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掃き溜めに鶴
第6話 カリンの秘密
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かくしてカリンは娼館街でも有名な高級娼婦となった。
かつての高級娼婦アイラは引退して、小さいが豪奢な館を買って悠々自適な毎日を送っている。
使用人を雇い、ちょっとした貴族並みの生活をしているそうだ。顧客が高位貴族もいて、アイラは幸運にも時折愛人のような交際をすることで、余生を幸福に過ごしている。
高位貴族はかなりの年配であったが、アイラの顔と気立ての良さと技量をいたく寵愛し、今も続いている。
アイラのような人生は娼婦にしてはかなり珍しい事であった。
カリンは、アイラは恩師と思っている。感謝を込めて、アイラに流行の首飾りや香水など希少なものを1年に1回贈っている。勿論アイラの嗜好に合わせた品物だ。アイラはカリンの贈り物が来るたびに子どものように目を輝かせて今回は何かしらと待ちわびているそうだ。
カリンはそれを聞いて安堵した。
カリンがここまで上り詰めたのは、アイラのお陰でもある。しかしカリンにはふとある疑惑があった。
あの麗しき女と絶世の美猫の幻を見なかったら、ここまでこなかっただろう。
あの集落で死んでいたかもしれない。あれは何だったのか?
そしてカリンはいつの間にか、真実と嘘を見分ける力を身につけていた。
そして顔のない人と顔のある人が見えるようになった。どうしてとカリンは当惑したが、色々考えてある結論に達した。
カリンを道具や玩具としてしかみない人は顔がないのだ。僅かでも情や、心をカリンに向けた人は顔がはっきりと見えるのだ。
カリンの処女を奪った男は、カリンを高級娼婦という玩具としてしか見ていなかった。そこにカリンという人間はいない。だから顔がなかったのだ。
アイラや、先輩の娼婦、娼館の主人は僅かでも情をカリンに抱いていた。だから顔が見えるのだ。シンも情けない子どもだなとカリンを見ていたから顔が見えるのだ。
カリンはこの結論を確かなものとするために、あえて顔のない男や女達とまぐわったり、寝台で戯れにお話を聞かせてと言ってみた。
結果は、無惨だった。
彼らの心は冷たく、「娼婦が何を言っているんだ。金を払ったからちゃんと働け」と殴られたこともあった。
彼らはカリンを性戯の遊具としかみなかった。壊してもいい存在としか見ていなかった。
この結論は確信に変わった。どうしていやそんなはずはない。なぜこんな能力をもったのかと必死に打ち消そうとしても、顔のない人のカリンに対する扱いは無機質で無惨で残酷だった。
カリンは己の能力を黙っていることにした。
二つの能力は生き延びるには重要な能力であることにカリンは気づいた。
その能力をうまく使えば、生き延びることができる。
カリンは、嘘ばかりついて、顔がない人を上手く避けた。特に、黒い靄が纏いついている人は怖かった。
後に、カリンはその人が、娼婦ばかりを狙って玩具のようにバラバラにして殺しては埋めている殺人鬼だと分かった。最後にはエスカレートして、貴族の娘も狙ったから、貴族の衛兵に捕縛された。しかもその人は貴族だったと判明した。
娼館街の人たちは、恐怖とやるせない思いを抱いてやっと犯人が捕まって安堵した。
娼館の主人はカリンを見て言った。
「良かったな。カリン。お前も指名されてたんだよ。あの男に。でも、お前、あの男と出会ったら具合が悪くなったし、なんか変だなと思って、俺もあの男の指名を止めたんだよ。やっぱりおかしな人だったんだな。お前は妙に敏感なところがあったから。」
カリンはびっくりした。娼館の主人も侮れない。カリンの心中を悟っていたのかもしれない。
カリンには少し罪悪感があった。もし、カリンがこの能力を言っていたら、他の犠牲者は救えたかもしれない。
でもいかれた娼婦と思われるのは怖い。
怖くてカリンはもう少し強くなったら、この秘密をアイラに打ち明けようと思った。
いつかはこの秘密を信頼できる人に話そう。カリンは決心した。
ごめんなさい。怖くて。カリンは犠牲になった人達に心の中で謝った。
暖かいところへ行ってください。誰も傷つけられないところへ行ってください。天国。本当にあるかどうかはわからないが、とても怖い目にあって殺された人達が可哀相だった。神様は残酷なことをなさる。
カリンのような無力な女にこのような能力を与えるなんてと嘆いたが、もう少し強くならなきゃとも思った。
あの麗しき女と絶世の美猫の幻は神様の幻影だったのかもしれない。
カリンはあの幻に触れた。
だからこの能力をもってしまったのだ。カリンは真実に気付いた。秘密は重い。
かつての高級娼婦アイラは引退して、小さいが豪奢な館を買って悠々自適な毎日を送っている。
使用人を雇い、ちょっとした貴族並みの生活をしているそうだ。顧客が高位貴族もいて、アイラは幸運にも時折愛人のような交際をすることで、余生を幸福に過ごしている。
高位貴族はかなりの年配であったが、アイラの顔と気立ての良さと技量をいたく寵愛し、今も続いている。
アイラのような人生は娼婦にしてはかなり珍しい事であった。
カリンは、アイラは恩師と思っている。感謝を込めて、アイラに流行の首飾りや香水など希少なものを1年に1回贈っている。勿論アイラの嗜好に合わせた品物だ。アイラはカリンの贈り物が来るたびに子どものように目を輝かせて今回は何かしらと待ちわびているそうだ。
カリンはそれを聞いて安堵した。
カリンがここまで上り詰めたのは、アイラのお陰でもある。しかしカリンにはふとある疑惑があった。
あの麗しき女と絶世の美猫の幻を見なかったら、ここまでこなかっただろう。
あの集落で死んでいたかもしれない。あれは何だったのか?
