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二人目の騎士
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新たな王女直属の騎士の任命は、王宮に留まらず国内中に発表された。広く周知することで、暗殺を企てる者を容易に近付けさせない意図だろう。
元々王宮育ちのレイと違い、余所者であるジャックは元傭兵らしく、最初に確認したのは給金のことだった。イーデンはカトレアの戴冠の儀まで務めを十分に果たせば一定の褒賞金を渡し、その時点で契約を解消することが可能だと答えた。一方、もし任務期間中にカトレアの身に危険が及び、重傷もしくは死に至ることがあれば即刻契約は無効となり、給金は一切出さないとした。
ジャックの務めは世話を中心とするレイとは異なり、護衛が大半を占める。よって時折会議に出席するレイよりも、カトレアと行動を共にする時間が多くなる。いついかなる時もカトレアを守れるようにと、ジャックには帯剣が常時許可された。レイも暗殺未遂が起こってからは平常時も帯剣を許可されていたが、会議などの個人的な務めには所持出来ない決まりだった。
これらは全て、契約に同席していたレイから伝えられた。「小娘の『おもり』か」とぼやきつつ、契約に同意したというジャックのことも付け足され、カトレアは絶対にあの男を服従させてやると怪気炎を上げた。
契約直後、カトレアとレイが剣と制服を見立てることとなった。普段ほとんど足を踏み入れることのない、男性用の衣裳部屋へと向かう。
扉以外の四方を衣装箪笥に囲まれた部屋では、既にジャックが採寸を行っていた。衝立の奥から、ジャックを取り囲むお針子たちの影がちらつく。
「ジャックさまって、ずっと傭兵をされていただけあって、たくましい身体つきですわね」
「本当に。少しレイさまより上背があるだけで、一見細身に見えますのに」
きゃっきゃと黄色い声を上げながら、隙あらば身体に触れようと巻尺を操る娘たちの姿が容易に想像出来る。彼女たちは王宮の外の空気を纏った異性に夢中のようだ。
当のジャックはというと、居心地悪そうに姿見の前で突っ立っているのがうかがえる。群がる娘たちをげんなりと見下ろしている姿は、先刻の横柄な態度とはうって変わり滑稽だった。
「レイ、ご覧なさいよ。あの男の顔といったら……」
カトレアが失笑すると、こちらに気づいたジャックが顎をしゃくった。ふて腐れたまま、何とかしろと目で訴えている。ますます面白くなり、カトレアは喜々として大きく足を踏み出した。
「何だか楽しそうね? わたしも混ぜてもらおうかしら」
カトレアとレイが現れるなり、はしゃいでいたお針子たちは真っ青になった。
「採寸するには十分な時間が経っているわね。もう寸法は出ているのでしょう?」
「は、はい。ここに……」
屈み込んで寸法を記録していた娘が、記した紙をカトレアに献上する。お針子たちはたちまち尻尾を巻いて逃げていった。これ以上小言を言われるまい、特にレイが同伴している前で――そういったところだろう。
ジャックは肌着姿のまま息をつき、むずがゆそうに両腕をさすった。
「採寸だか何だか知らないが、俺はおさわり放題の踊り子じゃない。王宮のお針子ってやつは皆こうなのか?」
問いかけられたレイは、娘たちが去った方向をちらと見て肩をすくめた。
「私も、身に覚えはありますが……。少々、面白いものが見られましたよ」
くつくつと笑うレイに、ジャックは顔を背けて小さく舌打ちした。いい気味だ。
カトレアは乾ききったインクで綴られている寸法を目でたどり、レイが礼服を仕立ててもらった時の数値を思い出しながら照らし合わせた。
