【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり

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37落とし穴

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「おめでとうございます、ルイーゼ様」
学園では、お祝いムードだ。いつものように扇子を広げ、響く高笑いと両脇にサラとリリアンを伴い歩いている。
悪役令嬢御一行のお通りです。
私は、巻き込まれず、関わらない位置でその姿を見たのち、みんなが動き出せば私も動いて教室に向かう。

教室内でも、
「アーシャ様、ドミルトン家の今後楽しみですね」
と言われた。そこは、しっかり微笑んでおく。リリアンも扇子を広げ、王子の婚約者の側近とばかり発言が大きくなっている。リリアンに注目しているのは、ドミルトン家に擦り寄る勢力で、見てもいないのが、反ドミルトンだ。
コルンもユイナも席も立たず前を見ている。ユイナは肩書きは、平民と言っていたが、男爵令嬢だと聞いた。誰かと一緒にいるところを見ない。不思議な人だ。

婚約パーティーを終え寄宿舎に帰った後の話。
ユイナが目の前に現れた。ガレットさんがいないので、私がアーシャ様の出迎えをしましたと少し意地悪そうに言った。
「ありがとうございます。でも今日は疲れたので、このまま失礼します」
と言えば、
「気になる事でもありますか?お調べしましょうか?」
と言われ、顔を振った。

知らなきゃいけない事なら、きっとお祖父様達やお父様達が教えてくれる。多分知らなくていい事なんだろう。私はそう判断した。
それは何故急にルイーゼじゃなきゃいけない事態になったかということ。

フランツ王子は、パーティー後、学園には来ていない。
生徒会では、文化祭の準備に入った。ローズリーさんがいない今、副会長は、エリオンが、私は庶務を引き受けている。誰もローズリーさんの事を言わない。婚約パーティーの件も話さなかった。
「会長、締め切りはいつにしますか」
と話していれば、突然勢いよく扉が開き、
「生徒会の皆さん、私から提案があります。今年は、フランツ王子様と私の婚約記念でもあります。来賓をいつもより多く招待してください。我が家から寄付金も出しますので、派手に盛大にして下さい」
とルイーゼが高圧的に話すと、エリオンが
「勝手に決めるな。学園内の事に口を挟むな」
と言えば、
「お兄様、私は、王妃になるんですよ。今から数多くの貴族達が、私と縁を結びたいと思っているでしょう。その橋渡しも生徒会の役目じゃなくて?」
全く意味不明だ。ルイーゼの頭の中は、自分が中心でみんなに好かれているが崩れていなさそうだ。学園の行事を私物化するような発言だ。エリオンは、真っ赤な顔して、ルイーゼとサラ、リリアンを連れて出て行った。
会長や他のメンバーも半笑いだ。明らかに馬鹿にしている。たぶんこれが、本心だろう。
「あぁ、アーシャ嬢もエリオン君をサポートしにいかなくていいのかい?同じドミルトン家だろう」
ゲリさんは笑っている。
「はい、ルイーゼ様はいつも通りですね。エリオン様がお話を聞いているなら大丈夫です」
と言えば、サミエルが
「エリオン君は大変だな」
と笑っている。ついこの前まで、候補者で横並びだったのに、何故突然降りた?私が生徒会に呼ばれたのは、ローズリーさんが、いなくなる事を見越して?引き継ぎも感じないぐらい生徒会は、まわっていた。会長達は、始めからギスギスしていなかった、エリオンも楽しげに過ごしていた。
それなのに、いつから?
あの時のローズリーさんが捕まった時の表情は、驚きもせず、笑いもせず、悲しんでいる様子もなく、ただ見てた。
状況を見ていたんだ。
リア王女様も同様だ。どこまで聞いていたかわからないが、あの哀れんだ顔は、ローズリーさんに向けてなのか?フランツ王子に向けてだったのだろうか?すぐにあの後帰られた。留学だ、準備だという話はどうなったのだろう?


生徒会メンバーは乗り換えたんだ、この人達は、フランツ王子からリオン王子に。これは、政治なのではないか?
どうしてだ。ローズリーさんがフランツ王子襲撃を失敗して、伯爵家は、謹慎処分、きっと取り潰しだろう。
何故これで、乗り換えた?彼らの家々は、もっと前から知らない間に計画していたのかも、リア王女を呼び寄せる事を含めて。
フランツ王子や王妃様が、冷静な判断ができないよう、すぐにアステリア王国を排除しなきゃと思わされた、または誘導された!?
あの時違和感を感じたのは、タイミングを図っていた顔だったのか。
一番彼らに得なのは、有力な家同士が組みリオン王子を王太子にし、役職を貰う。アステリア王国とも友好関係を築き長く治める家系になる。
もしくは、フランツ王子と縁を結び単独で力を持つ家になる。

狙いは、ドミルトン家をフランツ王子と共に失脚かな。攻め入る隙はルイーゼが沢山作ってくれるだろう。王宮のお金を使いこみとか、失言の責任とか学園内でこの調子なら、間違いなく味方がないだろう。

だからあの馬鹿にしたかのような笑いか!
フランツ王子はここまでわかって婚約したの?もし拒否したなら、ドミルトンは誰に付いた?
ハアー、
ただ、ドミルトンは狙われた、これは間違いない。何故防げなかった?宰相がいるのに。政治的なものなら情報戦だ。

