今日も楽しくいきまshow!?

犬野きらり

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103 夜会入場前ですが、すでに始まっておりました

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イズリー家に到着すると、『まぁ、お久しぶりです』、なんて感傷に浸る前に風呂に入れられた。

聞いて欲しい話がいっぱいあるのに。
マリングレー王国、劇団マーメイド編でもいいわ。
書かないと忘れてしまう話もあるのに~

「お嬢様、心の声が駄々漏れです。ちなみに、書くのは、今じゃありません。王宮夜会編を、侍女一同楽しみにしていますから!必ずディライド様と一曲踊ってきてください。黒の衣装が静寂な夜を包み込むかのごとく最高でした」

「お二人が揃ってこその最高の衣装でございます」

侍女一同がみんな一斉に頭を下げた。みんなの期待は、お義兄様とダンスをすることなの?
私の劇団マーメイドのあの興奮よりもそっち~

「春を意識した薄い黄色をメインドレスにしております。裾の刺繍もお嬢様がお好きな植物柄。まるで花の妖精でございます」

まさか海のプリンセスに対抗した、とか?
チラッと見ると侍女達が、そっと目を背けた。新年から、ずっと劇団ばかりで、みんなと話をしてなかった気がする。

「とても良いわ!このドレスは色も優しくて素敵ね。緑や黄緑の植物の刺繍が、芽吹季節にぴったりね。でもこんなにアクセサリー付けないと駄目かしら?」


「お嬢様、これでも抑えているのですよ。本来ならこの美しい髪を皆様に見て頂きたいのに…奥様より纏め髪をと言われてますし、このスーパー眼鏡ですが、やはり装着しないといけないのでしょうか?」

「いつも通りと聞いているわ。クリネット国に入ってからは、ずっとつけているけど…」

「そうですか、残念です…ラナが彼方の国では、しっかりお嬢様の美しさが評価されたと聞いて、私、悔しくて…
クリネット王国でも、イズリー家の秘宝ここにありを声高らかにして自慢したいのです」

どうしたのよ、みんな…

「用意出来たかしら、ミランダ。行くわよ」

「お義母様の真っ赤なドレス素敵です」

と言えば、お義母様は、

「ありがとう、夜会は目立たないと!」

とまるで劇の一幕のように扇子を出してアピールする。その横でお義父様が苦笑しながら話す。

「まぁまぁ、その辺で、夜会も開始時刻を過ぎた。せっかく間に合ったのだから急ぎ参加しよう」


夜の王宮は、見上げると真っ暗で怖い。王宮の扉は開いていて、夜会に続く道がキラキラ眩しい世界と広がっている。
すでに、入場が終わってしまったらしく馬車から降りる人は見当たらない。
馬車留には、お義兄様が待っていた。
お義父様がお義母様をエスコートして、私は、お義兄様の手を借り馬車から降りて、いざ、参りましょう…

「お義兄様、随分と静かですね」

と小声で言えば、

「順番的に言えば、もう貴賓の各国の代表の方達が入場を終えたはずだな。人が見当たらない…何かあったとしても、護衛騎士はそれぞれ配置しているから、ミランダちゃん大丈夫だよ」

と私に答えてくれた。しかし、廊下は静かで私達の話声があるのみ。…音楽も止まっているし、会場で何かあったに違いない。

会場前の扉が開いていて、眩しい光が漏れ出て…声が聞こえてくる。

グレゴリー様や騎士の方の声が、聞こえてきた。

「やめなさい」
「落ち着いて下さい」
「リウム王子」

繰り返す言葉。
眩しい光の中、動かず立っている人達が見えた。

お義父様達も扉の中に入らず、少し後方で様子を窺う。お義兄様が、険しい顔をしていた。何が見えたのか?

