うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第二章

第10話 赤い風景

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 赤く染まる。
 夕焼けのように、炎のように、血のように。
 視界が赤く染まっているのか。
 世界が赤く染まっているのか。
 自分はどこにいるのか、世界はどうなってしまったのか、まるで見当がつかない。
 ただ、目の前に少女がいた。
 その子は……褒められていた。
『可愛いね』
『きれいだね』
『素敵な目だね』
 そんな言葉に対して少女は決まってこう答えた。
『ありがとう。とっても嬉しいわ』
 学校のような場所で。
 カフェみたいな場所で。
 あるいはサッカーグラウンドで。
 少女はそんな問答ばかり繰り返していた。……の言葉にどれほど親愛があったのか、甚だ疑問だった。
 そして、髭の貯えた……おそらく老人であろう男性だけは少女にこう言う。
『いつかきっとわかってくれる。いいかい、五月……』

「いやちょっと待って」



 赤く染まる。
 夕焼けのように、炎のように、血のように。
 視界が赤く染まっているのか。
 世界が赤く染まっているのか。
 自分はどこにいるのか、世界はどうなってしまったのか、まるで見当がつかない。
 ただ、目の前に少女がいた。顔はよく見えない。
 その子の目の前には……二匹の猫がいた。グレーの猫と、茶トラの猫。
『可愛いね』
『大好きだよ』
『ずっと一緒だよ』
 その子なりに、精いっぱい猫に愛情を注いでいることは伝わってきた。
 だがそれは無理な話だと気づいていない。猫はほぼ間違いなく人より長生きしない。
 だから、少女の母親と父親は不安そうにしているのだろうか。
『本当にどうしようかしら……人の顔がわからないなんて』
『これも個性だよ。僕たちがきちんとこの子を育てないと。葵が……』

「いえ、ちょっと待ってください」



 ようやくわたしは、皆本葵は違和感に気づいた。
「ここどこよ。わたし寝たはずよね? こんな場所知らないし、この人たちの声も聞いたことないわよ? いま五月って言ってたから……この女の子が昔の五月?」



 ようやく私は、平川五月は違和感に気づいた。
「ここはどこですか? 就寝したはずですよね? 見たことない場所ですし……この子供が小さい頃の皆本さんだとするなら……」



 二人とも別々の場所にいて、お互いに声が届くわけもなく顔も見えない。
 だがしかし、その推測は図らずも同じように進行していた。

「もしかして、わたし、夢見てる?」

「もしかして私は夢を見ているのでしょうか?」

 そうして二人は偶然にも全く同じ動作をした。
 頬をつねってみたのである。それからも会話しているわけでもなく、同じ場所にいるわけでもない二人はしかし、同じような推測を続ける。

「痛みはないわね」

「やっぱり夢なんでしょうか?」

「でも、当り前だけどわたしと五月が初めて会ってから一週間くらいしかたってない」

「こんな子供のころの姿かたちがわかるはずありません」

「つまり夢を見ていたとしても子供のころの五月が現れるのはおかしい」

「これは普通の夢じゃない」

「明らかに異常な何かにさらされています」

 そうして二人は同じ結論に、同時に到達した。
「「私は今ギフトの攻撃にさらされている!」」
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