「背丈はレイより上ね。身幅もレイより全体的に一回り大きいかしら……。おまえも一応、宴や儀の時に礼服が必要になるだろうから」
「蘭姫の騎士ともなれば、それ相応の衣裳が必要だとか、あの年齢不詳の長髪が言っていたな。俺は支給された服があれば、それでいいけどな」
方々へのぞんざいな言い方に、カトレアは怒りを通り越して呆れ返った。
「傭兵上がりのおまえがそう言うのも無理はないけれど、いざという時恥をかくのはわたしなのよ? 寸法さえあれば、おまえが何もしなくても仕立てたものは与えるわ。それにしても、その偉そうな口の利き方は生まれつきなの?」
「それはありがた迷惑な話だな。それと、俺はそいつのように、刷り込みでお前の騎士になった訳じゃない。所詮余所者の雇われの身、どんな口を叩こうが俺の勝手だ」
これにはカトレアが声を荒げるより先に、レイが前に進み出た。
「貴様。知ったような口を利くな」
怒りを押し殺したレイの声音に、カトレアは思わず言い留まる。同じ王女の騎士になるというのに、最初からこの調子では先が思いやられる。
レイのためにも、ここは主である自分が叱責しなければ。カトレアは二人の間に割って入った。
「ジャック。主の前でそのような言い振る舞いをするとは、これからよく躾をしなければならないようね。確かにレイはおまえとは違う。けれどレイはわたしのそばに身を置かざるを得ない事情があって、今こうして仕えているの。何も知らないおまえに言われる筋合いはないわ」
「カトレア様……」レイが背後で声を震わせた。
ジャックはしばしカトレアを見つめていたが、ふっと見透かしたような笑みを見せた。
「そうやってかばい合いながら生きてきたのか。美しい関係だな。俺も馬鹿ではない、口の利き方は相手を選んでやるさ。今はとりあえず、適当に服を見繕ってくれ。お姫様が恥をかかないような、騎士らしいものをな」
たちまち頭に血が上っていくが、かろうじてこの日二回目の平手打ちは耐えた。
少なくとも、ジャックはカトレアやレイには遠慮なく言葉を浴びせるつもりだ。カトレアも下仕えの者たちからわがままだ、嫌味だと陰口されるが、この男の皮肉はそれに匹敵する。
この男を選んだのは間違いだったのだろうか。そんな考えが頭をよぎったが、既に契約を結んでいるのだ。早々に解雇しても非難はこちらに向くのが必至だ。
今後いくらでも態度を改めさせることは出来る。そう割り切ると、カトレアは衣装箪笥の中からジャックに似合いそうな制服を探すことにした。ジャックは丸椅子に腰かけ、退屈そうにあくびをしている。
「カトレア様、ありがとうございます」
レイは小声で感謝を述べた。カトレアは照れくさくなり、視線を合わせず返答した。
「別に、当たり前のことを言っただけよ。あなたの生い立ちや今の立場は、他に選びようがなかったのよ。それを赤の他人にとやかく言われたら、誰だって腹が立つわ。わたしも、あなたがいなければ、今よりずっと孤独だった……」
するとレイはカトレアの背後に回り、両肩をそっと抱いて囁いた。
「私も、家族を失い、カトレア様に仕えたあの日からずっと、貴女だけを……」
心臓がどくりと波打ち、カトレアは反射的にレイから距離を置いた。
「あ、ありがとうレイ。そう言ってくれると嬉しいわ」
動揺を隠すようにわざと明るく振る舞い、カトレアは衣装探しに精を出した。レイが怪訝な顔をしているのにも気づかないふりをした。
何故だろう。今のレイは、普段のレイとは違うような気がした。
この間温室で口にしたような、熱のこもった言葉。それこそ恋物語に出てくる、愛の囁きのような――
耳元でレイの息遣いが蘇り、途端に耳が熱くなる。胸に覚えたのは甘い疼きではなく、恐れに似たものだった。
何故、レイを恐れる必要があるというのか。女王となった暁には、伴侶として迎えるはずのレイを。
