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第7話 罪人
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子どもの危惧していた通り、罪人は何百年も前の時代の先祖だった。それも食料も水もほとんどなかった時代だ。
多くの人が、お寺にある古い餓鬼絵のように、腹だけが膨れ後は皮と骨ばかりの生きながら死んでいるような人達がほとんどだった。火葬するとバアンと時々お腹が風船のようにはじけて肉片が飛び散った。
下人はそれを淡々と処理していた。焦げた匂い。生臭い匂い。下人には慣れた匂いだ。
両親はとうに息絶えた。下人は生きながら地を這うような生活をしていた。
貴族は、それを面白そうに眺め優越感と嘲笑に満ちていた。嫌な笑いだ。歪み切った笑い。
貴族は豪奢な衣装を着て、毎日豪華な食事をしていた。別世界の人間だ。
下人は始めはそう思っていた。
下人は既に罪を犯していた。不要な嬰児殺しを手伝ったり、攫われた男や女などを嬲り殺し金になるものを漁った。
下人はそれが悪い事とは思わない。生きるためだ。
鬼畜生ともよばれたが下人は気にならなかった。これが下人の人生なのだ。
孤児になった下人は始めは同じ孤児仲間を募って、盗みなどで生活していた。弱い者が生き延びるには仲間が必要だ。その中にいいなと思う女もいた。泥で顔を隠しているがとても美しい顔をしているのを下人は見逃さなかった。
声も美しい声だった。柔らかで妙なる声。下人はそれが気に入っていた。
しばらく下人は女を贔屓にしていた。一番良い食べ物や薬などこっそり渡していた。
だんだん女は下人に絆されていった。この女と番いになるのも悪くない。
下人はなんだか高揚する気分を味わった。
だが下人はあることを失念していた。
下人さえも気に入る女だ。醜悪な貴族が目に入ればどうなるか結果は目に見えていた。
やがて絆された女は泥を洗い流し下人だけに美しい顔を見せた。これはたまげた。一等綺麗な顔だ。
女は下人を受け入れた。下人は愛はなかったが女の中にいると気持ちよかった。
女は下人を自分の子どものように抱きしめた。悪くない。下人はいい気分だった。
そんな幸福な時間は束の間だった。
女の美しい顔を見た孤児仲間もいたのだ。噂は広がった。
その噂を聞いた好奇心の強い貴族は面白がって女を探した。下人と女は逃げたが、ある日女は捕まった。
泥を無理矢理洗い流され美しい顔と肢体が露わになった。
貴族は獲物が思ったより美しいことに悦に入った。
女を殴り、女を犯し、執拗に嬲り殺した。 美しい顔は無残に腫れ上がって肢体は青あざと殴られた痕跡でいっぱいだった。
貴族は笑いながら女が壊れていくのを見た。罪悪感もなにもなかった。それが当然だというように女は殺された。
なまじ美しかったから死に顔は無惨だった。さすがの下人もこれには堪えた。だが同時に下人は貴族と同類だということも分かった。別世界の人間じゃない。性根は下人同様だ。鬼畜生だ。
壊された女の死体を見て下人の心の中で何かがはじけた。
下人は貴族にとびかかり、女以上の残酷な殺し方をした。気が付いたら貴族は肉片状態になっていた。
何度も何度も下人は貴族だった残骸を棍棒で潰し続けた。
瘦せこけた野犬がいた。下人は貴族だった肉片を投げ与えた。野犬は狂ったように肉を食べた。ハハハ。ハハハ。
下人は狂ったように笑った。
美味しいか?ありがたい大層な貴族だった者の肉だよ。ありがとうよ。これで俺は犬を救ったわけだな。アハハハ。
下人は面白かった。何もかも面白かった。喪失感を味わいながら下人は犬を連れて小さい盗賊団に入った。
死んだ女は放置した。死んだらお終いだ。さよなら。
後は死者の世界で白い手の子どもに話した通りの人生を送った。
犬はどうなったろうか。実は下人は時々、貴族と呼ばれる偉い人を棍棒で殴って潰してから肉片を与えていた。
なんだかそうすることが女への弔いのような気がしたのだ。
犬は嬉しそうに狂ったように肉にかぶりついた。
痩せこけた野犬は肉のお陰で身がついた。強く精悍な表情をするようになった。
見違えるように雄々しくなった。
犬は下人だけには忠実だった。肉のせいもあるだろう。だが下人は犬が可愛かった。女の死をきっかけに貴族を殺して偶々そこに居合わせた痩せこけた野犬。下人はなんとなしに貴族の肉を与えた。
強く美しくなった犬。
その奇妙な連鎖を見て、下人はなんとなく世界の理を悟った。
