【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり

文字の大きさ
39 / 46

39落とし穴3

しおりを挟む
「卒業生の皆様、おめでとうございます」
副会長のエリオンが、送辞を述べた。とても素敵な笑顔な会長のサミエルから卒業の言葉が話された。
生徒会メンバーから卒業するのは、サミエルさんとローズリーさんだった。ナダルさんが会長になるかと思ったが、ここでも身分差があるらしく、エリオンが会長になった。
和やかに進むパーティー。
ルイーゼがいないだけでサラとリリアンは見る影がないくらい存在感が薄い。これは、本当に不思議なんだけど、ルイーゼの悪役令嬢がいなくなった後、すぐに似たような扇子を口元に当てて、廊下を取り巻きを連れて歩く令嬢がいたことだ。それが、サミエル会長の妹、カレンさんそして従姉妹のコルンさんも取り巻きのように行動するようになった。いつもそんな感じだったのか、ルイーゼが、強烈過ぎて目立たなかったのかわからない。
でも、確かにルイーゼの高笑いや高圧的態度や言動は、廊下や食堂で争いが起きていた。
その相手だったのかな。
学園に大きな派閥を作っていた。カレン・バミューダ侯爵令嬢、真っ直ぐ伸びた金髪にきつめの顔立ち、卒業パーティーでは、卒業生より目立つ赤色のドレスを身に纏っていた。
何故こんな派手な人、注目されてなかったのかしら?
そして、何故かこの令嬢、マリーゴールドさんに突っかかっていた。不思議な光景だ。
私の知らないうちに数々の争いが起きていたことをクラスメートに聞いた。ローズリーさんの所に逢いに行ったりしていたから知らなかったけど、予告書のあれやこれは、カレンさんに不幸が降りかかったそうだ。
一番は、マリーさんが売っていた胡桃と栗のクッキー、今、あれはブームだ。王都にも何店舗もある。
私が買ったすぐ後に、カレンさん達がきて、イチャモンをつけたと聞いた。
「平民上がりの成金が学園の権力を利用して売り込むなんて、汚い子」
と言って、文化祭の屋台を壊してしまった。その後、赤茶髪のゼノンさんが来て、追い払いワゴンでクッキーを売ったところ、来賓に来ていた貴族が買って口コミで広がったらしい。

クラスメートから聞いて、そこからの因縁で事あるごとにぶつかっている。ゼノンさん絡みなのでは?とさすが恋話大好き令嬢達が噂をしている。
私の気がかりは、コルンさんだ。以前のように食堂の席どりだけじゃなく、取り巻き化しているから。従姉妹だからなのだろうか?
クラスメートからも
「ほっときましょう、アーシャ様。ドミルトン公爵令嬢のことも馬鹿にして高笑いしておりましたし」
「いえ、それは本当にルイーゼ様が悪いのですから」
と言っておく。
気づくと私が知らないうちに、違う側で絵を描きたくなるような話が転がっていた。いつもニアミスというか、自分の目で見る前だったり、終わりの捨て台詞だったり、鳥のフンが落ちて帰っていく姿だったりといつも残念ながら、
「どうしたの?」
と他の令嬢に話を聞くだけだった。

カレンさんが、マリーさんに
「何、そのピラピラした安そうな生地のドレス」
「あら、カレン様、卒業生より目立ってますわ。ご卒業されるのですか?」
えっ!?まさか嫌味言うの?前から負けてないというかルイーゼにも歯向かっていたけど、撃ち合いなの?
私は、片隅で行われる令嬢の争いも気になるが、これからもっと大きな劇が始まる予定なのに、令嬢同士の長くなりそうな争いに内心焦っていた。
「クッキーが売れたからって、貴族の質が高くなったわけではありませんのよ。もっと控えたらいかが?」
「私は、カレン様のように廊下の真ん中を歩いたりしておりませんわ。それに聞いた所、園庭に鳥がいたのを皆さんで追い払ったとか、そちらの方が貴族の質を疑われかねないです」
と言えば、コルンが、
「何よ、奇行ばかり繰り返していたくせに、鳥に餌ばかり撒いているから、木に鳥ばかり止まっているじゃない」
と、とても正論を言っていた。私もそれは気になっていた。この学園、やたら鳥多いよねと、かなり地面にフンが落ちているよ。
「動物を愛でる心もないのですか?」
と呆れているマリーさん。いや、もういいだろうと思った時、
「そう言えば、奇行で思い出したけど、私の前でよく転んでいたわね。こんなのおかしいでしたっけ、あれ何だったの?あなた病気だったのかしら?ホホッホ」
周りの人達も流石にあの奇行は覚えていた。顔を真っ赤にしたマリーさん。

