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掃き溜めに鶴
第1話 麗しき女と猫
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ある国の片隅、いるけど見えないものとされている人とも呼ばれぬ底辺の無知な集落があった。
淘汰されるのを待つだけの、無気力な力なき人々の群れ。反骨心や怒り、若さゆえの力もとうに失われ、唯、機械的に、無機質に、無言で食事をしては、単純な仕事をして、あとはあてもなく歩くだけの毎日。突然倒れる人がいても人々は無感動に少し見やって、ぐるぐると同じ毎日を過ごしていた。倒れた人は、処理担当の人がすばやくひっそりと運んでいた。壊れた人形を見ているようだった。
無気力な無感動な人々さえも、一つだけ、どうして、何故とはっとさせられるほど麗しき女と、女に抱えられている白と灰色の模様をした艶やかな毛並みをした宝石のように煌めく瞳を持った絶世の美猫がいた。
貴族のような王族のような風格であった。
まさに掃き溜めに鶴。 本来は無力な女は餌食としてスラムの非人に無惨に殺されるはずであった。
だが、幻のように、女と猫は透けていた。別の次元にいるようで、捕えようとしても捕えられない。
するりと彼女らはすり抜ける。風のように、液体のようにすり抜ける。
亡霊か。人外か。 無気力な人たちは流石にこの不可思議さには目を瞠って、どきどきと胸を抑える女もいれば敵意をもった男もいた。
女神?精霊?妖怪?化け物?幽霊? 彼らはお互いにこの不条理な情景に語り合ったが、真実は解らないままだった。
何も知らない無垢な心を持った子どもははじめて、美しいと思うものを見て唯、美しいと純粋に思った。
無機質な無感動な目は、光を持ち、麗しき女と絶世の美猫を追いかけた。
きらきらと子どもの目は輝いた。 いつか彼女らを捕えよう。何もない子どもにはじめて目的ができた。
彼女らを見た後は、集落にいる人々が色あせて見えた。
子どもは自分のいる集落の人々が、無気力無感動無機質。
何も無い人間の残骸が生きているだけの動いているだけのゴミの集落であることを悟った。
ここは、誰も生きてはいない。死んでいないだけだ。
子どもは悔しかった。ここを出る!決意が高まった。生きたい。心の底から生きたい。
子どもの心の奥から、真実が迸った。
集落を出ようとする子どもに老婆のような父と母が縋り付いたが、もはや、生ける死者が、子どもを餌食にしているようにしか見えなかった。
子どもは、父母を突き放して、逃げるように駆けた。荒野を駆ける馬のようにどこまでもどこまでも駆けた。
逃げなきゃ、亡者のような父母、生きる死人のようになっちゃう。
子どもは、どこまでも駆け続けた。限界まで駆け続けた。夜も眠らずに唯、ひたすらに遠く遠くへと駆けた。
未知のところへ駆けた。飲まず食わずでどのぐらい集落から離れたのか子どもにはわからなかった。
眩暈がする。もう駄目だと思ったら、また麗しき女と絶世の美猫が子どもの目の前に現れた。
麗しき女と絶世の美猫は子どもを見ていなかった。だれかと語らい、嬉しそうに楽しそうに心底幸福そうに笑っていた。触ってみようと子どもは手を伸ばした。でも触れなかった。空気を触ったように消えた。
子どもは呆然と自分の手を見ながら、ゆっくりと倒れた。
意識が真っ暗になった。
かすかに誰かの声が聞こえた。
淘汰されるのを待つだけの、無気力な力なき人々の群れ。反骨心や怒り、若さゆえの力もとうに失われ、唯、機械的に、無機質に、無言で食事をしては、単純な仕事をして、あとはあてもなく歩くだけの毎日。突然倒れる人がいても人々は無感動に少し見やって、ぐるぐると同じ毎日を過ごしていた。倒れた人は、処理担当の人がすばやくひっそりと運んでいた。壊れた人形を見ているようだった。
無気力な無感動な人々さえも、一つだけ、どうして、何故とはっとさせられるほど麗しき女と、女に抱えられている白と灰色の模様をした艶やかな毛並みをした宝石のように煌めく瞳を持った絶世の美猫がいた。
貴族のような王族のような風格であった。
まさに掃き溜めに鶴。 本来は無力な女は餌食としてスラムの非人に無惨に殺されるはずであった。
だが、幻のように、女と猫は透けていた。別の次元にいるようで、捕えようとしても捕えられない。
するりと彼女らはすり抜ける。風のように、液体のようにすり抜ける。
亡霊か。人外か。 無気力な人たちは流石にこの不可思議さには目を瞠って、どきどきと胸を抑える女もいれば敵意をもった男もいた。
女神?精霊?妖怪?化け物?幽霊? 彼らはお互いにこの不条理な情景に語り合ったが、真実は解らないままだった。
何も知らない無垢な心を持った子どもははじめて、美しいと思うものを見て唯、美しいと純粋に思った。
無機質な無感動な目は、光を持ち、麗しき女と絶世の美猫を追いかけた。
きらきらと子どもの目は輝いた。 いつか彼女らを捕えよう。何もない子どもにはじめて目的ができた。
彼女らを見た後は、集落にいる人々が色あせて見えた。
子どもは自分のいる集落の人々が、無気力無感動無機質。
何も無い人間の残骸が生きているだけの動いているだけのゴミの集落であることを悟った。
ここは、誰も生きてはいない。死んでいないだけだ。
子どもは悔しかった。ここを出る!決意が高まった。生きたい。心の底から生きたい。
子どもの心の奥から、真実が迸った。
集落を出ようとする子どもに老婆のような父と母が縋り付いたが、もはや、生ける死者が、子どもを餌食にしているようにしか見えなかった。
子どもは、父母を突き放して、逃げるように駆けた。荒野を駆ける馬のようにどこまでもどこまでも駆けた。
逃げなきゃ、亡者のような父母、生きる死人のようになっちゃう。
子どもは、どこまでも駆け続けた。限界まで駆け続けた。夜も眠らずに唯、ひたすらに遠く遠くへと駆けた。
未知のところへ駆けた。飲まず食わずでどのぐらい集落から離れたのか子どもにはわからなかった。
眩暈がする。もう駄目だと思ったら、また麗しき女と絶世の美猫が子どもの目の前に現れた。
麗しき女と絶世の美猫は子どもを見ていなかった。だれかと語らい、嬉しそうに楽しそうに心底幸福そうに笑っていた。触ってみようと子どもは手を伸ばした。でも触れなかった。空気を触ったように消えた。
子どもは呆然と自分の手を見ながら、ゆっくりと倒れた。
意識が真っ暗になった。
かすかに誰かの声が聞こえた。
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