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「お祖父様!」
と大きな声を出してしまった。お祖父様は、
「買い物は終わりましたかな?」
と笑って聞く。そんな姿に安心した。手足の震えは止まった。
「お祖父様、大丈夫でしたか?」
「レーリー、服が乱れてますよ、お年を考えてくださいな。若い輩に混ざったのではありませんよね?」
とお祖母様は、ピリッとした口調でお祖父様をさす。お祖父様は、少し照れたような様子で頭を掻きながら、笑った。何となく私が口を出す雰囲気ではなく、お祖父様は、
「では帰りましょうか?マーク達のお土産は別な日ということで」
と言って片腕を差し出して、またスマートにエスコートする。その後ろ姿は、素敵だ。
何も言わないという事は、何もなかったということだ。私の後ろに付いている護衛さんに小声で、
「何もなくて良かったです」
と言えば、護衛さんは少し困った顔をして、その後頷いた。
うん?
疑問に思ったが、その後何も言わないので、そのまま馬車に乗り、走り出す。まだ陽も高いけど、ドッと疲れた。油断すると寝てしまいそう。
「あら、アーシャ眠いの?」
考えてみれば、昨日の夜から眠れなかった。馬車の揺れは小刻みに来て、安心とお祖母様の手の温かさが私の瞼を重くした。
「アーシャは寝たかい?」
「えぇ」
「そうか…、この子はとんでもないかもしれない。護衛に聞いた話では、本当に一瞬のすれ違いのフードを被った子供達を見たと言った。結論は、本当に王子殿下達だったよ、そして拐ったのは商人の衣装を着ていたが盗賊らしい。まだ全容もわからないが、王子とか関係なしにあの近くの教会の子供を拐っていた途中に巻き込まれたようだ。一応、お助けは出来たが、カイル王子様が傷を負ってしまっていた」
「まぁ、大丈夫なのですか?」
「ちょうど、護衛騎士が探しに来ていたから、そのまま連れ帰って治療をするそうだ。しかし信じられない。大変な事になるところだった、二人ともだぞ。お助け出来たことは、本当に良かった。しかし、アーシャは一瞬で王子達であり護衛もいないと見抜き、たまたまかもしれないが、こんな騒動を防いだ。あのままだったら、移動されていたんだよ。行商風な幌つきの馬車が用意されていた。本当に危なかった」
興奮をずっと抑えていたのか元公爵は、声を荒げた。それを目の前でみて、隣で寝ているアーシャを気遣いながら、
「そうですか。王子様達がご無事で何よりです。アーシャは以前から観察眼が鋭い子ですよ。それに思慮深い賢い子です。マリアからも聞いていたじゃないですか。偶然かもしれませんが、何か運命のような強い何かを感じたのかもしれませんね」
夫人は、アーシャの髪を撫でながら話す。
「そうだが、この子が男の子だったらと思うとな、残念で。きっと騎士としても文官としても大成しただろうな」
「あらあなた、女の子だって女性の世界は観察だらけですのよ」
二人の会話は尽きなかった。
目が覚めると私は、ベッドにいた。見知らぬ天井、驚いて起き上がる。
「大丈夫ですか?アーシャ様」
「あぁ、マリア、大丈夫です。でも水を一杯頂ける?」
飲む水は、常温で美味しく感じなかった。ただ緊張感から解き放たれた安堵というかダルさが残った。
「お祖父様やお祖母様は、ご無事ですか?」
と聞けば、マリアは、
「アーシャ様何言っているんですか?当たり前ですよ」
との話にバタンと再びベッドに横になり、大きく息を吐いた。
「あらあら、大奥様に叱られますよ。作法はどうしたのって」
「マリア、今だけよ。内緒にね」
と言えば、マリアは笑って部屋から出ていった。
空は赤曇色に変わりつつあった。
「王都、こわ~い」
自然と出た言葉はこれで、王子達がどうとか勘違いとかそういうのでもなく、怖さが大半だった。
ハァ~。
なんだか魂が抜けたように力が出ないけど、お腹は空いている。
「アーシャ様、お夕飯の時間ですよ。準備しましょう」
マリアが戻って来た。夕飯は、相変わらずルイーゼの所々皮肉や嫌味とお祖父様達に自分の自慢話、エリオンは黙々と食べ、叔母様は無関心の様子だった。そして公爵様はまだ帰ってきていなかった。
翌日、お祖父様達と公爵邸の庭園散策をしながら、昨日の話を聞いた。
驚いた。
「勘違いかと思っていたのですが」
と言えば、お祖父様は顔を振り、
「アーシャ、よくやった。王子様達を助けたんだ。今日、私は元国王と会ってくる」
と淡々と話すので、カイル王子が死ななかった=ストーリーを変えたまで頭が回らなかった。
良かったと同時にやってくる怖さ、これからも私は先の話を知っているわけで、あれは、予告書?たまたま居合わせた日に事件は起こった。たまたま!
