浮生夢の如し

栗菓子

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第8話 現世での地獄

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白い手の子どもは植物状態ながらも成長し始め、少女から女へと変化し始めた。
その間にろくでもないことがあった。
こいつはサイコか心が退化しているのではないかと思う医者が女に好きだ愛していると女に求愛しはじめた。
医者はろくでなしや人でなしが多い。
子どもは実感した。植物状態の子どもに何を言っているの。まさか自分が眠り姫の王子様と思い込んでない。だとすればとんだ妄想だよ。思い違いだよ。
白い手で痴れ者よされと手を振った。
くすくすと医者は笑った。なんだか女性的だ。 少女の霊体は肉体から半ば離れていて医者の顔が見えた。
女性的な美貌をした色男。なにを血迷ったが半死人の患者に愛を囁いている。
撫でて良い? 色男は猫や犬を触るように撫でまわした。
子どもは諦めた。こいつは色情魔だ。まあいい。どうせこんな人生だ。もうどうでもいい。半ば投げやりに顔だけは無駄に良い男を冷めた目で見た。
色男はうっとりとお姫様を見るように子どもを見た。君のような患者ははじめてだ。これは生と死の深い研究にもなる。君は狭間にいる者だもの。
まるで僕にとって君はお伽噺の登場人物だよ。奇姫。数奇な運命を辿るお姫様。
繊細な手がこどもの髪を梳いた。王子様のような顔をしているのになかなか変態だな。
そういえばお伽噺って代々残酷な話が多かったな。
王子様は死体が好きなのかな。生きている死体か。珍しいものがすきなのかもしれない。

知ってる。眠り姫は眠っている間に王子様に犯されたようよ。
確かに私はお姫様だ。だって王子様のような医者に撫でられ、全裸にさせられている。
白いやせ細った体でも欲情するらしい。

無機質な奥の笑ってない目に欲情の炎があった。その炎を少女は受けいれた。
なんだが必要とされている気がしたのだ。
両親はとうに新しい子どもがいる。治療は進まない。少女はもう終わっているのだ。
ならば必要とする者に与えてやろう。
白い手は静かに横たわった。


医者はそれを承諾の証として認めた。医者の顔が怖くなった。鬼みたい。
おーい。ちょっと怖いぞ。なんか私は選択を間違えているみたい。
自棄はよくないなあ。


半ば現実逃避して遠い目をして医者が少女を女にする瞬間を俯瞰的に眺めた。
医者が自分の性器を出して少女に覆いかぶさった。
激しい律動。股から血が出ている。
これで女になったんだ。できそこないでも女になるらしい。

激しい痛みはあった。だが過酷な治療に慣れた体はそれさえもすぐに慣れる。
あの死者の世界の罪人の言う通りだ。人は何でも慣れる。私も下等動物だろうか?
少し求められて嬉しいと思うなんて。なんで馬鹿な女なんだ。私。
顔か。顔が良ければいいのか?

あまりにも不条理な人生を送っている少女は既に超越した精神を持っていた。
悲劇が喜劇のようだった。

もはや笑うしかない。この世のすべてを面白がろう。どうせいつかは死ぬのだ。
忘れよう。女は決意した。
女はこれが最後と思い込んでいた。だか恋に狂った医者は何回も女を犯した。
激しい熱。恋とはよべない歪んた関係。 いいのか?と思いながらも女は男を受け入れた。
結局、女は寂しかったのだ。唯の馬鹿な女が求められたら受け入れる。ありふれた女だ。
偶々半死人になっただけだ。
いつかは終わるのだ。まあいいだろう。
あの正義感の強い医者には見られたくなかった。面倒だから。また騒ぎになるだろう。もうごめんだ。
うんざりと女は自分の運命を受け入れた。

そういえばだれがあの絵本とかお伽噺を語ったんだろう。 
治療中に童話とか話を聞かされたことがある。裏の話も。なかなかダークだった。
看護師さんかな。

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