うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第三章

第2話 動物病院にて

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 私とさつま、五月とアポロちゃん、真子とククニちゃんは多少苦労しながらも、平凡な民家の中にうずもれてしまいそうなその場所、ルージュ動物病院にたどり着いた。
 ちなみにさつまは若干警戒している。たいていの猫と同じように病院にはあまりいい思い出がないようだ。
 それとは逆にアポロちゃんとククニちゃんはリラックスした様子だ。
 動物病院の受付に遅れたことを詫びてから、問診票を記入する。ここからは人間の病院とは違い、ペットの保険証、ワクチン証明書なども提出する。
 これがないと結構面倒なことになりやすい。
 一番大事なのはククニちゃんだけど、北海道でかなり激しい戦いを繰り広げた後なので、念のためにさつまとアポロちゃんも診てもらうという話になったのだ。
 さつまとアポロちゃんは軽い診察だけだったので時間はかからなかった。
 やはり問題は蛇、エメラルドツリーボアであるククニちゃんだ。
 友達の佳穂にも尋ねてみたけれど、爬虫類は飼ったことがないそうだ。そのためきちんとしたアドバイスを受けなければならなかった。

「それじゃあ、三人で面倒を見るつもりなんだね?」
 にこにことした壮年の男性医師は明らかに緊張している真子を気遣ってか気安い口調で話しかけてくれていた。
 ……あるいは、別々の苗字で同居している女子高生と女子中学生なんて何か訳アリだとしか思わないので親身になっているのかもしれない。
「なら、今飼っている家での様子やケージを教えてくれるかな」
「あ、は、はい……」
 一応メインの飼い主である真子がたどたどしい口調で答えていく。
 それを若干はらはらしながら見守る私、五月、アポロちゃん。さつまはきょろきょろと周囲を見回し、当事者であるククニは高みの見物を決め込んでいた。
「うん。よく考えられているね。君たちが用意したのかな?」
「あ、そ、その、えっととく……じゃなかった、保護施設の人たちが半分くらい用意してくれて……」
 ちなみに特害対は外向きにはペットの保護や野生動物の調査を行う組織になっているらしい。
「そっか。できれば写真なんかがあるとありがたいけど、あるかな?」
「それならこちらに」
 準備のいいことに、横からすっと五月がスマホを差し出した。
「ありがとう」
 しばし画面を眺める医師。
「うん。よくできているね。ただ、この止まり木なんだけど……ちょっと細いかな」
「ほ、細い、ですか?」
「うん。エメラルドツリーボアは樹上生活を行う蛇だから、止まり木は重要なんだ。蛇と同じか少し太いくらいの止まり木が理想なんだけど、もしもこの子、ククニがもう少し大きくなるとこの止まり木じゃ細くなるかもしれない」
「そ、そうなんですか?」
「うん。別に専用の止まり木じゃなくてもいい。それこそホームセンターで売ってる突っ張り棒とかでも構わないからね。その方がストレスもないだろうし。大事なのは飼っているペットの状態によって適切な止まり木を見つけることだよ」
「は、はい。頑張ります。ク、ククニそういうことは話してくれませんから……」
 ちょっとぎょっとした。
 それはある意味、自分がオーナーだと認める言葉だったのだ。真子もうかつなことを言ったと顔を青くする。もちろん、医師は冗談か何かと受け取ったらしい。
「あははは。そうだね。蛇は犬や猫と違って表情や仕草がわかりにくい。だからちゃんと事前に備えておくことが大事だよ」
「は、はいいい……」
 もちろん蛇と会話できますなどと言えるはずもなく、しおれながら頷くしかできない真子だった。
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