ふいに湧き上がった疑念を振り払うように、カトレアはジャックに相応しい制服を何着か探し当て、試着するよう命じた。ジャックはあてがわれた制服を見比べ、感心したように息をついた。
「成程。コルデホーザは戦時中とはいえ、昔から養蚕が盛んな国だからな。絹織物が豊富という訳か」
「ええ。現在はヴェルダへの輸出が規制されていますが、自国で賄う分には十分ですから」
レイが付け加えるが、現在養蚕業に必要な桑が栽培されていた土地は、かつて薬花のものだった。
カトレアの顔色が陰ったことに気づいたのか、レイは選び出された制服に目をやった。
「紫檀、紺鉄、それに、深緑……どれも深みがあり美しい。カトレア様の目利きによるものですね」
さりげない気遣いはレイらしい。カトレアは小さく笑うと、気を取り直しジャックに向かい合った。
「どれでも良いわ。望みの物を着てみなさい」
ジャックは三着の制服を眺め、さほど迷わずに「これがいい」と手に取った。手早く試着すると、カトレアは目を見張った。
深緑の地に白の刺繍が控えめに踊り、真鍮のボタンを要所にあしらった制服は、ジャックを精悍に見せた。これに装具や外套を加えたら、宴や儀の際に並べても遜色ない。
カトレアの思惑は顔に出ていたのだろう、ジャックはそら見たことかと口の端をつり上げた。
「言っただろう? 俺は見繕ってもらったもので十分だ。無駄に華美な衣装なんざ仕立てられても、こそばゆいだけだ」
言うなり、ジャックは全て留めたボタンを上から外し、喉元と肌着が少し覗いた時点で手を止めた。
「こういった服は窮屈で困る。このくらいが俺には丁度良い」
「ちょっと! 誰も着崩して良いとは言ってないわよ」
「そう目くじらを立てるな。さて、次は剣を用意してもらおうか」
おそらくこの男は何を言っても自分の勝手が良いようにするだろう。いちいち忠告しても埒が明かない。カトレアはレイの案内に従って、ジャックを連れ武器倉庫へと場所を移すことにした。
カトレアの見立てが気に入ったのか、ジャックは制服をそのまま着用し、着心地を味わっていた。
元々王宮育ちのレイと違い、余所者であるジャックは元傭兵らしく、最初に確認したのは給金のことだった。イーデンはカトレアの戴冠の儀まで務めを十分に果たせば一定の褒賞金を渡し、その時点で契約を解消することが可能だと答えた。一方、もし任務期間中にカトレアの身に危険が及び、重傷もしくは死に至ることがあれば即刻契約は無効となり、給金は一切出さないとした。
ジャックの務めは世話を中心とするレイとは異なり、護衛が大半を占める。よって時折会議に出席するレイよりも、カトレアと行動を共にする時間が多くなる。いついかなる時もカトレアを守れるようにと、ジャックには帯剣が常時許可された。レイも暗殺未遂が起こってからは平常時も帯剣を許可されていたが、会議などの個人的な務めには所持出来ない決まりだった。
これらは全て、契約に同席していたレイから伝えられた。「小娘の『おもり』か」とぼやきつつ、契約に同意したというジャックのことも付け足され、カトレアは絶対にあの男を服従させてやると怪気炎を上げた。
契約直後、カトレアとレイが剣と制服を見立てることとなった。普段ほとんど足を踏み入れることのない、男性用の衣裳部屋へと向かう。
扉以外の四方を衣装箪笥に囲まれた部屋では、既にジャックが採寸を行っていた。衝立の奥から、ジャックを取り囲むお針子たちの影がちらつく。
「ジャックさまって、ずっと傭兵をされていただけあって、たくましい身体つきですわね」
「本当に。少しレイさまより上背があるだけで、一見細身に見えますのに」
きゃっきゃと黄色い声を上げながら、隙あらば身体に触れようと巻尺を操る娘たちの姿が容易に想像出来る。彼女たちは王宮の外の空気を纏った異性に夢中のようだ。
