迷い人になったネコ

神様 誕生

フウはみためは普通の明るい女の子でした。フウは普通に生き普通に年老いる女の子に見えました。
でも違いました。
フウのおとうさんやおかあさんは変な新宗教にかぶれて、全財産を突きこんで、深みにはまりました。
フウのおとうさんとおかあさんはこのつまらない現世に飽きて、もっと刺激的な世界を求めたのでしょう。
たとえそれが甘い蟻地獄だとしても、かれらは盲目で無知で無謀でした。
ある日　突然　破局は訪れました。
いや‥いままでが普通の家族を装っていた時間が続いたのが奇跡なのかもしれません。

とても怖いいかつい男たちが激昂とともに、借金どうなる？とかフウにはよくわからないことを怒鳴っておとうさんとおかあさんを痛めつけていました。

『ごめんなさい。ごめんなさい。』

大人がこどものように謝っているのはなんか不思議でした。

フウは呆然と唯見守っていました。

数か月後、フウは綺麗な服を着せられて、車に乗りました。

これからとても綺麗なところへいくのだとフウは言い聞かされました。

お父さんは震えている手を抑えながら車を運転していました。

ヘンなの・・　どこか違和感を覚えながらも、おかあさんからくれた缶ジュースを飲みました。

オレンジと少し変な味がしたジュースでした。　フウはたちまち眠たくなりました。

あれが睡眠薬とは解った時、フウはオレンジジュースが嫌いになりました。


『ごめんよ。もう疲れたんだ』

それがお父さんの最後の言葉でした。　

ギギギーガガガー　凄絶な音がかすかに聞こえました。

『お父さん。どうして・・』

フウは本能的に両親がこどもを殺そうとしている事が分かりました。

でもフウは、感覚がもうありませんでした。

フウは答えのない問いをしながら真っ暗な闇へ落ちました。

フウは車ごと海の底へ沈みました。

嗚呼・・あの時ジュースを飲まなければとフウは後悔しました。

気が付いたらフウのお父さんとお母さんは、真っ白になって水ふくれになって、魚に啄まれていました。
フウは不思議と、肉体は白くなったものの、淡い発光をして、海の中で生きていました。

いいえ・・フウは海の神様の力のせいか・・半神として海の底を漂うことになったのです。

フウは、さよならと一言いいました。

破損した車から、抜け出して、おかあさんとおとうさんから徐々に離れました。

いかに親とはいえ、殺したのだから離れたくなるのは無理はありません。


それがフウの奇妙な第2の生の始まりでした。

フウは、これから長い長い旅を続けます。

魔女の弟子を名乗る女や、渡り人　空井渡ともフウは出会います。

それは、世界の探求の始まりでもありました。