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第1話 レイル
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嫌な臭い。ゴミが腐ったような据えた匂い。髪はゴミとホコリにまみれて一度も梳いたことが無いような固まった汚らしく丸まっている。
汚れた顔は目だけが印象的だった。無垢なあどけない硝子玉のような黒い瞳。
服装もみすぼらしく体格も貧相だ。
旦那様も物好きだ。こんな孤児を拾うなんで、旦那様はきまぐれに玩具を拾ったのだろうか?
冷ややかにレイルは孤児を見た。レイルはこの館で筆頭使用人として働いている誇りがある。それは歪んた意識もあった。
孤児は今はレイルにとって価値ないものだった。
「まあ・・大丈夫かしら。旦那様が哀れんで連れてきてくださったのだから。綺麗に湯あみして頂戴。」
リーナ夫人は心配そうに呟いて使用人に命じた。
かしこまりしたと侍女や使用人が孤児を連れていった。
リーナ夫人は恵まれた者らしく鷹揚なところがある。 親に大切に乳母日傘で育ち、無事に政略結婚とはいえ、旦那様に愛されるほど十分に魅力的で、美しい夫人だった。
だが、レイルにとっては、人形のような人としか印象がわかなかった。
彼女はどこか浮世離れして、現実を見ていないところがあった。
唯、旦那様には僅かに向き合っている面がある。旦那様はそれを悟って娶ったのかもしれない。
夫婦関係はわからない。レイルの両親も険悪なくせにいまだに離婚しない。
時折、気の迷いか、情熱が芽生える時期があって、年が離れた弟や妹が生まれる。
レイルにとって両親は仲が悪いのか良いのかわからない夫婦であった。
それまでは仮面夫婦のように、お互いに遠慮と、他人よりもよそよしい関係をしていた。
それでも時折、気になるように夫や妻の名を言う時があった。
彼らは政略結婚で、別居していた。 父親は気に入った愛人を数人囲って暮らしている。
母親は、父親の援助で企業をした。母親は身分が低い男爵家で、貧乏だった。しかし才能と頭脳だけは優れていた。
これから先の必要になる物や、商品、技術などを見抜く先見の目があった。
何度もそれらしき発明や、商品を創ったが、金銭問題で挫折していた。
母親はそのごろ、本当に恋愛関係で付き合っていた恋人がいた。その人と婚約していたはずが、ある日唐突に破棄された。
見限られたのだ。才能が有っても、どうにもならない。 恋人もまだ若く、両親の勧めでより条件のいい結婚相手を見繕ったのだ。 恋人も金策しようにも、根っからの研究者だったため、金銭問題には疎く、お互いに不利な未来であった。
彼らもそれを良く解っていたので泣く泣く別れた。
母親は当分気落ちしていたが、それを忘れるように仕事に没頭した。その仕事ぶりに注目した父親の縁戚が、才能が有って優秀な花嫁を父親に斡旋した。
父親の家に利益を上げることを条件に、母親は研究し続ける事を赦された。
本当にビジネスで結ばれた関係だった。
閨でも事務的な関係だったらしい。 長い間に情はそれなりに芽生えたらしいが、レイルはそれが気に入らなかった。身勝手かもしれないが、レイルは両親は好きあって関係を保ってほしかった。
レイルは密かに恋愛関係で結ばれた夫婦を羨ましく思っていた。
友人のアルトが熱愛の末婚姻して仲睦ましい夫婦の様子を見せられるたびに、嗚呼、これが本当に愛し合っている関係なんだと理解させられる。
リーナ夫人はどうだろうか? 縁が合って旦那様と婚姻なさったが、あの方は独自の世界をもってらっしゃる。
旦那様はそれに惹かれて娶ったのだ。しかしリーナさまは旦那様に僅かに情を心を開くのみだった。
それも夫婦関係だろうか?
夫婦って様々だ。 子どものとき、両親の関係は義務的で、どこか実子さえも遠慮がちであった。
それが嫌でたまらなかった。希薄な関係だった。
レイルはそんな家族に嫌気がさして、余所の館へ働きに出た。
格上の貴族の館だ。とても豪奢な館だ。 でも旦那様 ジール・イーステイン伯爵は有能だがどこか虚ろであった。
過去に何かあったらしい。
リーナ夫人もふわふわと生きている。
ここにはしっかりと生きている人はあまりいないようだ。過去や何かに囚われて生きていたり、全てから心を閉ざしたり、なにか訳アリの人間が働いている館だった。
そんなある日、旦那様が、みすぼらしい孤児を拾ってきた。
思わず口を押えるほど匂いが鼻に突き刺さるほど臭かった。
慌てて侍女や使用人たちが洗い流そうと孤児をひっばっていった。
レイルは唯、呆然とそれを見ていた。
汚れた顔は目だけが印象的だった。無垢なあどけない硝子玉のような黒い瞳。
服装もみすぼらしく体格も貧相だ。
旦那様も物好きだ。こんな孤児を拾うなんで、旦那様はきまぐれに玩具を拾ったのだろうか?