当のジャックはというと、居心地悪そうに姿見の前で突っ立っているのがうかがえる。群がる娘たちをげんなりと見下ろしている姿は、先刻の横柄な態度とはうって変わり滑稽だった。
「レイ、ご覧なさいよ。あの男の顔といったら……」
カトレアが失笑すると、こちらに気づいたジャックが顎をしゃくった。ふて腐れたまま、何とかしろと目で訴えている。ますます面白くなり、カトレアは喜々として大きく足を踏み出した。
「何だか楽しそうね? わたしも混ぜてもらおうかしら」
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「採寸するには十分な時間が経っているわね。もう寸法は出ているのでしょう?」
「は、はい。ここに……」
屈み込んで寸法を記録していた娘が、記した紙をカトレアに献上する。お針子たちはたちまち尻尾を巻いて逃げていった。これ以上小言を言われるまい、特にレイが同伴している前で――そういったところだろう。
ジャックは肌着姿のまま息をつき、むずがゆそうに両腕をさすった。
「採寸だか何だか知らないが、俺はおさわり放題の踊り子じゃない。王宮のお針子ってやつは皆こうなのか?」
問いかけられたレイは、娘たちが去った方向をちらと見て肩をすくめた。
「私も、身に覚えはありますが……。少々、面白いものが見られましたよ」
くつくつと笑うレイに、ジャックは顔を背けて小さく舌打ちした。いい気味だ。
カトレアは乾ききったインクで綴られている寸法を目でたどり、レイが礼服を仕立ててもらった時の数値を思い出しながら照らし合わせた。
「背丈はレイより上ね。身幅もレイより全体的に一回り大きいかしら……。おまえも一応、宴や儀の時に礼服が必要になるだろうから」
「蘭姫の騎士ともなれば、それ相応の衣裳が必要だとか、あの年齢不詳の長髪が言っていたな。俺は支給された服があれば、それでいいけどな」
方々へのぞんざいな言い方に、カトレアは怒りを通り越して呆れ返った。
「傭兵上がりのおまえがそう言うのも無理はないけれど、いざという時恥をかくのはわたしなのよ? 寸法さえあれば、おまえが何もしなくても仕立てたものは与えるわ。それにしても、その偉そうな口の利き方は生まれつきなの?」
「それはありがた迷惑な話だな。それと、俺はそいつのように、刷り込みでお前の騎士になった訳じゃない。所詮余所者の雇われの身、どんな口を叩こうが俺の勝手だ」
これにはカトレアが声を荒げるより先に、レイが前に進み出た。
「貴様。知ったような口を利くな」
怒りを押し殺したレイの声音に、カトレアは思わず言い留まる。同じ王女の騎士になるというのに、最初からこの調子では先が思いやられる。
レイのためにも、ここは主である自分が叱責しなければ。カトレアは二人の間に割って入った。
「ジャック。主の前でそのような言い振る舞いをするとは、これからよく躾をしなければならないようね。確かにレイはおまえとは違う。けれどレイはわたしのそばに身を置かざるを得ない事情があって、今こうして仕えているの。何も知らないおまえに言われる筋合いはないわ」
「カトレア様……」レイが背後で声を震わせた。
ジャックはしばしカトレアを見つめていたが、ふっと見透かしたような笑みを見せた。
「そうやってかばい合いながら生きてきたのか。美しい関係だな。俺も馬鹿ではない、口の利き方は相手を選んでやるさ。今はとりあえず、適当に服を見繕ってくれ。お姫様が恥をかかないような、騎士らしいものをな」
たちまち頭に血が上っていくが、かろうじてこの日二回目の平手打ちは耐えた。
少なくとも、ジャックはカトレアやレイには遠慮なく言葉を浴びせるつもりだ。カトレアも下仕えの者たちからわがままだ、嫌味だと陰口されるが、この男の皮肉はそれに匹敵する。
