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私は頭から煙が出るのではないかぐらい考えた。

多くの情報が集まってきた。フランツ王子とカイル王子を狙う者。アステリア王国の側妃が怪しい。リオン王子もいる。国王は、事勿れな人で王妃が内政もまとめている。カイル王子の母様はお亡くなりになっている。気になるのがレイリー姫の話が出ない。「お祖母様、レイリー姫様の話が出ないのですが、何故でしょう」
と聞くと
「レイリー姫様は、元国王の娘と言われているの。一応フランツ王子様の姉と外聞的にはなっているんですが、その辺は、レーリーも誤魔化すの。自分の名前に近いからかしら。身体が弱いらしくアステリア王国の医療チームに任せているそうよ。私も見た事はないの。歳ごろは、17.8歳になっているはずだけど。成人の儀をやられたのかしら?」
まだ貴族名簿には載ってない。何故だろう?
「その件は知りたいような知らない方がいいのか…今の王宮の使用人の勢力分布訳です。アステリア王国の関係者だらけです。側妃がカイル王子を狙らい放題です。何故こんな風になっているのでしょうか?王妃様はフランツ王子を守ってますが」
と私は、送られてきた紙を見ながら、お祖母様に説明した。
「いつの間に!」
お祖母様も驚いていた。私は、
「早急に逆転する方法があります。そのためには、力のある方が決めなければならないです。私が提案するのは、フランツ王子様の婚約者候補を五人ぐらいに決めて王宮に王妃教育の大義で出入りさせるのです。名家か力のある家柄の令嬢、必ずルイーゼ様を入れてください」
お祖母様の目を見ながら言った。
「何言っているのアーシャ、あの子が入ったら調子に乗るだけよ」
私は頷きながら、
「そうですね、公爵家は、ドミルトンだけです。しかし良い意味では、めちゃくちゃにしてくれるので先行きが見えない、候補者達が希望を持てます。悪い意味ではドミルトン家の評価を下げますね」
と言えば、お祖母様は、溜息を吐いた。
「そこまでわかってて何故?」
「名家なら、すぐに王宮に情報収集のため自分の所の使用人を潜り込ませます。王妃様はそこの人材には、全て頷き、解雇するのをアステリア王国の者にします。令嬢5人で最低でも30人ぐらいが動くでしょう。だいぶ変わってくるとは思いますが、まだ側妃は動かないと思います。様子を見るはずです。私が思うのは、側妃にしたら婚約者になって欲しいのは、ルイーゼ様でしょう」
「何故」
「気性の荒さと単純さ後公爵家ごと潰せる機会。上手く取り込まれそうですよね」
「わかっているなら、アーシャが行きなさい。あの子が問題を起こして公爵家が潰れる未来が見えたわ」
とお祖母様が頭を押さえた。
「ですから、協力者として力のある方をエリオン様にはサポートをお願いして、出来れば王妃様に協力者になって頂きたいですね。側妃の言葉に騙されなくなりそうですね。そしてその賑やかな内にカイル王子様は、留学されるべきです。可能性の話としてですが」
と言えば、
「何故そんなにもカイル王子をお守りするのかしら、アーシャ?…わかったわ、あの子に運命を賭けるのね。いざという時は、あなたが変わってくれるつもりなら」

「まさか!学園に入るまでですよ。体制を整えれば相手側もよくない事は考えないと思います」
そう、漫画の予告書は、学園が舞台、ルイーゼの悪役令嬢ぶりがメインになり側妃もリオン王子も名前はなかった。ルイーゼが消えた後の隣国の姫も気になるが後にしよう。

お祖母様に話した後、フランツ王子には伝書鳩に手紙を括りつけた。

最初の一文に謝りを書き、一案としてからフランツ王子には学園に入るまで耐えてもらう内容を書いた。
カイル王子には、気に病むかもしれないが嘘は書けないので、私の一案をシン宛に騎士舎に送った。

