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暴露と覚醒
異世界召喚の犠牲
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「僕が……魔王?」
突然の話に僕は困惑を隠せずにいた。
「そうです。正確には違いますが、ユウ様は魔王と同等の力を備えられるだけの器をお持ちなのです」
サーラさんがこともなげに言う。
「はいはいはいっ!」
「どうされました?」
灯花が手を挙げて質問を投げかけようとする。
「そもそも魔王ってなんでござるか?」
割りとまともな疑問だった。
「そうでしたね。お二人は異世界から来た身……知らないのも無理はありません」
サーラさんがコップの中身を飲み干して一息つく。
「……魔王とは魔界を統べる王であり、その全身に魔王紋を授かった魔族のことです」
「魔族って、あの大きな爪の怪物みたいなやつが他にいるってこと?」
先日の死闘を思い出す。
「そう言えば大戦の残党を倒したんでしたっけ。恐らく、ユウ様達が相手をしたのは黒霧族でしょう。本来は人族と大して変わらない容姿ですが、話を聞く限りだと外法に手を出したのではないかと」
「外法?」
「力無き者達が代償を払って短期間だけ力を得る呪いのようなものです。ユウ様が知る必要はありません」
ピシャリと言い切るサーラさんの表情はいつも通りのポーカーフェイスだった。
「ひとつ気になったのでござるが……」
「はい?」
「拙者達に魔王の兄妹であることを言うのも大丈夫なのでござるか?」
灯花が珍しくかなり深刻な表情をしている。魔王と言っても結局は外国の王様みたいなものだろうに。
「大丈夫です。これは私の予想ですが、お二人は人界を追われることになると考えていますから」
「それはどうして?」
カガリもエルさんもヨウケンさんもナガルさんも……この世界の人達はみんないい人ばかりなのに。
灯花を見ると、さっきまでの深刻そうな表情が更に険しくなっていた。
「何かのきっかけでユウ氏にも魔王紋が出てくる……そういうことでござるな?」
サーラさんがゆっくりと頷いた。
「魂がほぼ同一な以上、ユウ様にも魔王の素質があると考えるのが自然です。その上で今、発展途上ながらも強い力を持っていますので発現は時間の問題かと……」
それを聞いた灯花が深く息を吐いた。
「ま、まぁそんなこの世の終わりみたいな顔するなよ。魔界には魔法を使える人ばかりなんだろ?だったら、スゴい召喚魔法使いを探して日本に帰らせてもらえば……」
「ユウお兄さま……そのことなんだけどね……」
アルネリアちゃんの今にも泣きそうな顔に、僕は嫌な予感を覚えた。
「異世界から人間を召喚するのは莫大な法力を必要とする上に、召喚魔法における禁忌中の禁忌なのです……」
言葉に詰まるアルネリアちゃんに代わってサーラさんが続きを言ってくれた。
「どういうこと……!?だったらどうしてこの世界に僕達を喚べたの!?」
「ユウ氏……」
帰れないと言われたと思った僕は強い焦燥感に駆られた。
「…………知っても後悔しませんか?」
サーラさんの言葉が僕の身体に沁み込んでいくかのような。そんな冷たさを全身に感じて、無理やりながらも僕の動揺は鎮められた。
「教えて……ほしい」
その言葉で、アルネリアちゃんがサーラさんの服をギュッと握る。
「はい……。この国に来るまでの道中、魔獣と戦ったのは覚えていますね?」
「……覚えてるよ」
「魔獣の血が石になっていたのも?」
"血が赤い石に……。間違い無く魔獣ですわ"
たしか、エルさんが死体を検分している時にそんなことを言っていた。
「魔獣に限らず、私達魔族の血は体から離れると"魔石"と呼ばれる石になります。この魔石は持ち主の資質にも依りますが、強者であればあるほど強い法力の媒体となるのです」
「……まさか」
灯花が何かに気付いた。
「当然、途方もない量になります。ですがそれだけの魔石を用意すれば、理論上は異世界からの人間を召喚することも……可能なのです」
言い終わったサーラさんが下を向く。
「ちょ、ちょっと待ってよ。それだと僕達がこの世界に呼ばれたせいで……」
「ユウ、それ以上は言わないで」
気が付くと僕は灯花に強く抱き締められていた。
(言わないけど……言えないけどさ。たくさんの血が流れたんだろ?それって……そういうことだよな?)
