プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)

犬野きらり

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15 ヒロインは捜査する

まぁ、ある程度反省はしたが、家庭教師がくれば、青い鳥の髪留めをつけ学習をし、黒豹さんとは、手紙のやり取りでなんとかすると言い訳をしていた一週間、事件が起きた。

「大変です、お嬢様!アリサ様がヒョウさんの存在を気づかれたようです」

んっ?どうやって気づくの?使用人でも料理人見習いだよ。

「メイド達がかっこ良さげとか顔も絶対イケメンだと噂話を聞かれたらしく、サラに連れて行ってと命令されたそうです」

なんなの、あの子は!

「至急、ヒョウさんを部屋に隠して!」
と言えば、メイドの一人が知らせに行き、どうなることかわからない。

ハアー
残ったラーニャに、
「サラはアリサさんを連れて調理場に行くの?」
「使用人の事だから執事長に確認してからじゃないと言ったそうですが、その後は、私もお嬢様の所に向かいましたし、わかりません」

私達は部屋を出て、調理場に行くと、甲高い声で、騒いでいる人物がいる。
「ねぇ、新しい料理人さんどこかしら?出てきてください~、挨拶したいです~」
とベタなことを言って探している。
「ラーニャ、隠れましょう!」

「いないのかしら?サラ、その使用人の部屋に案内して」
「アリサ様、使用人部屋なんてお嬢様が行く場所じゃないです。執事長に怒られてしまいます」
「大丈夫、サラが連れて行ったなんて絶対言わないから。みんなも言わないでね。この間の差し入れまたするから~」
と辺りの使用人にも口止めさせた。

「差し入れ?」
と呟くと、ラーニャは頬を掻きながら苦笑いをした。
口止め料になるような差し入れ?
まぁ、それは後で聞こう。
アリサさんはサラの手を引いて使用人部屋に向かった。

みんな呆然としている。

所用を終えたらしい執事長が来た。周りから聞いてすぐに使用人部屋に行く執事長。乱れず、言葉数も少なく、足音も立てない執事長でも、眉間に皺が寄っているのはわかった。
大変そうだ。
アリサさんのあのパワフル行動はなんだろう。何がアリサさんを突き動かしているんだろう?好奇心?興味?

「ラーニャ、これを私にどうしろと言うの?」
と聞くと、
「いや~止めて欲しくて」
と返って来た。

面倒、まず最初の感想。
でも何もしなかったら、使用人達に意地悪認定されるのだろうか?いや、止めたとしても、アリサさんから、また得意の悲劇のヒロインスイッチが入って、使用人と仲良くすることの何が悪いんだとかなんとか言い出し、差別だ、意地悪だの連続攻撃を受けることになるだろう。


黒豹さんは、耳がいいと思うので、盗賊だし、危険察知能力は高いだろう。きっと使用人部屋にはいないな。
「ラーニャ、私達はこちらに行きましょう」

とりあえず、裏庭に向かった。

そして、こっそり、
「黒豹さんや黒豹さん、大丈夫でしょうか?」
と伸びている木に向かって言った。
すると、頭の上にカコッとどんぐりみたいな木の実を落とされた。

「すぐに隠れたが、お前の言った家の問題ってあの女のことだな」

姿は見えない。上手く木の葉っぱや枝で隠れている。
「はい、そうです。ラーニャ、見つかるとまずいわ。まず安全ルートの確認と場所の確保。もしお兄様が帰ってきたらアリサさんを誘ってお茶の準備をして、陽動しましょう!他のメイドにも伝えてちょうだい。私達は一番近い書物室に移動します」
と言うと、スッと移動する。
メイドにしては口調が軽いが、こういう指揮系統には迅速だ。後、情報が早い。

