迷宮攻略企業シュメール

秋葉夕雲

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第四章 天命

第二十五話 始まり

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 核の元に向かうミミエル。
 激闘の後にもかかわらずすさまじい速度だったが、それでもわずかにアンズー鳥が速い。
 そんなミミエルを追い越すように黒い布が巻かれた矢がアンズー鳥を襲う。
 シャルラが自らの掟、『触れたものの手を重くさせる掟』を使い、アンズー鳥の動きを封じようとしたのだ。
 しかしアンズー鳥は巨体とは思えない風のような軽やかさでその矢を避けた。
「速っ!?」
 次いでターハが手近に落ちていた岩……おそらく天の牡牛の眷属の欠片をぶん投げる。
 しかしそれもすいすいと躱す。
 もうアンズー鳥は核の目と鼻の先まで迫っている。だがそれは同時にアンズー鳥の動きが限定される瞬間でもある。
 ラマトが自らの槍を全力で投擲する。まっすぐにアンズー鳥へと向かい、間違いなく当たる。
 だがぐりんと、首を巡らせたアンズー鳥はそのくちばしで槍をくわえこんだ。
 思わず絶句する三人。
 だがミミエルだけは、回避や迎撃でわずかに遅れたアンズー鳥に追いつき、その二つの槌を振るおうとして。

「おっと。やらさへんで」

「っ!?」
 もう一羽のアンズー鳥に迎撃された。
 かろうじて攻撃は防いだが、大きく弾き飛ばされる。その隙にもう一羽のアンズー鳥が核をそのかぎ爪で掴み、驚くほど巨大な核を持ち去ろうとする。
「あんたたちいったい何なの!?」
「なんや言われてもなあ。契約を果たしてるだけや」
「契約? 誰と?」
「ああ、そらあ……」
「ちょい。あんた話しすぎやで」
「時間の問題や。もうええやろ」
 ミミエルたちは独特な話し方をするアンズー鳥に少し面食らっていた。なんというか、アンズー鳥とは品位や神聖さがあると思っていたのだ。
 戸惑いながらもここにきて現れた理由は気になる。
 もちろん物見遊山に来たわけではないのはわかっている。だからこそ嫌な予感が止まらない。
「時間の問題ってどういう意味?」
「もうちょいしたらわいらが契約した相手、知識の魔人があんたらに宣言すんねん」
「宣言って……何を?」
「はいはい。それは聞いてのお楽しみや。そろそろいくで。さっきから弓でこっち狙ってる女の子がおっかないねん」
 母鳥らしきアンズー鳥は常に周囲を警戒している。シャルラから見ても隙は見当たらなかった。
 空を覆うような巨大な翼がより一層強く羽ばたく。
 巨大な核は持ち上がり、ともにアンズー鳥も空に浮かぶ。
 四人はそれを見送るしかできなかった。

「エタ。あのアンズー鳥、どう思う」
 ミミエルは携帯粘土板でエタに連絡を取った。
『実は……あのアンズー鳥と会ったことがあるんだ』
 その言葉に低い声で反応したのはシャルラだ。
「……そう。後で話を聞く必要がありそうだけど……まずはあのアンズー鳥は何が狙いなの?」
『それはわからない。でも、知識の魔人が誰なのかは見当がつくよ』
 エタの声はどこか苦悩しているような、信じたくないような声だった。
「いったい誰なの?」
『多分、知識の魔人は知識を集めるために人の社会で暮らしている。そして……この国で最も知識を持っている人は……』
 あ、と四人は声を出した。
 誰もが、顔と名に心当たりがあったのだ。



 この時期、この地域では雲一つない晴天が常である。
 しかし、ジッグラトの入り口から覗く景色は暗雲が立ち込めていた。それは季節外れの雨を予感させ、誰もそれが吉兆か凶兆かを判断できなかった。
 そこから空を眺めるのは白い老人だった。
 誰あろう、このジッグラトの頂点の片翼、アトラハシスであった。
 彼の丁寧に編み込まれた髭が揺れる。衣服ははためく。そして彼はあらかじめ決められていたかのように振り返らないまま背後の客に声をかけた。
「何か御用ですかな? ラバシュム様?」
 このジッグラトの頂点のもう片方、国王ラバシュムだった。
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