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第二章
第50話 三択
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鞄はもちろん、服やポケットまで調べてもギフテッドの姿はなかった。
「……これ、ミツバチの時と似たパターン?」
「そうでしょうね。ギフテッドの一部を持ち歩くことでギフトの射程を延長しているのでしょう」
ふむ、と頷き鞄の中の所持品を見る。
「ハンコは象。財布は……蛇? マフラーは何かしら」
「財布は蛇ではなくワニですね。マフラーは十中八九羊でしょう」
「ふーん。もしかしてわざとはずれの道具を持って惑わそうって魂胆かしら。清水恋さん?」
スーツ姿の女性の名前は財布を漁って判明した。
髪を後ろでまとめた彼女は二十代後半ほどと思えたが、どこかくたびれた様子だった。
「あなたたち、いい加減にしなさい。これ以上探っても何も出ないわよ」
追い詰めているのは葵たちなのだが、その声と態度にはまだ余裕があった。
「で? 五月。手がかりはそろったと思うけど……ギフテッドの見当はついた?」
「正直、確証はありません。ですが……確率が最も高いものなら、あります」
「お? なになに?」
「真珠です」
「へ?」
「!」
一瞬だけ、清水の顔が驚きに満ちたことを五月は見逃さなかった。
「収納ボックスを調べるときに嫌がるそぶりを見せませんでした。鞄の中にあるものがブラフになっている可能性があります。そして、彼女が身に着けているアクセサリーはネックレスだけです」
「あ、そっか。真珠って貝から作られるのよね」
「はい。真珠はあこや貝の……まあ、かさぶたみたいなものです」
「あえて目立つ場所に身に着けたわけね」
灯台下暗しとでも言うべきか。大事なものほど隠そうとする心理を逆手に取った大胆なやり口かもしれない。
「さらに言うと貝は矢と相性が悪くありません。矢ではありませんが、毒を獲物に打ち込む貝がいるからです」
「え、マジで?」
「はい。アンボイナ貝の仲間です。歯舌と呼ばれる銛のような針で毒を注入するようです。清水さんの持ち物の中で明確に相手を突き刺す生き物は貝だけです」
「……」
清水は表情を押し殺し、黙然としている。
そこに葵が爆弾発言をぶち込んだ。
「真珠。貝。金色の弓。んーもしかしてだけど、清水さん、結婚詐欺かなんかに引っかかったことある? あるいはこっぴどいフラれ方したとか」
「な、なんでそれを!?」
「いや、今までのオーナーって自分の人生にちなんだギフトを与えられることが多かったから……当たりみたいね」
「ギフトが特定できたんですか?」
「まあね。でもこのギフト、厳密な固有名詞がないっぽいのよね」
「それなら、関係のある人物や地名にそのギフトの特徴を付け加えてください。特徴が当てはまるならオールインで何らかの効果があるはずです。最悪の場合、アポロを呼べば私だけでも制圧できます」
「了解。『オールイン』。アンズオンブオンの金色の亀(キムクイ)」
アクションを行うと同時に、激しい波が打ち付ける音が聞こえた。
それが幻聴であるのか、実際の音であったのか判断する術はない。
だが、清水のネックレスは目に見えない力で引っ張られるかのように浮き上がり、それを止めようとした清水は血がにじむほど強い力でネックレスを掴むが、チェーンが千切れ、清水を裏切るかのように真珠は葵の手元に収まった。
「……これ、ミツバチの時と似たパターン?」
「そうでしょうね。ギフテッドの一部を持ち歩くことでギフトの射程を延長しているのでしょう」
ふむ、と頷き鞄の中の所持品を見る。
「ハンコは象。財布は……蛇? マフラーは何かしら」
「財布は蛇ではなくワニですね。マフラーは十中八九羊でしょう」
「ふーん。もしかしてわざとはずれの道具を持って惑わそうって魂胆かしら。清水恋さん?」
スーツ姿の女性の名前は財布を漁って判明した。
髪を後ろでまとめた彼女は二十代後半ほどと思えたが、どこかくたびれた様子だった。
「あなたたち、いい加減にしなさい。これ以上探っても何も出ないわよ」
追い詰めているのは葵たちなのだが、その声と態度にはまだ余裕があった。
「で? 五月。手がかりはそろったと思うけど……ギフテッドの見当はついた?」
「正直、確証はありません。ですが……確率が最も高いものなら、あります」
「お? なになに?」
「真珠です」
「へ?」
「!」
一瞬だけ、清水の顔が驚きに満ちたことを五月は見逃さなかった。
「収納ボックスを調べるときに嫌がるそぶりを見せませんでした。鞄の中にあるものがブラフになっている可能性があります。そして、彼女が身に着けているアクセサリーはネックレスだけです」
「あ、そっか。真珠って貝から作られるのよね」
「はい。真珠はあこや貝の……まあ、かさぶたみたいなものです」
「あえて目立つ場所に身に着けたわけね」
灯台下暗しとでも言うべきか。大事なものほど隠そうとする心理を逆手に取った大胆なやり口かもしれない。
「さらに言うと貝は矢と相性が悪くありません。矢ではありませんが、毒を獲物に打ち込む貝がいるからです」
「え、マジで?」
「はい。アンボイナ貝の仲間です。歯舌と呼ばれる銛のような針で毒を注入するようです。清水さんの持ち物の中で明確に相手を突き刺す生き物は貝だけです」
「……」
清水は表情を押し殺し、黙然としている。
そこに葵が爆弾発言をぶち込んだ。
「真珠。貝。金色の弓。んーもしかしてだけど、清水さん、結婚詐欺かなんかに引っかかったことある? あるいはこっぴどいフラれ方したとか」
「な、なんでそれを!?」
「いや、今までのオーナーって自分の人生にちなんだギフトを与えられることが多かったから……当たりみたいね」
「ギフトが特定できたんですか?」
「まあね。でもこのギフト、厳密な固有名詞がないっぽいのよね」
「それなら、関係のある人物や地名にそのギフトの特徴を付け加えてください。特徴が当てはまるならオールインで何らかの効果があるはずです。最悪の場合、アポロを呼べば私だけでも制圧できます」
「了解。『オールイン』。アンズオンブオンの金色の亀(キムクイ)」
アクションを行うと同時に、激しい波が打ち付ける音が聞こえた。
それが幻聴であるのか、実際の音であったのか判断する術はない。
だが、清水のネックレスは目に見えない力で引っ張られるかのように浮き上がり、それを止めようとした清水は血がにじむほど強い力でネックレスを掴むが、チェーンが千切れ、清水を裏切るかのように真珠は葵の手元に収まった。
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