あまりにもあまりにも偶然に墜落し、とんでもない上位生命体の一部となった彼らです。

栗菓子

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第29話 不気味なほどに穏やかな村

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戦が起きると風の知らせでこんな僻地の村まで届いた。

ガリア王家の三貴子の戦への参加や、ゼーンというラテルの庶子という男が、軍隊を創り上げて、ここガリア辺境あたりを支配するようになった。

大きな大きな戦が起きた。と色々情報が届いた村人は、蒼白になったり、慌てたり、混乱したりした。

「ど、どうしよう。ナラ。 やっぱり流行り病のせいで、戦が起きたのかしら。だって多くの人も死んだし、食べ物や何もかも不足している領土もあるって聞いたし、そういう時は、やはりあるところから奪うのが単純よね。
多くの生き残った国もそう考えてしまうわね。」

シンプルで単純だが、即効性がある政策。 戦で奪う。 生きるために誰もが血眼で戦うだろう。

こんな村で過ごしているソアラでさえも考える策だ。

ナラもそうね・・と頷いた。でも最後にはみんな疲労してうんざりするような戦いをして消耗する人たちも増えるだろう。結局、一番力がある者や、運のよい者が生き残るのだ。

ここは、不思議と、村人がかろうじて生き延びる作物と薬草もある。井戸水もあるし、近くに湖もある。そこは綺麗で水も飲める。万が一、火事になったら、湖に飛び込んで生き残るチャンスは増える。

ナラは不思議と、穏やかな気持ちでなんとかなるだろうと考えた。

ソアラは美しい顔を蒼白にしながら、赤毛の髪を手でくるくるといじくった。狼狽している時、落ち着こうとするソアラの癖だ。


「ソアラ。落ち着いて。思考や、思いは大事よ。良くないことを思ったり、考えたら、かえってその事態を招き寄せるわ。大丈夫。ほとんどは思い過ごしよ。でも念のために少しは防備をしましょうか?
村の倉庫に置いている錆びた剣や、鍬を研ぎましょうか?使えるように。何もしないよりましだし。それと多くの布や薬草や、怪我に効く薬も大量に作っておきましょう。ほらたくさんすることはいっぱいあるじゃない。」


ナラはソアラの動揺を宥めようと、柔らかに告げた。


「そ、そうね。ナラ・・弱い者も何もしないよりましよね。少しは何か役に立つものを創ったほうがいいわ。ナラは色々考えるわね・・。あたしも何かしないと・・。」


ソアラはしばらく思案していた。

やがて、ソアラは他の村娘たちと相談して、この村の近くの男衆と女衆と火急の時に助け合うようにして見ると、ソアラともう一人の若者 ノアという男が、一緒に隣村とかに回ることになった。

ノアはこの村で一番理知的で青い瞳をもった清涼な性格をもった男だ。
ノアはソアラに好意を持っている。上手くすれば恋人になるかもしれない。


ナラと他の村娘と村人は、ナラの言った通りに、薬を大量に作ったり、布を創ったりして、非常食品とかの準備や、刃物を研いだり、様々な防御や、生き延びる術をできる限り考えて、知恵を振り絞った。


こんなにたくさん色々考えたり、何かを創るのは初めてだ。ナラは不思議と疲れながらも楽しいなと不謹慎にも考えた。いけない。いけない。生き延びるためにみんな知恵を振り絞っているのに、楽しいだなんで・・ナラは自分を戒めたが、少しナラに子どものような心があった。

こんなの初めてだ。戦で心が高揚しているのだろうか?ナラの落ち着いた平坦な心にかすかな色合いが付いている。

あの男と交わってから、少しはナラも変化したのだろうか?

ナラはなんだか生きる実感を味わった。皮肉なことに、戦がナラの生きる覚悟を呼び起こしたのだ。

みんな戦の情報で、不安と焦燥で生き延びる術を模索して、様々な試みをしている。

しかし、この村は、人々の不安とは裏腹に、静寂と安寧に包まれていた。

不気味なほどに穏やかな村だ。ナラは少し不思議に思った。どうしてここは戦の火はとびかかってこなかったのか?

まるで何かの繭に包まれているみたい。

ナラはなんだかこの村に違和感をもつようになった。

ナラが、無意識に結界を張っているとはナラの表面意識では分からなかった。

はっきりと自覚するにはもう少しの時を要した。


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