糟糠の妻

栗菓子

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第4章 戦乱の民

第8話 暗殺

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よく晴れ渡った青空に、とある国家の王と王妃が、贅を極めた王宮のバルコニーから民たちへ手を振っていた。

ここは、表面上は豊かな国であった。水面下では熾烈な領土の争いをしていても、まだ浮上はしていなかった。

王と王妃は、民に不安を抱かせないように、慣れた美しい微笑で王家の威信と繁栄を誇示した。

民も、歓声の声を上げて、無邪気な子どもの様に拍手した。

美しい宮殿に美しい王と王妃の美しい微笑み。それだけで眼福となる情景であった。

遠方遥々と、巡礼と共に、宮殿と王と王妃の姿を見物に来た僧侶たちは神様に感謝した。

そんな美しい情景は、一瞬で打ち砕かれる。

警備や、監視体制は万全だったのに、神の悪戯だろうが、突然 目を覆うような強風が民たちが集まっていた集合場に降りかかった。細かな砂や埃が舞い上がって、かすかな悲鳴が女性からあがった。

ほんの少し目が見えなくなって、しばらく風が止んでやれやれと民たちが安堵した途端、バルコニーで異変が起きていた。王と王妃が倒れていて、警備の人らしき者たちが血相を変えて喚き散らしていた。

かすかな赤が見えた民もいた。あれは血液・・?


何も音はしなかった。唯、強風の名残が残っているだけだった。なのに、バルコニーでは騒然となって、微笑んでいた王と王妃は、医者らしき連中に運ばれて行った。

勘のいい民たちは、まさか・・事故?暗殺?あの強風の隙に・・!?と薄々感づいたが、高位貴族たちが今日は家へ戻ってくれ。不要な外出は控えよと命令をした時、ますます異変を確信した。

狼に追われる羊のように、民たちは急いで家や、民宿へと戻ったが、震え上がっている子どもや女もいた。

彼女たちは、今日、この国の平和が破られたと直感的に悟って暗澹たる未来への予感に震えて泣いたのだ。

翌朝・・監視体制が強化され、民たちは急に家に閉じこもりを強要された。

新聞配達人が、急に刷ったため下手だが辛うじて見れるビラを何枚もバラまいていた。


赤い色で紙に大きく書いていた。
「国王、王妃暗殺! 最先端の消音銃で、強風の隙に暗殺命中か!?」


それを拾った子どもたちや、民たちは、やはり・・と更なる確信をもった。

あの時、国王と王妃の命は喪われたのだ。 新たな王はどうなるのか?

彼らは、歴史の急な流れに当惑せずにはいられなかった。


途方にくれた子どもたちが家に潜むように、国で生きるようになった。

それは閉塞感に満ちた過酷な生活の始まりでもあった。


この暗殺事件が世界の歴史の流れを早める分岐点でもあった。

自国のみならず、他の王族も暗殺に血相を変え、王族と言えどももはや盤石とはいえないと歴史に思い知らされたのだ。
彼らは速やかに暗殺者や、その背後、クーデターなどの危険性を抑えよと命令して、自国でも警備強化や監視を図った。


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