冷ややかにレイルは孤児を見た。レイルはこの館で筆頭使用人として働いている誇りがある。それは歪んた意識もあった。
孤児は今はレイルにとって価値ないものだった。
「まあ・・大丈夫かしら。旦那様が哀れんで連れてきてくださったのだから。綺麗に湯あみして頂戴。」
リーナ夫人は心配そうに呟いて使用人に命じた。
かしこまりしたと侍女や使用人が孤児を連れていった。
リーナ夫人は恵まれた者らしく鷹揚なところがある。 親に大切に乳母日傘で育ち、無事に政略結婚とはいえ、旦那様に愛されるほど十分に魅力的で、美しい夫人だった。
だが、レイルにとっては、人形のような人としか印象がわかなかった。
彼女はどこか浮世離れして、現実を見ていないところがあった。
唯、旦那様には僅かに向き合っている面がある。旦那様はそれを悟って娶ったのかもしれない。
夫婦関係はわからない。レイルの両親も険悪なくせにいまだに離婚しない。
時折、気の迷いか、情熱が芽生える時期があって、年が離れた弟や妹が生まれる。
レイルにとって両親は仲が悪いのか良いのかわからない夫婦であった。
それまでは仮面夫婦のように、お互いに遠慮と、他人よりもよそよしい関係をしていた。
それでも時折、気になるように夫や妻の名を言う時があった。
彼らは政略結婚で、別居していた。 父親は気に入った愛人を数人囲って暮らしている。
母親は、父親の援助で企業をした。母親は身分が低い男爵家で、貧乏だった。しかし才能と頭脳だけは優れていた。
これから先の必要になる物や、商品、技術などを見抜く先見の目があった。
何度もそれらしき発明や、商品を創ったが、金銭問題で挫折していた。
母親はそのごろ、本当に恋愛関係で付き合っていた恋人がいた。その人と婚約していたはずが、ある日唐突に破棄された。
見限られたのだ。才能が有っても、どうにもならない。 恋人もまだ若く、両親の勧めでより条件のいい結婚相手を見繕ったのだ。 恋人も金策しようにも、根っからの研究者だったため、金銭問題には疎く、お互いに不利な未来であった。
彼らもそれを良く解っていたので泣く泣く別れた。
母親は当分気落ちしていたが、それを忘れるように仕事に没頭した。その仕事ぶりに注目した父親の縁戚が、才能が有って優秀な花嫁を父親に斡旋した。
父親の家に利益を上げることを条件に、母親は研究し続ける事を赦された。
本当にビジネスで結ばれた関係だった。
閨でも事務的な関係だったらしい。 長い間に情はそれなりに芽生えたらしいが、レイルはそれが気に入らなかった。身勝手かもしれないが、レイルは両親は好きあって関係を保ってほしかった。
レイルは密かに恋愛関係で結ばれた夫婦を羨ましく思っていた。
友人のアルトが熱愛の末婚姻して仲睦ましい夫婦の様子を見せられるたびに、嗚呼、これが本当に愛し合っている関係なんだと理解させられる。
リーナ夫人はどうだろうか? 縁が合って旦那様と婚姻なさったが、あの方は独自の世界をもってらっしゃる。
旦那様はそれに惹かれて娶ったのだ。しかしリーナさまは旦那様に僅かに情を心を開くのみだった。
それも夫婦関係だろうか?
夫婦って様々だ。 子どものとき、両親の関係は義務的で、どこか実子さえも遠慮がちであった。
それが嫌でたまらなかった。希薄な関係だった。
レイルはそんな家族に嫌気がさして、余所の館へ働きに出た。
格上の貴族の館だ。とても豪奢な館だ。 でも旦那様 ジール・イーステイン伯爵は有能だがどこか虚ろであった。
過去に何かあったらしい。
リーナ夫人もふわふわと生きている。
ここにはしっかりと生きている人はあまりいないようだ。過去や何かに囚われて生きていたり、全てから心を閉ざしたり、なにか訳アリの人間が働いている館だった。
そんなある日、旦那様が、みすぼらしい孤児を拾ってきた。
思わず口を押えるほど匂いが鼻に突き刺さるほど臭かった。
慌てて侍女や使用人たちが洗い流そうと孤児をひっばっていった。
レイルは唯、呆然とそれを見ていた。
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