一人でそう納得した。
まさかこれが後に繋がるなんて全く思わなかった。私は、変更したという自覚が低かった。
紙には書いてなかったし。
そしてあの事件から二日後、公爵様の宰相就任のパーティーが始まった。
父様と母様と一緒にいたが、挨拶が続くため、私はある一角の所謂、子供広場というような場所にいる。
そして、今日は、宰相就任パーティー、子供はほとんどいない。
関係者しかいない状況、案の定、ルイーゼ達従姉妹に囲まれている。久しぶりに会うリリアン、サラは更に悪役令嬢の取り巻きになっていた。なら、私は、いじめられるヒロインのマリー?なんて頭で考えて名前が違うじゃないと一人でツッコミを入れていた。
「何、そんな派手なドレスを身に着けているのよ」
とリリアンが言って、サラも
「お祖父様達に気に入られているからって、そのお金もルイーゼ様のお家から出ているお金で買い揃えられているんでしょう。アーシャには贅沢よ、男爵の分際で」
と言う。勉強したから身分で収入の差がある事はわかっているが、私の父様は男爵と言っても決して貧しくはない。豊かな領地で不自由を感じたことはない。この子達は何を言っているのかしら。
「やだわ、アーシャ。あなたドミルトンの名前でこのパーティーに参加出来ているのよ、男爵ごときなのに。あなたの父親も感謝しなさい」
とルイーゼが言い切った。私の父様は、あなたの叔父だろうと言葉が出かかったが、ぐっと堪えた。
2年前のパーティーを思い出し、騒ぎになったら就任パーティーが台無しになってしまう。どこか開けた場所の方が、風通しもよくなって、ルイーゼ達も冷静になれるのではないかと隙間を探した。子供広場からは距離があるが、中央よりの挨拶の列側に行けば、大人の目もある。
私は、狙いを定め後ろ足でゆっくり移動したが、すぐにエリオンに阻止された。
トンと置かれた手は、中々に重く力を入れられている感じで、「こいつ、わざとやっているな」とわかった。
ハァ~、深い溜息を吐き、両手を上げて降参のポーズをすれば、ルイーゼは、にやりと笑い獲物を攻撃するかのごとく、扇子を手にした。
「ルイーゼ、母様が呼んでいる!」
とエリオンは言った。攻撃態勢に待ったをかけられた形となって、一瞬身体が揺れる。表情は何とも言えないもどかしさが見て取れた。
扇子はパンと怒りを込めて一回鳴らした後、大人達の列の方に向かう。双子も取り巻きらしくついていった。
「助けてくれたのかしら?エリオン様、ハイド様」
「おや、私もいるのがわかっていたのか」
と使用人の影からハイドが戯けて出てきた。こいつは助ける気がなかったな。
「どこに向かおうとした?」
エリオンは、相変わらずで、この一家は高圧的な物言いだ。
「狙いは、中央の大人達が列を成しているあの場所ですね」
と指す。ハイドはすぐに
「何故?」
と聞いた。この中で一番歳上なのに、自分で考えろと思いつつ、
「あの場所は、風通しがいいでしょうし、大人の目もある。2年前の失敗と同じになってしまったら大変ですから」
と言えば、ハイドは、
「我が妹達もそのぐらい思慮深くなればいいのに、何も考えてないからな。エリオン、お前も妹で苦労するな」
