うちの猫は液体です

秋葉夕雲

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第三章

第6話 カラオケ大会

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 不可思議な現象が起こった以上、これはもう間違いがない。
「あなた、ギフテッド?」
 葵を含め、全員が警戒して部屋の様子を窺う。
「葵さん。窓を」
 冷静な五月の声に従うと、窓にべったりと顔文字のような真っ赤な紋様が浮かんでいた。
「ラプラス……じゃないわね。やっぱりギフト?」
『その通りでし! でしはこの試練の案内役、デッシー!』
「まんまね! 安直すぎでしょ!」
『は、はあ!? この練られた名前のどこが安直なんでし!?』
「いや、語尾と名前が連動してるじゃない!」
 葵はせせら笑いながら冷静に相手のギフトを考察する。
(こっちに言葉を伝えるギフト? それとも分身か何か? いずれにせよ、デッシーという偽名は自分でつけたって言ってたから、ギフトによる制限がある可能性は低い)
『し、失礼な女でし! ですが、デッシーは寛大でしから許してあげるでし』
「それで、何の用ですか。デッシーさん」
 葵とは対極に静かに五月は尋ねた。
『こっちは丁寧でしね。嫌いではないでし。いいでしょう。お前らにはこれから、試練を受けてもらうでし!』
「し、試練?」
『そうでし! 参加者はお前ら!』
「いやよ。なんで受けなくちゃなんないの?」
『人質がどうなってもいいんでしか?』
 この言葉で全員に誘拐犯がこのギフトの持ち主、ないしはその協力者であると断定された。それゆえにこの場の全員の敵意が一斉に真っ赤な紋様に集中する。
「あら。どうするって言うの? いえ、そもそもあなたたちにどうにかできるの?」
『……試練を受けるのなら、傷一つつけないでし』
(なるほど。こいつのギフトは多分、相手の大事なものを人質に取って試練を与える。そんな感じね)
「ふうん。試練を突破できなければどうなるのよ」
『内緒でし!』
 ま、そりゃそうか、と葵は勝手に納得した。
 わざわざ話さなくてもいいことなら話すはずもない。おそらく何かのペナルティがあるのだろう。
「ま、いいわ。試練を受けましょう。あんたたちはどう?」
 五月も真子も、無言でうなずいた。
 三人が返答するとデッシーと名乗った顔文字はにやりと笑った。
「え、と、け、結局し、試練って何……?」
『そうでしね。そろそろ発表するでし。最初の試練は……』
(ん? 最初?)
『これでし!』
 でん、と窓にスロットのようなものが浮かぶ。
 それが回転し、だらららら、と軽快なドラム音がなる。
 スロットが止まり、じゃじゃーんという音が鳴り響く。
 スロットにはこう書かれていた。
『カラオケ』

「「「……え?」」」
「ワウ?」
「おや」
「にゃー」
 三人と三匹は戸惑うしかなかった。
 もちろん言葉の意味が分からないわけではない。カラオケが何故試練になるのか、見当がつかないのだ。
「ちょっと? カラオケって何よ。カラオケって」
 しかし窓から声はもう聞こえない。絵文字も消えている。
 代わりに000という数字が並んでいる。
「こ、これ、カラオケの、点数?」
「そのようですね。ええと、どうもこの数字の下の枠の中に文字を書いて、曲名を入力するようですね」
「……なるほど。特定の条件をクリアすると進行するギフト、なのかしら。それじゃあひとまず……家から脱出できないか試しましょう」
「そうですね。相手の思惑に乗る必要もありません」
「え? か、カラオケしないんですか?」
「何? 歌いたいの?」
「そ、そんなことないですけど……」
「なら、まずいろいろ試しましょう。相手が嘘をついていない保障もないですし。アポロ」
「はい、ですワン」
 とてとてと五月とアポロが再び家の散策を始める。
「私たちも行きましょう、さつま」
 歩き出した葵にさつまも続く。
「……ふ、二人とも戦いなれてるなあ」
「どうやら我々も負けてはいられませんな」
「う、うん。役に立たないと……」
 こうして真子も探索を開始したのだった。
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