うちの猫は液体です

秋葉夕雲

文字の大きさ
112 / 141
第二章

第50話 三択

しおりを挟む
 鞄はもちろん、服やポケットまで調べてもギフテッドの姿はなかった。
「……これ、ミツバチの時と似たパターン?」
「そうでしょうね。ギフテッドの一部を持ち歩くことでギフトの射程を延長しているのでしょう」
 ふむ、と頷き鞄の中の所持品を見る。
「ハンコは象。財布は……蛇? マフラーは何かしら」
「財布は蛇ではなくワニですね。マフラーは十中八九羊でしょう」
「ふーん。もしかしてわざとはずれの道具を持って惑わそうって魂胆かしら。清水恋さん?」
 スーツ姿の女性の名前は財布を漁って判明した。
 髪を後ろでまとめた彼女は二十代後半ほどと思えたが、どこかくたびれた様子だった。
「あなたたち、いい加減にしなさい。これ以上探っても何も出ないわよ」
 追い詰めているのは葵たちなのだが、その声と態度にはまだ余裕があった。
「で? 五月。手がかりはそろったと思うけど……ギフテッドの見当はついた?」
「正直、確証はありません。ですが……確率が最も高いものなら、あります」
「お? なになに?」
「真珠です」
「へ?」
「!」
 一瞬だけ、清水の顔が驚きに満ちたことを五月は見逃さなかった。
「収納ボックスを調べるときに嫌がるそぶりを見せませんでした。鞄の中にあるものがブラフになっている可能性があります。そして、彼女が身に着けているアクセサリーはネックレスだけです」
「あ、そっか。真珠って貝から作られるのよね」
「はい。真珠はあこや貝の……まあ、かさぶたみたいなものです」
「あえて目立つ場所に身に着けたわけね」
 灯台下暗しとでも言うべきか。大事なものほど隠そうとする心理を逆手に取った大胆なやり口かもしれない。
「さらに言うと貝は矢と相性が悪くありません。矢ではありませんが、毒を獲物に打ち込む貝がいるからです」
「え、マジで?」
「はい。アンボイナ貝の仲間です。歯舌と呼ばれる銛のような針で毒を注入するようです。清水さんの持ち物の中で明確に相手を突き刺す生き物は貝だけです」
「……」
 清水は表情を押し殺し、黙然としている。
 そこに葵が爆弾発言をぶち込んだ。
「真珠。貝。金色の弓。んーもしかしてだけど、清水さん、結婚詐欺かなんかに引っかかったことある? あるいはこっぴどいフラれ方したとか」
「な、なんでそれを!?」
「いや、今までのオーナーって自分の人生にちなんだギフトを与えられることが多かったから……当たりみたいね」
「ギフトが特定できたんですか?」
「まあね。でもこのギフト、厳密な固有名詞がないっぽいのよね」
「それなら、関係のある人物や地名にそのギフトの特徴を付け加えてください。特徴が当てはまるならオールインで何らかの効果があるはずです。最悪の場合、アポロを呼べば私だけでも制圧できます」
「了解。『オールイン』。アンズオンブオンの金色の亀(キムクイ)」
 アクションを行うと同時に、激しい波が打ち付ける音が聞こえた。
 それが幻聴であるのか、実際の音であったのか判断する術はない。
 だが、清水のネックレスは目に見えない力で引っ張られるかのように浮き上がり、それを止めようとした清水は血がにじむほど強い力でネックレスを掴むが、チェーンが千切れ、清水を裏切るかのように真珠は葵の手元に収まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...