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第3章 動乱
第4話 異変
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はじめは、僅かな異変を感じ取ったのは、辺境の少数民族のシードだった。彼は獣以上の勘がすばぬけており、頭が長けていた。
いつも女たちが一日かけて歩いて水を木桶に汲む日常を眺めながら、木のコップで水を飲もうとしたら、微妙に味が違った。これはどういうことだ?毒に近い。舌がピリピリする。僅かなものを含んだだけで手が震えはじめた。
危険だ。本能が叫んだ。
「飲むな!水がおかしい。毒が入っている!」
しかし時遅し。同時に呑んだ女や男たちが震えながら悲鳴をあげながら倒れたのだ。
「人為的か!それとも川に毒が流れるようになったのか!」
彼は激昂しながら原因究明をしなければと、すぐさま当惑している民たちに怒鳴った。
「お前たち!すぐにどこの水か調べろ!被害者が増える前に伝えろ!この水はおかしい。毒だと!」
ハアハアと息切れをしながらも必死で彼は叫んだ。もしこれが人為的なら決して許せないと彼は震えながら誓った。犯人を八つ裂きにしてやる。川や水は命の源。それを穢すなど愚の骨頂だ。
そういった輩は必ず愉快犯で命を粗末にする。自分の命もどうも思っていないに違いない。
そういったやつは必ず駆除しなければならない。
シードはそう予測したが、いきなり銃弾の音が聞こえて、森の動物たちの悲鳴があちこちから上がって逃げていく姿を見て蒼白になった。
ー違う!これは、敵襲!馬鹿な、今は三国同盟で休戦の誓いを立てていたはずだ!
皇国ユージュネイアの辺境にある領土は、半ば見放された地でも、前時代の古い遺跡の宝物や技術によって辛うじて民は生き延びている。
そう、ここは、隣国サイカの国境の近くだ。
目と鼻の先には、厳しい検閲所と要塞のような塔で、いつ敵に回るかわからない他国の軍人たちが見張っている。
もう一つの大国シアは、傍観者のふりをして動向を見守っているが、隙があれば皇国の領土を奪う
野心に溢れているのは明白であった。
ー卑怯な。とうとうサイカが侵略を始めたのか……。
武装した兵士たちが、目の前に現れた時、シードはこれまでかと目を閉じた。
ー村が燃えている。村人たちが逃げまどっている。脅えと焦燥に駆られて動物のように狩られている。
焼け落ちる木をシードは見て気を失う寸前、怒声が大きく響き渡った。
「シード!シード!目を覚ませ。今は駄目だ。死ぬぞ!魔術師が来た!呪い師もだ!」
ーああ、あれは戦士のカイトだ。援軍が、味方が来たのだ。嬉しさのあまり少し涙目になりながらも、彼は必死に己を奮い立たせた。毒などに負けるものか!かつてない闘争心がシードを満たした。
魔術師が詠唱を終えて、水の精霊を呼び出し、炎の拡大を阻止している。必死で汗を流しながらも、村の壊滅を防ごうと抗っている。
呪い師もいつもの飄々とした顔は消えて、かつてない鬼の形相で、呪いの言葉を敵兵たちに撒き散らして、命を奪っている。
戦士たちも異変に気付き、敵襲に倒れながらも、戦意だけは喪わなかった。腕を切断されながらも、獰猛に獣のように狂ったように戦っている。
ー負けてはいられない。シードは半ば無意識に戦いのトランス精神状態に入った。
「戦いの神よ。俺に僅かなりでも力を貸したまえ。」
死ぬわけにはいかない。こんな無残な犬死のような運命は認められぬ。
身体の奥底から力が奔流のように溢れ出る。神は助力なさったのだ。
「戦うのよ!敗者は全てを奪われるわ。なんとしても死守しなければ、この土地を守って!」
村娘たちも果敢に粗末な棒や、短剣をもって必死で応戦していた。
なかには震えながらすすり泣きしている人もいるが、彼らの目は血走って、この狂気の戦に応戦していた。
シードは精神集中して、深呼吸を一回した後、静かに風のように剣を振りかざした。
滑らかな剣の軌跡が、敵の首や、致命傷になる箇所を明確に突き刺していった。
神憑ったように、シードの剣は美しく、敵の血に穢されても尚煌めきを失わなかった。
「……敵を滅ぼせ。ケガワラシイ。モットモット我に糧を。」
剣の中にいる精霊が、血を求め、敵に憤慨していた。小さくシードは頷いて、剣の力と呼応するかのように、敵を無慈悲に斬って斬って斬り続けた。
ーこれは決して敗れてはいけない戦いだ。
シードは、運命の分岐点を垣間見た。
彼は鬼のように壮絶な形相で、血を浴びながら、敵対する兵士どもを抹殺していった。
仲間たちも、血走った目で戦い続けた。
