薄幸の王女は隻眼皇太子の独占愛から逃れられない

宮永レン

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第四章

2.(※)たとえ目に映らなくても

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「セヴラン!」



 生け垣の間を抜けていつもの場所へやってきたアルエットは、ベンチに腰掛けるセヴランの姿を確認してホッとした。息を切らしながら、メイドキャップを取って彼のもとへ歩み寄る。



「リエル? どうしたんだ、その恰好は……」



 驚きで目を丸くしたセヴランが立ち上がる。



「私……あの……っ」



 胸を押さえ、乱れた呼吸が治まるのを待ってから事情を説明しようとするが思ったように言葉が出てこない。



 ――さよなら、ひと時の幸せをありがとう。



 別れの前にただその一言さえ届けられたらいいと思っていた。終わりが来ることなんて最初からわかっていたことだ。それなのにセヴランの顔を見たら言葉が喉の奥でつかえてしまう。



(やっぱり私……ううん、だめ。明日には帰らなきゃいけないんだから、ちゃんと話さないと……)



 アルエットはキャップを両手できつく握りしめ、真っ直ぐにセヴランを見上げた。



「明日、国へ帰ることになったの。外に出てはいけないと言われたんだけど、メイドが私の身代わりになってくれていて、それでこの服装で……」



「明日? ずいぶん急な話だ。何かあったのか?」



 セヴランは眉をひそめる。



「……縁談が……、私の、縁談が、決まって……」



 声が震えた。本当は言いたくなかったが、嘘をついても仕方がない。



「では今日ならまだ時間がある?」



「え?」



「リエルに見せたいものがあるんだ、俺の別荘に」



「セヴランの?」



「そう。ただし場所がわかると好奇心旺盛な君のことだから、すぐに俺のことなんて調べてしまうだろう、これは好きな物とは違う」



 彼のことを知りたくて好きな物を質問した日のことを思い出して恥ずかしくなった。やはりセヴランは気づいていたのだ、アルエットが探りを入れていたことに。



「もう詮索したりしないわ。今日は遅くても夜までに戻らないといけないけど……」



「それなら大丈夫だな。少々予定は変更しよう」



 呟くように言ったセヴランはポケットからスカーフを取り出す。



「別荘につくまでこれで君の視界を塞がせてもらう」



「……何も見えなくなったら歩けないわ」



 スカーフで目元を覆われ、かすかな光しか見えない。頭の後ろでしっかりと結び目を作られ、アルエットは戸惑った。



「心配ない。こうすれば解決だ」



 セヴランの腕が回されたかと思うと、アルエットは体が傾いて小さな悲鳴を上げた。力強い腕に横抱きに抱えられたのだ。



「お、重いんじゃ……」



「抱いていないとどこかへ飛んで行ってしまいそうなほど軽い。歩くからしっかりつかまっていてくれ」



 セヴランの歩調に合わせてアルエットの体が揺れるが、それはかすかなものでまるでゆりかごのような心地よさだった。目の前にはセヴランの端正な顔立ちがあるはずだが何も見えない。ただ、そばにいると優雅で深い色気のある彼のいつもの香りがして、胸がきゅっと切なくなる。



「たとえ目に映らなくても……こうしてあなたを感じられる」



「リエル?」



「すぐ目の前に見えるものだけがすべてではないのよね。離れた場所にいても、ずっとセヴランの目がよくなることを祈るから」



「目の前に見えるものだけがすべてではない……か」



「だから、元気でね、セヴラン」



 涙がスカーフに滲んでしまう。



「勝手に終わらせないでもらえるか、リエル」



 セヴランが苦笑した空気を感じる。



「ごめんなさい。見せたいものがあるのよね?」



 どれくらい歩いたのか、抱き上げられていると感覚がつかめなかったが、どうやら別荘の敷地に入ったらしかった。



 さわさわと葉擦れの音しか聞こえないが、足元は街の石畳とは違うもっと硬質な靴音に変わっている。目が見えないと他の感覚が鋭くなるものだとアルエットは新たな気づきを得た。



 どこかの扉の開く音がした。



 セヴランはアルエットを両腕で抱いているので、開けたのはおそらく使用人だろうが、こうして子供のようにしがみついているところを見ているのかと思うと恥ずかしい。



 やがて別荘の中の部屋に通され、背後で扉が閉まった。



「ここは……?」



「俺の部屋だ」



 そう言ってアルエットの体は柔らかな場所へ降ろされた。おそらく広いベッドのようなものだと思う、よく洗われ綺麗に干された日向のような匂いがする。スカーフを取ろうとすると手を止められた。



