やっちゃんの人生

栗菓子

文字の大きさ
3 / 4

第3話 やっちゃんは聖女?守り神?違います。唯の自殺志願者です。

しおりを挟む
やっちゃんは、気まぐれに神様から命を分け与えられて、自殺の罪を償うために、犠牲になった弱者や動物の怨嗟を浄化する者になりました。
でも時折、やっちゃんも怨嗟に取り込まれそうになりました。
やっちゃんも、弱者として追い詰められていた人だったからです。やっちゃんも少しは恨みとかあったので
共鳴で怨霊になりそうなことはしばしばでした。その度に神様に殴られました。
神様は、美しい姿に反してスパルタ系。体育会系でした。
「なっとらん。心を鍛えろ!根性なし!」

やっちゃんはまるで修行をしているようでした。
やっちゃんは内心やっとれんわとお酒をかっ喰らいたい気分でしたが、ここにはお酒はありません。
酒だけがなけなしの勇気を与えてくれた聖なる酒です。
それがないやっちゃんは、唯、神様にへいこらするだけの根性なしの女でした。
やっちゃんはおかしい。私の人生。どうしてこうなった。と自問しながらも唯、神様へ仕えました。

やっちゃんは、もうひたすらに神様の言うことに従いました。
しばらく時がたって、神様はやっちゃんに地上へ行け。お前の住んだ村を身に行けと言われました。
ほんの僅かなら人間の姿になって地上へ行ける。
自分の過去にけりをつけろと神様は言いました。
やっちゃんは行きたくなかったけど、渋々と神様の言う通りに従いました。

すると、ハイエナのような親戚が居た家は廃墟になっていました。
どうしてかと思うと、おせっかいな村人があんたここにいる人を探しているのかい?と尋ねにきました。
やっちゃんはは、はいと頷いてどうなったのかと聞くと、「罪人として処刑されたよ。」
さらりととんでもないことを言われました。
「あの生贄になるはずだった美しい女がね。生贄に代わってやると言われたんだよ。その女の親戚はもう酷い奴らだったらしいよ。女に借金を背負わせてね。最低最悪だよ。可哀そうに。女は絶望して、身代わりになったんだよ。
美しい女が事情を家族に話して、家族も知り合いに話して村中に噂が広まったよ。その親戚は他にも悪事をやっていた様だよ。それに目を付けた官吏が芋づる状に、罪を犯した人々をかたっぱしから捕らえたんだよ。
いい気味だ。 後それから、生け贄の風習は古いと偉い人からも苦々しく思われてもう取りやめになったよ。
神様には申し訳ないけどね。あの気の毒な女が最後だよ。」
やっちゃんは、あまりの急展開の話についていけませんでした。
人生どうなるかわからないですね。死んでからまでびっくりさせられました。

「ま、まあ。そうだったんですか。」
やっちゃんは震え声で教えてくださってありがとうごさいますと言った。
驚愕から覚めると、やっちゃんはざまあみろとハイエナのような親戚に罰が下ったことに感謝しました。
人生って素晴らしい。素敵だわ。
やっちゃんはご馳走を食べた猫のようにご満悦でした。
だからでしょうか?やっちゃんはつい、ないもない空中から、食べ物を出しました。神力でこれぐらいのことはできます。どうぞ。お節介な村人さん。やっちゃんは村人が食べたことがない美味しい食べ物を渡しました。
「あんた・・それどこから・・」
村人は呆然とやっちゃんを見ながら食べ物を見ました。
「村人さん。最後の生贄は私ですよ。どうしてもあいつらが気になったんです。ありがとう。教えてくれて。」
やっちゃんは微笑んで姿を消しました。
村人は唖然とやっちゃんが忽然と消えた場所を見ました。やっちゃんの言葉と食べ物が村人に残りました。
幽霊?聖女?守り神?
村人は乏しい知識をフル稼働させながら、知り合いに話そうと駆け出しました。
この奇妙な体験は人に話すに限るのです。

もう一つ。やっちゃんは美しい女が一人でいるところに姿を現しました。
「久しぶり。」
驚かせないようにやっちゃんは美しい女に柔らかな声で語りかけました。
美しい女は嗚呼といつか来るんじゃないかなと思っていたとやっちゃんに言いました。
「あれから、貴女は幸福になったの?私の命は無駄じゃないかったわよね。」
「ええ、ええ、幸福になったわ。貴女を苦しめた人たちは処罰されたわ。貴女は・・」
「私ね。湖の神様で見習い修行をやってるの。自殺しようとした罰だって。他の生贄はまだ死にたくなかったはずだって。」
「綺麗な花畑見たわ。アリガトウ。私はいつも水底から見て居たわ。」
「でも花言葉がごめんなさいは可哀相。もっと明るい花言葉にすればよかったのに。」
やっちゃんは溜息をついた。
「貴女。神様の見習いやってるの?守り神になったの?」
美しい女は目を丸くしてやっっちゃんに詰めかけた。
やっちゃんはいやいやいやと首をブンブンと振った。
「唯の情けない女よ。自殺志願者よ。貴女が気にすることはなかったのに。」

やっちゃんは美しい女を慰めた。死者が生きている人を慰めるのはおかしなものだと思いながらも。

「命を大切に。天命がくるまで頑張って幸福になって生きてね。」
「私みたいに情けない女にならないで。私は自分の命を粗末にしたからまだ天に召されないのよ。」

やっちゃんは美しい花をありがとうと美しい女を抱きしめた。
「祝福を。最後まで幸福に生きるのよ。」
やっちゃんは神様のようなことを言って消えました。
美しい女からぼろりと美しい涙がでました。

美しい女は帰って、伴侶となった夫に、子どもにこの話を伝えました。
生贄になった女は罰として神様の見習いをやっているそうだ。自分の命を粗末にしたからだって。

子どもはそれって可哀そうじゃない。どうしようもなかったんでしょ。その時の女は。
神様に憤慨しました。そうだね。でも命を粗末にしたらいけないんだよ。
それはとても当たり前で厳しい掟なんだよ。

生贄になった女は罰として神様の見習いとして修行している。
いつか天に召されるまで。

美しい女とその家族だけが最後の生贄となった女の行方を知っていた。
名前はやっちゃんという。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

処理中です...