と笑った。エリオンは苦々しい顔しながら、
「あいつは、考えなしのくせに他の者に見つからないような場所取りが上手い。言葉も浅はかで汚い。後から問題になる、でも公爵の力で母様も捻じ伏せるのを繰り返しているせいで、何をしてもいいと勘違いをしている」
と言った。なんだ、エリオンはちゃんとわかっているのか、注意をすることをただ諦めてしまっただけか。
「エリオン様、気づいておられるなら、もう一つ。王子様とルイーゼ様をお近づきにならない方がよろしいです」
「何だ、アーシャ自分がフランツ王子に近づきたいのか?浅ましいな」
冷たく言い放つ。
「まさか、身分不相応でございます。ルイーゼ様は、今でさえ権力を口に出されております。更なる権力を持つのは大変危険かと思っただけです。万一の不祥事の責任の負わされは、常に周りの者です。ハイド様もお気をつけになさってください。妹君達に何らかの責任が転換されるなんて、政治も歴史も当たり前に繰り返されておりますから」
と少し言いすぎたかなと思ったが、同じドミルトン、我が家にだって火の粉は飛んでくるかもしれない。かと言って、すぐに治ったりもしないだろう、人の気質なんて。
二人は考えていた。
「アーシャ」
「お祖母様、ご挨拶を終わったのですか?」
と聞くと、笑って
「お茶を頂こうと思って、一緒にいかが?」
と誘ってくれた。
「はい、喜んで」
とお祖母様の元に行き、別室でマリアがお茶を用意してくれていた。
お祖母様は、私を見て
「ありがとう、アーシャ。あの二人にあそこまで言ってくれて、あの子達が言われた言葉をどう受け取るかで、また次の代のドミルトンの家は変わるわ。それは私は見れないけど、アーシャは見ていくのよ。アーシャ、あなたがエリオンと結婚してくれれば、きっとドミルトン家は、安泰だと思うのだけど」
とお祖母様は真面目に言い、私は冗談じゃないと立ち上がってしまった。
「失礼しました。お祖母様、公爵夫人もルイーゼ様も許しは出ませんし、私は、出来ればもう少し夢が見たいといいますか…」
と言い訳をする。貴族の結婚に夢が見たいなんて笑われるわね、とお祖母様を見ると大層驚いた顔をしていた。
「驚いたわ、アーシャ、あなたも子供だと改めて感じたわ。そうね。ふふふっ夢が見たいなんて可愛いわ」
と言ってお茶を飲んだ。
と大きな声を出してしまった。お祖父様は、
「買い物は終わりましたかな?」
と笑って聞く。そんな姿に安心した。手足の震えは止まった。
「お祖父様、大丈夫でしたか?」
「レーリー、服が乱れてますよ、お年を考えてくださいな。若い輩に混ざったのではありませんよね?」
とお祖母様は、ピリッとした口調でお祖父様をさす。お祖父様は、少し照れたような様子で頭を掻きながら、笑った。何となく私が口を出す雰囲気ではなく、お祖父様は、
「では帰りましょうか?マーク達のお土産は別な日ということで」
と言って片腕を差し出して、またスマートにエスコートする。その後ろ姿は、素敵だ。
何も言わないという事は、何もなかったということだ。私の後ろに付いている護衛さんに小声で、
「何もなくて良かったです」
と言えば、護衛さんは少し困った顔をして、その後頷いた。
うん?