この男を選んだのは間違いだったのだろうか。そんな考えが頭をよぎったが、既に契約を結んでいるのだ。早々に解雇しても非難はこちらに向くのが必至だ。
今後いくらでも態度を改めさせることは出来る。そう割り切ると、カトレアは衣装箪笥の中からジャックに似合いそうな制服を探すことにした。ジャックは丸椅子に腰かけ、退屈そうにあくびをしている。
「カトレア様、ありがとうございます」
レイは小声で感謝を述べた。カトレアは照れくさくなり、視線を合わせず返答した。
「別に、当たり前のことを言っただけよ。あなたの生い立ちや今の立場は、他に選びようがなかったのよ。それを赤の他人にとやかく言われたら、誰だって腹が立つわ。わたしも、あなたがいなければ、今よりずっと孤独だった……」
するとレイはカトレアの背後に回り、両肩をそっと抱いて囁いた。
「私も、家族を失い、カトレア様に仕えたあの日からずっと、貴女だけを……」
心臓がどくりと波打ち、カトレアは反射的にレイから距離を置いた。
「あ、ありがとうレイ。そう言ってくれると嬉しいわ」
動揺を隠すようにわざと明るく振る舞い、カトレアは衣装探しに精を出した。レイが怪訝な顔をしているのにも気づかないふりをした。
何故だろう。今のレイは、普段のレイとは違うような気がした。
この間温室で口にしたような、熱のこもった言葉。それこそ恋物語に出てくる、愛の囁きのような――
耳元でレイの息遣いが蘇り、途端に耳が熱くなる。胸に覚えたのは甘い疼きではなく、恐れに似たものだった。
何故、レイを恐れる必要があるというのか。女王となった暁には、伴侶として迎えるはずのレイを。
ふいに湧き上がった疑念を振り払うように、カトレアはジャックに相応しい制服を何着か探し当て、試着するよう命じた。ジャックはあてがわれた制服を見比べ、感心したように息をついた。
「成程。コルデホーザは戦時中とはいえ、昔から養蚕が盛んな国だからな。絹織物が豊富という訳か」
「ええ。現在はヴェルダへの輸出が規制されていますが、自国で賄う分には十分ですから」
レイが付け加えるが、現在養蚕業に必要な桑が栽培されていた土地は、かつて薬花のものだった。
カトレアの顔色が陰ったことに気づいたのか、レイは選び出された制服に目をやった。
「紫檀、紺鉄、それに、深緑……どれも深みがあり美しい。カトレア様の目利きによるものですね」
さりげない気遣いはレイらしい。カトレアは小さく笑うと、気を取り直しジャックに向かい合った。
「どれでも良いわ。望みの物を着てみなさい」
ジャックは三着の制服を眺め、さほど迷わずに「これがいい」と手に取った。手早く試着すると、カトレアは目を見張った。
深緑の地に白の刺繍が控えめに踊り、真鍮のボタンを要所にあしらった制服は、ジャックを精悍に見せた。これに装具や外套を加えたら、宴や儀の際に並べても遜色ない。
カトレアの思惑は顔に出ていたのだろう、ジャックはそら見たことかと口の端をつり上げた。
「言っただろう? 俺は見繕ってもらったもので十分だ。無駄に華美な衣装なんざ仕立てられても、こそばゆいだけだ」
言うなり、ジャックは全て留めたボタンを上から外し、喉元と肌着が少し覗いた時点で手を止めた。
「こういった服は窮屈で困る。このくらいが俺には丁度良い」
「ちょっと! 誰も着崩して良いとは言ってないわよ」
「そう目くじらを立てるな。さて、次は剣を用意してもらおうか」
おそらくこの男は何を言っても自分の勝手が良いようにするだろう。いちいち忠告しても埒が明かない。カトレアはレイの案内に従って、ジャックを連れ武器倉庫へと場所を移すことにした。
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