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第二章
第47話 ラブストーリーは突然に
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「犬笛? さつまを呼ぶのよね?」
「事前にアポロと打ち合わせしておいて合図で誰が来るかを決めておきました」
「準備万端ね。でも相手のギフテッドによっては気づかれない?」
「否定しきれませんが、ギフテッドなしで戦うのはリスクが高すぎます」
五月はゆっくりと犬笛を口に含み、吹き鳴らす。もちろん音は人の耳には何一つ聞こえない。
それに合わせて葵も指先を針でちくりと突き刺す。
さつまのギフトの代償は出血。そのため、どうやって出血するかを何度か試した結果、このやり方が負担は少ないと判断したのだ。
飛行機内に刃物は持ち込めないが、ソーイングセットなら問題がないらしく、念のために持っておいたのだ。
しかし疑問もある。
「ねえ。いくら液体になれるって言っても完全に密閉されてる場所からは通り抜けられないわよ」
「大丈夫でしょう。飛行機は機内全体で空気を循環させているため、貨物室から客室に通じる空気穴があるはずです」
「そ。ならいいわ」
飼い猫に会えると聞いてすでに葵は上機嫌になり始めていた。ちなみに飛行機は外部から空気の取入れと排出を行っているため、液体になったさつまが空中に放り出される可能性もあったがそれを五月は黙っていた。
しばし緊張しながら待っていると、つう、と換気口から液体が垂れる。
それを掬うように葵は手を差し出す。液体は腕の中で溜まり続け、それは一匹の茶トラの猫になった。
「さ、つ、まああああ。ああああ。寂しかったああああ」
葵は可能な限り小声で、ハンカチでさつまの体をかくしながら思う存分愛猫を愛でていた。
「ん、んんん、このてざわり、幸せー。ほんとに可愛いわー」
およそ一時間というあまりにも長時間(葵の主観)離れていたために喜色満面の笑みを浮かべていた。
しかしさつまは宙を睨み、シャッと鳴いた。
それに驚くよりも速くさつまは宙に向かって跳ぶ。その先には、金色の弓矢。
その矢は運命のようにさつまを射抜き……水が飛び散った。
「さ」
叫びそうになる葵の口を慌てて五月が塞ぐ。
ここで叫べばオーナーに気づかれてしまうかもしれない。
それにさつまは液体になれるギフト。そのため、単純な物理攻撃は効果が薄い。すぐに元の猫の姿に戻った。
「落ち着きましたか?」
そう尋ねた五月の手をゆっくりと引きはがす。
「ええ。どうも」
落ち着いてはいるが、葵は冷ややかな怒りを示していた。
「さつまを撃つなんて……ギフテッドもオーナーもぶっ殺してやる。あ、さつま。ありがとう。かばってくれたのね」
再びゆっくりとさつまを撫でる。
それから先ほど針を刺した指を強く押さえる。再び血がにじんだ。
「代償の補充ですか?」
「まあね。どうもこのギフト、攻撃を受けたりすると効果時間が短くなるっぽいのよね。……ねえ、さっきわたし、何か変なことしたかしら。相手のギフトの発動条件を満たしたはずだけど」
「いえ。さつまを撫でたり可愛がったりしただけだと思いますが……それがトリガーになって敵のギフトが発動したようですね」
「んー……矢。会話。んー……」
「皆本さん。心当たりがあるのですか?」
長い髪をいじりながら、少し考え込む。やがて結論が出たのか、さつまを床に置き、ハンカチを彼の顔にかける。
それから座りながら五月の顔をまっすぐ見てから、その手を握る。二人の目が合う。
五月の碧眼は葵でさえも認識できるほどに異彩を放っている。
「皆本さん?」
「んー。今からやることは敵のギフトを明かすためにするんであって他意はないんだけど……」
「はい」
「愛してるわ。結婚しましょう」
若干棒読みながら葵は五月にプロポーズした。
「事前にアポロと打ち合わせしておいて合図で誰が来るかを決めておきました」
「準備万端ね。でも相手のギフテッドによっては気づかれない?」
「否定しきれませんが、ギフテッドなしで戦うのはリスクが高すぎます」
五月はゆっくりと犬笛を口に含み、吹き鳴らす。もちろん音は人の耳には何一つ聞こえない。
それに合わせて葵も指先を針でちくりと突き刺す。
さつまのギフトの代償は出血。そのため、どうやって出血するかを何度か試した結果、このやり方が負担は少ないと判断したのだ。
飛行機内に刃物は持ち込めないが、ソーイングセットなら問題がないらしく、念のために持っておいたのだ。
しかし疑問もある。
「ねえ。いくら液体になれるって言っても完全に密閉されてる場所からは通り抜けられないわよ」
「大丈夫でしょう。飛行機は機内全体で空気を循環させているため、貨物室から客室に通じる空気穴があるはずです」
「そ。ならいいわ」
飼い猫に会えると聞いてすでに葵は上機嫌になり始めていた。ちなみに飛行機は外部から空気の取入れと排出を行っているため、液体になったさつまが空中に放り出される可能性もあったがそれを五月は黙っていた。
しばし緊張しながら待っていると、つう、と換気口から液体が垂れる。
それを掬うように葵は手を差し出す。液体は腕の中で溜まり続け、それは一匹の茶トラの猫になった。
「さ、つ、まああああ。ああああ。寂しかったああああ」
葵は可能な限り小声で、ハンカチでさつまの体をかくしながら思う存分愛猫を愛でていた。
「ん、んんん、このてざわり、幸せー。ほんとに可愛いわー」
およそ一時間というあまりにも長時間(葵の主観)離れていたために喜色満面の笑みを浮かべていた。
しかしさつまは宙を睨み、シャッと鳴いた。
それに驚くよりも速くさつまは宙に向かって跳ぶ。その先には、金色の弓矢。
その矢は運命のようにさつまを射抜き……水が飛び散った。
「さ」
叫びそうになる葵の口を慌てて五月が塞ぐ。
ここで叫べばオーナーに気づかれてしまうかもしれない。
それにさつまは液体になれるギフト。そのため、単純な物理攻撃は効果が薄い。すぐに元の猫の姿に戻った。
「落ち着きましたか?」
そう尋ねた五月の手をゆっくりと引きはがす。
「ええ。どうも」
落ち着いてはいるが、葵は冷ややかな怒りを示していた。
「さつまを撃つなんて……ギフテッドもオーナーもぶっ殺してやる。あ、さつま。ありがとう。かばってくれたのね」
再びゆっくりとさつまを撫でる。
それから先ほど針を刺した指を強く押さえる。再び血がにじんだ。
「代償の補充ですか?」
「まあね。どうもこのギフト、攻撃を受けたりすると効果時間が短くなるっぽいのよね。……ねえ、さっきわたし、何か変なことしたかしら。相手のギフトの発動条件を満たしたはずだけど」
「いえ。さつまを撫でたり可愛がったりしただけだと思いますが……それがトリガーになって敵のギフトが発動したようですね」
「んー……矢。会話。んー……」
「皆本さん。心当たりがあるのですか?」
長い髪をいじりながら、少し考え込む。やがて結論が出たのか、さつまを床に置き、ハンカチを彼の顔にかける。
それから座りながら五月の顔をまっすぐ見てから、その手を握る。二人の目が合う。
五月の碧眼は葵でさえも認識できるほどに異彩を放っている。
「皆本さん?」
「んー。今からやることは敵のギフトを明かすためにするんであって他意はないんだけど……」
「はい」
「愛してるわ。結婚しましょう」
若干棒読みながら葵は五月にプロポーズした。
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