疑問に思ったが、その後何も言わないので、そのまま馬車に乗り、走り出す。まだ陽も高いけど、ドッと疲れた。油断すると寝てしまいそう。
「あら、アーシャ眠いの?」
考えてみれば、昨日の夜から眠れなかった。馬車の揺れは小刻みに来て、安心とお祖母様の手の温かさが私の瞼を重くした。
「アーシャは寝たかい?」
「えぇ」
「そうか…、この子はとんでもないかもしれない。護衛に聞いた話では、本当に一瞬のすれ違いのフードを被った子供達を見たと言った。結論は、本当に王子殿下達だったよ、そして拐ったのは商人の衣装を着ていたが盗賊らしい。まだ全容もわからないが、王子とか関係なしにあの近くの教会の子供を拐っていた途中に巻き込まれたようだ。一応、お助けは出来たが、カイル王子様が傷を負ってしまっていた」
「まぁ、大丈夫なのですか?」
「ちょうど、護衛騎士が探しに来ていたから、そのまま連れ帰って治療をするそうだ。しかし信じられない。大変な事になるところだった、二人ともだぞ。お助け出来たことは、本当に良かった。しかし、アーシャは一瞬で王子達であり護衛もいないと見抜き、たまたまかもしれないが、こんな騒動を防いだ。あのままだったら、移動されていたんだよ。行商風な幌つきの馬車が用意されていた。本当に危なかった」
興奮をずっと抑えていたのか元公爵は、声を荒げた。それを目の前でみて、隣で寝ているアーシャを気遣いながら、
「そうですか。王子様達がご無事で何よりです。アーシャは以前から観察眼が鋭い子ですよ。それに思慮深い賢い子です。マリアからも聞いていたじゃないですか。偶然かもしれませんが、何か運命のような強い何かを感じたのかもしれませんね」
夫人は、アーシャの髪を撫でながら話す。
「そうだが、この子が男の子だったらと思うとな、残念で。きっと騎士としても文官としても大成しただろうな」
「あらあなた、女の子だって女性の世界は観察だらけですのよ」
二人の会話は尽きなかった。
目が覚めると私は、ベッドにいた。見知らぬ天井、驚いて起き上がる。
「大丈夫ですか?アーシャ様」
「あぁ、マリア、大丈夫です。でも水を一杯頂ける?」
飲む水は、常温で美味しく感じなかった。ただ緊張感から解き放たれた安堵というかダルさが残った。
「お祖父様やお祖母様は、ご無事ですか?」
と聞けば、マリアは、
「アーシャ様何言っているんですか?当たり前ですよ」
との話にバタンと再びベッドに横になり、大きく息を吐いた。
「あらあら、大奥様に叱られますよ。作法はどうしたのって」
「マリア、今だけよ。内緒にね」
と言えば、マリアは笑って部屋から出ていった。
空は赤曇色に変わりつつあった。
「王都、こわ~い」
自然と出た言葉はこれで、王子達がどうとか勘違いとかそういうのでもなく、怖さが大半だった。
ハァ~。
なんだか魂が抜けたように力が出ないけど、お腹は空いている。
「アーシャ様、お夕飯の時間ですよ。準備しましょう」
マリアが戻って来た。夕飯は、相変わらずルイーゼの所々皮肉や嫌味とお祖父様達に自分の自慢話、エリオンは黙々と食べ、叔母様は無関心の様子だった。そして公爵様はまだ帰ってきていなかった。
翌日、お祖父様達と公爵邸の庭園散策をしながら、昨日の話を聞いた。
驚いた。
「勘違いかと思っていたのですが」
と言えば、お祖父様は顔を振り、
「アーシャ、よくやった。王子様達を助けたんだ。今日、私は元国王と会ってくる」
と淡々と話すので、カイル王子が死ななかった=ストーリーを変えたまで頭が回らなかった。
良かったと同時にやってくる怖さ、これからも私は先の話を知っているわけで、あれは、予告書?たまたま居合わせた日に事件は起こった。たまたま!
一人でそう納得した。
まさかこれが後に繋がるなんて全く思わなかった。私は、変更したという自覚が低かった。
紙には書いてなかったし。
そしてあの事件から二日後、公爵様の宰相就任のパーティーが始まった。
父様と母様と一緒にいたが、挨拶が続くため、私はある一角の所謂、子供広場というような場所にいる。
そして、今日は、宰相就任パーティー、子供はほとんどいない。
関係者しかいない状況、案の定、ルイーゼ達従姉妹に囲まれている。久しぶりに会うリリアン、サラは更に悪役令嬢の取り巻きになっていた。なら、私は、いじめられるヒロインのマリー?なんて頭で考えて名前が違うじゃないと一人でツッコミを入れていた。
「何、そんな派手なドレスを身に着けているのよ」
とリリアンが言って、サラも
「お祖父様達に気に入られているからって、そのお金もルイーゼ様のお家から出ているお金で買い揃えられているんでしょう。アーシャには贅沢よ、男爵の分際で」
と言う。勉強したから身分で収入の差がある事はわかっているが、私の父様は男爵と言っても決して貧しくはない。豊かな領地で不自由を感じたことはない。この子達は何を言っているのかしら。