「確かにこの案なら、すぐに使用人の勢力図は変えられる。が…」
「いかがされましたかフランツ王子」
「フェルナンド、三年耐えろとアーシャから手紙がきた」
「どのような内容で?」
説明を受けるフェルナンド。
「フランツ王子様、私は信じられません。本当に10歳の少女の発案なんですか?宰相の発案じゃなくて…」
「本当に考えればわかるけどつい、自分可愛いさに私が耐える案を抜いていたな。しかしながら、この案は、王妃も私自身も守れる。混乱の中カイルを逃がせば…」
すぐに王妃に相談に向かった。

王妃も驚いていたが、
「確かにつけいる隙が沢山ありそうだけど、女同士の戦いには入りたくない空気があって、巻き込まれたくないのが本音よ。要点を突いているわ、アーシャ・ドミルトン」
王妃も認めていた。私も覚悟を決めた。5人の令嬢選びは、王妃に任せた。11歳の誕生日を迎えた後、私は、婚約者候補5人という令嬢と煩わしく面倒で会いたくもない時間、無駄な時間を強要される事になった。

「兄様、本当に申し訳ありません。私が無力なばかりに何も出来ず嫌な思いをさせています」
とカイルは、フランツ王子に謝った。フランツは、片手を上げ
「これも特訓だ。ここまでになっていたのも気づかなかった私の責任でもある。令嬢達とのお茶の時間は特訓だと思っているから大丈夫だ。それに五人に時間をさけば一人一人の時間は短くて済む。それに候補者だから大丈夫だ。カイル、私の右腕になるべく頑張ってくれ。そう思って耐えるから」
自分では考えても上手い言葉が出て来なかった。兄に申し訳ないという思いはあるのに。
「兄様、11歳の誕生日を迎えたら、すぐにストック国に留学します」
と話した。
「そうか、ストック国の寄宿舎に入るのか?」
「はい、私も自分に厳しく進んでいきます。知識も武術も未熟でこんなに力の無さを感じて、何故もっと本を読まなかったと悔やんでいます」
「カイル、もしアーシャと自分を比べているならやめて、自分だけを見つめた方がいい。アーシャは、私にこの三年で氷の王子と呼ばれるほどに、気取られず冷酷な王子になれと言ってきた。それが、調整だと」
「調整ですか?」
「あぁ、意味がわからないだろう?」
「確かにわからないですね、でも何か意味があるのでしょうね」
「あぁ、しつこく聞いてやっと答えてくれた。氷の王子になる事で五人の婚約者候補に隙を与えず心の距離を縮めない。候補者の争いは、激化するが、アステリア王国側は介入出来ない。潰しあいが終わった後の介入の方が敵がいなく疑われずに入りこめる」
フランツ王子が言った。
「いや、そんな何年もかけますか?それに潰しあいって。名家が許すはずない」
「その点は、きっとルイーゼ嬢が陣を構える。被害を少なくするためにエリオンと公爵家に接触してくるんじゃないかとアーシャは考えているらしい」
「兄様、私にも協力させてください。何でもやります」

「カイル、ここから我慢の数年になる。心が折れそうになるが、頑張るしかない。だから必ず生きて連絡を取り合おう!」
とフランツは別れを告げた。カイルと会う時間も作れないほど無駄な時間が増える。だから、最後になる事はわかっていた。

カイル王子がストック国に向かう日、相変わらず王宮は賑やかで別れの挨拶も短く、お互い気持ちを言い合う事のないままで終わった。カイル王子を送る護衛は、シンと若い護衛騎士と侍従が二人、マリアとメイドがもう一人という寂しい数だったが、ドミルトン元公爵が王宮にたまたま遊びに来ていたため、公爵家の騎士達と途中まで一緒に向かう。

異変があったのは、公爵領を出た次の日、夕方になっても走り続け随分と寂れた宿場町に泊まることになった。
予定の宿とは違く、若い護衛騎士と侍従二人は予定と違うことを御者に言った。
「私は、そのように聞いております」
と御者は答え、侍従は、
「お前誰だ!」
「私は、公爵領で馬替えしたときの商会の者です」
と答えれば、
「王宮から乗ってきた御者はどうした?」
「腹を下しまして交代になりました」
「聞いたか?そんな話」
と侍従同士で話していた。シンが出てきて事情を聞くと何でもないと答えた。

