七瀬と秋臣

青江 いるか

文字の大きさ
14 / 27
冬の炎

繰り返す夢

しおりを挟む
 繰り返し見る夢がある。
 それは、予知夢でも何でもない――ただの記憶だ。
 家が燃えている。
 暗い夜空に燃え上がる炎は罪深いほど美しく、まばゆく、しかしそれゆえ、痛いほどおぞましかった。
 たくさんの人が慌てふためき、野次馬根性で周りに集う。
 その中で、ひとり、自分は呆然とその光景を眺めているのだ。
 凍えるような寒さだというのに、身体はとても熱い。炎の熱気が空気を伝わり、どんどん何かが増殖していくようだ。
 熱い。
 ただただ、身を焼くような痛みだけが、その身を貫いている。
 消防車のサイレンも、周りのざわめきも、みんな自分の身から離れたところにあるように、遠く思われる。
 自分が向き合っているのは、ただその炎で。
 熱くて痛くて、自分の両手を見つめた。
 その手のひらは柔らかく、幼く、小さい。純真無垢な手のひら。
 しかし。
 ぼおっと小さく赤い炎が燃え上がる。
 それは家を燃やしている炎と同じもので、それが自分の手のひらから燃え上がる。
 違う、と叫ぶ。
 違うんだ、俺がやったんじゃない。
 俺はただ……
 堪えきれなくなって、その場に背を向けて走る。
 痛い。
 ただただ、身を焦がす炎の熱さだけが、その身を追いかける。
 いくら走っても、おかしなことに、炎の熱気は追いかけてくる。まるで、中世の魔女を火あぶりにしようとするかのように。
 そこでいつも、誰かの手が伸ばされる。
 その手の主は、何となくわかる。
 しかし、その手はいつも、つかもうとした瞬間に消えてしまい、自分が転んで、それで夢は終わりだった。
 いつも、そうだった。
 そのはずだった。
 しかし、最近では、その手の主が変わったように思う。
 前ほど大きな手のひらではなく、前ほど骨ばってはおらず、白くて、細くて、柔らかい。
 そしていつも、その新しい手の主は、消えずにこちらの手をつかんで引き寄せ、頬を撫でてくれた。
 大丈夫、というように。
 君のせいじゃない、というように。
 差し伸べられる手のひらは、記憶から生まれた架空のものだった。そして新たな手の主の登場は、自分のこの夢に対する恐怖を、少なからず和らげた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...