まもなく運命が決着する。沈む夕日が唯、彼らの戦いを照らしていた。
国と国の狭間で、彼らは命がけの生存競争をした。
いつも女たちが一日かけて歩いて水を木桶に汲む日常を眺めながら、木のコップで水を飲もうとしたら、微妙に味が違った。これはどういうことだ?毒に近い。舌がピリピリする。僅かなものを含んだだけで手が震えはじめた。
危険だ。本能が叫んだ。
「飲むな!水がおかしい。毒が入っている!」
しかし時遅し。同時に呑んだ女や男たちが震えながら悲鳴をあげながら倒れたのだ。
「人為的か!それとも川に毒が流れるようになったのか!」
彼は激昂しながら原因究明をしなければと、すぐさま当惑している民たちに怒鳴った。
「お前たち!すぐにどこの水か調べろ!被害者が増える前に伝えろ!この水はおかしい。毒だと!」
ハアハアと息切れをしながらも必死で彼は叫んだ。もしこれが人為的なら決して許せないと彼は震えながら誓った。犯人を八つ裂きにしてやる。川や水は命の源。それを穢すなど愚の骨頂だ。
そういった輩は必ず愉快犯で命を粗末にする。自分の命もどうも思っていないに違いない。
そういったやつは必ず駆除しなければならない。
シードはそう予測したが、いきなり銃弾の音が聞こえて、森の動物たちの悲鳴があちこちから上がって逃げていく姿を見て蒼白になった。
ー違う!これは、敵襲!馬鹿な、今は三国同盟で休戦の誓いを立てていたはずだ!
皇国ユージュネイアの辺境にある領土は、半ば見放された地でも、前時代の古い遺跡の宝物や技術によって辛うじて民は生き延びている。
そう、ここは、隣国サイカの国境の近くだ。
目と鼻の先には、厳しい検閲所と要塞のような塔で、いつ敵に回るかわからない他国の軍人たちが見張っている。
もう一つの大国シアは、傍観者のふりをして動向を見守っているが、隙があれば皇国の領土を奪う
野心に溢れているのは明白であった。
ー卑怯な。とうとうサイカが侵略を始めたのか……。
武装した兵士たちが、目の前に現れた時、シードはこれまでかと目を閉じた。
ー村が燃えている。村人たちが逃げまどっている。脅えと焦燥に駆られて動物のように狩られている。
焼け落ちる木をシードは見て気を失う寸前、怒声が大きく響き渡った。
「シード!シード!目を覚ませ。今は駄目だ。死ぬぞ!魔術師が来た!呪い師もだ!」
ーああ、あれは戦士のカイトだ。援軍が、味方が来たのだ。嬉しさのあまり少し涙目になりながらも、彼は必死に己を奮い立たせた。毒などに負けるものか!かつてない闘争心がシードを満たした。
魔術師が詠唱を終えて、水の精霊を呼び出し、炎の拡大を阻止している。必死で汗を流しながらも、村の壊滅を防ごうと抗っている。
呪い師もいつもの飄々とした顔は消えて、かつてない鬼の形相で、呪いの言葉を敵兵たちに撒き散らして、命を奪っている。
戦士たちも異変に気付き、敵襲に倒れながらも、戦意だけは喪わなかった。腕を切断されながらも、獰猛に獣のように狂ったように戦っている。
ー負けてはいられない。シードは半ば無意識に戦いのトランス精神状態に入った。
「戦いの神よ。俺に僅かなりでも力を貸したまえ。」
死ぬわけにはいかない。こんな無残な犬死のような運命は認められぬ。
身体の奥底から力が奔流のように溢れ出る。神は助力なさったのだ。
「戦うのよ!敗者は全てを奪われるわ。なんとしても死守しなければ、この土地を守って!」
村娘たちも果敢に粗末な棒や、短剣をもって必死で応戦していた。
なかには震えながらすすり泣きしている人もいるが、彼らの目は血走って、この狂気の戦に応戦していた。
シードは精神集中して、深呼吸を一回した後、静かに風のように剣を振りかざした。
滑らかな剣の軌跡が、敵の首や、致命傷になる箇所を明確に突き刺していった。
神憑ったように、シードの剣は美しく、敵の血に穢されても尚煌めきを失わなかった。
「……敵を滅ぼせ。ケガワラシイ。モットモット我に糧を。」
剣の中にいる精霊が、血を求め、敵に憤慨していた。小さくシードは頷いて、剣の力と呼応するかのように、敵を無慈悲に斬って斬って斬り続けた。
ーこれは決して敗れてはいけない戦いだ。
シードは、運命の分岐点を垣間見た。
彼は鬼のように壮絶な形相で、血を浴びながら、敵対する兵士どもを抹殺していった。
仲間たちも、血走った目で戦い続けた。
まもなく運命が決着する。沈む夕日が唯、彼らの戦いを照らしていた。
国と国の狭間で、彼らは命がけの生存競争をした。
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