そしてそこに颯爽と現れた、赤茶髪のゼノン。バッと片手でマリーを守り、
「人、それぞれ心に傷を持つ。何故それを掘り起こすんだ。カレン嬢」
「ゼノン様、掘り起こしているわけではありません。私の前で起きたこと、理由が知りたかっただけでございます」
とカレンは言った。ゼノンは、顔を振り
「私にも心に傷がある。幼い時拐われた記憶だ。目の前で起きた事も言語化出来ない時もある。それが人の心だ。それを理解し寄り添ってくれたマリー。その優しい心がわからないなんて、カレン嬢君は恐ろしい令嬢だな」
と言い捨てた。
何、何なんだこの劇場ぽい、景色。私は、持っていた書類を落としそうになった。これがまさか、マリーさんが予告書の通り、心を解き放ち、通じ合うというものなのか。凄い、一気に華やかさが増した。マリーさんは、ピンク色の頬にして上目使いでゼノンさんを見つめ、お互いの視線が噛み合った。まるで薔薇が咲いているように二人の世界。
カラーページの扉絵! 

って何?私の思考は停止した。

「何故ですゼノン様、そのような成金と一緒にいては、ゼノン様の価値も下がります」
とキーキーと騒ぐカレン御一行。卒業生達も傍らで起きている騒動に気づき見始めていた。
カレンさんの良いところは、みんなの視線を感じ、その場を去るところだ。
捨て台詞、
「なんて子なの!」
と言い放った。

劇場ぽいものに、途中から呆気に取られて端で観客として見ていた私の首筋に視線を感じた。
毎回思うのだが、ユイナさんは私の命を狙っているんじゃないか。首筋ばかり視線が当たる。

ローズリーさんが来たという知らせに、第二幕が始まると気合いを入れて、持っている書類をエリオンに渡した。

卒業パーティーが歓談も半ばに差し掛かり、フランツ王子とエリオンが前に出た。
「みなさんに非常に残念なことをお伝えしなければいけないことがある。以前、アステリア王国の交流会、事件が起きて交流会が出来なかったのを覚えているか!」
とフランツ王子は声高らかに言った。突然何が始まったのかとフランツ王子に注目が集まる。
「ある組織によって、みんなが練習してくれていた剣舞の発表が出来なかった。理由は、生徒会の副会長ローズリー嬢が、挨拶し終わった私に近づき襲うのではないかと思ったからだ。周りはローズリー嬢が用意した私設警備隊で私も疑心暗鬼になっていた。深く反省している。実際にはローズリー嬢は、数年前に起きた取り潰された侯爵家の件で申し立てがあったとのことだ。その場で言えと唆した組織があるな、サミエル!生徒会だ。リア王女とも内密に打ち合わせをし、私がアステリア王国の関係者に対してしたことを責め立てられて、それを見て楽しんでくださいだとよく言ったな」
と煽った。サミエルや生徒会のメンバーは、いきなり交流会を潰した組織扱いされて戸惑っている。
サミエルは、
「いや、フランツ王子様、勘違いをされております。私達は、準備していたわけで内密に打ち合わせなどしておりません」
と言えば、扉が開いた。
今回証言を頼んだローズリー嬢の登場だ。
「発言の許可をお願いします」
「あぁ、ローズリー嬢。君に起きたことを教えて欲しい」
「失礼します。私の母の実家がお取り潰しになったことで、家族の関係が悪くなりました。王子様が入学するというときに私は生徒会メンバーに胸の内を告白しました。まだエリオン君はメンバーに入っていない時です。その後も王子様は、中々学園には来られなかった。5人の婚約候補者達の争いも私には、イライラして、文句を言ってやりたいとサミエル会長に漏らすと、その場を用意してあげると言われました」
「何を勝手なことを、こいつは罪人ですよ、嘘つきです」
とサミエルが言った。ローズリーは、目の色変えて、
「罪人ですって!そのあとサミエル会長は、側妃様に会いに行き、アステリア王国の交流会やリア王女様の来国を決めて来たと、自慢されていたじゃないですか」
「交流会を決めたのもサミエルか?」
フランツ王子が聞けば、サミエルは、急に動揺して
「生徒会で交流会があれば、楽しく未来にも繋がるという提案が出ました」
と言えば、同じ副会長のナダルが、
「会長がひとりで決めてきたじゃないですか」
と言えば、サミエルは焦って
「嘘言うな。みんなで決めたじゃないか、この状況にうんざりだと、夜会やパーティーに同伴者として婚約者を連れていけないと王子の文句を言っていたじゃないか!」
「違う、我々は、文句じゃない。いつ決まるかなと言う世間話だ」
と生徒会メンバーが言う。
やはり若い。権力者が強い発言をしたら、自分だけは守ろうと動く。
「サミエル会長がリオン王子につこうと言い出しただろ、幼い王子なら、重役のポジションは、我々に手に入ると。それを家に話してそこからは、トントン拍子に笑うと言ってたじゃないですか!」

