糟糠の妻

栗菓子

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第4章 戦乱の民

第3話 旱と飢饉

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村娘と老人と子供たちは何かに追われるように、早足で村へ戻った。

それは急な異変に危険を感じたためだろうが、急いで自分の手に負えない事態は、もっと頭の良い村人達に任せるしかないと判断したのだ。

でも変だ・・やっぱり変だ。 村娘はいつもより未知への恐怖で高鳴る自分の胸の鼓動を感じながら、いつもより速く駆ける自分を他人事のように感じていた。


確かに雨はここのところ降っていなかった。いつもより少ないなと思っていたけど・・こうも急に湖が枯れるものだろうか? そういえば数日前 地鳴りが連続して続いていたけど・・。

大地が揺れたから、湖も枯れたのだろうか? 村娘にはその因果ははっきりとわからなかった。

もしかしたら、村ごと移動する羽目になるかもしれない・・。水がもっとあるところを探す引っ越しが始まるかも・・その間に死者も出るかもしれない。

不意に村娘ははっと気づいた。森の虫や獣の鳴き声が聞こえない。 いつもより嫌に静寂と沈黙が激しい。

これは異常事態だ。慌てて周囲を見渡すと、不自然に枯れ始めている樹や、植物があった。

一体・・。おそるおそる手を伸ばすと熱かった。火傷しそうで村娘は思わず小さな悲鳴を上げた。

何故・・?嗚呼 地熱だ。地面が熱くなっているんだ。 地下でなにか異変が起きている。

村娘はそう直感した。 大変だわ。大地が動いている。そのせいで熱が上昇しているんだ。

異常気象と、地下の異変で湖が枯れたんだ。

じゃあ山の作物や山菜など獣は・・・。 自然の贈り物が無くなる・・。

今まで山や湖の自然の恩恵に依存していた村人たちは、失って初めて思い知るのだ。

飢饉が来る。 多くの死者が出る・・。

村娘はそこまで未来が予想できて、蒼白になった。水汲みの仲間の老人もこの異変に気づいて冷や汗を流して蒼白になりながら、手を振って早く村へ戻ろうと促した。

村の子どもたちは狼狽しながらも、急いで後を追いかけた。

この異常事態を村へ伝えなければならない。下手したら村の全滅になる・・。


村娘は、第一発見者として覚悟を決めて村へこの不吉な報告をすることにした。
はじめは村娘を嘘つきと疑うだろう・・。その異変を認めない迷信深い人もいる。しかし老人も、子どもたちも見ている。みんなで同じ情報を報告すれば真実と納得するだろう。

下手したら激昂した血気盛んの男に殴られるかもしれない。
不吉な嫌な事をいった魔女として恨まれるかもしれない。殺されるかもしれない。

そう思いながらも、村娘はもう戦士として、村の存亡の危機に立ち向かおうとしていた。


村娘の予想通りに、各地で旱魃と、飢饉が徐々に発生していた。
大いなる自然の恵みで生かされた人々は、あっけなくこの大地の異変で死ぬのだ。
これも自然の摂理だろうか・・?

村娘はかすかに虚しい思いにかられた。

幸福は既に砕け散っていた。
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