おかえり。とりあえず冷蔵庫の前に置いといて」
(ん?)
(あれ?)
 葵のどこかピリピリとした口調に何かを感じ取ったのか。
(葵ちゃん、機嫌悪い?)
(ですね。何かあったんでしょうか)
 ひそひそ声で話す二人。
 だが二人とも思い当たることは何もなかった。
「ちょっと。聞こえてないけど何言いたいかは見当つくわよ。……別にあんたたちが悪いわけじゃないから、気にしないで」
 葵の反応は不可解だったものの、藪をつついて蛇を出すのは避けたかった。
「じゃ、買って来たもの置いとくね。何かしたほうがいいことある?」
「んーとくには……あ、そうだ。アポロちゃんのブラッシング五月に教えてくれる? こいつ、びびるくらい下手だから」
「び、びびる……え、私そんなにブラッシング下手ですか?」
「犬飼ってないわたしから見てもやばすぎるわよ。アポロちゃんは我慢してるみたいだけど、換毛期なんだからちゃんとしないとだめよ。じゃ、頼むわね」
「おっけーい。じゃ、五月ちゃん、いこっか」
「え、ええ。よろしくお願いします」
 ブラッシングが下手な自覚がなかったのか、珍しくショックを受けている五月だった。



 およそ三十分にわたる佳穂のブラッシング講座を受け終わり、ややげっそりした様子の五月が姿を見せた。
 葵はソファでさつまを撫でており満面の笑みだった。さつまのおかげで機嫌は回復したらしい。
「あ、終わったの。こっちももうすぐ……」
 葵の言葉が終わる前にぴぴぴと電子音が鳴る。
「魚、焼き終わったわね。それじゃあお昼にしましょうか」
 葵はエプロンを脱ぎ。
「あ、アポロちゃんとさつまのごはんも用意してね。忠一ちゃんはさっきおやつあげたからいいわ」
 二人に単純なお願いをしてから台所に向かった。さつまとアポロは基本的に一日二食だが、休日など時間に余裕があるときは少なめの一日三食にしている。
「今思ったんですが……もしかして私たちペット扱いされてませんか?」
 五月が佳穂にぽつりとつぶやいた。
「あははは。そんなことないよ。あたしたちは絶対にさつまちゃんより立場は下だから」
 笑顔を浮かべながら親指でグッドサインを作る。
 果たしてそれは喜ぶべきところなのだろうかと首をひねっていた。

 テーブルには湯気の立つ料理の数々が並んでいた。
「いただきます」
「いただきまーす」
「はい、いただきます。あ、そっちの甘辛こんにゃくにはゴマかけたほうがいいわ。あと、酢玉ねぎとキャベツのサラダはコショウかけてもいいかも。自分で調整しなさいね」
 三人で手を合わせる。
 葵はすまし顔、五月はいつもの無表情、佳穂だけはにこにことほほ笑んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...