会場が静かになった。
優秀な人は、人に責められたり、叱られたりしないらしく、いつも涼しい顔をしているのに、こんな焦って何でも話してしまって、動揺しているメンバーに驚きだ。

そして何より打たれ弱い。

あっと言う間に、計画を自分達の口から言ってしまった。証拠はいらないかもなとエリオンを見れば、青筋が浮いている。そして高く書類をあげ、
「ここにアステリア王国リア王女の滞在中の娯楽費や贈り物などの領収書がサミエル会長宛で文化祭にかかった費用として計上されている。明らかに不正だ。サミエル会長とリア王女が繋がっていることは明白」
とかなりのしたり顔で言った。フランツ王子も睨みつけ、
「リオンにつくのは、お前の勝手だ。学園に自分が使った金を請求するのは筋違いだろう。バミューダ侯爵家にはその旨を報告し処分があると思え。そしてサミエル他生徒会メンバーは、ローズリー嬢に自分達が計画したものを全て擦りつけた事を謝れ」
と裁いた。フランツ王子に拍手が出た。挨拶運動も相乗して王子の株爆上がり中だ。エリオンはローズリー嬢を見つめている。

「良かったね、エリオン様」

私は、人混みの中、扉に向かった。ドミルトン家の評価は上がらないけど、とりあえずこれ以上の落とし穴は、回避出来たんじゃないかなと溜息を吐いた。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

モブ令嬢、当て馬の恋を応援する

みるくコーヒー
恋愛
侯爵令嬢であるレアルチアは、7歳のある日母に連れられたお茶会で前世の記憶を取り戻し、この世界が概要だけ見た少女マンガの世界であることに気づく。元々、当て馬キャラが大好きな彼女の野望はその瞬間から始まった。必ずや私が当て馬な彼の恋を応援し成就させてみせます!!!と、彼女が暴走する裏側で当て馬キャラのジゼルはレアルチアを囲っていく。ただしアプローチには微塵も気づかれない。噛み合わない2人のすれ違いな恋物語。

目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春
恋愛
島国ヴィヴァルディには存在しないはずのサクラを見た瞬間、ペリーウィンクルは気付いてしまった。 この世界は、前世の自分がどハマりしていた箱庭系乙女ゲームで、自分がただのモブ子だということに。 しかし、前世は社畜、今世は望み通りのまったりライフをエンジョイしていた彼女は、ただ神に感謝しただけだった。 ところが、ひょんなことから同じく前世社畜の転生者である悪役令嬢と知り合ってしまう。 転生して尚、まったりできないでいる彼女がかわいそうで、つい手を貸すことにしたけれど──。 保護者みたいな妖精に甘やかされつつ、庭師モブ子はハーブを駆使してお嬢様の婚約破棄を目指します! ※感想を頂けるとすごく喜びます。執筆の励みになりますので、気楽にどうぞ。 ※『小説家になろう』様にて先行して公開しています。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした

タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

処理中です...