「では、ヒョーガル様参りましょう」
と言うと
「黒豹でいい」
と言葉が上から降ってきた。

名前を伝えたが、そのくらいで記憶は思い出さないと言うことか。
まぁちょうど良かった、話があったので、人目を気にしながら廊下を歩き、書物室に入った。

「せっかくです、本でも読まれたらいかがですか?」
と言えば、スッと手を伸ばして本をとる。その一連の動きは優雅で髪型や服装以外は、王子らしい気品に溢れている。

「読みながら、聞いてください。ここ最近家庭教師にトモホーク王国について、歴史経済、文化、風潮を習った所、ヒョーガル様は、王位継承問題に巻き込まれていることがわかりました。現在、国王派と王弟派に経済が揺れているそうです。勢力の動きはわかりませんが、わざとわが国に逃した可能性もあるのではないかと、そしてもしトモホーク王国からお迎えが来ても危険かもしれないのです」
と現在のトモホーク王国の状態を教えた。
国に帰らそうとしていたが、実際そんな危ない状況の国になっているなんて想像もしていなかった。私は、黒豹が記憶を思い出したという台詞を聞いて止めてしまった、その後ゲームがどうなったかわからない。

ページが捲れる音がする。
私の話聞いていたかな。
「あの、」
と言えば、
「そう」
と冷たく短い言葉。まぁ、いいか。今はまだお父様にお願いしている最中で、思う通りにはいかない。

私も一冊本をとる。お兄様の本だろうか?
『贈り物の選び方』
アリサさんがみんなに買って来てくれた事を思い出した。気遣いってことか。アリサさんはラーニャ達に何を差し入れしたんだろう。
私はお菓子をラーニャに選んでもらったけど、もっと喜ばれる物って何かしら?

開いている扉からノックの音がした。
「はい」
と返事を返せば、執事長がお辞儀をした。
「お茶に行けばいいのかしら?ヒョウさんの事は頼める?」
と言えば、執事長は、
「はい、お騒がせしました」
と再度頭を下げた。

私は、部屋を出る際に彼をみたが、本に夢中らしくあまり周りの音を聞いてない。彼にとったら久しぶりの読書の時間かな。
「執事長、本の貸し出しも認めてくれるかしら」
「はい、承知しました」

お兄様とアリサさんと三人のお茶会は疲れた。
「新しい使用人がとてもかっこいいらしいのですが、まだ会えてないのです。何故使用人部屋に行ってはいけないのですか?」
の一点張り。
サラの顔色の悪さは尋常じゃない。
お兄様のメイドにも睨まれ、ラーニャも助け舟を出さない。
サラがヒョウさんのことを漏らしたのだとわかる。これは、メイドとして厳しいな。
アリサさんは男の事になると、何故こんな積極的なのかしら?
お兄様もキャンキャン言われて困っている。
「使用人と貴族って差別がそもそも間違っています」
と主張し始めたよ。
やっぱりとしか思えない、ヒロインぽい主張だ。兄様も目を見開き驚いている。

もう一度サラをみたら、もう立っていられないぐらいな顔色だ。
「アリサさん、メイドのサラの体調が悪そうよ。そちらをまず気にした方が良いんじゃないかしら?あなた付きでしょう?」
と言って、初めてアリサさんは、サラを見て、
「どうしたの?サラ。体調が悪いの?すぐに部屋に戻っていいわ」
と言った。
付き添わないのね。隣のラーニャに介抱を任せている。さっきの使用人と貴族の垣根はどうした?
心のなかで叫んだ後、
「アリサさん、本日はお開きにしましょう」
と言うと、
「なんでですか?久しぶりにこうやって仲良く話せているのに、ミルフィーナ姉様は、またそうやって私だけ邪魔者扱いするんですか?」
どうしてそんなふうに言葉をとるの?悪役令嬢のフィルター厚すぎませんか?と兄様を見た。
ゆっくり頷く兄様。
「アリサ、そんなふうに言うものじゃないよ。サラが体調が悪いんだ、メイドも仕事の調整をする時間が必要だろう。私達は邪魔しないように各自、部屋に戻ろう。また夕飯の時、父様を交えて話せばいいよ」
と言って、なんとかアリサさんは、兄様が言ったことで渋々納得した様子だった。

この人にとってサラとヒョウさんの扱いの違い、私と兄様からの言葉の扱われかたの違いにみんな考えた答えは一つ。
使用人有無じゃない。


『男好き』
感想 110

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