すぐに、女性の声が聞こえてきた。

「…この国は、忌み子の呪いで、すでに包まれております。だからここにいるマリングレー王国の第二王子は、倒れたのですよ。私は、アンドル王子様に以前からご忠告申し上げていたはずなのに…これは、由々しき事です。争いの始まりかもしれませんね。クリネット王国の貴族の皆様、この一年を思い出して下さい。あなた方に違和感や不幸、変だと感じた事はございませんか?悪しき者は、負の連鎖を引き込むのです。すぐ近くにいて、正体を隠しています。私は聖女として、皆様を守りたいのに、私の声がアンドル王子始め、王族の方達に届かない…。あなた達を幸せに導く者達が忌み子に汚染されているのです。ねぇ、ダイアナ、私達は特別なのに、この世界の人間は少しもわからないのよね」


「ヒィ、ヤダヤダ。離してよ。偽物って言って悪かったわ。嫌がらせをしろと命令してきたのは、マユリカ王女様なの。私は仕方なしに近づいただけで、まだ何もしていないじゃない!なんで突然、新キャラが倒れるのよ!」

まさかのダイアナさんもいるの?

「だ、ダイアナ、何勝手な事を言っているの、私は関係ないわよ。本当ですよ、アンドル様」

この声は、マユリカ王女様?

私の背では、中で起こっている光景は見えない。ただ話をしているのは、ティア王女様とダイアナさんとマユリカ王女様らしい。

そんな中、更に聞き覚えのある声がした。

「私は、この一年散々酷い目にあいました。確かに学校に入学してから、全てが思い通りにいかなくなったわ」

「な、何を言い出すんだマリアーノ。今は黙りなさい」

そんな告白から連鎖するように、どこからか話声がポツポツとする。それは、怪我をしたとか誰かが亡くなったなんて事まで…

「皆さん、落ちついて!ティア王女の言葉に惑わされないで欲しい。毎日を生きていれば、楽しいことばかりじゃないのは決まっている。辛い事悲しい事、思い通りにいかない事、ある事が当たり前で、それを誰かのせいにするのはおかしい!ティア王女、あなたに聖女の力はない。あなたが、リウム王子に何かしたのはわかっている!そちらの令嬢を解放し、速やかに騎士と一緒に退場して欲しい。これ以上は、いくら貴賓客として招いたとしても、武力で対抗せざるえない…諦めろ」

アンドル王子様の声…

「聞いたダイアナ、武力ですって、他国の王族に対して戦争でもするのかしら?自分は裕福な幸せ王子だからって、モブの不幸は当たり前ですって?…あなたの物語って最悪、まぁ馬鹿だしお似合いかな。私、気づいたのよ。例え死んでもまたやり直せるのかもよ。ほらあなたならわかるでしょう、ゲームみたいに何度も!こいつら自分が作られた存在だって知らないのよ、馬鹿よね。でもね、繰り返す前に、はっきりさせておきたいのよ。
ダイアナ、本来なら私達はお互い勝ち組だった…それはわかるわよね、馬鹿なあなたでも…全部壊した人物がいるのよ。言っておくけど、私じゃないわよ。思い出して!
…さぁ、あなたの物語を最初に変えた人物を言いなさい。それが、私の世界も変えた忌み子よ。ほら、刺してしまうわよ」

お義兄様が私の前に移動した。
私を背で隠すように…

悲鳴が響く。

ティア王女の怒りが声だけでわかった。
私が何をしたのか?
ただ、尋常じゃない憎悪はわかる。そして、普通ではない。

「お義兄様…」
「このままゆっくり戻ろう」

と呟かれた。

「…私の物語の始まり…」

ダイアナさんの声がする。

「モブが死ななかったのよ!悪役令嬢の取り巻きが違う人物になってて、一緒に攫われたのに転んで…全部、全部、おかしいと思っていた、全部ミランダ・イズリーのせい!!」

その最後の言葉は、会場の中も扉の外にいた私にも聞こえた。

「あれ、扉にいるのはイズリー伯爵夫妻じゃない」

と誰かの声、会場の中で行われていた何かから、突然、後ろを振り返る視線に移行された。


誰も何も言わず、ただ作られた花道が自然と出来上がってきた。
誰に向かって延びる道なのか…
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