嗚呼そうか。そうなんだな。これが真実なんだ。
下人は世界の無常とからくりを知った。
多くの人が、お寺にある古い餓鬼絵のように、腹だけが膨れ後は皮と骨ばかりの生きながら死んでいるような人達がほとんどだった。火葬するとバアンと時々お腹が風船のようにはじけて肉片が飛び散った。
下人はそれを淡々と処理していた。焦げた匂い。生臭い匂い。下人には慣れた匂いだ。
両親はとうに息絶えた。下人は生きながら地を這うような生活をしていた。
貴族は、それを面白そうに眺め優越感と嘲笑に満ちていた。嫌な笑いだ。歪み切った笑い。
貴族は豪奢な衣装を着て、毎日豪華な食事をしていた。別世界の人間だ。
下人は始めはそう思っていた。
下人は既に罪を犯していた。不要な嬰児殺しを手伝ったり、攫われた男や女などを嬲り殺し金になるものを漁った。
下人はそれが悪い事とは思わない。生きるためだ。
鬼畜生ともよばれたが下人は気にならなかった。これが下人の人生なのだ。
孤児になった下人は始めは同じ孤児仲間を募って、盗みなどで生活していた。弱い者が生き延びるには仲間が必要だ。その中にいいなと思う女もいた。泥で顔を隠しているがとても美しい顔をしているのを下人は見逃さなかった。
声も美しい声だった。柔らかで妙なる声。下人はそれが気に入っていた。
しばらく下人は女を贔屓にしていた。一番良い食べ物や薬などこっそり渡していた。
だんだん女は下人に絆されていった。この女と番いになるのも悪くない。
下人はなんだか高揚する気分を味わった。
だが下人はあることを失念していた。
下人さえも気に入る女だ。醜悪な貴族が目に入ればどうなるか結果は目に見えていた。
やがて絆された女は泥を洗い流し下人だけに美しい顔を見せた。これはたまげた。一等綺麗な顔だ。
女は下人を受け入れた。下人は愛はなかったが女の中にいると気持ちよかった。
女は下人を自分の子どものように抱きしめた。悪くない。下人はいい気分だった。
そんな幸福な時間は束の間だった。
女の美しい顔を見た孤児仲間もいたのだ。噂は広がった。
その噂を聞いた好奇心の強い貴族は面白がって女を探した。下人と女は逃げたが、ある日女は捕まった。
泥を無理矢理洗い流され美しい顔と肢体が露わになった。
貴族は獲物が思ったより美しいことに悦に入った。
女を殴り、女を犯し、執拗に嬲り殺した。 美しい顔は無残に腫れ上がって肢体は青あざと殴られた痕跡でいっぱいだった。
貴族は笑いながら女が壊れていくのを見た。罪悪感もなにもなかった。それが当然だというように女は殺された。
なまじ美しかったから死に顔は無惨だった。さすがの下人もこれには堪えた。だが同時に下人は貴族と同類だということも分かった。別世界の人間じゃない。性根は下人同様だ。鬼畜生だ。
壊された女の死体を見て下人の心の中で何かがはじけた。
下人は貴族にとびかかり、女以上の残酷な殺し方をした。気が付いたら貴族は肉片状態になっていた。
何度も何度も下人は貴族だった残骸を棍棒で潰し続けた。
瘦せこけた野犬がいた。下人は貴族だった肉片を投げ与えた。野犬は狂ったように肉を食べた。ハハハ。ハハハ。
下人は狂ったように笑った。
美味しいか?ありがたい大層な貴族だった者の肉だよ。ありがとうよ。これで俺は犬を救ったわけだな。アハハハ。
下人は面白かった。何もかも面白かった。喪失感を味わいながら下人は犬を連れて小さい盗賊団に入った。
死んだ女は放置した。死んだらお終いだ。さよなら。
後は死者の世界で白い手の子どもに話した通りの人生を送った。
犬はどうなったろうか。実は下人は時々、貴族と呼ばれる偉い人を棍棒で殴って潰してから肉片を与えていた。
なんだかそうすることが女への弔いのような気がしたのだ。
犬は嬉しそうに狂ったように肉にかぶりついた。
痩せこけた野犬は肉のお陰で身がついた。強く精悍な表情をするようになった。
見違えるように雄々しくなった。
犬は下人だけには忠実だった。肉のせいもあるだろう。だが下人は犬が可愛かった。女の死をきっかけに貴族を殺して偶々そこに居合わせた痩せこけた野犬。下人はなんとなしに貴族の肉を与えた。
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その奇妙な連鎖を見て、下人はなんとなく世界の理を悟った。
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