そしてカリンはいつの間にか、真実と嘘を見分ける力を身につけていた。
そして顔のない人と顔のある人が見えるようになった。どうしてとカリンは当惑したが、色々考えてある結論に達した。
カリンを道具や玩具としてしかみない人は顔がないのだ。僅かでも情や、心をカリンに向けた人は顔がはっきりと見えるのだ。
カリンの処女を奪った男は、カリンを高級娼婦という玩具としてしか見ていなかった。そこにカリンという人間はいない。だから顔がなかったのだ。
アイラや、先輩の娼婦、娼館の主人は僅かでも情をカリンに抱いていた。だから顔が見えるのだ。シンも情けない子どもだなとカリンを見ていたから顔が見えるのだ。
カリンはこの結論を確かなものとするために、あえて顔のない男や女達とまぐわったり、寝台で戯れにお話を聞かせてと言ってみた。
結果は、無惨だった。
彼らの心は冷たく、「娼婦が何を言っているんだ。金を払ったからちゃんと働け」と殴られたこともあった。
彼らはカリンを性戯の遊具としかみなかった。壊してもいい存在としか見ていなかった。
この結論は確信に変わった。どうしていやそんなはずはない。なぜこんな能力をもったのかと必死に打ち消そうとしても、顔のない人のカリンに対する扱いは無機質で無惨で残酷だった。
カリンは己の能力を黙っていることにした。
二つの能力は生き延びるには重要な能力であることにカリンは気づいた。
その能力をうまく使えば、生き延びることができる。
カリンは、嘘ばかりついて、顔がない人を上手く避けた。特に、黒い靄が纏いついている人は怖かった。
後に、カリンはその人が、娼婦ばかりを狙って玩具のようにバラバラにして殺しては埋めている殺人鬼だと分かった。最後にはエスカレートして、貴族の娘も狙ったから、貴族の衛兵に捕縛された。しかもその人は貴族だったと判明した。
娼館街の人たちは、恐怖とやるせない思いを抱いてやっと犯人が捕まって安堵した。
娼館の主人はカリンを見て言った。
「良かったな。カリン。お前も指名されてたんだよ。あの男に。でも、お前、あの男と出会ったら具合が悪くなったし、なんか変だなと思って、俺もあの男の指名を止めたんだよ。やっぱりおかしな人だったんだな。お前は妙に敏感なところがあったから。」
カリンはびっくりした。娼館の主人も侮れない。カリンの心中を悟っていたのかもしれない。
カリンには少し罪悪感があった。もし、カリンがこの能力を言っていたら、他の犠牲者は救えたかもしれない。
でもいかれた娼婦と思われるのは怖い。
怖くてカリンはもう少し強くなったら、この秘密をアイラに打ち明けようと思った。
いつかはこの秘密を信頼できる人に話そう。カリンは決心した。
ごめんなさい。怖くて。カリンは犠牲になった人達に心の中で謝った。
暖かいところへ行ってください。誰も傷つけられないところへ行ってください。天国。本当にあるかどうかはわからないが、とても怖い目にあって殺された人達が可哀相だった。神様は残酷なことをなさる。
カリンのような無力な女にこのような能力を与えるなんてと嘆いたが、もう少し強くならなきゃとも思った。
あの麗しき女と絶世の美猫の幻は神様の幻影だったのかもしれない。
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だからこの能力をもってしまったのだ。カリンは真実に気付いた。秘密は重い。
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