そして朝出発する頃、勢いよく入りこんだ一台の幌付きの荷馬車が町に止まった。荷物の積み下ろしもせずに、御者が馬に水をやっていた。シンは、一つの荷物のロープを間違って切ってしまい、出発時刻が遅くなった。
「シンさんせっかく前日予定していた宿より先に進めて順調な旅路だったのに、何でこんなミスするんですか?」
と若い護衛騎士に文句を言われた。

カイルは事前にどのパターンも聞かされていた。しかし納得はしなかった。
「シン、出来ないよ」

ゆっくり出発することになった。

日が高い状態で村が過ぎ、大きな川が見え、見通しが良い場所だった。後ろから勢いよく荷馬車が向かってきた。馬車を止めて御者は馬車から降りた。
幌付きの荷馬車から下衆な笑い声と共に6人の盗賊が降りてきた。マリアの役目は、もう一人のメイドが盗賊の仲間かどうかシンの役目は、護衛騎士が仲間かどうか。

「やあ、王子様。昨日は、いい夢見れましたか?」
「探しましたよ、お前ら、嘘教えやがって」と侍従達に言った。
刃物を振り回し始めた。
すぐに二人の盗賊と侍従達は、馬車に近寄って馬車の扉を開ける。カイル王子を馬車から外に出させるつもりなのだろう。シンは、
「外に出てはいけない」
と叫ぶ。
馬車の中では声もしない、そして中々出てこない。
緊迫が続く状況の中、先に動いたのは、若い護衛騎士だった。
「お前ら何待たせている」
シンに盗賊の相手をさせて、自分は、馬車を覗きに行った。この襲撃の責任者は、この若い護衛騎士だ。
馬車は、両扉開くタイプだった。
「誰もいない」

侍従が覗いた時には誰も居らず、後ろに待機していた盗賊と侍従が入っていたはずなのに声もしなかった、争った感じもなかった、不自然すぎた。
そして、馬車から出れば、若い護衛騎士は、盗賊に囲まれていた。
「何しているお前ら、私じゃない。あっちの護衛騎士をやれ!何人かは王子追跡だ、まだ近くにいる!」
と言った。その言葉を馬鹿にしたように盗賊の一人が、
「捕まえろ」
とかけた言葉。一網打尽。メイドは仲間ではなかった。
「凄い演技でした」
とシンは近づき、盗賊に話しかける。若い護衛騎士は、
「何なんだ、これは。一体なぜ?」
そして猿轡を回され、盗賊に縛られて荷馬車に入れられると侍従達もいた。
考えてもわからなかった。一緒に乗り込んだのは、さっきまで御者だった男。
「残念でしたね。盗賊は、2ヶ所用意したんですか?宿場町とこの辺りと。一台の時点で疑問に思わなかったんですか?」
「ヴヴ」
構わず御者は、流暢に話す。
「あの宿場町であった荷馬車の盗賊は、警備隊ですよ。でここに辿り着く前に、貴族馬車を先出しして可笑しな動きをする荷馬車を探り、動いたところを一網打尽して、後はゆっくりあなた達だけだったんです」
「ヴヴ」
「何と恐ろしいんでしょうね。うちの領地の令嬢は!」

シンとマリア、そして新人メイドは、メイド達が乗っていた小さい馬車にいた。フードを深く被った少女と話すために。
「アーシャ様、誰も傷つけることなく捕らえられましたね」
「そうよね。これで色々わかれば良いけど、以前は調査中に犯人が死亡したわ」
と言えば、シンは厳しい顔つきで、
「すぐには王宮には連れていけないですね。カイル王子様には、不便をかけますが、本日はまだ隠れて頂くことになりますね」
と寂れた宿場町に置いてきたカイル王子を思った。


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