「リエル。もう少しそのままで」



 ぎしりとベッドが軋んで、セヴランの体躯がアルエットの上に重なった。



「セヴラ……ん……っ」



 唇を塞がれ、深く吸いつかれる。



「普段の服装も好きだが、どんな格好をしていてもかわいいな、リエルは」



「あっ……んぅ……っ」



 大きな手が髪の毛を、さらには首筋を撫で、まろやかな胸を揉み込む。それだけでこれから何をされるのか知っている彼女の下腹部がきゅっと疼き、与えられる愉悦への期待に蜜壺が潤っていく。



「や……セヴラン、これ取って……」



 アルエットは首を横に振った。



「目に見えるものが全てではないと言ったばかりだろう? ここを離れても俺を忘れることがないように、体の感覚すべてで俺を感じろ」



 服の上から胸の頂を摘ままれ、強烈な愉悦に全身がわななく。次にどこへ触れられるのかわからない分、視力以外の感覚が鋭くなっているのだ。



「あ……っ、やぁん……」



 頂きを指の腹でこね回されて、甘美な痺れが広がっていく。



「もうこんなに勃ち上がって、見つけてくれと言っているようだな」



 耳朶に舌を這わせながらセヴランが低い声で囁く。ぞくぞくと官能を揺さぶられる声色にアルエットは身をよじらせた。



 胸元のボタンが外されるのがわかった。借りたお仕着せがアルエットの胸を覆うには少しサイズがきつかったので、緩められて息がしやすくなる。



「匂い立つような美しい肌だ」



 指で鎖骨をなぞられ、開いた胸元からまろび出た柔らかな乳房に口づけが与えられる。



「ん……っはぁ……ぁ……あ……」



 優しく労わるようなキス、激しくかみつくようなキス、次にどんな口づけがされるのか、まったく予想できなくてアルエットはそのたびに身をよじって愉悦を逃がそうと試みた。



 頂のぎりぎりのところを舌先で円を描くように舐められ、びくびくと腰が跳ねる。



「や……っ、いじわるしないで……」



 吐息が吹きかけられるだけで、それ以上触れてくれない胸先がこれ以上ないほど切なく疼いていた。



「意地悪をしたつもりはないんだが、今日はずいぶんと感じやすいな」



 そう言ったセヴランは頂を口に含むと、甘く吸い上げた。



「あぁん……っ」



 大きく啼いたアルエットの秘裂からとろとろと蜜が溢れてくる。



「そんな声を出されるともっとかわいがりたくなる」



 硬くなった頂を舌で扱かれ、呼吸が乱れていく中、もう片方の乳房を大きく揉み込まれ、思考がぐずぐずに蕩けていくのがわかった。じっくりと時間をかけて吸い尽くされた頂は薔薇の蕾のように膨らんで、空気に触れただけでもひくひくと震えるくらい鋭敏になっていた。



「セヴラン……っ」



 感じ入ったアルエットはスカーフをびっしょりと濡らしながら、膝を擦り合わせた。



「まだ、これを取ってくれないの……?」



「見えなくても、俺のことを思い出せるように。肌で、耳で、匂いで、俺を感じるといい」



 身に着けているものをすべて脱がされ、生まれたままの姿にされる。見えない分、羞恥心はあまりなかった。



「いつもより濡れてないか?」



 そう言ったセヴランは秘裂を割り開き、長い指で愛撫する。



「あっああぁ……っ」



 びくんとアルエットは背中を仰け反らせた。



(セヴランの手、こんなに熱かった? 指先の動きがいやらしくて、こっちまでおかしくなりそう)



 隘路の中をかき混ぜられると、たちまち泡が立ってじゅぷじゅぷと淫らな音が部屋に響く。



「やぁ……っ、セヴラン……! 恥ずかしいの……っ」



 耳からも犯され、アルエットの身も心も限界に達しようとしていた。リボンが解けて枕に広がったストロベリーブロンドが美しく波打つ。



 涙で濡れ、色が変わったスカーフにセヴランが口づけた。



「俺以外誰も見ていない。いや、俺以外の男の前でそんな顔を見せるな」



「しないから……っ、セヴランだけだから……、お願い、もう……」



 半泣きになりながらアルエットは腰をくねらせた。達しようとするとセヴランが指を引き抜いて浅い所を優しく撫でるので、下腹部の疼きが増すばかりでつらかった。



「では、アルエットが導いてくれ」



「だって、み、見えな――」



 答えようとすると、手を引かれて、その先に熱いものが触れた。セヴランの剛直な肉体は雄々しく反り返り、触れるとどくどくと激しく脈打つ生き物のようだった。



「あ……これ、を……」



 これがほしかった。だが自分からそれを強請るのは恥ずかしかった。



「では、こうしよう。この方がリエルもやりやすいだろう」



 体の位置を入れ替えられ、アルエットは何も見えないままセヴランの上に跨っていた。



「ほしかったんだろう?」



「やっぱり、いじわる……」



 そう言いながらも、アルエットは己の本能に抗えなかった。目は見えなくても、だいたい自分の体の構造は知っている。彼の熱い剛直をしっかりと握りしめて自身の中に導いていった。



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