突然の話に僕は困惑を隠せずにいた。
「そうです。正確には違いますが、ユウ様は魔王と同等の力を備えられるだけの器をお持ちなのです」
サーラさんがこともなげに言う。
「はいはいはいっ!」
「どうされました?」
灯花が手を挙げて質問を投げかけようとする。
「そもそも魔王ってなんでござるか?」
割りとまともな疑問だった。
「そうでしたね。お二人は異世界から来た身……知らないのも無理はありません」
サーラさんがコップの中身を飲み干して一息つく。
「……魔王とは魔界を統べる王であり、その全身に魔王紋を授かった魔族のことです」
「魔族って、あの大きな爪の怪物みたいなやつが他にいるってこと?」
先日の死闘を思い出す。
「そう言えば大戦の残党を倒したんでしたっけ。恐らく、ユウ様達が相手をしたのは黒霧族でしょう。本来は人族と大して変わらない容姿ですが、話を聞く限りだと外法に手を出したのではないかと」
「外法?」
「力無き者達が代償を払って短期間だけ力を得る呪いのようなものです。ユウ様が知る必要はありません」
ピシャリと言い切るサーラさんの表情はいつも通りのポーカーフェイスだった。
「ひとつ気になったのでござるが……」
「はい?」
「拙者達に魔王の兄妹であることを言うのも大丈夫なのでござるか?」
灯花が珍しくかなり深刻な表情をしている。魔王と言っても結局は外国の王様みたいなものだろうに。
「大丈夫です。これは私の予想ですが、お二人は人界を追われることになると考えていますから」
「それはどうして?」
カガリもエルさんもヨウケンさんもナガルさんも……この世界の人達はみんないい人ばかりなのに。
灯花を見ると、さっきまでの深刻そうな表情が更に険しくなっていた。
「何かのきっかけでユウ氏にも魔王紋が出てくる……そういうことでござるな?」
サーラさんがゆっくりと頷いた。
「魂がほぼ同一な以上、ユウ様にも魔王の素質があると考えるのが自然です。その上で今、発展途上ながらも強い力を持っていますので発現は時間の問題かと……」
それを聞いた灯花が深く息を吐いた。
「ま、まぁそんなこの世の終わりみたいな顔するなよ。魔界には魔法を使える人ばかりなんだろ?だったら、スゴい召喚魔法使いを探して日本に帰らせてもらえば……」
「ユウお兄さま……そのことなんだけどね……」
アルネリアちゃんの今にも泣きそうな顔に、僕は嫌な予感を覚えた。
「異世界から人間を召喚するのは莫大な法力を必要とする上に、召喚魔法における禁忌中の禁忌なのです……」
言葉に詰まるアルネリアちゃんに代わってサーラさんが続きを言ってくれた。
「どういうこと……!?だったらどうしてこの世界に僕達を喚べたの!?」
「ユウ氏……」
帰れないと言われたと思った僕は強い焦燥感に駆られた。
「…………知っても後悔しませんか?」
サーラさんの言葉が僕の身体に沁み込んでいくかのような。そんな冷たさを全身に感じて、無理やりながらも僕の動揺は鎮められた。
「教えて……ほしい」
その言葉で、アルネリアちゃんがサーラさんの服をギュッと握る。
「はい……。この国に来るまでの道中、魔獣と戦ったのは覚えていますね?」
「……覚えてるよ」
「魔獣の血が石になっていたのも?」
"血が赤い石に……。間違い無く魔獣ですわ"
たしか、エルさんが死体を検分している時にそんなことを言っていた。
「魔獣に限らず、私達魔族の血は体から離れると"魔石"と呼ばれる石になります。この魔石は持ち主の資質にも依りますが、強者であればあるほど強い法力の媒体となるのです」
「……まさか」
灯花が何かに気付いた。
「当然、途方もない量になります。ですがそれだけの魔石を用意すれば、理論上は異世界からの人間を召喚することも……可能なのです」
言い終わったサーラさんが下を向く。
「ちょ、ちょっと待ってよ。それだと僕達がこの世界に呼ばれたせいで……」
「ユウ、それ以上は言わないで」
気が付くと僕は灯花に強く抱き締められていた。
(言わないけど……言えないけどさ。たくさんの血が流れたんだろ?それって……そういうことだよな?)
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