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第四章 天命
第二十四話 終わり
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『ミミエル? 大丈夫?』
しばらく応答がなかったミミエルを心配してエタは声をかけた。
「問題ないわ。もう核への障害はない」
迷宮の核の光のおかげで視界にも困らない。
やや警戒しながらも素早く核の前にたどり着いた。
「改めて見ると……本当に大きいわね」
天の牡牛の核は今まで目にした迷宮の核をすべて足し合わせたよりもはるかに巨大だった。
これを攻略したとなればおそらくミミエルは一級冒険者に推薦されてもおかしくないだろう。
無論、ミミエルはそんなものに微塵も興味がない。彼女にとって重要なのはウルクを救うこと。そしてシュメールという企業にとっても利益をもたらすこと。
それだけだ。
「愛と美、戦争を司る我が神、イシュタルに希う。迷宮を踏破した証をここに」
自らが奉じるイシュタル神に祈りを捧げ、携帯粘土板を押し当てる。
天の牡牛の核にイシュタル神の神印が現れる。
「ん? これって……」
『ミミエル? どうかしたの?』
「新しい掟を授かったみたい」
『掟を? ……これだけの迷宮を踏破したからね。当然かも……』
エタの言葉が終わる前に洞窟内が揺れる。
『ミミエル! 天の牡牛の様子がおかしい! 脱出して!』
「言われなくてもわかってるわよ!」
ミミエルは踵を返し、出口に向かって走り出した。
今まで戦っていた天の牡牛の眷属がぼろぼろと崩れ去るのを見て快哉を叫んだのはターハだ。
「はは! やったよな!」
「ええ。わたくしたちの勝ちです」
「さすがミミエルね」
シャルラはミミエルを称えながらも少しだけ悔しそうだった。
三人が叫んだと同時に天の牡牛の歩みが止まる。
それを見ていたのは地上で追いつけないと知りながらも天の牡牛を追いかけていた兵士たちだ。
最初はどよめきだったが、天の牡牛がゆっくりと首を垂れる姿を見て、勝利を確信したのか、歓声が上がった。
その光景を見て誰よりも滂沱したのがトエラーだ。
「う、うお、うおおおおおお! や、やった。これで、これでウルクは、う、ううううう!」
膝をつき、感情を爆発させる彼を周囲の人間はなだめるのに必死だった。
「……収まったかしら」
核のある洞窟のような場所から出たミミエルはぽつりとつぶやき、遠くから歩いてくる三つの影を認めた。
「ミミエル! 無事!?」
「お嬢様はどうなのよ!」
軽く悪態をつきながらも笑顔のミミエル。
「無事無事。全員無事だよ」
応えたのはターハだ。こちらも疲労しているが笑顔だ。
「少なくともわたくしたちは無事。迷宮も攻略、いえ、踏破ですか? どちらにせよこれですべて終わりです」
ラマトが話を纏めると、突如としてぎぎぎ、と何かをこじ開けるような音が聞こえた。
音の方向を四人で振り返ると、天の牡牛の右腰から骨のようなものが突き上げられ核が露出した。
「あれは核よね? 踏破したから運びやすいように迷宮である天の牡牛が変貌したのかしら?」
どこか呑気なシャルラの意見だった。
無理もない。
あれほどの強敵を倒したのだから、油断しない方がおかしい。だが、ミミエルは最初こそけげんな顔をしたものの、警戒するように周囲を見回す。
空のある一点を凝視してからぎょっと目を見開くと叫んだ。
「お嬢様! おばさん! こっちに来て!」
空の一点……ミミエル以外には砂粒のような点にしか見えない何かを指さす。それと同時に露出した核に向かって走り出す。
尋常ならざる様子のミミエルにシャルラとターハ、やや遅れながらもラマトが戦闘態勢に移行する。
走り出してからちらりと空の点に目を向けると点は一つではなく二つであることに……さらには、徐々に近づくあまりにも巨大な鳥であることに気づいた。