「やだわ、アーシャ。あなたドミルトンの名前でこのパーティーに参加出来ているのよ、男爵ごときなのに。あなたの父親も感謝しなさい」
とルイーゼが言い切った。私の父様は、あなたの叔父だろうと言葉が出かかったが、ぐっと堪えた。
2年前のパーティーを思い出し、騒ぎになったら就任パーティーが台無しになってしまう。どこか開けた場所の方が、風通しもよくなって、ルイーゼ達も冷静になれるのではないかと隙間を探した。子供広場からは距離があるが、中央よりの挨拶の列側に行けば、大人の目もある。
私は、狙いを定め後ろ足でゆっくり移動したが、すぐにエリオンに阻止された。
トンと置かれた手は、中々に重く力を入れられている感じで、「こいつ、わざとやっているな」とわかった。
ハァ~、深い溜息を吐き、両手を上げて降参のポーズをすれば、ルイーゼは、にやりと笑い獲物を攻撃するかのごとく、扇子を手にした。
「ルイーゼ、母様が呼んでいる!」
とエリオンは言った。攻撃態勢に待ったをかけられた形となって、一瞬身体が揺れる。表情は何とも言えないもどかしさが見て取れた。
扇子はパンと怒りを込めて一回鳴らした後、大人達の列の方に向かう。双子も取り巻きらしくついていった。
「助けてくれたのかしら?エリオン様、ハイド様」
「おや、私もいるのがわかっていたのか」
と使用人の影からハイドが戯けて出てきた。こいつは助ける気がなかったな。
「どこに向かおうとした?」
エリオンは、相変わらずで、この一家は高圧的な物言いだ。
「狙いは、中央の大人達が列を成しているあの場所ですね」
と指す。ハイドはすぐに
「何故?」
と聞いた。この中で一番歳上なのに、自分で考えろと思いつつ、
「あの場所は、風通しがいいでしょうし、大人の目もある。2年前の失敗と同じになってしまったら大変ですから」
と言えば、ハイドは、
「我が妹達もそのぐらい思慮深くなればいいのに、何も考えてないからな。エリオン、お前も妹で苦労するな」
と笑った。エリオンは苦々しい顔しながら、
「あいつは、考えなしのくせに他の者に見つからないような場所取りが上手い。言葉も浅はかで汚い。後から問題になる、でも公爵の力で母様も捻じ伏せるのを繰り返しているせいで、何をしてもいいと勘違いをしている」
と言った。なんだ、エリオンはちゃんとわかっているのか、注意をすることをただ諦めてしまっただけか。
「エリオン様、気づいておられるなら、もう一つ。王子様とルイーゼ様をお近づきにならない方がよろしいです」
「何だ、アーシャ自分がフランツ王子に近づきたいのか?浅ましいな」
冷たく言い放つ。
「まさか、身分不相応でございます。ルイーゼ様は、今でさえ権力を口に出されております。更なる権力を持つのは大変危険かと思っただけです。万一の不祥事の責任の負わされは、常に周りの者です。ハイド様もお気をつけになさってください。妹君達に何らかの責任が転換されるなんて、政治も歴史も当たり前に繰り返されておりますから」
と少し言いすぎたかなと思ったが、同じドミルトン、我が家にだって火の粉は飛んでくるかもしれない。かと言って、すぐに治ったりもしないだろう、人の気質なんて。
二人は考えていた。
「アーシャ」
「お祖母様、ご挨拶を終わったのですか?」
と聞くと、笑って
「お茶を頂こうと思って、一緒にいかが?」
と誘ってくれた。
「はい、喜んで」
とお祖母様の元に行き、別室でマリアがお茶を用意してくれていた。
お祖母様は、私を見て
「ありがとう、アーシャ。あの二人にあそこまで言ってくれて、あの子達が言われた言葉をどう受け取るかで、また次の代のドミルトンの家は変わるわ。それは私は見れないけど、アーシャは見ていくのよ。アーシャ、あなたがエリオンと結婚してくれれば、きっとドミルトン家は、安泰だと思うのだけど」
とお祖母様は真面目に言い、私は冗談じゃないと立ち上がってしまった。
「失礼しました。お祖母様、公爵夫人もルイーゼ様も許しは出ませんし、私は、出来ればもう少し夢が見たいといいますか…」
と言い訳をする。貴族の結婚に夢が見たいなんて笑われるわね、とお祖母様を見ると大層驚いた顔をしていた。
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完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
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最近息子ちゃんをいじってます。
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が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
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