うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第二章

第48話 いたずら

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 突然の告白に五月の頭は真っ白になった。
 表情筋はもちろん細胞さえ一つ残らず固まってしまったのではないかと疑うほど完全に彼女の動きは静止した。
 当然ながら空中に浮かぶ金色の矢に気づくはずもない。
 そして五月の反応など眼中になかった葵はぱっと手を放して大きくのけぞる。金色の矢は舞うように虚空を飛び、座席に突き刺さり、溶けるように消え去った。
 生物以外は何も傷つけない性質を持っているらしい。
 それから、ごん、と鈍い音がする。
「ったー。壁に頭ぶつけた。でもこれでギフトの条件ははっきりしたわね。他者に好意を伝えること」
 葵はうんうんと頷いている。
 一方で五月はぷるぷると震えていた。
「皆本さん」
「ん、何?」
「敵の能力を暴くためとはいえ淑女がその……なんの感情もない相手に求婚するのはいかがなものかと」
「別にあんたのことは嫌いじゃないわよ?」
「……好きでもない相手に求婚するのはいかがなものかと」
 五月にしては珍しく、露骨に不満そうな声音だった。それは葵にも伝わった。
「あははは。ごめんごめん。茶化したわけじゃないんだけどね。まあ確かに不誠実だったわ」
 ぱっとさつまにかけていたハンカチを取る。さつまはきょとんと葵を見上げていた。
 五月は何故葵がそんなことをしたのか理解した。さつまに先ほどの台詞を聞かれたくないからだ。実際にさつまがその声を聴き、理解したかどうかはまた別の問題だ。
 つまるところ彼女の愛情は彼女の飼い猫に注がれているということだ。……それがペットに向けるべきものであるかどうかは別として。
「さて。本題に入りましょう」
 葵の言葉で五月も気を引き締めた。
 そしてさつまはぺろぺろと前足を舐めていた。

「まず相手のギフトが好意を伝えた相手に矢を放つギフトなのは確定。相手のギフテッドはわかる?」
「情報が少なすぎますね。強いて言うならあの矢はそれほど威力がないようですし、ギフトとギフテッドの相性はそれほど良くないのかもしれません。そちらはどうですか?」
「うーん……個人的には愛の神……キューピットとか、前と同じでカーマデーヴァとか。結構多いわね……ねえ、関係ないこと質問していい?」
「何でしょうか?」
「あんたどうして生物方面に知識を特化させてんの? わたしとしてはありがたいけどさ」
「……河登さんの教育方針です」
「はい?」
「あの人に負けた後、少しの間師事することになって、私の知識が結構偏ってると判断したらしく……どうせならそのまま生物の知識を極めろと言われました。真面目なオーナーは神話についてよく学びますが、生物関連はあまり調べてないことが多いので」
 五月は一気に、だがしかしやや苦々しい口調でまくしたてた。
「なるほどねえ……」
 河登という人間はどちらかと言うと軽薄な印象があるが、意外と後輩の教育は怠らないらしい。
「んー……気分変えたくらいじゃ結論は出ないわね」
「そうですね。だとしたら、発想を変えましょうか」
「あら。何か思いついたの?」
「はい。探すのではなく、相手に出てきてもらいましょう。まずは……」
 そうして五月はその『いたずら』を葵に説明し始めた。
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