「アンズー鳥……」
ぽつりとシャルラがそれの正体を突き止めた。
しばらく応答がなかったミミエルを心配してエタは声をかけた。
「問題ないわ。もう核への障害はない」
迷宮の核の光のおかげで視界にも困らない。
やや警戒しながらも素早く核の前にたどり着いた。
「改めて見ると……本当に大きいわね」
天の牡牛の核は今まで目にした迷宮の核をすべて足し合わせたよりもはるかに巨大だった。
これを攻略したとなればおそらくミミエルは一級冒険者に推薦されてもおかしくないだろう。
無論、ミミエルはそんなものに微塵も興味がない。彼女にとって重要なのはウルクを救うこと。そしてシュメールという企業にとっても利益をもたらすこと。
それだけだ。
「愛と美、戦争を司る我が神、イシュタルに希う。迷宮を踏破した証をここに」
自らが奉じるイシュタル神に祈りを捧げ、携帯粘土板を押し当てる。
天の牡牛の核にイシュタル神の神印が現れる。
「ん? これって……」
『ミミエル? どうかしたの?』
「新しい掟を授かったみたい」
『掟を? ……これだけの迷宮を踏破したからね。当然かも……』
エタの言葉が終わる前に洞窟内が揺れる。
『ミミエル! 天の牡牛の様子がおかしい! 脱出して!』
「言われなくてもわかってるわよ!」
ミミエルは踵を返し、出口に向かって走り出した。
今まで戦っていた天の牡牛の眷属がぼろぼろと崩れ去るのを見て快哉を叫んだのはターハだ。
「はは! やったよな!」
「ええ。わたくしたちの勝ちです」
「さすがミミエルね」
シャルラはミミエルを称えながらも少しだけ悔しそうだった。
三人が叫んだと同時に天の牡牛の歩みが止まる。
それを見ていたのは地上で追いつけないと知りながらも天の牡牛を追いかけていた兵士たちだ。
最初はどよめきだったが、天の牡牛がゆっくりと首を垂れる姿を見て、勝利を確信したのか、歓声が上がった。
その光景を見て誰よりも滂沱したのがトエラーだ。
「う、うお、うおおおおおお! や、やった。これで、これでウルクは、う、ううううう!」
膝をつき、感情を爆発させる彼を周囲の人間はなだめるのに必死だった。
「……収まったかしら」
核のある洞窟のような場所から出たミミエルはぽつりとつぶやき、遠くから歩いてくる三つの影を認めた。
「ミミエル! 無事!?」
「お嬢様はどうなのよ!」
軽く悪態をつきながらも笑顔のミミエル。
「無事無事。全員無事だよ」
応えたのはターハだ。こちらも疲労しているが笑顔だ。
「少なくともわたくしたちは無事。迷宮も攻略、いえ、踏破ですか? どちらにせよこれですべて終わりです」
ラマトが話を纏めると、突如としてぎぎぎ、と何かをこじ開けるような音が聞こえた。
音の方向を四人で振り返ると、天の牡牛の右腰から骨のようなものが突き上げられ核が露出した。
「あれは核よね? 踏破したから運びやすいように迷宮である天の牡牛が変貌したのかしら?」
どこか呑気なシャルラの意見だった。
無理もない。
あれほどの強敵を倒したのだから、油断しない方がおかしい。だが、ミミエルは最初こそけげんな顔をしたものの、警戒するように周囲を見回す。
空のある一点を凝視してからぎょっと目を見開くと叫んだ。
「お嬢様! おばさん! こっちに来て!」
空の一点……ミミエル以外には砂粒のような点にしか見えない何かを指さす。それと同時に露出した核に向かって走り出す。
尋常ならざる様子のミミエルにシャルラとターハ、やや遅れながらもラマトが戦闘態勢に移行する。
走り出してからちらりと空の点に目を向けると点は一つではなく二つであることに……さらには、徐々に近づくあまりにも巨大な鳥であることに気づいた。
「アンズー鳥……」
ぽつりとシャルラがそれの正体を突き止めた。
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