この時、エリオンの辛そうな顔を思い出した。
頭のいい彼の事だ、全て理解しているのかもしれない。
もしかして、ドミルトンなんて潰れてしまえと思ったかな。エリオンが部屋に戻ってからも会長達は、いつも通りだ。さすが貴族。

寄宿舎に帰れば、ガレットさんが迎えてくれた。
「何かありましたか?」
「いえ、何も。部屋に戻ります」
何故私がここに来たのか?ガレットさんは理事長でここにいるのも不思議。
「ミリー、私、魚釣りをしてる間に落とし穴を用意されていたみたいよ」
「学園で意地悪でもされましたか?落とし穴だとわかっているなら避ければいいんじゃないですか?」
「そうだけど…」

家同士組まれてしまうと…
何もアイデアが出ないまま文化祭が始まった。領地では、収穫祭の準備、あちらに帰りたいなぁと思っていると、可愛い声が響いた。

「クッキーいかがですか?タイカカフェのオリジナルクッキーです。クルミ、栗のクッキーです」
「一つください」
と私は、彼女の前に立った。髪の両サイドに花柄の髪留めをしといた。
マリーゴールド・タイカ
復学したのね。

情報通のコルンさんは、教えてくれなかった。

「モンブランのケーキ…」
ボソッと言った。ミリーが言っていたケーキの絵が書いてあった。マリーさんは、満面の笑みで
「あぁ、そうです、そのカフェのクッキーです」
と声高らかに言った。マリーさんのクラスは、クッキー屋さんなのか。そして商品提供は、タイカ商会でやって、この店は、マリーさんが中心だった。
明るく優等生か…
戻ってきたヒロイン、あの奇行が嘘のようだ。花が咲くかのように軽やかで、眩しいくらい輝いている。
今の掛け声で人集りが出来た。私は、列から弾き飛ばされて、クッキーを見た。

良い事、思いついた!?かも。

生徒会の仕事を終わらせて、寄宿舎に帰って、すぐに手紙を書く。お祖母様にお願いするしかなかった。事のあらましを書いて、ドミルトン家が嵌められつつある予測を書いた。こうなるとは限らないが、その片鱗を見せた生徒会メンバーの若さの落ち度であって欲しい。更に手を打たれるのは、困る。
多分お祖母様達も知っているかもしれないがつけ込むならまだ学生の彼らだろう。

私は、お祖母様のコネを使って、王妃様にお会い出来る事になった。
「この度は、一、令嬢の我儘にお付き合い下さり感謝します。私ごときが王宮に足を踏み入れていると知れば、ルイーゼ様の怒りを買うことになりましょう。早急に要点をお話させて下さい」
と学園の生徒会メンバーの様子から推論を立てた話をした。王妃様は、頷き、
「4家がフランツ王子の婚約者候補から降りると言ったのは、アステリア王国の交流会が中止になった日よ。すぐに4家同士の同盟の意味を理解したけど、強固だったわ。私の実家とドミルトン家で4家には対抗出来ると踏んで婚約パーティーを開いたの、フランツには悪いと思っているわ」
と悲しい顔をした。
「リア王女様がどこまでご存知だったかは知りませんが、サミエル会長もしくは側妃様からその4家が組む事を聞かされていたのでしょう。あの時驚いていませんでしたから。リア王女には誰から話を持ちかけられたか聞きたかったのですが、リア王女が卒業パーティーに来賓としてくること出来ますか?」
「卒業パーティー…何故?」
「これは、学園の中に政治を持ちこみ実行されたんです。ローズリーさんも利用されたかもしれない。お母様の実家だけでなくて、その犯人に思い知らしめたく存じます。学園内ならば、学生の甘さや焦り、若さが表情にも言葉にも出る可能性があります。リア王女様ももしかすればポロッと何か漏らすかもと」
と言えば、王妃は、感心したかのように、
「あなた強かだったのね。悪い令嬢ね。ぼろが出る弱い所から叩くは、正攻法ね」
私は、頷いた。それにエリオンの恋心も利用したわ、ルイーゼには可哀想な気がするけど、調子に乗りすぎが目に余る。結束した派閥の家柄が笑っているわ。
「フランツ王子様にもお手伝い頂きたいです」
と言えば、
「あの子も反省しているのよ、提案された通りに帰路があったのに自分で解決しようとした事で盤面をひっくり返された事」
「そうですか…」
あの時あぁすれば良かった、は後の祭り。
お茶を飲んで体調が悪いで帰れば、事件は起きなかった。フランツ王子は、次を考えて潰したのかもしれない。結束されていたならいつ起きても仕方ないので今回だけではないだろう。

紙を用意してもらい、フランツ王子には自ら仕掛ける側になる依頼をした。上手くいくかはわからない。フランツ王子の評価がどうなるかはわからない。
でも学園で仕掛けられて、見えている落とし穴に落ちろは、無理!
浅くすぐ出てこれるなら、考えるけど、マークもカトリーヌもいるドミルトン家が共倒れは、嫌だ。

そして私は、気づかれないように王宮を立ち去った。
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